ー 博 士 ( 農 学 ) 王 紹 東
学 位 論 文 題 名
ぱ―トコフェロールおよびルテインを高含量に蓄積する 高機能性ダイズの育成に関する遺伝育種学的研究
学位論文内容の要旨
本研究では, ダイズ種子中に&―トコフェロ←ル(&ーToc)とルテインの両機能性成分を高含 量 に 蓄 積 す る 可 能 性 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し て い る 。 高a―Toc含 量の ダイ ズ品 種
「KeszthelyiA.S.」を母親,高ルテイン含量のツルマメ系統「B09092」を父親として交配を 行った。まず, 高a―Toc含量およぴルテイン含量を少量の種子試料によ って迅速かつ定量性良 く分析する方法 を確立した。この開発した方法を用いて,登熟期のダイ ズ種子のトコフェ口ー ルおよびルテイ ンの蓄積様式を調査した。次に,F2種子およびFユ個体(F3種子)集団を用い,
a―Tocおよぴル テインそれぞれの高含量形質の遺伝分析を行った。また ,選抜したa―Toc含量 お よび ルテ イン 含量がと もに高いFo系統を1回親とし て戻し交配を行い,a―Tocおよびルテイ ン含量がともに 高いBIF2系統を選抜した。これらの系統を用いて栽培形 質を調査・評価した。
得られた結果は 以下のように要約される。
1. ダ イ ズ 種 子 お よ び 登 熟 種 子 に お け る a−Tocと ル テ イ ン の 抽 出 ・ 定 量 トコ フェ ロー ルと ルテ イン がそ れぞれ紫外部および可視部の波長に特異的な吸収をも つこ と に着 目し ,溶 出勾 配と 測定 波長 を工 夫し ,1回 のHPLC分 離によってaーTocおよびルテ イン を定量分析する方法を確立し た。本法によって,1粒重が40mg程度の小粒の種子(F:種子等)
の 一部 分(5〜10mg)を削 ってa―Toc含量 およ びル テイ ン含 量を同時に定量し,胚軸を含 む残 りの種子を播種して次代を養 成することができた。また,開発した方法を用いることにより,
完 熟種 子よ り多 種類 の成 分を 含む ため従来の方法では目標ピークの同定が困難であった 未熟 種 子 のaーToc含 量 お よ び ル テ イ ン 含 量 を 安 定 し て 再 現 性 良 く 定 量 す る こ と が で き た 。
2.登熟期のト コフェロールおよびルテインの蓄積様式の比較分析
高a−Toc含 量の ダイ ズ品 種 およ び普 通品 種ともビニールハウスおよび温室栽 培において開 花 後30日 か ら60日 の 完 熟 期 ま で の 間 に ,a−Toc含 量 は 徐 々 に 増加 した 。高aーToc含 量の
「KeszthelyiA.S.」 では , 開花 後30日か ら45日頃まで急激に増加し,その後 ,穏やかな増 加が 続い た。 「Toyokomachi」に おい てもa―Toc含 量は 開 花後30日 から45日頃 まで増加した が,増加の程度は「KeszthelyiA.S.」よ り緩やかであった。温室ではビニールハウスに比べ
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てa―Toc含量 が高 含量に経 緯した。普通品種の「Toyokomachi」の6→Toc含量は,開花後30日 か ら35‑ 40日 まで の間 に急 激に 上昇 し, その 後60日ま で高含量で推移した。一方,高Q―Toc の 品 種「KeszthelyiA.S. 」の6−Toc含 量は ,開花後35日から45日まで急激に減少し,完熟 ま で低含量のまま推移した。YーToc含量および総トコフェ ロール含量は,両品種とも開花後30 日 〜 60日 ま で 減 少 し た が , ビ ニ ー ル ハ ウ スお よぴ 温室 の両 栽培 にお いて ,高a一Toc品 種
「KeszthelyiA.S.」のY−Toc含量の減少幅は,普通のダ イズ品種「Toyokomachi」より大きか っ た 。 ま た , 総 ト コ フ ェ ロ ー ル 含 量 は ,v―Toc含 量 と 同 じ 減 少 傾 向 を 示 し た 。 ル テイ ン含 量が 高いツル マメ系統「GD50107一3」と「Hidaka4」およびルテイン含量が低い ダ イ ズ品 種「KeszthelyiA.S.」と「Toyokomachi」と も,ビニールハウスおよび温室の而栽 培 に おい て, 登熟 が進 むに っれ てル テイ ン含 量は 徐々 に減 少 した 。し かし,ツル マメ2系統
「GD50107ー3」と「Hidaka4」 のルテイン含量の減少幅は,ダイズ2品種「KeszthelyiA.S.」
と 「Toyokomachi」よ り有 意に 小 さく ,ツ ルマ メ2系統 の完 熟 種子 のル テイン含量 はダイズ2 品 種のルテイン含量の4倍以上 となった。
3.a−Toc含量お よびルテイン含量の頻度分布
