博 士 ( 薬 学 ) 米 田 学 位 論 文 題 名
Pim ・1 結合夕ンノヾク質PAP‑1 の機能解析および,
PAP‑1 と網膜色素変成症の関連についての研究 学位論文内容の要旨
宏
Pim―1はc―Mycとの協調的ガン化能を持つ 原ガン遺伝子で、その遺伝子産物は約33 kDaのセルンスレオニンキナーゼである。.またPim―1はIL―3やGMーCSFなどのサイトカ インにより様々な細胞において早期に発現が誘導される遺伝子であることから、Pim−1のり ン酸化シグナルが細胞の生存、増殖に重要であることが示唆されてきた。しかし、Pim―1が 発現したのちに細胞内でどのような機能を果たしているかについてはいまだ不明な点が多 い。当研究室ではc−Mycのガン化シグナルとの関連からPimー1の解析を行っており、これ までにPim―1の結合夕ンノヾク質としてPAP―1,HP―1,TRAF4 associated factor 2/ SNX6 を同 定し てい る。 本研 究で 私は そのうちのーつ であるPAP一1の機能解析を行った。
1. Pim―1結合因子としてのPAP―1の同定
PAP―1はPim―1の結合因子として単離された新規遺伝子で、全長213アミノ酸をコードす るが、既知の機能ドメインは存在せず、特徴的な配列はC末端側の1」ジンとヒスチジンの連 続した塩基性領域だけであった。mRNAの発現は胸腺や精巣に高いがそれ以外の臓器でも.
ほぼ全身に発現が見られる。
まず、PAP―1とPim―1の結合を免疫沈降法とin vitroプルダウン法で検討し、PAP−1 側については結合部位がN末端側から中央部にかけてにあることを確認した。また、PAP― 1は細胞内で塩基性領域により核内にドット状に局在することが欠失変異体の局在の検討か ら明らかとなり、PAP−1を共導入してPim−1の局在を観察した。その結果、Pim―1は PAP―1の存在する核内のドットに集合しPAP−1と共局在することが明らかとなった。ま た、Pimー1はセリンノスレオニンキナーゼであるので、PAP−1を基質に用いてりン酸化反 応を行ったところ、PAP−1はPim―1によるりン酸化を受けた。Pimー1のルン酸化基質の コンセンサス配列に相同性のある配列がPAP−1中には2力所あり、それぞれのセ1」ン、ス レオニン残基に変異を導入しりン酸化の有無をみたところ、C末端側の203、204、2()7番 目のセリン残基がPim一1によるルン酸化部位であると考えられた。以上のことより、PAP― 1はPim―1と核内のドット状構造で結合し、Pim−1のりン酸化の標的となることが考えら れた。
2. PAP−1と相同性を持つ転写コリブレッサーCIRのスプライシング関連因子としての機能 の発見
PAP一1と相同性を持つタンパク質をデータベースから検索したところCIRを得た。CIR はCBFl/RBPーJの結合因子とし て単離され、SAP30やHDAC1との結合能および転写抑
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制能を持つことから転写抑制複合体に含まれる転写コルプレッサーであると報告されてい た。CIRは細胞内に斑点状に局在することとPAP―1同様に塩基性領域を持つことから、
CIRの欠失変異体の局在を検討した。その結果、CIRの局在を決定するドメインが塩基性領 域だけでなくC末端側にも存在すると考えられた。その領域はRSドヌインと相同性があっ たので、RSドメインを持つスプライシングファクターであるSR夕ンパク質との結合を検 討 した 。そ の結 果CIRはSC35,SF2/ASF,U2AF35と 結合 し、それだけでなくCIRと結 合することも明らかとなったPAP―1自身にもU2AF35との結合が見られ、細胞内局在の検 討においてもPAP−1のドット状局在はスプライソソームと共局在した。そこで、EIAの minigeneをレポーターとするin vivo splicing assayを行ったところ、PAPー1,CIR共に レポーターのスプライシングパターンを変化させた。また、PAP一1はCIRだけでなくCIR の結合因子であるSKIPと三者複合体を形成することを明らかとし、この三者の複合体が転 写調節だけでなくプ口モーター特異的なスプライシングの調節も行うという可能性が考えら れた。
