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乾燥収縮の影響を考慮したマスコンクリ-トの温度応力解析

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(1)

乾燥収縮の影響を考慮したマスコンクリ-トの温度応力解析

山口大学大学院理工学研究科 正会員 ○中村秀明

山口大学大学院理工学研究科 鹿児島史明、柳内 力

1.はじめに

コンクリ-ト構造物に発生する初期ひび割れを正確 に予測するためには、温度のみならず乾燥収縮や自己収 縮、クリープなどの影響を考慮する必要がある。コンク リ-ト中の温度分布は、有限要素法を用いた解析ツール が整備されており、熱伝導解析を行うことによって比較 的容易に求めることができるが、コンクリ-ト中の水分 量の分布(湿度分布)は、解析ツールがまだ十分には整 備されていないため、求めることが難しい。このような 状況の中で、湿度分布を求める方法として、岐阜大学の 森本ら1)は、コンクリ-ト中の蒸気圧を未知量とする非 線形湿気移動支配方程式にもとづくコンクリ-ト中の相 対湿度の分布を解析する方法を提案している。

本研究では、森本らの提案した方法にもとづき、コン クリ-ト中の湿度分布を計算できる解析ソフトを開発し、

それを用いて、温度のみならず、乾燥収縮の影響を考慮 に入れた温度応力解析を行った。

2.湿気移動解析

コンクリ-トの乾燥収縮は、コンクリ-ト内部の水分

(湿気)の移動により、水分が部材外部に逸散すること で生じる含水量の変化に伴って発生する。そこで、乾燥 収縮に伴うひずみや応力の解析では、まず始めにコンク リ-ト内部の湿気移動現象を明らかにする必要がある。

本研究では、岐阜大学の森本らの研究結果をもとに、コ ンクリ-ト内部の蒸気圧を未知量とする非線形支配方程 式にもとづきコンクリ-ト内部の湿気移動解析を行った。

2.1 3次元湿気移動解析の支配方程式

コンクリ-ト中の湿気移動の非線形支配方程式は、次 のようの記述できる。

dt dq z

P y

P x

P t

P dP

dq

h

P P

⎟⎟ −

⎜⎜ ⎞

∂ + ∂

∂ + ∂

= ∂

⎟ ∂

⎜ ⎞

2 2 2 2 2

λ

2

(1)

ここに、

P

はコンクリ-ト内部の蒸気圧 (mmHg)であ り、

dP

P

dq

⎜ ⎞

は湿気容量 (g/m3・mmHg)、

λ

Pは透湿率

(g/m

3・hr・mmHg)、

dt dq

h

は水和による湿気密度変化 (g/hr・

m

3

)である。

式(1)の各項は、次のような物理的意味がある。

t P dP dq

P

⎟ ∂

⎜ ⎞

:内部湿気量の変化(湿気容量項)

⎟⎟ ⎠

⎜⎜ ⎞

∂ + ∂

∂ + ∂

2 2 2 2 2 2

z P y

P x

P

λ

P :湿気移動により外部から流入す る湿気量(湿気移動項)

dt dq

h

:水和による湿気損失(湿気損失項)

つまり、この式は、

(内部湿気量)=(湿気移動)―(湿気損失)

という湿気収支を表現している。

式(1)は、領域内の任意点で、任意の時刻に成立すべき 方程式であり、これを具体的に解くには、境界条件を必 要とする。解析において一般的に考慮すべき主な境界条 件として、湿気固定境界と湿気伝達境界が挙げられる。

このうち、湿気固定境界については、解析上特に困難 な点はなく、応力解析における変位固定境界や温度解析 における温度固定境界の扱いで良い。一方、湿気伝達境 界については、現在までにいくつかの形式のものが提案 されているが、最も一般的に採用されているのは次の形 式である。

( P P

0

)

n P

P

= −

− λ ∂ α (2)

ここに、

α

:蒸発率 (g/m3・hr・mmHg)、

P

0:周囲の蒸 気圧 (mmHg)である。

湿気移動解析では、支配方程式である式(1)を境界条件 である式(2)のもとで解くことになる。

2.2 湿気移動解析における材料物性値

湿気移動解析を行うためには、湿気移動に関わる物性 値を適切に設定する必要がある。湿気移動に関する物性 値としては、透湿率(g/m・hr・mmHg)、湿気容量(g/m3

mmHg)、さらには境界面における蒸発率(g/m

3・hr・

mmHg)がある。これらの物性値に関するデータは今の

(2)