F:種子およぴF2個体別のF3種子におけるa−Toc含量およびルテイン含量の頻度分布は,それ ぞれ,広い範囲に連続分布し,多くのF:種子およびF:個体(Fヨ種子)のa−Toc含量は両親の中 間値 より 低い 「B09092」の含量に近い値を示した。少 数のF:種子およびF2個体が 高a―Toc品 種「KeszthelyiA.S.」の含量並みかそれ以上のa−Toc含量を示した。ルテイン含量はa―Toc含 量の分布と同様に,両親の中間値より低い母 親の「KeszthelyiA.S.」の含量に近い値を示し た。 一方 ,極 少数 のF6種子 およ びF2個 体の ルテイン含量が高ルテイン系統の「B09092」並み かそれ以上の含量を示した。
4.a―Toc含量およびルテイン含量の遺伝分析
Fっ種子およびFユ個体(F3種子)のa―Toc含量および ルテイン含量の広・狭義の遺伝率は高い ことから,高a−Toc含量お よび高ルテイン含量の両形質とも安定して後代に遺伝す ることが示 唆された。F:個体(F3種子 )世代において,a―Toc含量およびルテイン含量の間の 表現型相関 および遺伝相関は,両方と も有意な正の相関となった。Fユ種子とFユ個体(Fヨ種子)のa←Toc含 量 の間 およ びル テイ ン含 量の 間に 有意 な正 の相 関を認めた。また ,F:種子およびFユ個体ほ 種 子) の両 集団 にお いて ,aーToc含量 とル テイ ン含量の間に有意 な正の相関が認められた。
a―Tocお よ び ル テ イ ン を 同 時 に 高 含 量 に 蓄 積 し たF: 種 子 お よ びFユ 個 体 が 出 現 し た 。
5.a―Toc含 量 と ル テ イ ン 含 量 が と も に 高 いF2お よ びBIF2系 統 の 選 抜 ・ 評 価 a一Toc含量およびルテイ ン含量がともに高いF。およ びBiF。を,それぞれ5系統を選抜した。
F:系統(F3種子)のaーToc含量およびルテイン含量と百粒重との間に相関関係は認 められなか っ た。 これ ら選 抜し た系 統は ,157 ‑229粒 の多 数の種子を生産し,開花・結実 においても特 に植物生理的な異常は認め られなかった。これらの系統の一部にツルマメに由来す る硬実性が
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認められたが,戻し交配をくり返すことにより,後代の粒重,吸水性(硬実性)および種皮色 などをダイズ型にすることができると考えられる。
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学位論文審査の要旨 主査
副査 副査
教授 教授 准教授
喜多村 三上 阿部
啓介 哲夫 純
学位論文題名
ぱートコフェロールおよびルテインを高含量に蓄積する 高 機能 性ダイズの育成に関す る遺伝育種学的研究
( 本 論 文 は6章131頁 か ら な る 和 文 論 文 で あ り , 図39, 表13お よ び 要 約 を 含 む ) 本研究では,ダイズ種子中にaートコフェロール(a−Toc)とルテインの両機能性成分を高含量に 蓄積する可能性を明らかにすることを目的としている。高a一Toc含量のダイズ品種「KeszthelyiA, S.」を母親,高ルテイン含量のツルマメ系統「B09092」を父親として交配を行った。まず,高a−Toc 含量およびルテイン含量を少量の種子試料によって迅速かつ定量性良く分析する方法を確立した。
この開発した方法を用いて,登熟期のダイズ種子のトコフェロールおよびルテインの蓄積様式を調 査した。次に,F2種子およびF2個体(Fヨ種子)集団を用い,aーTocおよぴルテインそれぞれの高含 量形質の遺伝分析を行った。また,選抜したaーToc含量およびルテイン含量がともに高いFワ系統を 1回親として戻し交配を行い,aーTocおよびルテイン含量がともに高いBIF2系統を選抜した。これ ら の系 統 を 用い て 栽 培形 質 を 調査 ・ 評 価 した 。 得 られ た 結 果は 以 下 のように 要約さ れる。
1.ダイズ種子および未熟種子におけるa―Tocとルテインの抽出・定量
本研究で開発した方法によって,1粒重が40mg程度の小粒の種子(F2種子等)の一部分(5〜10mg) を削ってa―Toc含量およびルテイン含量を同時に定量することができた。また,開発した方法を用 いることにより,完熟種子より多種類の成分を含むため従来の方法では目標ピークの同定が困難な 未 熟種 子 のa―Toc含 量 お よび ル テ イ ン含 量 を 安定 し て 再現 性 良 く定 量す ること ができた 。 2.登熟期のトコフェロールおよぴルテインの蓄積様式の比較分析
