日本小児循環器学会雑誌10巻4号588〜589頁(1994年)
〈研究抄録〉
第2回長野小児循環器談話会
時 所 人 話
日場世
平成6年2月5日長野県立こども病院 滝 芳樹
症例1:Near−miss Sudden Deathの1幼児例 信州大学小児科 清水 隆 司会 信州大学小児科 滝 芳樹 てんかん発作として治療中に,原発性肺高血圧症
(PPH)のPHcrisisでNearmiss Sudden Deathの後,
Sudden Deathの経過をとった2歳男児が報告され た.1歳時の心電図では本症としての心電図異常はな
く,平成5年11月に右室肥大と心雑音を認め,この時 のUCGでPPHが疑われていた.右室肥大,非定型的 欠神発作ではSudden Deathのリスクの高い本症も疑 い,UCGも実施すべきと考えられた.家族の理解がえ られず,治療が拒否され不幸な転帰をとったが,pros−
tanoidのアンバランスなど血管内皮細胞機能障害を 主要病態と考えた新しい治療と臨床経過が示された.
肺血管抵抗の変動については非侵襲的検査では正確な 評価は困難であるが,UCGでもいくつかの指標を丹念
に追跡することである程度評価できるとの意見がださ
れた.
症例2:ランニング中に発症した中学生の突然死例 諏訪赤十字病院小児科 遠山 麻里 司会 波田総合病院小児科 坂井 昭彦 ランニング中に突然死した13歳男子が報告された.
「苦しい」と言って倒れてから約15分後の心電図は接合 部調律で,広範な心筋梗塞を疑わせる一方,心筋炎,
DICでも説明可能との指摘もあった.その後急性左心 不全による肺水腫も合併し,結局倒れてから6時間後 に死亡した.剖検では,冠動脈の閉塞や走行異常,炎 症所見を認めず,心筋の波状配列と特殊染色でのびま ん性早期心筋梗塞の所見のみをみとめた.同症例の学 校検診時の心電図には異常なく,代謝性疾患を疑わせ る所見はなかった.こうした原因不明の突然死を解明 するためには症例の蓄積と剖検の必要性が改めて確認
された.
別刷請求先:長野県松本市旭3−1−1 信州大学医学部小児科学教室
滝 芳樹
症例3:平成5年学校心臓病検診症例から 酒井医院 酒井 達夫 司会 長野県立こども病院循環器科 里見 元義 心室中隔欠損症として経過観察を受けながら,平成
5年の学校健診をきっかけに不完全型心内膜床欠損症 と診断され,県立こども病院にて根治術を受け良好な 経過をとった7歳女児が報告された.この症例は雑音 の性状から完全型との区別が問題となり,心室中隔欠 損症の有無は外科的治療上大切なポイントであると考 えられたが,造影検査でもはっきりせず心カテ中のコ ントラストエコーにて左室右室問の交通がないことよ り否定された.また,聴診上VSDと紛らわしかった thrillを伴う汎収縮期雑音は僧帽弁逆流のflowが前方 の右房に向かうために生じた非定型的な雑音として説 明された.心電図や胸部X線写真の判読にも注意を喉 起するとともに,学校検診の重要性が改めて示される 症例であった.
症例4:肺水腫を来した褐色細胞腫の学童例 信州大学小児科 北原 正志 諏訪赤十字病院小児科 落合 二葉 司会 山梨医科大学小児科 駒井 孝行 高血圧にて発見された褐色細胞腫の9歳女児が報告
された.高血圧症の鑑別診断,褐色細胞腫の診断に至 るまでの経緯につき論議された.本症例は肺水腫の合 併もみられたが,過剰なカテコラミンによる直接的な 心筋障害が大きく関与していたと考えられ,利尿剤・
ドブタミン・フランドルテープ・ミニプレス・レギチー ンて治療されたが,長期にわたる高血圧が心機能低下 の原因と考えれば,カルシウム拮抗剤やACE in−
hibiter等のさらに強力な降圧剤や鎮静もかねたモル ヒネの投与も必要であったのではないかとの意見もだ された.また水分管理の重要性も考えられた.
症例5:完全房室ブロックと誤りやすかった高度房 室ブロックの男児例
山梨医科大学小児科 杉山 央 司会 矢島内科医院 新田 政男
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日小循誌 10(4),1994
非典型的な房室ブロックを呈した13歳男子が報告さ れた.安静時の心電図はWenchebach型の3:1ブロッ クで,心拍数が毎分40回.運動負荷後にはブロック消 失するものの徐脈のままであり,硫酸アトロピン投与
2分後に房室結節の伝導の回復,5分後になりようや く心拍数毎分100回の洞調律と洞機能の回復がみられ た.本症例は自覚症状がないということから薬物治療 や運動制限の適応はないという意見であったが,さら に詳細な検討に関しては電気生理学的な検査が必要で あると考えられた.
症例6:1歳8カ月の高度右室低形成を伴った純型 肺動脈閉鎖症の1例
長野県立こども病院循環器科 今井 寿郎 司会 飯田市立病院小児科 長沼 邦明 高度右室低形成を伴った純型肺動脈閉鎖症の1歳女
589−(97)
児が報告された.患児は三尖弁閉鎖症として信州大学 にてBASとシャント術が行われたが,その後心電図 にて右軸偏位と右室肥大があり,純型肺動脈閉鎖症で あることが確認され,外科的治療のため県立こども病 院に紹介された.一般的に三尖弁閉鎖症では左軸偏位 であるが,膜様閉鎖では左軸偏位にはならないことが あるとの指摘があった.先天性心疾患の診断に際して は心エコーに頼りがちであるが,心電図などにも重要 な手がかりがあることが再確認された.同症例は,右 室容積が32%normalだが,右室の3portionが存在し ており,biventricular repairをめざして右室流室路拡 大術が施行された.純型肺動脈閉鎖症の根治術の適応 基準や新生時期での方針のたて方,実際の手術法につ
き意見がだされた.
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