淀 川
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淀 川 本
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水 田
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水 田 施 用 農 薬
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の 流 出 特 性 解 析
流 出 特 性 解 析
流 出 特 性 解 析
流 出 特 性 解 析
2014 年 3 月
川 村 裕 紀
目次
第
1 章 序論 ・・・ 1 ∼ 7
1.1 農薬使用の歴史 1.2 農薬使用の現状 1.3 農薬の種類 1.4 農薬を取り巻く環境 1.5 農薬が水環境に与える影響 1.6 これまでの研究 1.7 本研究で明らかにする内容 1.8 研究発表 1.9 各章の構成第
2 章 調査概要と調査河川の特徴 ・・・ 7 ∼ 12
2.1 序 2.2 淀川の調査概要 2.3 淀川上流域の調査概要 2.4 淀川流域内の小中規模河川の調査概要 2.5 淀川出水時の調査概要 2.6 淀川の流域特性 2.7 桂川の流域特性 2.8 宇治川の流域特性 2.9 木津川の流域特性 2.10 淀川流域内中小規模河川の流域特性 2.11 調査期間中の降水量と流量第
3 章 調査概要と調査河川の特徴 ・・・ 13 ∼ 32
3.1 序 3.2 一般水質項目の現地分析方法 3.3 一般水質項目の室内分析方法 3.4 農薬の現地測定方法 3.5 試料作成方法 3.6 試料の分析方法 3.7 分析対象にした農薬の特性 3.8 農薬の分析出現時間と定量下限濃度第
4 章 淀川流域の農薬流出特性 ・・・ 32 ∼ 39
4.1 序 4.2 淀川の農薬流出特性 4.3 桂川の農薬流出特性 4.4 宇治川の農薬流出特性 4.5 木津川の農薬流出特性 4.6 小規模河川の農薬流出特性 4.7 淀川出水時の農薬流出特性第
5 章 淀川流域の農薬流出時期解析 ・・・ 40 ∼ 45
5.1 序 5.2 淀川における農薬流出時期 5.3 桂川における農薬流出時期 5.4 宇治川における農薬流出時期 5.5 木津川における農薬流出時期 5.6 まとめ第
6 章 淀川流域での平水時と出水時における農薬総流出負荷量の比率比較・・・46 ∼ 49
6.1 序 6.2 淀川における農薬総流出負荷量の比率比較 6.3 桂川における農薬総流出負荷量の比率比較 6.4 宇治川における農薬総流出負荷量の比率比較 6.5 木津川における農薬総流出負荷量の比率比較 6.6 まとめ第
7 章 淀川流域の農薬流出率 ・・・ 50 ∼ 58
7.1 序 7.2 農薬の流出率推定方法 7.3 淀川の農薬流出率 7.4 桂川の農薬流出率 7.5 宇治川の農薬流出率 7.6 木津川の農薬流出率 7.7 まとめ第
8 章 調査頻度における農薬流出負荷量の差異 ・・・ 59 ∼ 70
8.1 序 8.2 淀川の調査頻度と農薬流出量の差異 8.3 桂川の調査頻度と農薬流出量の差異 8.4 宇治川の調査頻度と農薬流出量の差異 8.5 木津川の調査頻度と農薬流出量の差異 8.6 小規模河川の調査頻度と農薬流出量の差異 8.7 まとめ第
9 章 農薬流出負荷量の物質収支 ・・・ 71 ∼ 72
9.1 序 9.2 上流三河川と三河川合流後の淀川での農薬流出負荷量の収支 9.3 まとめ第
10 章 農薬流出負荷量と流域面積および水田面積の関係 ・・・ 73 ∼ 74
10.1 序 10.2 農薬流出負荷量と流域面積および水田面積の関係 10.3 まとめ第
11 章 水質基準に基づいた評価 ・・・ 75 ∼ 80
11.1 序 11.2 淀川の農薬類水道水質基準による評価 11.3 桂川の農薬類水道水質基準による評価 11.4 宇治川の農薬類水道水質基準による評価 11.5 木津川の農薬類水道水質基準による評価 11.6 まとめ第
12 章 総括 ・・・ 81 ∼ 82
謝辞 ・・・
83
第1 章 序論 1.1 農薬使用の歴史 我々人類は野生の動植物を飼育化、栽培化する技術を習得し、農耕事業を発展させてきた。そ の中で複雑であった自然生態系をよりシンプルにした農地生態系へと変化させてしまった。その 結果、病害虫が発生し、それにより人類は様々な被害を受けることになった。病害虫による被害 は、古代エジプト時代から記録が残っており、病害虫を駆除する方法として水田内に鯨油を注ぎ、 稲葉から病害虫を払い落とし駆除する方法がとられてきた。1700 年代には除虫菊を使用し、作物 を虫から守る手法が確立され、1800 年代には近代農薬とされる、硫酸ニコチン、石油、鉱油、鯨 油などの天然化合物を利用した駆除、また石灰硫黄合剤、ボルドー液、青酸ガス、二酸化炭素な どの無機化合物を利用した駆除が行われてきた。