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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 齊 藤 健 太

     学 位論文 題名

Analysis of intracellular protein dynamics by the use of     fluorescence auto‑and cross‑correlation analysis

(螢光自己相関分光法および螢光相互相関分光法による      細胞内蛋白質動態の解析)

学位論文内容の要旨

    プ ロテオミ クス研 究の中 で特に 重要な 位置を 占めて いるのが蛋白質問相互作用の解析で ある 。真の 蛋白質問相互作用の記述には相互作用のタイミング、持続時間、相互作用の強さを in vivoすなわち生細胞において測定する必要がある(Chapter1)。

    わ れわれは 螢光自 己相関 分光法(fluorescence auto‑correlation spectroscopy、以下 FCS) およ び 螢 光 相互 相 関 分 光法(fluorescence cross‑correlation spectroscopy、以下 FCCS)を 用いて 生きた細 胞内に おける 蛋白質 の動態 を調べ ること を目標 とし、本 研究では、

FCSに よ る プ ロ テ イ ン キ ナ ー ゼC(protein kinaseC、 以 下PKC)の 細胞 膜 移 行 機構 の 解 析 (Chapter2) 、FCCSに よ る 細 胞 内 プ ロ テ ア ー ゼ 活 性 の 検 出(Chapter3) を 行 な っ た 。     FCSは 共焦点 光学系 により 集光され たレー ザー光 からな る微小 領域内 をブラ ウン運動し てい る螢光 分子を蛍光光強度のゆらぎとして観測し、そのゆらぎから微小領域内の分子数およ び滞 在時間 を求め る手法 である 。分子の 滞在時 間から は分子 の拡散 定数が 求めら れる。FCS は微少領域(10‑15リットル)を非侵襲的に短時間(数十秒)で測定する事が可能なため、細胞 内における分子のダイナミックな動きの解析へと応用が進んでいる。PKCはセリン・スレオニン キナ ーゼで あり、細胞内シグナル伝達に関わる分子のーっとして知られている。ガンのプロモ ー タ ーで あ る ホ ルボー ルエス テル(TPA)はPKCを特異 的に活 性化し 、細胞 質から 細胞膜 へと 移 行 を促 進 す る 事が 知 ら れ てい る 。 近 年の 緑色螢 光蛋白 質(enhanced green fluorescent protein、 以 下EGFP)融 合PKCの 螢 光 顕微 鏡 ・共焦 点レー ザー顕 微鏡に よる生 細胞の 螢光像 観察 から、PKCの細胞 内局在 につい てはよく調べられてきた。しかしながらPKCは、1)膜移行 前に細胞質中の他の分子にアンカーされているのかどうか、2)膜移行後に細胞膜で動かなくな っているのかどうか、3)どのように膜移行するのかについてはわかっていない。そこでわれわれ はFCS測 定 に よ りPKCの 細 胞 内 で の動 態 を 明 らか に す る 事を 目 的 と した 。 細 胞 質中 で の PKcpll‑EGFPの 拡散定 数はEGFPとの分 子量の比 から推 定され る値と ほぼ一 致した 。よって、

PKcpiトEGFPはEGFPと 同 様、 細 胞 質 中で は 他 分 子と ほ と ん ど相 互 作 用 せず に 自 由 拡散 し てい ると考 えられ る。次 に、TPA刺 激後の細胞膜では細胞質でのものより1/10 ‑ 1/100の遠さ で ゆ っく り と 拡 散す るPKC[31I‑EGFPが 現 れた 。この 遅いPKcpiトEGFPは細 胞膜に 存在する

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TPAやPKCのアンカー蛋白質および基質と相互作用しているPKcpiトEGFPであると考えら れる。今回の解析結果から、細胞質中で自由拡散しているPKCは細胞の中心から細胞膜まで

(10 ym)を約2.5秒で達している事になる。また、PKcpiiの膜移行は細胞骨格、エネルギー に依存せず起こる。よってPKcpiiは能動的な輸送により細胞膜に移行するのではなく、細胞 質中で自由拡散しているPKC{311が細胞膜に付加されたTPAにトラップされていく機構により 膜移行しているものと考えられる。

  次に我々は、FCCSによる生きた細胞内での特定の蛋白質問相互作用の解析を目指した。

FCCSは2色の異なる螢光分子が測定領域を通過する際の光強度変化の同時性(相互相関)