ところ非常に少ないが、透湿率と湿気容量に関しては、

既往の研究2)により図-1、図-2に示すような相対湿度と の関係が示されている。一方、蒸発率に関してのデータ はほとんど見あたらないが、図-3に示すように岐阜大学 で行われた実験データ3)がある。解析では、これら物性 値は相対湿度の関数となることから、収束計算で解析を 行っている。

0 0.001 0.002 0.003 0.004 0.005 0.006 0.007 0.008

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

相対湿度(%)

透湿率 (g/m・hr・mmHg)

図-1 透湿率と相対湿度との関係

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 18000 20000

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

相対湿度(%)

湿気容量 (g/m3・mmHg)

図-2 湿気容量と相対湿度との関係

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

表面近傍の相対湿度(%)

発率 (g/m2・hr・mmHg)

図-3 蒸発率と表面近傍の相対湿度との関係

2.3 相対湿度から乾燥収縮ひずみへの変換

相対湿度から乾燥収縮ひずみを求める方法としては、

JCI

のコンクリート構造物のクリープおよび収縮による 時間依存変形研究委員会4)の方法、CEB-FIP MODEL

CODE 1990

の収縮ひずみ予測式5)などいろいろあるが、

本研究では、JCIの方法を用いている。

3.湿気移動解析と温度応力解析 3.1 解析モデル

湿気移動解析に用いた解析モデルを図-4に示す。この モデルは橋脚を模擬したもので、対称性を考慮し、1/4 モデルとし、打設計画では、6/1に底版部を打設、7/1に 壁第1リフト、7/11に壁第2リフト、7/21に壁第3リフ トを打設するようになっている。また打設後1週間は、

湿潤養生を行うようになっている。解析では、まず初め に温度解析を行い、その結果を用いて湿気移動解析を行 っている。熱物性値を表-1に示す。なお、湿気移動解析 で必要な物性値は、図-1、図-2、図-3に示すように、相 対湿度との関係で与えられ、また周囲の相対湿度は

60%

として解析を行っている。表-2に応力物性値を示す。

20,000 15,000

15 ,0 00

3@ 5,0 00 3,5 00

2,000 4,000

10,000 4,500

底版:6月1日 第1リフト:7月

1日

2

リフト:

7

11

日 第3リフト:7月21日

20,000 15,000

15 ,0 00

3@ 5,0 00 3,5 00

2,000 4,000

10,000 4,500

底版:6月1日 第1リフト:7月

1日

2

リフト:

7

11

日 第3リフト:7月21日

図-4 解析モデル

表-1 熱物性値

地盤 底版 柱1 柱2 柱3 初期温度 ℃ 15.0 15.0 20.0 22.5 25.0 熱伝導率 W/m℃ 3.45 2.7 2.7 2.7 2.7 比熱 kJ/kg℃ 0.79 1.15 1.15 1.15 1.15

密度 kg/m3 2650 2300 2300 2300 2300

断熱温度上昇 Q 46.50 46.00 45.75 45.50 断熱温度上昇 γ 0.845 1.104 1.212 1.321 熱伝達率 W/m2 14.0

外気温 ℃ 20.0

(3)

表-2 応力物性値

地盤 底版 柱1 柱2 柱3 圧縮強度係数 a 4.5 4.5 4.5 4.5 圧縮強度係数 b 0.95 0.95 0.95 0.95 28日強度 N/m2 27 27 27 27 引張強度係数 c 0.44 0.44 0.44 0.44 ヤング係数あるいはその係数 600 4700 4700 4700 4700 ポアソン比 0.23 0.2 0.2 0.2 0.2 線膨張係数 μ/℃ 8 10 10 10 10

Node 2553 Node 3861 Node 4365 Node 4869

Node 3476 Node 3869

Node 4373 Node 4877

Elem 3062 Elem 3398 Elem 3724

Elem 2767

Elem 2131 Elem 3031 Elem 3391 Elem 3727

Node 2553 Node 3861 Node 4365 Node 4869

Node 3476 Node 3869

Node 4373 Node 4877

Elem 3062 Elem 3398 Elem 3724

Elem 2767

Elem 2131 Elem 3031 Elem 3391 Elem 3727

図-5 解析結果出力位置

10 20 30 40 50 60 70 80

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

経過日数(日)

温度(℃)

節点2553 節点3476 節点3861 節点3869 節点4365 節点4373 節点4869 節点4877

図-6 温度解析結果

3.2 解析結果

解析での出力位置を図-5に示す。温度および相対湿度 は、図-5に示す

8

節点の結果を示し、最大主応力および ひび割れ指数は、図-5に示す

8

要素の結果を示す。

まず、温度解析の結果を図-6に示す。青線の節点

2553

および

3476

はそれぞれ底版の中心付近および上部端点 であり、60℃付近まで上昇している。最高温度は、壁の 3リフトの中心部で、最高で

70℃まで上昇している。

40 50 60 70 80 90 100

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

経過日数(日)