1939 年には人類で初めてとなる有機塩素系殺虫 剤農薬の DDT が発明された。これにより、人間が大量に合成可能な有機化合物により、農作物 に被害を与える害虫に対して安定的に対処出来る術を手に入れた。 日本では、第二次世界大戦後に外国から輸入された有機リン系農薬、有機塩素系農薬など多種 多様な合成農薬が安価で販売され、農耕地、非農耕地を問わず多量に農薬が散布された。農薬施 用によって病害虫や雑草防除には大きな効果がもたらされたが、農薬による食品・環境汚染、人 体への被害を引き起こし社会問題ともなった。 1.2 農薬使用の現状 前述の通り、我々は、化学合成が可能な有機化合物による農薬を手に入れ、多種多様の化学物 質を生産し使用してきた。現在、世界にはCAS 登録番号が付与された化学物質の数が約 3000 万 種あり、工業的に生産されているものは約10 万種とされている。さらに、世界で年間 1000 トン 以上生産される化学物質は5000 種程度とされている。 合成された農薬においても、現在では有効成分538 種類の農薬が登録されており、有効成分を 組み合わせた農薬製剤の登録数は4516 種類に至る。最近の農薬のトレンドとして、低薬量で効果 を発揮し、人畜や作物に対する安全性が高く環境負荷が小さいことが要求されている。そのよう な現状において、農薬成分単体での使用ではなく、様々な効果が期待できるよう農薬の有効成分 の良いところをブレンドし、農薬製剤として出荷されている。農薬製剤としての主な使用目的を 表1.1 にまとめる。 表1.1 農薬製剤の使用目的 項目 目的 (1) 少量の農薬を希釈し、田畑に均一に散布する。 (2) 農薬の効力を最大限に発揮させる。 (3) 農薬の短所をカバーする。 (4) 使用者の安全性を高める。 (5) 環境負荷を低減させる。 (6) 作業性を向上させ、省力化を図る。 (7) 既存剤に新しい機能を付与し、用途を拡大させる。 農薬の散布量は 1000m2あたり数百 mg∼数百 g の有効成分で効果が得られるとされているが、 少量の農薬を田畑に均一に散布することはとても難しい。そこで有効成分を希釈し散布する手法 がとられている。農薬の希釈方法として、表1.2 にまとめる。
表1.2 農薬の希釈方法 希釈方法 詳細 粉剤 農薬の有効成分を鉱物質と混合して散布する方法。 粒剤 農薬の有効成分を鉱物質と混合し凝集させて散布する方法。 乳剤 有機溶剤に農薬を溶解させ乳化剤を加え、それを水で希釈して乳化液を散 布する方法。 水和剤 水に溶けにくい農薬の有効成分を微粒子化させ、界面活性剤と水で希釈し て散布する。 エマルジョン製剤 乳化剤を水の中に投入して散布する方法。 また、国内の農業を取り巻く環境として、農業従事者の年齢が高齢化しており、加えて専業農 家より兼業農家へと事業形態が大きく変化している。そのような中で、病害虫防除作業の軽減化 が求められており、省力化や軽作業化が要望されている。現状では、それらの要望を具現化した 画期的な散布方法が提案されている。代表的事例として、育苗箱処理と畦畔散布などが挙げられ る。 育苗箱処理は、長期残効型の水稲育苗箱処理剤を使用し、省力性と効果の安定性が評価され、 普及率は年々増加している。特に近年は、生産者の高齢化や水田近隣で住宅地開発などが増加し たことにより、散布式の水田防除の実施が困難な状況も多くなっている。また、農薬の散布量を 削減させたり、農薬を使用しない特別栽培農作物の農地面積が増えており、散布式の農薬散布で は近隣農地へのドリフトも考えられることから、育苗箱処理剤での病害虫防除は欠かせないもの となってきた。さらに、現在の育苗箱処理剤はマイクロカプセル方式によって防除適期に自然と カプセルが溶けることで確実な農薬散布が可能となっている。育苗箱処理剤のトレンドを見ると、 多くの害虫・病害・細菌への効果や長い残効性を付与させる開発が行われている。 畦畔散布は、農薬成分を錠剤や水和剤、乳剤などにして、水田の畦畔部より水田に投入する手 法である。畦畔より水田内に農薬を投入することで、従来行われていた水田内に立ち入り噴霧機 を使用する散布方法とは異なり、人体への農薬影響や空気中への拡散などが発生しにくく、省力 化がはかれる。現在使用されている農薬の散布方式を表1.3 にまとめる。 表1.3 農薬の散布方式 農薬のタイプ 散布方法 乳剤、水和剤、フロアブル、顆粒水和剤 ノズルによる噴霧散布 投げ込み剤、ペースト剤、塗布剤 畦畔により投げ込み、水田内に配置 育苗箱 育苗箱の状態で農薬を吸着等 1.3 農薬の種類 現在水田に散布されている農薬は、効果別に分類した場合、大きく分けて3 種類に分類できる。 まず1 つ目に除草剤が挙げられる。除草剤の使用目的は、水田内に水稲以外の植物(主として雑 草)を生えさせないようにするために散布される。散布される時期は、田植え直後∼5 日後頃まで に散布される農薬を初期剤、田植え20 日 30 日後頃までに使用する除草剤を中期剤、それ以降 に使用する除草剤が後期剤と定義されている。また1回の処理で初期と中期の両方の期間をカバ ーできる除草剤を初中期一発剤と呼ばれている。現在の除草剤のトレンドは、初中期一発剤が多 くを占めている。 次に、2 つ目の効果として殺虫剤が挙げられる。殺虫剤の使用目的は、害虫が水稲に付着し被 害を与える場合、殺虫剤を使用して害虫を死滅させ、水稲の成長をよりスムーズに行うために使
