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博 士 ( 医 学) 大 久 保

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学) 大 久 保    尚

     学位論文題名

Novel method fOrfaSterformationofratliVerCellSpheroidS      (ラット肝混合細胞スフェロイドの新しい迅速作製法)

学 位 論 文 内 容 の 要旨

    急性肝不全治療の新しい治療法となりうるハイプリッド型人工肝臓開発を目指し、混合ス フェ口イドの迅速大量作製法を確立するために本研究を行った。肝細胞は、単離の状態より細 胞と細胞とが接着する肝細胞集合体(スフェ口イド)の方がより機能を発現する。スフェ口イ ド作製には一般に、細胞分散後に培養環境下で単離肝細胞を凝集させる手法が用いられるが、

そ の作 製に は早 いも ので24時 間、 通常2〜4日 を要 する 。本 研究 でも 細胞 分散 後に細胞培養 を行ってスフェ口イド作製を行っているが、細胞分散法を改変することでクラスター状の細胞 塊を可能とし、また、培養法に浮遊回旋培養法を導入することにより、6時間という短時間で 混合スフェ口イド作製を行うことが可能であった。

    現在一般的に行われている細胞分散はSeglenの考案した細胞分散法をもとにしている。す なわち、EGTA (EthyleneGlycoJ―bis(bーaminoethyl ether)ーN,N,N ,N ‑Tetraacetic Acid) を含む前灌流液で組織内および細胞間の二価イオンをキレート除去することで細胞間接着を弱 め、続く酵素灌流液で細胞外マトリックスを消化して単離細胞を得る手法である。使用する酵 素は通常コラゲナーゼだが、その活性を増すために酵素灌流液には二価イオンであるカルシウ ムを添加する。しかし、この細胞分散法は完全に単離された細胞を得るには適した手法である が、混合スフェ口イドのためには凝集能が高く、完全には単離されていない細胞の方が適して いる。そこで、細胞分散を工夫して、スフェ口イド作製に適したより凝集能の高い細胞を採取 し、それを浮遊回旋培養することで、混合スフェ□イドの大量迅速作製が可能と考え、肝細胞 の分散法および培養法を検討することとした。

    【仮説】肝細胞分散における2段階酵素灌流法で、前灌流液からEGTAを、酵素灌流液から カルシウムを除去することによって、凝集能の高い細胞が得られ、続く回旋培養によってスフ エ口イドが短時間で形成される。

    【 方法 】実 験動 物にはWistar系雄性ラットを用いた。前灌流液中のEGTAを除去し、酵素 灌流液中のCaを除去したEC(―)群と、従来法のEC(+)群を設定し両群間で以下の項目につい て比較検討した。分散直後の細胞収量、細胞生存率、分散時の細胞凝集率、回旋培養開始から 2時間 毎12時 間ま での スフ ェ口 イド 形成 率お よび スフェ口イドサイズを検討した。また、分 散直後の肝細胞の走査型電子顕微鏡による観察、接着性細胞外基質としてラミニンの組織免疫 染色を行った。形成されたスフェ口イドに関しては走査型電子顕微鏡による観察、また、EC(―)

群のスフ工口イドに関しては非実質細胞の評価のために共焦点レーザー顕微鏡による観察を行 った。

【結果】肝細胞の収量・生存率は両群間で差は無かった。分散初期の肝細胞凝集率は有意にEC

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(つ群が高かった。分散直後の肝細胞の走査型電子顕微鏡による観察では、多数のmicrovilli がEC(+)群に見られるのに対し、EC(一)群の肝細胞ではうろこ状の物質がmicrovilliを覆う ように残存しているのが観察された。同時に分散直後の肝細胞のラミニン染色では、EC(―)群 が より 強く 染色 される傾向があった。スフェロイド形成率は2時間と4時間においてEC(う群 が高かったが、6時間以降は両群に差は認めなかった。スフェ口イドサイズはいずれの観察時 間においてもEC(―)群が大きく、6時間の浮遊回旋培養の結果、直径70〜80 umの小型のスフ ェ口イドが形成された。走査型電子顕微鏡では、豊富な微絨毛をもった肝細胞の球形集合体と、

その表面に存在する類洞内皮細胞が観察され、所々にmicro canaliculiの開口部と考えられる 小孔を認めた。螢光標識アセチルLDLと、螢光ラテックスビーズを用いた共焦点レーザー顕微 鏡でも表面に存在する非実質細胞の存在が示された。透過型電子顕微鏡では肝細胞は立方体で、

肝細胞内に非常に多くのミトコンドリアを有しており、個々の細胞の代謝活性が高いことが示 された。

【 考察 】前 灌流 液からEGTAを除去し、酵素灌流液からCaを除去する本細胞分散法によって、

得られる肝細胞は凝集能が高く、スフ工口イド作成に適していた。また、得られた細胞を浮遊 回旋培養することによって、スフェ口イドは6時間という短時間で形成され、仮説の正しさが 証明された。