から、分子間相互作用を検出する手法である。細胞内でのFCCS測定としては、コレラ毒素の 細胞外からの取り込みおよび細胞内でのサブュニット解離の測定および細胞内のカルモジュリ ンおよびそれに依存したプロテインキナーゼの相互作用を測定の報告がある。これらの測定で は螢光分子として両方または片方に合成色素を用いており、細胞内導入が煩雑になる事や色 素のラベル化率の不均一性が結果の再現性を損なう可能性がある。本研究では2種類の異な る螢光蛋白質を利用した細胞内FCCS測定を行なった。

    螢光 蛋白質と してEGFPおよび単量体赤色螢光蛋白質(monomeric red fluorescent protein、以下mRFP)を用いた。まずin vitroで合成した融合蛋白質EGFP‑mRFP (G‑x‑R)を 溶液中で測定し、測定条件の検討および最適化を行なった。また、enterokinaseの認識配列 をりンカーに挿入した融合蛋白質(G‑D4K‑R)を用い、相互相関の解消の速度が酵素濃度依存 的に起こることを確かめた。次にcaspase‑3の認識配列をりンカーに挿入した融合蛋白質 (G‑DEVD‑R)をHeLa細胞内に発現させ、細胞内での酵素活性を相互相関の解消により観測 した 。細胞内 のFCCS測定 においてはEGFPと比較して発光の弱いmRFPをタンデムにニつ 融合させた蛋白質(G‑DEVD‑R2)を用い、mRFPの螢光強度を補う事で細胞内における酵素 活性の検出を行なう事ができた。また、caspase‑3の認識配列のアミノ酸のーっを置換した融 合 蛋 白質 (G‑DEVG‑R2)にお いては 、同条件 で相互 相関の解 消が無か った事 から、

caspase‑3のDEVD配列に対する特異的な活性が確かめられた。

  以上 の 事 から 、FCSお よ びFCCSは 細 胞 内に お け る 蛋白 質 の 動態 の 解 析に 有 用で ある事がわかった。

193 ‑

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

田 村 坂 口 矢 澤 井 / 口

    守 和靖 道生

仁一 (薬学研 究科)

     学位論文題名

Analysis of intracellular protein dynamics by the use of     fluorescence auto‑and cross‑correlation analysis

(螢光自己相関分光法およぴ螢光相互相関分光法による      細胞内蛋白質動態の解析)

  本論 文 は プロ テ オ ミク ス 研 究 の中 で 特 に重 要 な位 置を占め ている 蛋白質問 相互作 用 を 螢 光 相 関 分 光 法 を 用 い て 生 き た 細 胞 内 で 解 析 し た も の で あ る 。   こ こ で は 特 に ニ っ の 手 法 す な わ ち 螢 光 自 己 相 関 分 光 法(fluorescence auto‑

correlation spectroscopy、 以 下FCS)お よ び 蛍 光 相 互 相関 分 光 法(fluorescence cross‑correlation spectroscopy、以下FCCS)を用いた。

  FCSは 共焦 点 光 学系 に よ り 集光 さ れ たレ ー ザ ー光 か ら なる 微 小 領域 内 を ブラ ウン 運動 してい る螢光分 子を螢光 光強度のゆらぎとして観測し、そのゆらぎから微小領域内 の 分 子数 お よ び滞 在 時 間を 求 め る 手法 で あ る。 分 子の滞在 時間か らは分子 の拡散 定 数が求められる。FCSは微少領域(10'isリットル)を非侵襲的に短時間(数十秒)で測定 する 事が可 能なため 、細胞内 における分子のダイナミックな動きの解析ーと応用が進ん でい る。Protein KinaseC(PKC)はセリン・スレオニンキナーゼであり、細胞内シグナル 伝達 に関わ る分子の ーっとし て知られている。ガンのプロモーターであるホルボールエ ス テ ル(TPA)はPKCを 特 異 的 に 活性 化 し 、細 胞 質 から 細 胞 膜へ と 移 行 を促 進 す る事 が知 られて いる。近 年の緑色 螢光蛋 白質(enhanced green fluorescent protein、以下 EGFP)融 合PKCの 螢 光 顕 微 鏡 ・ 共 焦 点 レ ー ザ‑顕 微 鏡 に よ る 生 細 胞 の 蛍 光 像 観 察 か ら 、PKCの細 胞 内 局在 にっ いてはよ く調べ られてき た。しか しなが らPKCは 、1)膜 移行 前に細 胞質中の 他の分子 にアン カーされ ている のかどうか、2)膜移行後に細胞膜 で動かなくなっているのかどうか`3)どのように膜移行するのかにっいてはわかっていな い 。 そ こ で わ れ わ れ はFCS測定 に よ りPKCの細 胞 内 での 動 態 を明 ら か に する 事 を 目 的 と し た 。 細 胞 質 中 で のPKcpiトEGFPの 拡 散 定 数 はEGFPと の 分 子量 の 比 から 推 定 さ れ る値 と ほ ぼ一 致 し た。 よ っ て 、PKC{3II‑EGFPはEGFPと同様、 細胞質中 では他 分 子 と ほと ん ど 相互 作 用 せずに 自由拡散 してい ると考え られる。 次に、TPA刺激 後の細

