東北薬科大学
審査学位論文(博士)
氏名(本籍) コンノ タカシ
今野 崇(宮城県)
学位の種類 博士(薬学)
学位記番号 甲第136号
学位授与の日付 平成26年3月18日
学位授与の要件 学位規則第4条1項該当
学位論文題名 Dermorphin N 末端テトラペプチド誘導体 TAPAの 脊髄鎮痛作用発現機構の解析
論文審査委員
主査 特任教授 櫻 田 忍 副査 教 授 永 田 清 副査 教 授 顧 建 国
Dermorphin N 末端テトラペプチド誘導体 TAPA の 脊髄鎮痛作用発現機構の解析
東北薬科大学大学院薬学研究科 薬学専攻博士課程後期課程
機能形態学教室
今野 崇
目次
頁
緒言 1
実験方法 9
結果 TAPA の脊髄鎮痛作用 11
TAPA の脊髄鎮痛作用における各種オピオイド受容体の関与 12
TAPA の脊髄鎮痛作用におけるμ受容体サブタイプの関与 14
CXBK マウスにおける TAPA の脊髄鎮痛作用 18
TAPA の脊髄鎮痛作用における各種内因性オピオイドペプチドの関与 20
P r o d y n o r p h i n 欠損マウスにおける TA PA の脊髄鎮痛作用 2 2
考 察 2 4
総括 3 0 謝 辞 3 1
文 献 3 2
1 緒言
オピオイドとは、臨床において麻薬性鎮痛薬として使用されるモルヒネ、コデイン等の 植物アルカロイドとその誘導体、ならびに生体内に存在するモルヒネ様作用を有する内因 性のオピオイドペプチドを含む総称である。オピオイド受容体は、これらのオピオイドを リガンドとして結合する受容体であると定義される。このオピオイド受容体には、3 種類 のサブタイプ(μ、δ、κ)が確認されており 1)、これらのサブタイプの名称は、各受容 体に結合する代表的なオピオイドまたは発現組織(μ: morphine, δ: vas deferens, κ:
ketocyclazocine)に由来する。これらのオピオイド受容体は7回膜貫通型G蛋白質共役型
受容体であり、受容体がリガンドと結合することによってカリウムチャネルの開口、アデ ニル酸シクラーゼの抑制、カルシウムチャネルの抑制を介して神経細胞の興奮性を抑制し、
それぞれの生理活性を発現すると考えられている。これらの3種類のオピオイド受容体サ ブタイプ間の共通なアミノ酸配列は全体の約60%であり、ポリペプチド鎖のアミノ酸配列 相同性は膜貫通領域で約75%、細胞内ループ領域でおよそ90%の一致を認めているが、細 胞外領域におけるこれら3種類の受容体間のアミノ酸配列の相同性は40%弱と低く、この 細胞外領域のアミノ酸配列の異同が各種受容体サブタイプにおける薬物選択性において重 要であると推定されている2),3)。
これら各種オピオイド受容体は、それぞれ特異的な薬理作用を有している(Table 1)。 いずれのオピオイド受容体も全て鎮痛作用を発現するが、とくにμオピオイド受容体は、
δおよびκオピオイド受容体と比べて発現する鎮痛作用が最も強力である。それゆえ、臨 床で使用されている麻薬性鎮痛薬の全てがμ受容体作動薬でありμ受容体を介してその鎮 痛作用を発現する。μオピオイド受容体は中枢神経系に広く分布しており、大脳新皮質の
laminae Ⅰ、ⅣおよびⅥ、錐体外路系の線条体および腹側淡蒼球、大脳辺縁系の側坐核、
間脳の視床外側核、視床正中核および内側手綱核、中脳の脚間核、ならびに脊髄などで強 い発現が認められている4)。また、そのメッセンジャーRNAは、中枢神経系に広く分布し ており、扁桃体、視床、海馬前支脚、上丘、下丘、脚間核、青斑核、孤束核、中脳水道周 囲灰白質、延髄網様体ならびに脊髄において強い発現が認められている 5)。モルヒネやフ ェンタニルなどの麻薬性鎮痛薬は、脊髄後角のμオピオイド受容体に作用して、一次知覚 神経からの疼痛伝達を直接抑制し、また中脳水道周囲灰白質および延髄網様体のμオピオ イド受容体に作用して、下行性抑制系神経を賦活化させることにより鎮痛作用を発現する
6)。またモルヒネなどが引き起こす依存などの副作用は、その鎮痛作用と同様にμオピオ イド受容体を介して発現し7)、鎮痛作用と副作用の分離は不可能と考えられている。
2
Table 1 Specific pharmacological reaction of various opioid receptor subtypes μ 受容体 鎮痛、プロラクチン遊離、
アセチルコリン代謝回転減少、
カタレプシー、体温低下、呼吸抑制、徐脈、
モルモット回腸収縮抑制、
身体的依存の形成、
ドパミン代謝回転上昇、
成長ホルモン遊離、多幸感、精神依存 δ 受容体 鎮痛、
ドパミン代謝回転上昇、
成長ホルモン遊離
マウス輸精管の収縮抑制、
身体的依存の形成 κ 受容体 鎮痛、鎮静、
モルモット回腸収縮抑制、
嫌悪感、μ 受容体作動薬の精神依存に対する抑制
生化学的実験結果からμオピオイド受容体は、μ1およびμ2オピオイド受容体に細分さ
れる7)-9)。μ1オピオイド受容体がオピオイドアルカロイド(dihydromorphine)ならびに
オピオイドペプチド([D-Ala2,D-Leu5]-enkephalin)の双方に高い親和性を示すのに対し、
μ2オピオイド受容体はオピオイドアルカロイドに対してより高い親和性を示すといった 特徴的な違いを有する。またμ1およびμ2オピオイド受容体は、μ1オピオイド受容体の 非可逆的拮抗薬であるnaloxonazineにより分類することが可能であり、その皮下投与(35 mg/kg)10)ならびに脊髄クモ膜下腔内投与(5.5 nmol)11)を用い、μ1オピオイド受容体お よびμ2オピオイド受容体に特徴的な薬理作用が明らかにされている7),12)。μ1オピオイド 受容体が鎮痛作用、acetylcholineやprolactinの遊離、食欲抑制、体温下降などに関与し ているのに対し、μ2オピオイド受容体は鎮痛作用の他に呼吸抑制、腸管輸送抑制、精神 依存、成長ホルモンの分泌などに関与していることが報告されている。さらに、オートラ ジオグラフィー法により、脳および脊髄のいずれにもμ1およびμ2オピオイド受容体が共 に存在することが確認されている13) が、Pasternakら14)は、μオピオイド受容体作動薬 の上位中枢における鎮痛作用にはμ1オピオイド受容体が、脊髄における鎮痛作用にはμ2
オピオイド受容体が比較的優位に関与していることを報告している。典型的μオピオイド 受容体作動薬である [D-Ala2, NMePhe4, Gly-ol5]enkephalin(DAMGO)の脳室内投与に よる鎮痛作用は naloxonazine(35 mg/kg)皮下投与によって抑制されるのに対し、脊髄 クモ膜下腔内投与による鎮痛作用はnaloxonazineの皮下投与(35 mg/kg)ならびに脊髄