用されている。また、これまでは害虫の寄生が確認されてから農薬を散布していたが、近年では 予防という概念から、害虫の寄生が確認される前でも散布している農家も存在する。殺虫剤の散 布時期は田植え時期により異なり、6 月∼8 月頃にかけて多く散布されている傾向がある。 最後に、3 つ目の効果として殺菌剤が挙げられる。殺菌剤の使用目的は、水稲に付着し被害を 与える細菌の増殖を抑制して死滅させる。細菌により水稲が枯れたり、穂が付かなかったりする ことを防ぐ。近年では予防という概念から、細菌による被害が確認される前に散布されている。 殺菌剤の散布時期は田植え時期により異なり、6 月∼8 月頃にかけ多く散布されている傾向がある。 農薬の種類と散布時期を表1.4 にまとめる。 表1.4 農薬の種類と散布時期 農薬の種類 散布時期 対象物質 除草剤(初期剤) 田植え後7 日後まで メフェナセット、ブタクロール等 除草剤(中期剤) 田植え後20 日後から 30 日後まで ジメタメトリン、シメトリン等 除草剤(初中期剤) 田植え後 7 日後から 30 日後まで ブロモブチド、プレチラクロール等 除草剤(後期剤) 田植え後25 日後から 50 日後まで ダイムロン等 殺虫剤 適時 MEP、マラソン、ダイアジノン等 殺菌剤 適時 ピロキロン、イソプロチオラン等 1.4 農薬を取り巻く環境 農薬を取り巻く環境として、前述の農業従事者の高齢化や事業形態の変化などを述べてきたが、 その他にも法律や指針等で年々農薬の使用は規制、低量化しているのが現状である。2007 年には 「農地・水・保全管理支払交付金」が国から示され、環境負荷や農作物への残留の低減を目的と した特別栽培農産物や特別栽培米などが注目されている。また、消費者のトレンドとして現在農 作物への低農薬、減農薬、無農薬、有機農法などの栽培方法が脚光を浴びている。このように、 農地における農薬使用量は減少傾向となっている。表 1.5 に近畿圏における農薬出荷量の推移を 示す。 表1.5 近畿圏における農薬出荷量の推移(t/年) 県名 1995 年 2000 年 2005 年 2010 年 三重県 215.53 116.11 92.15 69.22 滋賀県 195.14 137.10 91.40 39.17 奈良県 22.54 17.90 30.41 36.10 京都府 118.09 73.26 48.90 26.74 大阪府 87.76 49.67 44.81 56.45 1.5 農薬が水環境に与える影響 水田で使用される農薬は当然ながら水に溶解もしくは土に吸着され、作物に取り込まれる。こ の農薬のメカニズムにより農薬成分の効果が発揮されるが、農薬を散布することで、水に含まれ た農薬が流出したり、散布時には農薬成分が大気中に拡散したりする。近年、農薬を散布した際 に拡散した農薬による近隣住民への健康被害や、収穫前の農作物に散布された農薬が予期せぬ形 で付着するトラブルが発生している。このように、予期せぬ形で環境中に放出される現象はドラ フトと呼ばれている。万が一、散布された農薬が水環境に放出された場合は、公共用水域を汚染 する事態になる。公共用水域での農薬の管理手法では、水道原水での検出の可能性があるなど、 水道では水質管理上留意すべき項目とされており、『水質管理目標設定項目と目標値』にて 120
種類の農薬で目標値が定められている。さらに前述の『水質管理目標設定項目と目標値』の中で は個々の農薬の目標値に加え、設けられた算出方法によって求められる検出指標値(DI 値)が『1』 を越えないこととされている。 しかしながら、農薬は稲作や特定地域の特定銘柄作物の地域一斉栽培が多いことから、農薬の 同時期散布が水道水源や生態系への最大の環境リスクをもたらし、問題を招くと考えられる。ま た農業による水源汚染の形態が非特定汚染源からの排出によるものであり、特定汚染源からの汚 染対策のような効果的な対策を打ち出すことが困難な現状にある。現に、農薬施用後の水田掛け 流しや、田植え前の代掻き期の排水により農地から多量の懸濁態物質(SS)や農薬が流出するとい うことが様々な研究からわかってきた。