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胞膜では細胞質でのものより 1/10 ‑ 1/100 の速さでゆっくりと拡散するPKcpi トEGFP が 現 れ た 。 こ の 遅い PKcpi ト EGFP は 細胞 膜 に存 在 す る TPA や PKC のア ン カー 蛋 白質および基質と相互作用しているPKC[31 ト EGFP であると考えられる。今回の解析結 果から、 細胞質中 で自由拡散しているPKC は細胞の中心から細胞膜まで(10 ym) を 約215 秒で達している事になる。また、PKcpii の膜移行は細胞骨格、エネルギーに依 存せず起こる。よってPKC{311 は能動的な輸送により細胞膜に移行するのではなく、細 胞質中で自由拡散しているPKcpii が細胞膜に付加された TPA にトラップされていく 機構により膜移行しているものと考えられる。

   次に、FCCS による生きた細胞内での特定の蛋白質問相互作用の解析を目指した。

FCCS は 2 色の異 なる螢光 分子が測 定領域を通 過する際の光強度変化の同時性(相 互相関)から、分子間相互作用を検出する手法である。細胞内でのFCCS 測定として は、コレラ毒素の細胞外からの取り込みおよび細胞内でのサブュニット解離の測定およ び細胞内のカルモジュリンおよびそれに依存したプロテインキナーゼの相互作用を測 定の報告がある。これらの測定では螢光分子として両方または片方に合成色素を用い ており、細胞内導入が煩雑になる事や色素のラベル化率の不均一性が結果の再現性 を損なう 可能性が ある。本 研究では2 種 類の異な る蛍光蛋白質を利用した細胞内 FCCS 測定を行なった。

     螢 光 蛋 白 質 と し て EGFP お よ び 単 量 体 赤 色 螢 光 蛋 白 質 (monomeric red fluorescent protein 、以下mRFP) を用いた。まずin vitro で合成した融合蛋白質 EGFP‑mRFP (G‑x‑R) を溶液中で測定し、測定条件の検討および最適化を行なった。

また、enterokinase の認識配列をりンカーに挿入した融合蛋白質(G‑D 。 K‑R) を用い、

相互相関の解消の速度が酵素濃度依存的に起こることを確かめた。次に caspase‑3 の認識 配列をり ンカーに 挿入した融 合蛋白質 (G‑DEVD‑R) を HeLa 細胞内 に発現さ せ、細胞 内での酵 素活性を相互相関の解消により観測した。細胞内のFCCS 測定に おい て は EGFP と 比 較 して 発 光 の弱 い mRFP をタ ン デ ムに ニ つ融 合させた 蛋白質 (G‑DEVD‑R よ)を用い、 mRFP の螢光強度を補う事で細胞内における酵素活性の検出 を行なう事ができた。また、caspase‑3 の認識配列のアミノ酸のーっを置換した融合蛋 白質 (G‑DEVG‑R よ ) にお い て は、 同条件で相 互相関の 解消が無 かった事 から、

caspase‑3 の DEVD 配列に対する特異的な活性が確かめられた。

     以上の事 から、FCS お よぴ FCCS は細 胞内におけ る蛋白質の動態の解析に極め

て有用であり、細胞生物学における情報伝達系の解析に貢献するところ大である。よっ

て筆者は 、北海道 大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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