3
クモ膜下腔内投与(5.5 nmol)により抑制されないことが報告されている15)。一方、内因 性μオピオイドペプチドである endomorphin-2(Tyr-Pro-Phe-Phe-NH2)の鎮痛作用は、
上 位 中 枢 お よ び 脊 髄 の い ず れ に お い て も naloxonazine 感 受 性 で あ る の に 対 し 、 endomorphin-1(Tyr-Pro-Trp-Phe-NH2)の鎮痛作用はいずれも naloxonazine 非感受性 で あ る こ と か ら 、endomorphin-1 は 選 択 的 μ2 オ ピ オ イ ド 受 容 体 作 動 薬 で あ り 、 endomorphin-2はμ1オピオイド受容体作動薬であることが明らかにされている16),17)。さ らに、メラニン細胞刺激ホルモン放出抑制ホルモン 18)ファミリーに属する Tyr-MIF-1
(Tyr-Pro-Leu-Gly-NH2)19),20)の類似物質である Tyr-W-MIF-1(Tyr-Pro-Trp-Gly-NH2) は、μオピオイド受容体に対して親和性を示すことが報告されており21),22)、その鎮痛作用 はnaloxonazine非感受性であることから、Tyr-W-MIF-1はμ2オピオイド受容体作動薬で あることが示唆されている23),24)。
近年当研究室では、D-体アミノ酸を含むオピオイドペプチドの構造活性相関を検討する中で、
endomorphin-1およびendomorphin-2の2位のProをD-Proに置換したD-Pro2-endomorphin-1 お よ び D-Pro2-endomorphin-2 を 開 発 し た 。 こ の D-Pro2-endomorphin-1 お よ び
D-Pro2-endomorphin-2は、脊髄クモ膜下腔内投与によって有意な鎮痛作用ならびに痛覚過
敏反応を示さなかったが、それぞれendomorphin-1およびendomorphin-2の鎮痛作用を特 異的に拮抗した 17)。Endomorphin-2 は選択的μ1 オピオイド受容体作動薬であり、
endomorphin-1 は 選 択 的 μ2 オ ピ オ イ ド 受 容 体 作 動 薬 で あ る こ と か ら 16),17)、 D-Pro2-endomorphin-1 および D-Pro2-endomorphin-2 はそれぞれ、選択的μ2およびμ1
オ ピ オ イ ド 受 容 体 拮 抗 薬 で あ る こ と が 明 ら か と な っ て い る 17),23)。 ま た 同 様 に 、 Tyr-W-MIF-1の2位のProをD-Proに置換したD-Pro2-Tyr-W-MIF-1が、Tyr-W-MIF-1 の鎮痛作用に対して特異的に拮抗することから、D-Pro2-Tyr-W-MIF-1は選択的μ2オピオ イド受容体拮抗薬であることが明らかとなっている。これら新規選択的μ1オピオイド受 容体拮抗薬および選択的μ2オピオイド受容体拮抗薬の開発により、μ1オピオイド受容体 およびμ2オピオイド受容体を介した生理反応のより詳細な解析が、現在では可能となっ ている。
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Table 2 Amino acid sequences of endogenous opioid peptides
Precursors
endogenous μ opioid peptides
proopiomelanocortin β-endorphin Tyr-Gly-Gly-Phe-Met-Thr-Ser-Glu-Lys-Ser-Gln-Th r-Pro-Leu-Val-Thr-Leu-Phe-Lys-Asn-Ala-Ile-Ile-Ly s-Asn-Ala-Tyr-Lys-Lys-Gly-Glu-OH
γ-endorphin Tyr-Gly-Gly-Phe-Met-Thr-Ser-Glu-Lys-Ser-Gln-Th r-Pro-Leu-Val-Thr-Leu-OH
α-endorphin Tyr-Gly-Gly-Phe-Met-Thr-Ser-Glu-Lys-Ser-Gln-Th r-Pro-Leu-Val-Thr-OH
(undiscovered) endomorphin-1 Tyr-Pro-Trp-Phe-NH2 endomorphin-2 Tyr-Pro-Phe-Phe-NH2
Prodermorphin dermorphin Tyr-D-Ala-Phe-Gly-Tyr-Pro-Ser-NH2 endogenous δ opioid peptides
Proenkephalin [Met5]enkephalin Tyr-Gly-Gly-Phe-Met-OH [Leu5]enkephalin Tyr-Gly-Gly-Phe-Leu-OH
[Met5]enkephalin-Arg-Phe Tyr-Gly-Gly-Phe-Met-Arg-Phe-OH [Met5]enkephalin-Arg-Gly-Leu Tyr-Gly-Gly-Phe-Met-Arg-Gly-Leu-OH endogenous κ opioid peptides
Prodynorphin α-neo-endorphin Tyr-Gly-Gly-Phe-Leu-Arg-Lys-Tyr-Pro-Lys-OH β-neo-endorphin Tyr-Gly-Gly-Phe-Leu-Arg-Lys-Tyr-Pro-OH dynorphin A(1-17) Tyr-Gly-Gly-Phe-Leu-Arg-Arg-Ile-Arg-Pro-Lys-Le
u-Lys-Trp-Asp-Asn-Gln-OH
dynorphin A(1-8) Tyr-Gly-Gly-Phe-Leu-Arg-Arg-Ile-OH dynorphin B(1-13)
(rimorphin)
Tyr-Gly-Gly-Phe-Leu-Arg-Arg-Gln-Phe-Lys-Val-V al-Thr-OH
dynorphin B(1-29) (Leumorphin)
Tyr-Gly-Gly-Phe-Leu-Arg-Arg-Gln-Phe-Lys-Val-V al-Thr-Arg-Ser-Gln-Glu-Asp-Pro-Asn-Ala-Tyr-Tyr- Glu-Glu-Leu-Phe-Asp-Val-OH
5