現在販売されている農薬は散布後約1 ヶ月以内でその量 が半減する化学合成になっており、掛け流しなどを自粛することにより大半の農薬流出は未然に 防ぐことが可能であるが、降雨による流出に関して対策を打ち出すことは、現時点では、ほぼ不 可能である。したがって、農薬が水環境中に流出することを完全に防ぐことは不可能と考えた方 がよい。 前述の理由から、現在、日本の水環境において農薬による重大な環境汚染は発生していないが、 継続的な視野で問題を注意深く調査する必要がある。 図1.1 非特定汚染源からの河川への流出形態 1.6 これまでの研究 既往の研究では、農薬が水環境に与える影響として、どのような状況下で流出しやすいのか、 流出する時期はどの期間なのか、流出することでどのような影響が考えられるかを観測値から評 価したり、GIS を用いた流出シミュレーションを行って、研究されてきた経緯がある。 特に、農薬が水環境に流出する報告がなされた1980 年代後半より農薬の流出特性の研究が注目 され、1990 年代や 2000 年代前半まではゴルフ場からの農薬流出などが高い話題性を持って研究 されていた。 しかし近年では環境ホルモンや医薬品、有機フッ素化合物などの微量化学物質による水源汚染 が注目されはじめ、農薬に注がれる視線は昔ほどではない。しかしながら、現在でも農薬は依然 として流出しており、水質管理上の重要な項目であることに間違いない。 これまで、水環境における農薬流出を取り扱った研究は、流域面積規模が 200km2 以下の中小 規模河川を対象に多くの研究がなされてきた。これは、農薬による水環境汚染の形態が、非特定 汚染源であることで、上流域から農薬の流出を捉えようとした結果である。したがって水田内に 散布した農薬の変化や、水田から流出する農薬の濃度や負荷量はどの程度になるか、さらに水田
規模河川を対象とした研究は多く実施されているが、広大な流域規模の河川を対象とした農薬流 出についての調査研究はほとんど報告されていない。 1.7 本研究で明らかにする内容 本研究では、既往の研究では現在までほとんど明らかにされることのなかった流域面積が 1000km2 を超える大規模流域を対象に、自治体等で実施されている公共用水域の水質モニタリン グ調査の最大10 倍になる高頻度調査を実施した。高頻度調査を実施することにより、農薬流出の 季節変化や、時系列的な農薬使用のトレンド、流域内に散布された農薬がどの程度流出するか、 などが高い精度で解析できる。 このような大規模流域河川の高頻度定期調査による研究は、農薬流出について前例がなく、農 薬の流出負荷削減対策を図る上で貴重な研究になると考えて、研究を行った。 1.8 研究発表 本研究において、学会発表ならびに研究論文として記載された内容を下記に示す。 <投稿論文(査読付き)> 1) 海老瀬潜一・川村裕紀:『淀川本川の高頻度定時調査と出水時調査による農薬流出評価』, 水環境学会誌,Vol.29,(2006),No.11,pp.705-713
2) Senichi EBISE・Hironori KAWAMURA:『Frequency of Routine and Flooding-stage Observations for Precise Annual Total Pollutant Loads and their Estimating Method in the Yodo River』,
Journal of Water and Environment Technology,Vol.6, (2008), No.2, pp.93-101 3) 川村裕紀・海老瀬潜一:『桂川・宇治川・木津川における農薬流出特性』,
土木学会G 論文集,Vol.68,(2012),No.7,Ⅲ_775-Ⅲ_785
4) Hironori KAWAMURA ・ Senichi EBISE :『 High-frequency observations of pesticide runoff characteristics in the Yodo River with reference to three major tributaries』,
Journal of Water and Environment Technology,Vol.12,(2014),No.3,pp.309-322 <研究発表> 5) 海老瀬潜一・川村裕紀:『円錐形状の屋久島における酸性沈着物の陸水影響分布』,日本陸水 学会第69 回大会,(新潟:H16.9) 6) 海老瀬潜一・仲尾佳祐・隅田賢吾・川村裕紀:『円錐形状高山の屋久島渓流河川水質のNa/Cl・ SO42-に分布特性』,日本陸水学会第70 回大会,(大阪:H17.9) 7) 海老瀬潜一・川村裕紀:『淀川本川での平水時と出水時における水田施用農薬の流出変化』, 第40 回日本水環境学会年会,(宮城:H18.3) 8) 海老瀬潜一・川村裕紀・小泉祐樹・村上正樹:『淀川本川の高頻度定時調査と出水時調査に