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電気抵抗によるコンクリート中の水分量計測法に関する一検討

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Academic year: 2022

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電気抵抗によるコンクリート中の水分量計測法に関する一検討

交通建設 正会員 ○高畑 友彦 長岡技術科学大学 正会員 下村 匠

1.はじめに

コンクリート構造物の劣化予測を行ううえで,コンクリート中の各位置,各時間における水分量の把握が重要 であることは言を待たない.数値解析によりコンクリート中の水分移動現象を汎用的に予測する手法の開発を目 指す一方で,コンクリート中の各位置,各時間における水分量を精度よく計測する方法を確立することも必要で ある.本研究は後者に主眼を置いたものである.

本研究では,既往の水分測定方法のひとつである電気抵抗法1)を取り上げる.多くの既往の研究では,単調な乾 燥過程において求めた水分量と電気抵抗のキャリブレーション曲線を普遍的特性と仮定し,これを多様な条件下 の測定対象に適用している.本研究では,本計測法におけるキャリブレーション曲線に及ぼす乾湿繰返し(乾燥・

吸湿,および乾燥・吸水)の影響について,実験ならびに数値解析の両面から検討を加えることにする.

2.実験概要

電極間の比抵抗と,その部分のコンクリートの水分量の関係を 得るためのキャリブレーション試験を行った.コンクリート中に 埋め込む電極は,既往の研究を参考に,図-1 のものを自作した.

供試体の概要を図-2に示す.供試体はW/C50%のコンクリートを 用いて作成し,実験期間中の水和の影響をなるべく小さくするた め,封緘養生を20日間行った.実験条件は,図-3に示すように,

乾燥吸水繰返し,乾燥吸湿繰返しの 2 種類とし,経時的に供試体 重量と電気抵抗を測定した.実験は温度約20℃,湿度約60%の恒 温室において行った.同時に作製した他の供試体において測定し た絶乾単位体積重量を用いて,供試体の重量の測定値から単位体 積あたりの水分量を求めた.電極個体誤差の相殺のため,電気抵 抗は比抵抗に換算して考える.

3.結果および考察

3.1 乾燥・吸水繰返し,乾燥・吸湿繰返しの影響

乾燥・吸水繰返し環境下における水分量と比抵抗の関係の測定 結果を図-4に,乾燥・吸湿繰返し環境下の結果を図-5に示す.乾 燥・吸水繰返し,乾燥・吸湿繰返しともに,水分量と比抵抗の関 係はループを描く傾向が見られる.ループの大きさは,乾燥・吸 湿よりも,乾燥・吸水の場合の方が顕著である.

本実験結果は,ここで用いた程度の小さなキャリブレーション 用供試体であっても,乾燥・吸水・吸湿過程によって,つまり乾 湿の経路によって,観測される水分量と比抵抗の関係は異なるこ とを示している.したがって,キャリブレーション用供試体の単 調乾燥過程から得られた水分量と比抵抗の関係も,ひとつの特解 に過ぎず,普遍的ではないことが示唆される.

キーワード:水分量,電気抵抗,比抵抗,乾湿繰返し

連絡先:〒940-2188新潟県長岡市上富岡町1603-1 TEL:0258-47-9603 FAX:0258-47-9600

図-1 ステンレス電極 20

20 リード線

はんだ

エポキシ 系樹脂 接着剤 ステンレス φ1.5

基盤

単位:mm

40

60 60

図ー2 供試体 電極

図ー3 実験条件 供試体

吸湿

乾燥 吸水

乾燥吸湿繰返し 乾燥吸水繰返し

土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)

‑185‑

5‑094

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3.2 見かけの乾湿経路依存性のメカニズムに関する考察

0 50 100 150

0 5000 10000 15000 比抵抗(Ωcm)

水分量(kg/m3

図ー4 乾燥吸水繰返し実験結果 開始

終了

図ー5 乾燥吸湿繰返し実験結果 0

50 100

0 5000 10000 15000 比抵抗(Ωcm)

水分量(kg/m

150

3

開始

終了

0 50 100 150

0 10 20 30

外部からの距離(mm)

水分量(kg/m3

実験開始 1日後 2日後 10日後

図ー6 解析結果(乾燥過程)

乾湿繰返し環境下において観測された水分量と比抵抗の関係が ループを描く理由は,供試体内部の水分分布の不均一性によるも のと考えられる.すなわち,乾燥,吸水,吸湿いずれの過程にお いても,平衡状態に達するまでは供試体内部の水分分布に勾配が 存在し,表面付近と中心部とでは水分量が異なる.重量測定によ り得られるのは供試体の平均水分量に相当する.一方,抵抗値に 関係するのは,電極が埋め込まれた供試体中心部の水分量である.

このことが,乾湿繰返しにおける水分量と比抵抗の関係に見られ るループの原因であると考えられる.

3.3 数値解析による検討

上記の仮説を検証するために,コンクリート中の水分移動解析 プログラム2)を用い,乾燥・吸水繰返しを行った供試体内部の水分 分布を解析した.乾燥過程における供試体中心から外部までの水 分分布の経時変化を図-6に,吸水過程における水分分布を図-7に 示す.乾燥・湿潤いずれの過程においても,中心部の水分量の変 化は外側と比べると緩やかであることがわかる.

供試体の平均水分量が実験結果と解析結果とで等しくなる各時 点において,中心水分量の解析値と比抵抗の実験値との関係をプ ロットしたのが図-8である.図-4の実験値も重ねて示した.完全 とはいえないが,中心水分量で考えた場合,水分量と比抵抗の関 係が描く乾湿のループは小さくなり,一意的な関係に近づいてい る.この結果は,本研究で考察した仮説の妥当性を裏付けるとと もに,供試体内の水分分布を考慮した数値解析を併用することに より,乾湿によらない局所的な水分量と比抵抗の関係が導出でき る可能性を示唆しているといえる.

参考文献

1) 矢田一也,HUSEEIN Nour-Allab,田中和幸,佐藤良一:電気抵 抗法に基づく鉄筋コンクリートひび割れ部での水分移動の評 価 に つ い て , コ ン ク リ ー ト 工 学 年 次 論 文 集 ,Vol.25, No.1, pp.701-706,2003

2) 小 林 悟 志 , 下 村 匠:コンクリート 中の物質移動と鉄 筋の腐食に関する 数値解析,コンク リート工学年次論 文集,Vol.24, No.1, pp.831-836,2002.6

水分量(kg/m3

図ー8 中心水分量と平均水分量の比較 0

50 100 150

0 5000 10000 15000 比抵抗(Ωcm)

水分量(kg/m3

中心水分量 平均水分量

0 50 100 150

0 10 20 30

外部からの距離(mm)

10日後 11日後 12日後 14日後 15日後

図ー7 解析結果(吸水過程)

土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)

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参照

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