一方、生体内には疼痛制御物質として内因性オピオイドペプチドが存在する。これらは その前駆物質により3つに大別される。Proenkephalinを前駆体とする内因性δオピオイ ドペプチドである[Leu5]enkephalinならびに[Met5]enkephalin25),26)、prodynorphinを前 駆体とする内因性κオピオイドペプチドである dynorphin A、dynorphin B ならびにα -neo-endorphinなど、proopiomelanocortinを前駆体とする内因性μオピオイドペプチド であるβ-endorphinなどである。これらの古典的な内因性オピオイドペプチドは、いずれ もそのN末端に共通なアミノ酸配列であるTyr-Gly-Gly-Pheを含んでいる(Table 2)。し かし、近年Zadinaら27)がウシ脳から単離・同定した内因性μオピオイドペプチドである endomorphin-1ならびにendomorphin-2のN末端には、この共通なアミノ酸配列が存在 しない。また、endomorphin-1ならびにendomorphin-2は、未だその前駆物質が発見さ れていない。
一方、dermorphin(Tyr-D-Ala-Phe-Gly-Tyr-Pro-Ser-NH2)は、南アメリカ産のカエル amphibian genus phyllomedusaの皮膚より単離されたヘプタペプチドである28),29)。この
dermorphin ならびにその誘導体は、末梢投与によっても鎮痛作用を発現することが明ら
かとなっており 30)、モルヒネと比べてその活性が高いことが明らかとなっている 31),32)。
Dermorphinはそのアミノ酸配列において、古典的な内因性オピオイドペプチドのN末端
に共通なアミノ酸配列であるTyr-Gly-Gly-Pheを含んでいない他、内因性μオピオイドペ プチドであるendomorphin-1ならびにendomorphin-2のN末端アミノ酸配列とも異なっ たアミノ酸配列を有している(Table 2)。さらに、自然界では細菌類以外に存在しないと されていた D-体のアミノ酸である D-Ala をそのアミノ酸配列中に含有していることは非 常に興味深い。遺伝子工学の手法を用いた研究により、dermorphin の前駆物質の構造が 明らかにされている33)。dermorphinの2位のアミノ酸だけがD-体のD-Alaで、その他
は全て L-体のアミノ酸で構成されているが、その前駆物質である prodermorphin の
dermorphin 相 当 部 分 は い ず れ も L-体 の ア ミ ノ 酸 の み で 構 成 さ れ て い る 。 こ の
prodermorphinからdermorphinへの産生過程において、翻訳後の酵素的ラセミ化によっ
てL-AlaがD-Alaに変換されることが明らかとなっている34),35)。
Dermorphin はマウス全脳を用いたオピオイド受容体結合実験において、モルヒネより
高いμオピオイド受容体親和性を有することが報告されている36)。また、dermorphinの マウス脊髄におけるμオピオイド受容体を介したG蛋白活性作用は、モルヒネと比べて高 いことが報告されている37)。μオピオイド受容体に対するこの高い親和性と選択性をもと に、dermorphin は脳室内投与、皮下投与ならびに静脈内投与などのあらゆる投与経路に おいて、強力で持続的な鎮痛作用を呈すると考えられている28),38),39)。事実、dermorphin の脳室内投与による鎮痛作用はモルヒネの200倍強力であり40)、その持続時間が長いこと が報告されている41)。また、他のペプチド性鎮痛薬とは異なり、dermorphinは皮下なら びに静脈内等の末梢投与によっても強力な鎮痛効果を発現する30)。Dermorphinの血液脳 関門(Blood-brain barrier : BBB)透過率は、モルヒネと比べて明らかに低いにもかかわ
6
らず、dermorphinは皮下投与においてモルヒネの約4倍もの鎮痛効果を示す41)。
Dermorphin の生体内における代謝は、ラット脳を用いた実験から、以下のような過程
が考えられている 16)。まず、dermorphinの6位および7位間のPro-Ser結合がpost-proline cleaving enzyme42)によって分解され、N末端ヘキサペプチド(H-Tyr-D-Ala-Phe-Gly-Tyr-Pro-OH)およびC末端側の Ser-NH2を生ずる。さらに4位および5位間のGly-Tyr結合がcarboxypeptidase43),44)によっ て分解を受けN末端テトラペプチド(H-Tyr-D-Ala-Phe-Gly-OH)およびTyr-Proを生成 する。この産生されたTyr-Proはそのアミノ酸結合をprolidase45)によって分解されるもの と考えられる。しかしながらScaliaら46)は、dermorphinのラット脳を用いた代謝実験に おいて、dermorphin N末端ヘキサペプチドの存在が認められなかったことを報告してい る。それゆえdermorphinは、脳内でGly-Tyr結合の分解によって、N末端テトラペプチ ドであるH-Tyr-D-Ala-Phe-Gly-OH(dermorphin[1-4]-OH)とH-Tyr-Pro-Ser-NH2へ代 謝されると考えられている。また末梢投与されたdermorphinは、血液、肝臓、脳、脊髄 に存在する代謝酵素によって、このN末端テトラペプチドであるdermorphin[1-4]-OHに 変換されることが明らかとなっている47)。しかしながら、その代謝速度は他の内因性オピ オイドペプチドの場合と比べて30倍以上も遅い48)。Dermorphin代謝物のうちN末端ヘ キ サ ペ プ チ ド で あ る dermorphin[1-6]お よ び N 末 端 ペ ン タ ペ プ チ ド で あ る
dermorphin[1-5]は、dermorphin のおよそ半分の内活性とμ受容体親和性を有するが、
dermorphin[1-4]はさらに 20 分の 1 程度にまで内活性および親和性が低下する 49)。
Dermorphinの主要代謝産物であるdermorphin[1-4]-OHもμオピオイド受容体に対して わずかに活性を示すに過ぎず50)、N末端トリペプチドであるdermorphin[1-3]に至っては、