よる水質変化特性と総流出負荷量』,日本陸水学会第71 回大会,(愛媛:H18.9) 9) 海老瀬潜一・川村裕紀:『大規模河川の淀川本川および市街地支川における Chl-a の流出特 性の評価』,日本陸水学会第72 回大会,(茨城:H19.9) 10)海老瀬潜一・川村裕紀:『桂川・宇治川・木津川三川の農薬流出特性』,日本陸水学会第 76 回 大会,(島根:H23.9) 11)川村裕紀・海老瀬潜一:『桂川・宇治川・木津川三川の農薬流出特性と調査頻度』,第 46 回日 本水環境学会年会,(東京:H24.3) 12)川村裕紀・海老瀬潜一:『淀川流域における農薬流出特性とその経年変化』,第 15 回日本水 環境学会シンポジウム,(佐賀:H24.9) 13)川村裕紀・海老瀬潜一・藤田満胤:『桂川・宇治川・木津川の合流に伴う淀川本川での農薬 濃度変化』,日本陸水学会第77 回大会,(愛知:H24.9) 14)川村裕紀・海老瀬潜一:『淀川水系における農薬流出の支配因子の推定』第47 回日本水環境 学会年会,(大阪:H25.3) 15)川村裕紀・海老瀬潜一・松川周太郎:『淀川における水田施用農薬の流出特性』,第 48 回日
1.9 各章の構成 本論文の、各章での記載内容と、簡潔な詳細を下記に記載する。 第1 章では、農薬がこれまでにどのように使用され、水環境に影響を与えてきたかを記載し、 現状の問題点についての研究課題を抽出した。 第2 章では、大規模流域河川を対象とした農薬流出調査の概要をまとめた。詳細は、2001 年か ら2012 年までに調査した河川流域の特性と、調査期間や調査頻度などについてまとめた。また、 農薬の流出を左右する要因である、調査河川の流量と流域内降水量についても記載した。 第3 章では、農薬の調査を実施するにあたり、調査方法と農薬の分析方法を詳しく記載した。 農薬の分析は、当研究室にて実施している一般水質の研究と比較し、分析の精度や試料水の調整 など注意深く対応する必要がある。また、農薬の分析においても、様々な要因から、検出状況が 異なるため、分析条件を記載することにした。さらに、測定対象の農薬についての基本物性値を 文献調査して記載した。 第4 章では、調査を行った河川ごとの農薬流出特性を記載した。 第5 章では、淀川流域での農薬流出時期を明らかにした。 第6 章では、淀川流域での平水時と出水時における農薬総流出負荷量の比率の比較を行った。 第7 章では、調査河川での農薬流出率を解析した。 第8 章では、調査頻度による農薬流出負荷量算定の差違として、農薬の流出量を調査する上で 必要な調査精度について解析を行った。 第9 章では、農薬負荷量の物質収支を解析した。 第10 章では、農薬の流出負荷量と流域面積ならびに流域内の水田面積についての関係を明らか にした。 第11 章では、農薬の水道水質基準の DI 値について解析した。 このような詳細な調査結果を基に、長期間にわたり淀川流域内の農薬の流出特性を研究した。 その結果と解析結果を基に、流域内の農薬流出を抑制するためにはどのように流域内での管理を 行えば良いかを提案する。
参考文献
1) 海老瀬潜一・川村裕紀:淀川本川の高頻度定時調査と出水時調査による農薬流出評価,水環境学
会誌,Vol.29,(2006),No.11,pp.705-713
2) Senichi EBISE・Hironori KAWAMURA:Frequency of Routine and Flooding-stage Observations for Precise Annual Total Pollutant Loads and their Estimating Method in the Yodo River,Journal of Water and Environment Technology,Vol.6, (2008), No.2, pp.93-101
3) 川村裕紀・海老瀬潜一:桂川・宇治川・木津川における農薬流出特性,土木学会 G 論文集,Vol.68, (2012),No.7,Ⅲ_775-Ⅲ_785
4) Hironori KAWAMURA・Senichi EBISE:High-frequency observations of pesticide runoff characteristics in the Yodo River with reference to three major tributaries,Journal of Water and Environment Technology, Vol.12,(2014),No.3,pp.309-322 5) 須戸幹:琵琶湖流域河川における水田施用農薬の残留の現状とリスク低減対策の提案,河川整備 基金助成事業,助成番号:22-1211-024, 2010. 