相対湿度(%)

節点2553 節点3476 節点3861 節点3869 節点4365 節点4373 節点4869 節点4877

図-7 湿気移動解析結果

100%

90%

80%

70%

60%

100%

90%

80%

70%

60%

100%

90%

80%

70%

60%

100%

90%

80%

70%

60%

100%

90%

80%

70%

60%

100%

90%

80%

70%

60%

図-8 相対湿度の分布(中心断面)

100%

90%

80%

70%

60%

100%

90%

80%

70%

60%

100%

90%

80%

70%

60%

100%

90%

80%

70%

60%

100%

90%

80%

70%

60%

100%

90%

80%

70%

60%

図-9 相対湿度の分布(表面)

(4)

-2.0 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

経過日数(日)

最大主応力(N/mm2)

要素2131 要素2767 要素3031 要素3062 要素3391 要素3398 要素3727 要素3724

図-10 応力解析結果(温度+乾燥)

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

経過日数(日)

割れ指数

要素2131 要素2767 要素3031 要素3062 要素3391 要素3398 要素3727 要素3724

図-11 ひび割れ指数

次に相対湿度の解析結果を図-7に示す。解析では蒸気 圧が未知量であり、蒸気圧について解いているが、蒸気 圧は一般的ではないため、温度との関係で相対湿度とし て出力している。コンクリ-ト内部の相対湿度は、初期 の段階では

100%であるが、その後表面から乾燥が進む

ため、表面の相対湿度は徐々に下がっている。周囲の相

対湿度が

60%であることから、 60%を下回ることはない。

乾燥は、表面付近が顕著であり、中心部分は相当な時間 が経過しないと乾燥が進まないため、本解析のような短 い時間では、100%のままとなっている。また、図-7 で はわかりにくいが、打設後1週間は、湿潤養生されてい るため、表面からの乾燥は起こらず、1週間後から乾燥 が始まっている。参考のため、図-8に中心断面の相対湿 度の分布を示し、図-9 に表面の相対湿度の分布を示す。

図-8の中心断面は、

1/4

モデルの対称軸での断面であり、

橋脚の中心部である。この中心断面は、表面のみが乾燥 しており、内部はほとんど乾燥していない。図-9は表面 であるが、表面は乾燥が進んでいるのがわかる。

図-10 に最大主応力の解析結果を示す。最大主応力は 乾燥の影響で中心部より表面の方が大きくなっている。

表面近傍は、乾燥が急激に進むため、メッシュ分割を細 かくしすぎると応力を過大に評価する傾向がある。今後 は、最適なメッシュ分割について検討が必要である。

図-11 にひび割れ指数を示す。ひび割れ指数も図-10 の最大主応力の結果と同様に、表面の方が小さくなって いる。乾燥は表面近傍が特に著しいことから、表面近傍 では、ひび割れ指数が小さくなっている。

4.まとめ

本研究では、コンクリ-ト構造物に発生する初期ひび 割れを正確に予測するためには、温度のみならず乾燥の 影響を考慮に入れた3次元温度応力解析を行った。湿気 移動解析では、コンクリ-ト中の湿度分布をある程度の 精度で求めることができた。しかしながら、表面付近の 湿度勾配が厳しいことから、表面を細かくメッシュ分割 する必要があるが、表面を細かくメッシュ分割すると応 力を過大に評価する可能性がある。また、透湿率や湿気 容量、蒸発率といった物性値データがまだ不足しており、

今後はデータの充実が必要である。乾燥の影響を考慮に 入れた温度応力解析では、表面近傍は、乾燥の影響で応 力が大きく出ており、ひび割れの可能性があることがわ かった。今後は、更なる解析を行い、精度の向上に努め たい。

参考文献

1)

中村恭香:コンクリ-ト部材の乾燥収縮挙動の解析,

岐阜大学大学院工学研究科土木工学専攻修士論文,

2006.2.

2)

西岡栄香,原田 有:多孔質物資の透湿率および湿気 拡散について,セメント技術年報, XV, pp.274-278,

1961.

3)

中村恭香:コンクリ-ト中の湿気移動に関する研究,

岐阜大学卒業論文,2003.2

4)

日本コンクリート協会:コンクリート構造物のクリ ープおよび収縮による時間依存変形研究委員会報告 書,pp.101-121,

2001.

5) CEB:CEB-FIP MODEL CODE 1990, pp.57,58,

1993.

参照

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