μオピオイド受容体に対して全く親和性を示さない。したがって、dermorphin のオピオ イド活性に必要な最小活性構造は N 末端テトラペプチドであると考えられている 51)。ま た、dermorphinの構造活性相関に関する研究の結果、dermorphinの2位のD-Alaは酵 素抵抗性を有しており51)、dermorphinの2位のD-AlaをL-Alaに置き換えることによっ てその活性のほとんどが消失する 50),51),52)ことから、dermorphin の 2 位の D-Ala は
dermorphin のμ受容体活性において非常に重要な要素であることが明らかとなっている。
したがって、dermorphin のオピオイド活性が強力かつ持続的であるのは、その代謝産物 の内活性に よるものではなく、dermorphin の酵素抵抗性 による代謝遅延ならび に
dermorphinそのものの活性によるところが大きいと考えられる51)。
一方、Takagiらはウシ視床下部より最短鎖ジペプチドであるkyotorphin(Tyr-Arg)を
発見した53)-55)。このkyotorphinはマウス大槽内投与において、[Met5]enkephalinの約4
倍の鎮痛作用を呈し、その作用持続時間も[Met5]enkephalinと比較して長いことが報告さ れている54)。しかしながら、kyotorophinはモルモット摘出回腸の収縮に対してほとんど 抑制効果を示さず55)、脳内オピオイド受容体にほとんど結合しないことから、その作用機
序はenkephalinの遊離あるいはenkephalin分解酵素阻害作用である可能性が考えられて
いる 56)-58)。注目すべきは、この kyotorphin の 2 位の L-Arg を D-Arg で置換した
7
[D-Arg2]kyotorphin ではその活性が著しく増大することである 54),59)。Sakurada らは、
dermorphinの2位のD-AlaをD-Argに置換することに着目し、 [D-Arg2]dermorphinを 合成した。その結果、dermorphinの2位のD-AlaをD-Argに置き換えることによって、
鎮痛に関連するμ受容体の選択性が上昇する59)ばかりではなく、血液脳関門透過率も上昇 する60)ことが明らかとなった。実際に[D-Arg2]dermorphin の脳室内投与における鎮痛効 果は、dermorphinの場合と比べて4分の1に減弱する40)が、[D-Arg2]dermorphin の皮 下 投 与 で は 、dermorphin と 同 程 度 の 強 力 な 鎮 痛 効 果 を 発 現 す る 60)。 [D-Arg2]dermorphin[1-4]-OHは、[D-Arg2]dermorphinの主要かつ強力な活性代謝物であ り 16)、非常に強力かつ持続的に鎮痛効果を発現することが報告されている 60),61)。また、
dermorphin[1-4]の鎮痛効果は dermorphin の 4 分の 1 である 51)にもかかわらず、
[D-Arg2]dermorphin[1-4]は、[D-Arg2]dermorphinと比べて2.2倍の鎮痛効果を有してい る40)。[D-Arg2]dermorphin[1-4]および[D-Arg2]dermorphin[1-4]-OHは、酵素代謝的に非 常に安定である16),62)ことから、これらの誘導体が強力で持続的な鎮痛効果を呈するのは、
酵素による代謝に対して高い抵抗力を有することに基づいている可能性がある。
D-Arg2を含む数多くのdermorphin N末端テトラペプチド誘導体が新規鎮痛薬として見出され ているが、その中でも[D-Arg2,β-Ala4]dermorphin[1-4]-OH(H-Tyr-D-Arg-Phe-β-Ala-OH :
TAPA)は、モルヒネと比べて脳室内投与、脊髄腔内投与および皮下投与においてそれぞれ2000
倍、1100倍、および9.1倍という強力な鎮痛作用を発現する15),63),64)。TAPAはμオピオイド受 容体に対して高い親和性と選択性を有しており64)、その鎮痛作用はμオピオイド受容体を 介して発現していることがすでに報告されている63),64)。TAPAは、脳内酵素代謝に対して きわめて安定であり62)、それゆえモルヒネと比較して強力かつ持続時間の長い鎮痛作用を 発現すると考えられる65),66)。実際に、TAPAの持つTyr1-D-Arg2-結合がTyr1-D-Ala2-結合 よりも aminopeptidase M に対して抵抗性であること 62)、さらに Phe3-β-Ala4結合が Phe3-Gly4結合よりもcarboxypeptidase Y による酵素分解に対して安定であること62),65) が報告されている。さらに、Tyr-D-Arg-Phe-Xの構造活性相関を検討した結果から、その 4位にβ-Alaを置換したTAPAが皮下投与において最も強力な鎮痛作用を示すことが明ら かとなっている67)。
[D-Arg2]を含有するdermorphin テトラペプチド誘導体は、TAPA の他にTyr-D-Arg-Phe-Sar-OH
(TAPS)、Nα-amidino-Tyr-D-Arg-Phe-β-Ala-OH(amidino-TAPA)、dimethyl-Tyr-D-Arg-Phe-Lys-NH2
([Dmt1]DALDA)等がこれまでに合成されているが、これらの薬物は従来のμオピオイド受容体作動薬
とは異なった鎮痛特性を呈する。 [Dmt1]DALDA、TAPSおよびamidino-TAPAは、κオピオ イド受容体に対してほとんど親和性がないにもかかわらず、その脊髄鎮痛作用はκオピオ イド受容体拮抗薬であるnor-binaltorphimineによって減弱されることが報告されている
68)-72)。 こ の 現 象 は 、 内 因 性 μ1 オ ピ オ イ ド ペ プ チ ド で あ る endomorphin-2
(Tyr-Pro-Phe-Phe-NH2)の鎮痛作用においても認められている。Sakurada ら 73)は、
endomorphin-2 の鎮痛作用の一部がμオピオイド受容体を直接刺激することによって内
8
因性κオピオイドペプチドである dynorphin A の遊離を引き起こし、その遊離した
dynorphin Aがκオピオイド受容体を刺激することによって鎮痛作用を発現することを明
らかにしている。また、endomorphin-2と同様に、上記[D-Arg2]含有dermorphin N末端 テトラペプチド誘導体もまた、脊髄μオピオイド受容体を介した内因性κオピオイドペプ チド遊離による鎮痛作用発現機構を持つことが報告されている。興味深いことに、遊離さ れる内因性オピオイドペプチド は作動薬によって異なっており、[Dmt1]DALDA は dynorphin Aの遊離71),73)に、TAPSはdynorphin Bの遊離68)に関与していることが明ら かにされており、さらにamidino-TAPAは内因性κオピオイドペプチドであるdynorphin