6) 津田泰三,中村忠貴,井上亜紀子,田中勝美:琵琶湖水における農薬濃度の農薬出荷量による評 価,環境化学,Vol. 19, No. 2, pp.221-228, 2009. 7) 農林水産省農産園芸局植物防疫課監修:農薬要覧(2000,−,2012),日本植物防疫協会. 8) 財団法人 琵琶湖・淀川水質保全機構:BYQ水環境レポート(琵琶湖・淀川の水環境の現状 平 成21年度),pp.16, 2011. 9) 環 境 省 HP : 水 産 動 植 物 の 被 害 防 止 に 係 る 農 薬 登 録 保 留 基 準 に つ い て , URL : http://www.env.go.jp/water/sui-kaitei/kijun.html. 10) 辻孝三:農薬製剤の基礎と今後の展望,日本農薬学会誌,Vol.38,(2013),No.2,pp.205-212 11) 藤田茂樹:農薬製剤・施用法の歩みと今後の展望,日本農薬学会誌,Vol.38,(2013),No.2,pp.213-217
第2 章 調査概要と調査河川の特徴 2.1 序 3 日に 1 度もしくは 6 日に 1 度、7 日に 1 度の高頻度調査により、淀川流域内の水田で散布され た農薬の流出特性を明らかにする。調査河川や調査頻度、調査期間を下記に記載する。 農薬の流出調査は、農薬が散布される時期に合わせた調査が必要になると考えて、4 月末頃か ら10 月上旬までを重点的に調査し、流出傾向の検討を行った。また、水田内に滞留する農薬が降 雨により流出するのではないかとの推測をもとに、淀川において流量増大時(以下、出水時とする) に調査を行った。 2.2 淀川の調査概要1) 淀川における調査期間は、2001 年 5 月 9 日から同年 9 月 9 日(計 42 回)までと 2004 年 5 月 6 日 から同年9 月 15 日(計 45 回)および 2005 年 4 月 21 日から同年 9 月 24 日(計 53 回)に、淀川新橋で 3 日に 1 度の定時に左岸部、中央部、右岸部の淀川横断方向で採水を行った。採水を行った左岸 部、中央部、右岸部は橋欄干にビニールテープを巻き付け、同地点での採水を行った。採水はバ ケツにφ9mm のポリエステルロープを取り付け、欄干よりバケツを河川に投げ入れ、河川表流水 を採取した。採取した試料水は日光による分解を防ぐため、あらかじめ農薬分析用に洗浄した 600ml 用褐色ビンを試料水にて共洗いし、共洗い後褐色ビンに採取した試料水を移し替えた。試 料水入りの褐色ビンを研究室に持ち帰り、精密機器分析を実施した。また、2011 年 4 月 26 日か ら同年12 月 10 日(計 39 回)に淀川新橋で 6 日に 1 度の定時に左岸部、中央部、右岸部でそれぞれ 採水を行った。採取した試料水は、前述の通り、日光による分解を防ぐため、あらかじめ農薬分 析用に洗浄した600ml 用褐色ビンを試料水にて共洗いし、共洗い後褐色ビンに採取した試料水を 移し替えた。移し替えた試料水を研究室に持ち帰り、それぞれ採水した3 つの試料を等量ずつブ レンドし、1 つの試料にした上でろ過後試料の調整を行って精密機器分析を実施した。 2.3 淀川上流域の調査概要1) 淀川上流域の調査では、淀川として合流する前の桂川(宮前橋)、宇治川(御幸橋)、木津川(御幸 橋)での調査期間は、2007 年 4 月 14 日から同年 12 月 15 日(計 36 回)に、7 日に 1 度の定時に採水 を行い、研究室に持ち帰り、精密機器分析を実施した。また、2008 年 4 月 25 日から同年 10 月 1 日(計 54 回)と 2011 年 4 月 23 日から同年 11 月 22 日(計 72 回)、および、2012 年 4 月 21 日から同 年11 月 20 日(計 72 回)に淀川の上記三河川で 3 日に 1 度の定時に採水を行って、研究室に持ち帰 り、精密機器分析を実施した。採水を行った桂川(宮前橋)、宇治川(御幸橋)、木津川(御幸橋)は橋 欄干にビニールテープを巻き付け、同地点での採水を行った。採水はバケツにφ9mm のポリエス テルロープを取り付け、欄干よりバケツを河川に投げ入れ、河川表流水を採取した。採取した試 料水は日光による分解を防ぐため、あらかじめ農薬分析用に洗浄した600ml 用褐色ビンを試料水 にて共洗いし、共洗い後褐色ビンに採取した試料水を移し替えた。試料水入りの褐色ビンを研究 室に持ち帰り、精密機器分析を実施した。 2.4 淀川流域内の中小規模河川の調査概要1) 淀川流域内の中小規模河川調査では、2005 年 5 月 7 日から同年 9 月 25 日(計 48 回)まで、枚方 市街地河川である穂谷川、天野川、高槻市街地河川である芥川で3 日に 1 度のほぼ定時にそれぞ れで採水を行い、研究室に持ち帰り、精密機器分析を実施した。中小規模河川調査では、河川流 水中に立ち入り、流水中にあらかじめ農薬分析用に洗浄した600ml 用褐色ビンを浸し試料水にて 共洗いし、共洗い後、再度褐色ビンを流水に浸し試料水を採取した。試料水入りの褐色ビンを研