高Q一Toc含量のダイズ品種および普通品種ともビニールハウスおよび温室栽培において開花後 30日から60日の完熟期までの間に,a一Toc含量は徐々に増加した。高a―Toc含量の「KeszthelyiA, S.」では,開花後30日から45日頃まで急激に増加し,その後,穏やかな増加が続いた。「Toyokomachi」 におい てもa一Toc含量は開 花後30日から45日頃まで増加したが,増加の程度は「KeszthelyiA. S.」より緩やかであった。温室ではビニールハウスに比べてa一Toc含量が高含量に経緯した。普通 品種の 「Toyokomachi」の6−Toc含量は,開花後30日から35〜40日までの間に急激に上昇し,そ の後60日まで高含量で推移した。一方,高a−Tocの品種「KeszthelyiA.S.」の6―Toc含量は,開
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花 後35日から45日まで急激に減少し,完熟まで低含量のまま推移した。Y―Toc含量および総卜コ フ ェロール含量は,両品種とも開花後30日‑ 60日まで減少したが,ビニールハウスおよび温室の 両 栽培において,高Q−Toc品種「KeszthelyiA.S.」のY―Toc含量の減少幅は,普通のダイズ品種 「Toyokomachi」より大きかった。また,総トコフェロール含量は,VーToc含量と同じ減少傾向を示 した。
ルテイン含量が高いツルマメ系統「GD50107―3」と「Hidaka4」およびルテイン含量が低いダイ ズ 品種「KeszthelyiA.S.」と「Toyokomachi」とも,ビニールハウスおよび温室の両栽培におい て ,登熟が進むにっれてルテイン含量は徐々に減少した。しかし,ツルマメ2系統のルテイン含量 の 減少幅は,ダイズ2品種より 有意に小さく,ツルマメ2系統の完熟種子のルテイン含量はダイズ 2品種のルテイン含量の4倍以上となった。
3.aーToc含量およぴルテイン含量の頻度分布
Fエ種子およびFユ個体別のFヨ種子におけるa―Toc含量およびルテイン含量の頻度分布は,それぞ れ ,広い範囲に連続分布し,多くのF2種子およびF2個体(Fヨ種子)のa―Toc含量は両親の中間値 よ り 低 い 「B09092」 の 含 量 に 近 い値 を示 した 。少 数のF2種 子 およ びF2個体 が高a―Toc品 種
「KeszthelyiA.S.」の含量並みかそれ以上のa―Toc含量を示した。ルテイン含量はa−Toc含量の 分布と同様に,両親の中間値より低い母親の「KeszthelyiA.S.」の含量に近い値を示した。一方,
極 少数のF2種子およびF2個体のルテイン含量が高ルテイン系統の「B09092」並みかそれ以上の含 量を示した。
4.a−Toc含量およびルテイン含量の遺伝分析
F2種子およびF2個体(Fヨ種子)のa−Toc含量およびルテイン含量の広・狭義の遺伝率は高いこと から,高a―Toc含量および高ルテイン含量の両形質とも安定して後代に遺伝することが示唆された。
F2個体(F3種子)世代において ,a―Toc含量およびルテイン含量の間の表現型相関および遺伝相関 は,両方とも有意な正の相関となった。また,F2種子およびFっ個体(Fヨ種子)の而集団において,
aーToc含量とルテイン含量の間に有意な正の相関が認められた。a―Tocおよびルテインを同時に高 含量に蓄積したF2種子およびF:個体が出現した。
5. a‑Toc含 量 と ル テ イ ン 含 量 が と も に 高 い F2お よ び BIF2系 統 の 選 抜 ・ 評 価 aーToc含量およびルテイン含量がともに高いF2およびBIF2を,それぞれ5系統を選抜した。F2 系統(Fヨ種子)のaーToc含量およびルテイン含量と百粒重との間に相関関係は認められなかった。
こ れら選抜した系統は,157〜229粒の多数の種子を生産し,開花・結実においても特に植物生理 的な異常は認められなかった。
評価:
本研究は、a―Toc含量およびルテイン含量を少量の種子試料によって迅速かっ定量性良く分析す る方法を開発した。また,高a―Tocダイズ品種および高ルテインツルマメ系統との交配後代種子を 用いて,aーToc含量およびルテイン含量に関する遺伝的特性を明らかにした。さらに,a−Toc含 量とルテイン含量がともに高いFっおよびBIF2を数個体選抜し,成分含量と粒重に関係がなぃこと や生育等に生理的な異常を示さないことを示した。a―Tocおよびルテインをともに高含量に蓄積 する高機能性ダイズの育成が可能であることを初めて明らかにした。これらの成果はダイズの成
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分 改変 品種 の実用 化に 重要 な道 筋を 立て るも ので あり 、学 術的 に高 く評価 でき る。
よって,審査員一同は,王紹東氏が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有する ものと認めた。
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