A、dynorphin Bおよびα-neo-endorphinの遊離に関与することがすでに明らかとなって
いる69)。TAPAはこれら[D-Arg2]含有dermorphinテトラペプチド誘導体と構造的に類似 しており、同様の脊髄鎮痛作用発現メカニズムを持つ可能性が高い。そこで本研究では、
TAPAの脊髄鎮痛作用発現機構を、関与するμオピオイド受容体サブタイプおよび内因性 オピオイドペプチドを含め行動薬理学的に検討した。
なお本論文の内容は以下の雑誌に公表した。
Involvement of spinal release of α-neo-endorphin on the antinociceptive effect of TAPA. Peptides, 50, 139(2013)
9 実験方法 使用動物
実験には、ddY系雄性マウス(Japan SLC, Hamamatsu, Japan)、C57BL/6ByJ雄性マウ ス(The Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME)、CXBK雄性マウス(The Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME)、prodynorphin deficient雄性マウス(B6.129S4-Pdyntm1Ute ; The Jackson Laboratory)およびそのwild-type雄性マウス(The Jackson Laboratory)の、いずれも体 重22-25 g の個体を使用した。
実験前24時間は室温、明暗12時間サイクルの環境下で、水と餌が自由に摂取できる飼 育ゲージ内において飼育した。マウスの個体はすべて、実験に対して1回限りの使用とし た。実験に使用した動物の取り扱いは、東北薬科大学動物実験指針に沿って行なった。
鎮痛作用測定
TAPAの脊髄鎮痛作用は、マウス尾部に照射熱刺激を与える装置(Ugo Basile, Italy)
を用い、その照射開始から回避反応を起こすまでの時間を疼痛閾値とする tail-flick test によって測定した74)。実験に供するマウスは実験日当日、実験室のプラスチックゲージ内 に 60 分間放置し、その後に本実験を開始した。熱刺激に対する感度は、あらかじめマウ スがその熱刺激に対して 2.5-3.5 秒で反応するように調節した。TAPA の脊髄鎮痛作用の 評価は、tail-flick 反応の阻害を示す最大有効反応率である percent maximum possible effect(%MPE)で表し、[(T1-T0)/(T2-T0)]×100の式により算出した。なお、T0 値および T1値にはそれぞれ同一マウスにおける投薬前および投薬後の反応時間(sec)を、T2値に
はcut-off time(10 sec)を入力した。また、マウスの熱刺激部位における損傷を最小限に
とどめるために、熱刺激時間を最長で10秒までとした。実験は一群を10匹として行ない、
算出された%MPE値は平均値(Mean)および標準誤差(Standard Error of the Mean : S.E.M.)で表した。用量反応曲線および95%信頼限界に基づく50%有効用量(50% effective dose : ED50)は、コンピュータ解析プログラムである GraphPad Prism 4(GraphPad Software, Inc., San Diego, CA)を用いて算出した。
薬物投与
薬物投与方法は、マウス脊髄クモ膜下腔内(i.t.)に対するHylden and Wilcox法に準じ て行なった75)。シリンジは50-μl Hamilton microsyringeを使用し、これに注射針29G stainless-steel needleを接続して使用した。薬物は人工脳脊髄液(artificial cerebrospinal fluid : aCSF)で希釈し、薬物投与量は5μl/mouseとした。aCSFは126.6mM NaCl、2.5mM KCl、2.0mM MgCl2および1.3mM CaCl2を含有している。
使用薬物
使用薬物は、dermorphin 誘導体である TAPA、μオピオイド受容体拮抗薬であるβ
10
-funaltrexamine(β-FNA; Tocris Cookson Ltd., Bristol, UK)、κオピオイド受容体拮抗 薬であるnor-binaltorphimine(nor-BNI; Tocris Cookson Ltd.)、δオピオイド受容体拮 抗薬であるnaltrindole(NTI; Sigma-Aldrich Chemical Co., St. Louis, MO)、選択的μ1
オピオイド受容体拮抗薬である naloxonazine(NLZ; Sigma-Aldrich Chemical Co.)ならびに Tyr-D-Pro-Phe-Phe-NH2(D-Pro2-endomorphin-2)、選択的μ2オピオイド受容体拮抗薬である Tyr-D-Pro-Trp-Phe-NH2 ( D-Pro2-endomorphin-1 ) な ら び に Tyr-D-Pro-Trp-Gly-NH2
(D-Pro2-Tyr-W-MIF-1)、各種内因性オピオイドペプチドの抗体であるrabbit antiserum against dynorphin A(Phoenix Pharmaceutical Inc., St. Joseph, MO)、rabbit antiserum against dynorphin B(Bachem, San Carlos, CA)、rabbit antiserum against α-neo-endorphin(Bachem)、 rabbit antiserum against [Leu5]enkephalin(Millipore Co., Billerica, MA)、rabbit antiserum against [Met5]enkephalin(Millipore Co.)およびnormal rabbit serum(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を用いた。
統計学的検定