現在一般的に行われているSeglen法は、基本的にニつのステップによって構成されている。1 番目は前灌流液中のキレート剤によって組織および細胞間隙の2値陽イオンを除去し、しゝわゆ るchemical diges tionを行ない、続く酵素灌流によって細胞外期質の消化を行って単離細胞を 得るという手技であるが、本法における前灌流の目的は血管内の脱血のみである。逆にキレー ト剤を用いると次の酵素灌流に用いるコラゲナーゼの酵素活性が減弱してしまうので、凝集能 の強い細胞は得られるが、収量および生存率が極端に低下する。なぜならば、コラゲナーゼな どの基質消化酵素はその働きのためには2価の陽イオンが必要であり、細胞外基質が消化され るまでに時間がかかるため、細胞の生存率が低下する。本手法では、前灌流でカルシウムなど の2価陽イオンを完全にキレートしないことが特徴である。そのため、コラゲナーゼの作用は、

酵素灌流液にカルシウムを添加した場合と比較してmildであり、EC(っ群の単離肝細胞にはよ り多くのラミこンが細胞周囲に存在していることより、肝細胞は周囲に細胞外基質が残存した まま分散されると考えられる。ラミニンは細胞外基質の中でも代表的な接着性の基質であり、

EC(−)群の肝細胞が従来の分散法であるEC(+)群より凝集能が高いことと一致する。加えて非 実質細胞は肝細胞周囲に存在するが本法においては肝細胞と同時に収穫され、非実質細胞を多 く含む混合スフェ口イドが形成されたと考えられる。また、単層培養と比較すると、浮遊回旋 培養は細胞同士が接触する機会が多いために、さらにスフェ口イド形成が促進されたと考えら れる。

【 結語 】人 工肝 臓のmain bioreactorとなりうる混合細胞スフェ口イドを6時間という短時間 で 作 製 す る こ と に 成 功 し た 。 今 後 の ハ イ ブ リッ ド 型 人 工 肝 臓 へ の 応 用 が 期 待 さ れ る 。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

     学位論文題名

Novel method for faster formation of rat liver cell spheroids      (ラ ッ ト 肝 混 合細 胞 ス フ ェ ロイ ド の 新 し い 迅速 作 製法)

  急 性 肝 不 全 治 療 の 新 し い 治 療 法 と な り うる ハイ ブリ ッ ド型 人工 肝臓 開 発を 目指 し、 肝混 合 細 胞 ス フ ェ ロ イ ド の 迅 速 大 量 作 製 法 を 確 立 す る た め に 本 研 究 を 行 っ た 。     肝細 胞は 、 単離 状態 よル ス フェ ロイ ドの 方が よ り高 い機 能を 長期 間 発現 する。ス フェロ イ ド は 、 肝 細 胞 分 散 に 続 き 、 培 養 環 境 下 で 単 離 肝 細 胞 を 凝 集 さ せ て 作 製 し 、 通 常34 を 要 す る 。 こ の 作 製 時 間 の 短 縮 の た め に は凝 集能 が高 く 、完 全に は単 離 され てい ない 細胞 が 適 し て お り 、 肝 細 胞 分 散 の ス タ ン ダ ー ド で あ るSeglen法 の2段 階酵 素 灌流 法の 前灌 流液 か らEGTAを 、 酵 素 灌 流 液 か らCa++を 排 除 す る こ と で 凝 集 能 の 高 い 細 胞 塊 を 櫓 、 続 く 回 旋 培 養 に よ っ て ス フ ェ ロ イ ド が 短 時 間 で 形 成さ れる と仮 説 を立 てた 。Wistar系 雄性 ラッ トを 用い 、前 灌流 液 中のEGTAと、 酵 素灌流液中のCa++を排除したEC(‐)群と、従来法のEC(十)