2.5 淀川出水時の調査概要1) 淀川上流域において降雨があり流量が増加する際に淀川新橋にて連続調査を行った。調査期間 は2005 年 6 月 29 日から 7 月 11 日、9 月 5 日から 9 月 18 日までの合計 2 回の調査で、淀川定期 調査と同じ調査地点の淀川新橋で行った。調査地点は定期調査と同様に左岸部、中央部、右岸部 それぞれで淀川横断方向に調査を行った。採水を行った左岸部、中央部、右岸部は橋欄干にビニ ールテープを巻き付け、同地点での採水を行った。採水はバケツにφ9mm のポリエステルロープ を取り付け、欄干よりバケツを河川に投げ入れ、河川表流水を採取した。採取した試料水は日光 による分解を防ぐため、あらかじめ農薬分析用に洗浄した600ml 用褐色ビンを試料水にて共洗い し、共洗い後褐色ビンに採取した試料水を移し替えた。試料水入りの褐色ビンを研究室に持ち帰 り、精密機器分析を実施した。調査頻度は降雨により上流部で水位のピークが見られてから調査 地点に水位のピークに達するまでは調査間隔を短くとり、その後、流量ピークから徐々に間隔を 長くして流量が平水状態に近くなるまで調査を続けた。リアルタイムの流量データは取得困難な ため、国土交通省水質水文データベース 3)内のリアルタイム水位データより推測し調査タイミン グを設定した。 2.2 から 2.5 に記載した調査対象河川と調査期間、調査頻度、調査回数を表 2.1 にまとめる。 また、調査地点の位置関係図を図2.1 に示す。 表2.1 調査対象河川と調査期間、調査頻度、調査回数 調査対象河川 調査期間 調査頻度 調査回数 淀川(淀川新橋) 2001/5/9−2001/9/9 3 日に 1 度 42 回 淀川(淀川新橋) 2004/5/6−2001/9/15 3 日に 1 度 45 回 淀川(淀川新橋) 2005/4/21−2005/9/24 3 日に 1 度 53 回 淀川(淀川新橋) 2011/4/26−2011/12/10 6 日に 1 度 39 回 (混合試料) 桂川(宮前橋)・宇治川(御幸橋)・木津川(御幸橋) 2007/4/14−2007/12/15 7 日に 1 度 36 回 桂川(宮前橋)・宇治川(御幸橋)・木津川(御幸橋) 2008/4/25−2008/10/1 3 日に 1 度 54 回 桂川(宮前橋)・宇治川(御幸橋)・木津川(御幸橋) 2011/4/23−2011/11/22 3 日に 1 度 72 回 桂川(宮前橋)・宇治川(御幸橋)・木津川(御幸橋) 2012/4/21−2012/11/20 3 日に 1 度 72 回 穂谷川・天野川・芥川 2005/5/7−2005/9/25 3 日に 1 度 48 回 淀川(淀川新橋) 出水時調査 2005/6/29−2005/7/11 適時 19 回 淀川(淀川新橋) 出水時調査 2005/9/5−2005/9/18 適時 29 回
図2.1 調査地点の位置関係図 2.6 淀川の流域特性2),5) 淀川は近畿圏の主要水源であり、約 1,200 万人が浄化した水道水を飲用している。淀川の流量 は、琵琶湖・宇治川流域の融雪期、木津川流域は台風期、桂川流域は梅雨期に流量が増加するとい うそれぞれ異なった気象特性を持っている。また上流の琵琶湖・天ヶ瀬ダムが流量調節機能を有す るために、宇治川では人工的な流量調節がなされている。 淀川は桂川、宇治川、木津川がそれぞれ大阪府北部の京都府との県境の付近で合流し大阪府北 部、大阪市内を流れ大阪湾に達する。淀川の流域面積は、調査地点の淀川新橋までで7377km2で 流域内の水田面積は411.9km2となっている。淀川の流域面積と水田面積では主に琵琶湖流域の占 める比率が大きい。 2.7 桂川の流域特性2),5) 桂川は、水源の多くを京北の山間部とし、亀岡盆地から嵐山を経て京都市の市街地西部を南下 する。桂川には京都市街地を流れる鴨川、西部を流れる天神川、西高瀬川、新川、小畑川等が流 入している。桂川の流量は不安定で、大量の都市排水流入による時間的変動を伴うなど、典型的 な都市河川の形態をしている。 桂川の、淀川における流量構成比は13%で、流域面積は 1,100km2である。 また、桂川流域内の水田面積は、亀岡盆地をはじめ、南丹市に多く存在し、33.1km2 となって いる。稲作の開始時期は5 月中旬より開始され、9 月下旬頃に収穫される。 2.8 宇治川の流域特性2),5) 宇治川は、琵琶湖から流出する瀬田川を流れ、京都府に入って宇治川となりの天ヶ瀬ダムを経 由する流れと、南郷洗堰直前から分流されて関西電力発電水路を経て宇治川塔ノ島右岸部で宇治 川に復流する2 つのルートが存在する。さらに、宇治川には、伏見地域を南下する東高瀬川や山