統計学的検定は、群間比較においてone-way analysis of variance(ANOVA)、あるい はtwo-way ANOVAを用いて行なった後、Bonferroni’s testで後検定した。危険率5%未 満を以って有意差ありとした。用量反応曲線はGraphPad Prism 4 を用いて算出し、F-test を用いて比較した。
11 結果 TAPAの脊髄鎮痛作用
TAPAの脊髄鎮痛作用は、ddY系雄性マウスを用いたtail-flick testによって測定した。
TAPA各種希釈濃度(0.265、0.375、0.530および0.750 pmol)ならびにaCSFそれぞれ において、各群のマウスに対しi.t.投与後5、10、15、30、45、60および90分における 脊髄鎮痛作用を測定した(Fig. 1)。TAPA の脊髄鎮痛作用は、その i.t.投与によって用量 依存的に発現が認められた。このTAPAの脊髄鎮痛作用は、急速に発現が認められ、投与 10分後に最大作用ピークに到達し、その後90分後までの間に緩徐に減衰した。TAPAの 脊髄鎮痛作用における ED50値は、投与 10 分後において 0.3360(0.2823-0.3998)pmol であり、TAPA の鎮痛効果は、ED50値が 3.866(3.361-4.448)pmol である DAMGO69) の11.5倍であった。
Fig.1 Antinociceptive effect of TAPA in the ddY mouse spinal cord. Groups of mice were injected i.t. with various doses of TAPA (0.265-0.75 pmol) or aCSF, and the tail-flick inhibition induced by TAPA was measured for 90 min. The antinociceptive effect was represented as the mean ± S.E.M. for at least 10 mice.
The statistical significance of the differences between the groups was assessed with a two-way ANOVA followed by Bonferroni’s test. The F value of the two-way ANOVA was F[4,368]=107.0 (P<0.001). *P<0.05,
**P<0.01, ***P<0.001 vs. aCSF-treated group.
0 5 10 15 30 45 60 90
-20 0 20 40 60 80 100
0.750 pmol aCSF
0.530 pmol 0.375 pmol 0.265 pmol TAPA (i.t.)
***
***
***
***
***
*
***
***
***
***
**
***
***
***
***
*
***
*
Time after the injection (min)
Antinociception (% MPE)
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TAPAの脊髄鎮痛作用における各種オピオイド受容体の関与
TAPA の脊髄鎮痛作用における各種オピオイド受容体の関与を確認する目的で、μ、δ およびκオピオイド受容体に対する各種選択的拮抗薬を用いて検討した(Fig. 2)。μオピ オイド受容体拮抗薬であるβ-funaltrexamine(β-FNA)は、μ1およびμ2オピオイド受 容体のいずれとも非可逆的に拮抗し76)、脳室内および脊髄クモ膜下腔内のいずれにおいて もその鎮痛作用に拮抗することが明らかとなっている。また、δオピオイド受容体拮抗薬 であるNTIはδオピオイド受容体に対して可逆的に、κ受容体拮抗薬であるnor-BNIは κオピオイド受容体に対して非可逆的に拮抗する。各群に分けられたマウスは、β-FNA
(0.5-4 nmol)およびnor-BNI(1-4 nmol)を前処置する場合は、これらの拮抗薬のi.t.
投与24時間後に、NTIを前処置する場合は、NTIのi.t.投与5分後に、TAPA 0.75 pmol をi.t.投与し、TAPAの脊髄鎮痛作用は、そのi.t.投与10分後に評価した。TAPAの脊髄鎮 痛作用は、μオピオイド受容体拮抗薬であるβ-FNA およびκオピオイド受容体拮抗薬で
あるnor-BNIの前処置によって、いずれも用量依存的かつ有意に抑制された(Fig. 2)。と
くに、β-FNA前処置によってTAPAの脊髄鎮痛作用はほぼ消失した。一方、TAPAの脊 髄鎮痛作用は、naltrindole(NTI)の前処置による影響が認められなかった。
13
Fig.2 Effects of opioid receptor antagonists on the antinociception induced by TAPA in the ddY mouse spinal cord. Groups of mice pretreated i.t. with aCSF, β-funaltrexamine (β-FNA : 0.5-4 nmol) or nor-binaltorphimine (nor-BNI : 1-4 nmol) 24 h before, or pretreated i.t. with aCSF or naltrindole (NTI : 0.033 nmol) 5 min before, were treated i.t. with TAPA (0.75 pmol), and the tail-flick inhibition induced by TAPA was measured at 10 min after the treatment. The antinociceptive effect was represented as the mean ± S.E.M. for at least 10 mice. The statistical significance of the differences between the groups was assessed with a one-way ANOVA followed by Bonferroni’s test. The F value of the one-way ANOVA was F[9,104]=16.94 (P<0.001). **P<0.01, ***P<0.001 vs. the corresponding aCSF-pretreated group.