群 を 設 定 し 両 群 聞 で 細 胞 分 散 法 、 分 散 後 の細 胞状 況、 ス フェ ロイ ド形 成 状況 、ス フェ ロイ ド 形 態 に つ い て 比 較 検 討 し た 。 細 胞 分 散 法 で は 肝 細 胞 の 収 量 ・ 生 存 率 はEC( 十 ) 群 (2.640.84x10^8個、92.k2.2% )、EC(‑)群(2.63+0.85x108個、92.6士2.5%)と有意 差は無 く 、 従 来 法 と 比 べ 遜 色 は な か っ た 。 分 散 初期 の肝 細胞 凝 集率 、非 実質 細 胞率 はEC(十 )群 (46.9士8.6%、11.2土4.3%)、EC(‑)群(63.0士10.7%、21.1土7.3%)と、EC(.)群が有意に高かっ た。 走査 型電 子 顕微 鏡(SEM)では 、EC(・ ) 群の 肝細 胞はう ろこ状の物質が微絨毛を覆 い、細 胞 外 基 質 の 残 存 と 考 え ら れ 、 ラ ミ ニ ン 染 色 で もEC(‑)群 が よ り 強 く染 色 され る傾 向が あっ た 。 ス フ ェ ロ イ ド 形 成 率 は2時 間 と4時 間 にお いてEC( り 群が 高く 、ス フ ェロ イド サイ ズは い ず れ の 観 察 時間 にお いて もEC( う群 が大 き く、6時間 の 浮遊 回旋 培養 の 結果 、直 〒毛70 80umの 小 型 の ス フ ェ 口 イ ド が 形 成 さ れ た 。 ス フ ェ 口 イ ド のSEMで は 、 豊 富 な 微 絨 毛 を も っ た 肝 細 胞 の 球 形 集 合 体 と 、 そ の 表 面 に存 在す る類 洞 内皮 細胞 が観 察 され 、共 焦点 レー ザ ー 顕 微 鏡 で は 肝 細 胞 に 対 し て お よ そ30%の 非実 質細 胞 がス フェ ロイ ド 表面 に存 在す るこ と が 示 さ れ た 。 新 し い 細 胞 分 散 法 は 従 来 と比 べて マイ ル ドな 肝細 胞分 散 法で あり 、肝 細胞 周 囲 に 存 在 す る 細 胞 外 基 質 な ら び に 非 実 質細 胞が 肝細 胞 と同 時に 採取 さ れる ため 、分 散直 後 よ り 凝 集 塊 が 多 く 、 非 実 質 細 胞 を 多 く 含む 肝細 胞塊 が 得ら れた と考 え られ る。 また 、回

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正 知

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旋培養は細胞同士が接触する機会が多いため、新しい分散法で得られた凝集能の高い細胞 を回旋培養する事でさらにスフェロイド形成が促進されたと考えられる。本研究によって 人工肝 臓のバ イオリアクターとなりうる混合細胞スフェロイドを6時間という短時間で作 製 す る こ と に 成 功 し 、 今 後 の ハ イ ブ リ ッ ド 型 人 工 肝 臓 へ の 応 用 が 期 待 さ れ る 。 審 査に あ た って 、 ま ず小 柳 教 授よ り @ 実 際の 機 能 検査 は 行 った か、◎非 実質細 胞の paracrmeはどのような物質が考えられるか、◎臨床応用に向けての今後の展望の質問が出 された。これに対して@形態維持の困難さから長期の機能検討は行っていなぃが、め期お よびコラーゲンゲル環境化では単層培養よりも高い機能を発揮することをデータを示して 解答し た。◎IL‑10などの液性因子が考えられるが詳細は判明していない、◎スケールア ップを図るためにブタを用いた肝細胞分散、スフェロイド形成について検討中であること を解答した。続いて藤堂教授より@移植が一般的治療法になりつっある中での人工肝臓の 存在意義、◎スフェロイド機能を充分に発揮するための足場作りとしての方法に対して質 問が出された。これに対して、@日本における肝移植の現状を説明し、健常人からの肝臓 提供を伴わなぃ劇症肝炎治療法としての意義、◎形態維持のためのゲル環境および企業と の共同研究でカプセル化を検討していることを説明した。最後に浅香教授より、@人工肝 臓は携行型になりうるのか、◎合成能までも代償するのは難しいのではなぃか、◎アルブ ミン以 外の物 質産生能でもスフェロイドは有用なのか、m‑RNAはみたか、@なぜスフェロ イドを早く作る必要があるのか、◎回旋培養における回転数とスフェロイド形成の関係、

◎ブタやヒトでも本実験(ラット)と同じ結果が得られると思うかの質問が出された。こ れに対して、@将来的には携行型が望ましいがどの程度先で実現されるかは不明、◎アル ブミンや凝固因子などは補充で解決可能、不足であれば肝細胞への遺伝子導入で対応でき る可能 性、◎m‑RNAは検討していないが、アンモニア解毒能ではスフェロイドが優れてい た。@肝不全患者の治療までに要する時間の短縮を意図した、◎予備実験のデータを示し、

120rpmが至 適回転数である、◎種によって違いがあり、ブタについではcollagenaseなど の条件等、分散方法について検討中であることを説明した。

この論 文は、 わずか6時間という世界最速の肝混合細胞スフェロイド作製法を示したもの であり高く評価された。

  審査員一同はこれらの成果を高く評価し大学院課程における研鑽や取得単位等とf并せ申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

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参照

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