3.網膜色素変性症とPAP−1の関連
網膜色素変性症(RP)は網膜上の光受容細胞が徐々に変性して視野狭窄や夜盲症を引き起 こし、最終的には失明に至ることもある遺伝病であるが、最近PAP−1が網膜色素変性症の 原因遺伝子であることが明らかとなり、その遺伝子変異からくるPAP−1の機能の変化を検 討した。その結果、いくっか見っかっている変異体とこれまでに明らかとなったI)AP−1結 合因子との結合能、PAP一1機能に重要と思われる細胞内局在について変化がないかを検討 したところ、ある変異体ではスプライシング調節に重要と考えられるU2AF:35との結台が 滅少していた。この変異体は細胞内局在でもWTと異なり、PAP―1の塩基性領域を欠いた 変異体が示すような拡散した局在を示した。このことから、本研究で明らかとなった、
PAP―1の核内ドット状局在とスプライシング調節との関係が、その変異体では異常である ことが予想され、最近明らかになりつっある他の網膜色素変性症の原因遺伝子にスプライシ ング関連遺伝子群があることとPAP―1の機能との関連に興味が持たれる結果であった。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Pim‑l 結合夕ンノヾク質PAP‑1 の機能解析および,
PAP‑1 と網膜色素変成症の関連についての研究
Plm―1はc―Mycとの協調的ガン化能を持つ原ガン遺伝子で、その遺伝子産物は約33 kDaのセルンスレオニンキナーゼである。またPim―1はILー3やGM―CSFなどのサイト カインにより様々な細胞において早期に発現が誘導される遺伝子であることから、Pim―1 のりン酸化シグナルが細胞の生存、増殖に重要であることが示唆されてきた。しかし、
Pimー1が発現したのちに細胞内でどのような機能を果たしているかについてはいまだ不明 な点が多い。当研究室ではc−Mycのガン化シグナルとの関連からPim−1の解析を行って おり、これまでにPim―1の結合夕ンパク質としてPAP−1,HP―1.1`RAF4 associated factor 2/ SNX6を同定している。本研究で申請者はそのうちのーつであるPAP―1の機能 解析を行った。
1.Pim−1結合因子としてのPAP−1の同定
PAP一1はPim−1の結合因子として単離された新規遺伝子で、全長213アミノ酸をコードす るが、既知の機能ドヌインは存在せず、特徴的な配列はC末端側のりジンとヒスチジンの 連続した塩基性領域だけであった。mRNAの発現は胸腺や精巣に高いがそれ以外の臓器で もほぼ全身に発現が見られる。
まず、PAP一1とPim−1の結合を免疫沈降法とin叨troプルダウン法で検討し、PAP―1 側については結合部位がN末端側から中央部にかけてにあることを確認した。また、PAPー 1は細胞内で塩基性領域により核内にドット状に局在することが欠失変異体の局在の検討か ら明らかと なり、PAP―1を共導入してPlm−1の局在を観察した。その結果、Plm一1は PAP−1の存在する核内のドットに集合しPAP‑1と共局在する ことが明らかとなった。ま た、Pimー1はセリンノスレオニンキナーゼであるので、PAP―1を基質に用いてりン酸化反 応を行ったところ、PAPー1はPim−1によるりン酸化を受けた。Pim−1のりン酸化基質の コンセンサス配列に相同性のある配列がPAP−1中には2カ所あり、それぞれのセリン、ス レオニン残基に変異を導入しりン酸化の有無をみたところ、C末端側の203、204、207番 目のセリン 残基がPlm―1によるりン酸化部位であると考えられた。以上のことより、
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芳 正
彦 宏
寛
和
敬
賀 田
橋
有 松
高 平
授 授
授 授
教 教
教 教
助 助