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TAPAの脊髄鎮痛作用におけるμ受容体サブタイプの関与
TAPA の脊髄鎮痛作用におけるμオピオイド受容体サブタイプの関与を確認する目的で、
μ1オピオイド受容体およびμ2オピオイド受容体に対する選択的拮抗薬を用いて検討した。
各群のマウスに対して、選択的μ1オピオイド受容体拮抗薬であるNLZ(1.4-5.5 nmol)
あるいはaCSFのi.t.前処置24時間後にTAPA 0.75 pmolをi.t.投与し、TAPAの脊髄鎮痛 作用はその投与 10 分後に評価した。また選択的μ1 オピオイド受容体拮抗薬である D-Pro2-endomorphin-2(25-200 pmol)あるいは選択的μ2オピオイド受容体拮抗薬であ るD-Pro2-endomorphin-1(0.01-0.25 pmol)ならびにD-Pro2-Tyr-W-MIF-1(25-1200pmol)
は、TAPA 0.75 pmolとi.t.同時投与し、TAPAの脊髄鎮痛作用はその投与10分後に評価 した。TAPAの脊髄鎮痛作用は、選択的μ1オピオイド受容体拮抗薬であるNLZならびに D-Pro2-endomorphin-2 によって用量依存的かつ有意に抑制された(Fig. 3A および Fig.
3B)。一方、選択的μ2オピオイド受容体拮抗薬である D-Pro2-endomorphin-1 ならびに D-Pro2-Tyr-W-MIF-1は、endomolphin-1の鎮痛作用を減弱させたいずれの用量に対して も、TAPAの脊髄鎮痛作用に対して影響が認められなかった(Fig. 3CおよびFig. 3D)。
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16
17
Fig.3 Effects of μ 1-opioid receptor antagonists naloxonazine (A) and D-Pro2-endomorphin-2 (B) andμ2-opioid receptor antagonists D-Pro2-endomorphin-1 (C) and D-Pro2-Tyr-W-MIF-1 (D) on the antinociception induced by TAPA in the ddY mouse spinal cord. Groups of mice were pretreated i.t. with aCSF or naloxonazine (1.4-5.5 nmol) 24 h before the i.t. treatment with TAPA (0.75 pmol), or co-administered i.t. TAPA (0.75 pmol) with/without D-Pro2-endomorphin-2 (25-200 pmol), D-Pro2-endomorphin-1 (0.01-0.25 pmol) or D-Pro2-Tyr-W-MIF-1 (25-1200 pmol), and the tail-flick inhibition induced by TAPA was measured at 10 min after the treatments.
The antinociceptive effect was represented as the mean ± S.E.M. for at least 10 mice.
The statistical significance of the differences between the groups was assessed with a one-way ANOVA followed by Bonferroni’s test. (A) The F value of the one-way ANOVA was F[3,36] = 31.20 (P<0.001). ***P<0.001 vs. the aCSF-pretreated group. (B) The F value of the one-way ANOVA was F[4,45] = 29.26 (P<0.001). **P<0.01, ***P<0.001 vs. TAPA alone-treated group. (C) The F value of the one-way ANOVA was F[6,63] = 0.1461. (D) The F value of the one-way ANOVA was F[7,72] = 0.2557.
18 CXBKマウスにおけるTAPAの脊髄鎮痛作用
TAPAの脊髄鎮痛作用発現におけるμ1オピオイド受容体の関与を確認する目的で、自然 発生的にμ1オピオイド受容体が減少している CXBK マウスおよびその親系統である
C57BL/6ByJマウスを用いて検討を行なった。CXBKマウスおよびC57BL/6ByJマウス
の各群に対し、TAPA(0.375-12 pmol)を i.t.投与し、TAPAの脊髄鎮痛作用をその投与 10分後に評価した。その結果、CXBKマウスおよびC57BL/6ByJマウスのいずれにおい ても、TAPA のi.t.投与によって用量依存的に脊髄鎮痛作用が認められた(Fig. 4)。しか しながら、そのCXBK マウスにおける用量反応曲線は、C57BL/6ByJ マウスと比較する と 6.5 倍も著しく右側にシフトした。TAPA の鎮痛作用における CXBK マウスおよび C57BL/6ByJ マ ウ ス の ED50 値 は 、 そ れ ぞ れ 2.859(2.081-3.927) お よ び 0.4384
(0.3460-0.5555)pmolであった。
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Fig.4 Antinociceptive effect of TAPA in the CXBK mice and its parent strain C57BL/6ByJ mice. Groups of mice were injected i.t. with various doses of TAPA (0.375-12.0 pmol), and the tail-flick inhibition induced by TAPA was measured at 10 min after the treatment. The antinociceptive effect was represented as the mean
± S.E.M. for at least 10 mice. The dose-response curves were calcultated with GraphPad Prism 4, a computer-assisted curve-fitting program. The entire dose-response curves were compared using the F-test, according to the instruction provided with GraphPad Software. The F value and P value for TAPA was 80.316 and 0.00005, respectively.
0.1 1 10 100
0 20 40 60 80 100
C57BL/6ByJ mice CXBK mice
TAPA doses (pmol, i.t.)
