日本小児循環器学会雑誌 12巻4号 623〜624頁(1996年)
第9回長野県小児循環器談話会
症例検討(1)
司会:滝 芳樹先生(昭和伊南総合病院小児科)
1.平成7年度学校心臓検診症例より 大北医師会学校心臓検診委員会
酒井 達夫 症例1,小4女児:未熟児で出生,出生時より軽症 VSDとして経過観察されていたが,今回二次検診で左 第2肋間で連続性雑音が聴取され,胸部X−Pで肺血流 量増大所見がみられたことからPDAが疑われ,精査
した処,CoA+PDAと診断され,平成8年4月手術を
完了した.
症例2,中1女児:省略4誘導心電図で,1,aVFの やや深いq波をcheckされ,精査した処,心エコーで は明瞭な肥大所見が得られ難かったが,MRIで前壁寄 りの中隔肥厚があり,心臓カテーテル検査ではLVG でバナナ型をしており,乳頭筋肥大を認め,心筋生検 では錯綜配列を伴う奇妙な心筋肥大(BMHD)が認め られた.また家族歴に心尖部肥大型心筋症が認められ た.異常のことから或程度の運動制限と注意深い経過 観察を行っている.
症例検討(2)
司会:安河内 聡先生
(長野県立こども病院循環器科)
2.慢性に経過した心不全のため外科治療を断念し たファロー四徴症のダウン症候群児一剖検所見を中心 に一
飯田市立病院小児科
長沼 邦明,小林 法元,津野 隆久 心筋障害のため,根治手術を断念したファロー四徴 症のダウン症候群児を剖検結果と供に報告した.新生 児期よりファロー四徴症と診断され管理されていた.
9カ月時,心拡大に気づかれ,しだいに駆出率低下.
このため根治手術は断念された.その後8歳時,心不 全で死亡した.
心筋障害の原因に関しては,1)心筋炎,2)冠動脈 奇形,3)特発性心筋症,4)低酸素性心筋障害などが 考えられた.剖検の結果,心筋細胞間,心外膜に著明 な膠原線維の増殖を認め,心筋炎後の癩痕化と考えら
れた.
3.腎血管性高血圧症を合併した22/11混合トリソ ミー症候群の1例
昭和伊南総合病院小児科
滝 芳樹,北澤 由美,倉田 晋 信州大学小児科 牛久保誠一 症例は9歳の男児.重度の精神運動発達遅滞,両眼 解離,短鼻,眼裂斜上,歯融合,鎖骨形成異常,てん かん,ASDを認め,47XY,+marnの染色体異常を有 していた.後に高精度分染法およびFish法により47 XY,+der(22)t(11;22)(q23;q11.2)と判明した.
ASDは7歳時に心カテを実施し, Qp/Qs=1.16, Pp/
Ps=0.17で総合的にみて手術適応外と判断した.8歳 時にafterload rnismatchを伴う腎血管性高血圧を発 症し,数カ月で寛解する特異な経過をとったが,腎動 脈造影で興味ある所見を得たので報告する.
症例検討(3)
司会:鈴木 章司先生(山梨医科大学第2外科)
4.大動脈弁欠損の1例
長野県立こども病院循環器科
汲田 善宏,里見 元義 安河内 聡,岩崎 康 同 心臓血管外科
原田 順和,竹内 敬昌 森嶋 克昌,太田 敬三 同 新生児科
田村 正徳,笹野 拓也,島崎 英 生後間もなくから末梢生チアノーゼ,生後6時間か
ら多呼吸がみられ,胸部Xp上心拡大及び肺響血像,
ECGでは右軸偏位・右室肥大, UCGでは大動脈は欠損 し僧帽弁は閉鎖,卵円孔開存,動脈管開存などの所見 から大動脈弁欠損と診断した.日齢7口に呼吸状態が 悪化し,人工呼吸管理を開始した.口齢8日目の心臓 カテーテル検査では,左室のEDPは33と高く,大動脈 造影ではmassiveな大動脈の逆流, wash outの遅延 がみられた.左室低形成と収縮不全により左心低形成 症候群として治療方針をたて,日齢9日Norwood型 手術(Damus kaye Stansel吻合+右Blalock−Taussig 短絡術)を施行した.術後の経過は良好で,日齢72日
に退院し,将来的にFontan型手術を目指し現在外来 で経過観察中である.
大動脈弁欠損の症例は現在まで10例の報告があり,
いずれも早期に死亡したが,この症例では左室のコン プライアンスが低いため,拡張期圧が保たれ,生存に
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つながったものと考えられた.
5.Ductal shockを呈した大動脈離断症の3例 長野県立こども病院循環器科
岩崎 康,里見 元義 安河内 聡,汲田 善宏 同 心臓血管外科
原田 順和,竹内 敬昌 森嶋 克昌,太田 敬三 同 新生児科 田村 正徳,足立 浩 岩田 欧介,笹野 拓也 大動脈弓離断症は生後数日経過し,動脈管が閉鎖し てくると下肢への血流が得られずDuctal shockを起
日小循誌 12(4),1996 こし,生命予後にもかかわる状態となる.われわれの 施設で経験した3例について検討した.3症とも重篤 な状態で搬送され入院し,アシドーシスが著明でBase Excessは 20以下で,呼吸障害も強く呼吸管理を必要 とした.shockの重い症例ほど合併障害も強く,腎不全 のため腹膜透析を必要としたり,DICのため交換輸血 を必要とした.いずれの症例も一期的根治手術で血行 動態は改善されたが,最も重症だった1例は,入院時 より肝不全が強く,このため術後3カ月を過ぎて失っ た.Ductal shockを早期に発見し適切な治療で全身状 態を改善させ,外科的治療へ進めていくことが重要で
ある.
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