査 査
査 査
主 副
副 副
FAP‑1はPim−1と 核 内 の ドット 状構造 で結合 し、Pim―1のりン 酸化の 標的と なるこ とが 1考 え ら れた 。
2, PAP‑1と 相同性 を持つ 転写コ リプレッ サーCIRのスプ ライシン グ関連 因子と しての機 能の発 見
PAP−1と 相 同 性を 持 つ タ ンパ ク 質 をデ一 夕べー スから 検索し たとこ ろCIRを得 た。CIR はCBFl/RBP‑Jの 結 合 因 子 と し て 単 離 さ れ 、SAP30やHDAC1と の 結 合 能 お よ び 転 写 抑 制能を 持つこ とから 転写抑 制複合 体に含 まれる転 写コリ プレッ サーで あると 報告されてい た 。CIRは 細 胞 内に 斑 点 状 に局 在 す る こと とPAP11同 様 に 塩 基性 領 域 を 持つ こ と か ら、
CIRの欠 失 変 異 体の 局 在 を 検討 し た 。そ の結果 、CIRの局 在を決 定する ドヌイ ンが塩 基性 領 域だ け で なくC末端側 にも存 在する と考え られた。 その領 域はRSド ヌイン と相同 性があ っ たの で 、RSド ヌ イ ン を持 つ ス プ ライ シング ファク 夕一で あるSR夕 ンパク 質との結 合を 検 討 し た 。 そ の 結 果CIRはSC35,SF2/ASF,U2AF35と 結 合 し 、 そ れ だ け で な くCIRと 結合す ること も明ら かとな ったE)AP―1自身 にもU必F35との結 合が見 られ、 細胞内局在の 検 討に お い て もR廿―1のド ッ ト 状 局在 は ス プ ライ ソ ソ ー ムと 共局 在した 。そこ で、ElA のminlgeneを レポ ー タ ー とす るfn研vOSpliCIngaSSayを行 っ た と ころ 、PAP‐1,CIR共 に レポ ー 夕 一の スプラ イシン グパタ ーンを変 化ぎせ た。ま た、f〕APー1はCIRだけで なく CIRの結 合 因 子 であ るSKIPと 三 者 複合 体 を 形 成す る こ と を明 ら かとし 、この 三者の 複合 体が転 写調節 だけで なくプ ロモー ター特 異的なス プライ シング の調節 も行う という可能性 が考え られた 。
3.網膜 色素変 性症とR廿―1の 関連
網膜色 素変性 症(ロ )は網 膜上の光受容細胞が徐々に変性して視野狭窄や夜盲症を引き起 こ し、 最 終 的に は失明 に至る ことも ある遺伝 病であ るが、 最近PA卜1が網膜 色素変 性症の 原因遺 伝子で あるこ とが明 らかと なり、 その遺伝 子変異 からく るPAP―1の機能の変化を検 討した 。その 結果、 いくっ か見っ かって いる変異 体とこ れまで に明ら かとな ったPAP一1結 合因子 との結 合能、PAP`1機能 に重要 と思わ れる細 胞内局 在につ いて変 化がないかを検討 し たと こ ろ 、あ る変異 体では スプラ イシング 調節に 重要と 考えら れるUZ气F35との結 合が 減 少し て い た 。こ の 変 異 体は 細 胞 内 局在で もWTと異 なり、PAP―1の塩 基性領 域を欠 いた 変 異体 が 示 す よう な 拡 散 レた 局 在 を 示した 。このこ とから 、本研 究で明 らかと なった 、 PAPイの 核 内 ドット 状局在 とスプ ライシ ング調 節との 関係が 、その変 異体で は異常 である ことが 予想さ れ、最 近明ら かにな りつっ ある他の 網膜色 素変性 症の原 因遺伝 子にスプライ シング 関連遺 伝子群 がある こととPAP―1の機 能との 関連に 興味が 持たれ る結果であった。
以上 の結果 は転写 制御機 構,網 膜色素 変性症疾患の原因遺伝子の発見を提示したもので あり ,創薬 に結び つく可 能性を大 いに占 めており,学位論文にふさわしく,薬学博士とし て米 田宏を 推薦す るもの である.
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