Antinociception (% MPE)
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TAPAの脊髄鎮痛作用における各種内因性オピオイドペプチドの関与
TAPA の脊髄鎮痛作用における各種内因性オピオイドペプチドの関与を検討する目的で、
内因性κオピオイドペプチドであるdynorphin A、dynorphin Bおよびα-neo-endorphin に対するそれぞれの抗体、ならびに内因性δオピオイドペプチドである[Leu5]enkephalin、
および[Met5]enkephalinに対するそれぞれの抗体を用いて、TAPA 0.75 pmol誘発脊髄鎮 痛作用における内因性オピオイドペプチドの関与を検討した(Fig. 5)。マウス各群に対し、
dynorphin A 抗体(1:50) 、dynorphin B 抗体(1:50)およびα-neo-endorphin 抗体
(1:800-1:50)、[Leu5]enkephalin 抗体(1:50)、および[Met5]enkephalin抗体(1:50)、 およびnormal rabbit serumをi.t.投与し、その投与20分後にTAPA 0.75 pmolをi.t.投 与し、その投与10分後にTAPAの脊髄鎮痛作用を評価した。TAPAの脊髄鎮痛作用は、
α-neo-endorphinの抗体前処置によって希釈倍率依存的かつ有意に抑制されたが、その他 の内因性オピオイドペプチドの抗体であるdynorphin Aの抗体 、dynorphin Bの抗体、
[Leu5]enkephalin の抗体、および[Met5]enkephalin の抗体のいずれの前処置による影響 は認められなかった。使用された抗体は、いずれもその抗体自体による鎮痛作用ならびに 痛覚過敏反応を起こすことはなく、特異的行動を示すことはなかった。
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Fig.5 Effects of antisera against endogenous opioid peptides on the antinociception induced by TAPA in the ddY mouse spinal cord. Groups of mice pretreated i.t. with normal rabbit serum (NRS) or antisera against either dynorphin A (Anti-DynA : 1:50 dilution), dynorphin B (Anti-DynB : 1:50 dilution), α-neo-endorphin (Anti-α-neo-End : 1:800-1:50 dilution), [Leu5]enkephalin (Anti-L-Enk : 1:50 dilution) or [Met5]enkephalin (Anti-M-Enk : 1:50 dilution) 20 min before, were treated i.t. with TAPA (0.75pmol), and the tail-flick inhibition induced by TAPA was measured at 10 min after the treatments. The antinociceptive effect was represented as the mean ± S.E.M. for at least 10 mice.
The statistical significance of the differences between the groups was assessed with a one-way ANOVA followed by the Bonferroni’s test. The F value of the one-way ANOVA was F[7,72]=14.81 (P<
0.001). **P<0.01, ***P<0.001 vs. NRS-pretreated group.
22
Prodynorphin欠損マウスにおけるTAPAの脊髄鎮痛作用
TAPA の脊髄鎮痛作用における内因性κオピオイドペプチドの関与を確認する目的で、
内因性κオピオイドペプチドの前駆物質であるprodynorphin が欠損したマウスならびに
wild-typeマウスを用いて検討した。それぞれのマウス各群に対してTAPAをi.t.投与し、
その投与10分後におけるTAPAの脊髄鎮痛作用を検討した。prodynorphin欠損マウスお
よびwild-typeマウスのいずれにおいても、TAPAのi.t.投与によって用量依存的に脊髄鎮
痛作用が認められた(Fig. 6)。しかしながら、prodynorphin 欠損マウスにおける用量反 応曲線は、wild-typeマウスのそれと比較すると2.1倍有意に右側にシフトした。TAPAの 脊髄鎮痛作用におけるprodynorphin欠損マウスおよびwild-typeマウスのED50値は、そ れぞれ0.8098(0.6324-1.037)および0.3804(0.3153-0.4588)pmolであった。
Fig.6 Antinociceptive effect of TAPA in the prodynorphin deficient mice its wild-type mice. Groups of mice were injected i.t. with various doses of TAPA (0.265-3.0 pmol), and the tail-flick inhibition induced by TAPA was measured at 10 min after the treatment. The antinociceptive effect was represented as the mean ± S.E.M. for at least 10 mice. The dose-response curves were calculated with GraphPad Prism 4, a computer-assisted curve-fitting program. The entire dose-response curves were compared using the F-test, according to the instruction provided with GraphPad Software. The F value and P value for TAPA was 48.722 and 0.00155, respectively.
0.1 1 10 100
0 20 40 60 80 100
Wild-type mice
Prodynorphin deficient mice
TAPA doses (pmol, i.t.)
Antinociception (% MPE)
23 以上の結果をまとめると、以下のとおりとなる。
TAPA は、ddY 系マウスにおける i.t.投与によって用量依存的に脊髄鎮痛作用を発現し た。
TAPA の脊髄鎮痛作用は、μオピオイド受容体拮抗薬であるβ-funaltrexamine(β -FNA)、 μ1 オ ピ オ イ ド 受 容 体 拮 抗 薬 で あ る naloxonazine(NLZ) な ら び に [D-Pro2]-endomorphon-2、 κ オ ピ オ イ ド 受 容 体 拮 抗 薬 で あ る nor-binaltorphimine
(nor-BNI)の前処置によって、いずれも用量依存的かつ有意に抑制された。
TAPAの脊髄鎮痛作用は、μ2オピオイド受容体拮抗薬である[D-Pro2]-Tyr-W-MIF-1な らびに[D-Pro2]-endomorphon-1の前処置による影響が認められなかった。また TAPAの 脊髄鎮痛作用は、δオピオイド受容体拮抗薬であるnaltrindole(NTI)前処置による影響 が認められなかった。
自然発生的にμ1オピオイド受容体が減少しているCXBKマウスにおいて、TAPAの脊 髄鎮痛作用は、μ1オピオイド受容体機能が維持されているC57BL/6ByJマウスと比較す ると著しく減弱した。
TAPAの脊髄鎮痛作用は、内因性κオピオイドペプチドであるα-neo-endorphinに対す
る抗体の i.t.投与前処置によって有意に抑制されたが、その他の各種内因性オピオイドペ
プチドに対する抗体の影響は認められなかった。
内因性κオピオイドペプチドが欠損しているprodynorphin欠損マウスにおいて、TAPA の脊髄鎮痛作用は、wild-typeマウスと比較すると有意に減弱した。