より宇治川は淀川の流量構成比の7 割近くを占めている。琵琶湖流域を除いた宇治川のみの流域 面積は506km2である。 また、琵琶湖を含めた宇治川の流域面積は4355 km2で、琵琶湖の湖面面積は670 km2で琵琶湖 の流域面積は3848 km2である。したがって、宇治川の豊富な流量はほとんどが琵琶湖からの流出 水である。 最後に宇治川流域の水田面積は、301.8 km2となっており、そのほとんどが琵琶湖流域に存在し ている。しかし琵琶湖内での滞留時間を考慮すると北湖に流入する河川が、琵琶湖から流出する までに要する時間は平均で4 年から 5 年程度となる。したがって、農薬を取り扱う場合南湖以降 もしくは琵琶湖流出後の水田で議論することが妥当と考えた。この考えから、琵琶湖を除いた宇 治川と瀬田川の流域面積は591km2で水田面積は14.7km2とした。 琵琶湖を主とする宇治川流域内の稲作の開始時期は4 月下旬で、9 月中旬頃に収穫されている。 また、瀬田川と宇治川の流域では、稲作の開始時期は5 月中旬で、9 月下旬頃に収穫される。 2.9 木津川の流域特性2),5) 木津川は、三重県中央部を水源とし青山高原の水を集め、伊賀盆地で鈴鹿山脈からの拓殖川、 布引山地からの服部川などの支流をあわせ西流して、笠置山地を貫く峡谷となって流れ、京都盆 地の南端を流下する。木津川の流域面積は1,596km2で、そのうち 89%を山間部が占める。また、 木津川の淀川における流量構成比は17%である。 さらに木津川の水田面積は、伊賀盆地をはじめ、上野市、奈良市、宇陀市などに多く存在し、 70.7km2となっている。稲作の開始時期は4 月中旬で、9 月上旬頃に収穫される。 2.10 淀川流域内中小規模河川の流域特性2),5) はじめに、枚方市内の淀川左岸に注ぎ込む穂谷川は流域面積14.4km2であり、流路延長は10.0km である。主流域は枚方市で、流域のほとんどが京阪奈丘陵と生駒山地になり、宅地開発などによ る急激な都市化が進んだ。都市化の影響等もあり、流域内の水田面積は1.0 km2と少ない。 次に、穂谷川と同じく、枚方市の淀川左岸に注ぎ込む天野川は流域面積51.3 km2であり、流路 延長は 14.9km である。流域は枚方市、交野市、四條畷市、奈良県生駒市の 4 市にまたがってい る。穂谷川と同様に、流域内の都市化が進み、流域内の水田面積は2.1 km2となっている。 最後に、高槻市の淀川に右岸から注ぎ込む芥川は流域面積52.0 km2であり、流域は高槻市と京 都府京都市となる。上流には摂津峡などが存在し、自然豊かな河川であるが、下流域は住宅地が 多く、水田面積は1.7 km2と少ない。 淀川流域内の中小規模河川での稲作開始時期は、4 月下旬で、9 月中旬頃に収穫されている。 2.6 から 2.10 に記載した調査対象河川流域特性の緒元を表 2.2 にまとめる。
表2.2 調査河川の流域特性5),6) 調査河川 流域面積(km2) 水田面積(km2) 水田面積/流域面積 淀川(淀川新橋) 7377 411.9 0.056 桂川(宮前橋) 1100 33.1 0.030 宇治川(御幸橋)・琵琶湖を含む 4355 301.8 0.069 宇治川(御幸橋)・琵琶湖を含めない 591 14.7 0.025 木津川(御幸橋) 1596 70.7 0.044 穂谷川 14.4 1.0 0.069 天野川 51.3 2.1 0.041 芥川 52.0 1.7 0.033 表2.2 に記載の内容を基に、以降の議論を進める。 2.11 調査期間中の降水量と流量3),4) 調査期間中の降水量は、気象庁気象統計情報より入手し、淀川と淀川流域の中小規模河川調査 では大阪府枚方を、桂川流域では京都府京北、宇治川流域では滋賀県大津、木津川では三重県上 野の日降水量を参照した。また、淀川、桂川、宇治川、木津川の流量は、国土交通省近畿地方整 備局淀川河川事務所より調査期間のデータの提供を受けた。流量は、淀川では高浜、桂川では納 所、宇治川では淀、木津川では八幡の測定値を用いた。さらに、中小規模河川調査においては流 水中に立ち入って流速ならびに水深を測定した。流水断面積を求めて流速を乗じて流量とした。 参考文献 1) 川村裕紀:淀川本川および支川における 水田施用農薬の流出特性,2006年度修士論文 2) 川村裕紀・海老瀬潜一:桂川・宇治川・木津川における農薬流出特性,土木学会G論文集,Vol.68, (2012),No.7,Ⅲ_775-Ⅲ_785 3) 国土交通省淀川河川事務所(2004, 2005, 2007, 2008,2011,2012)流量観測値. 4) 気象庁HP(2004, 2005, 2007, 2008,2011,2012)AMeDASの降水量観測値. 5) 財団法人 琵琶湖・淀川水質保全機構:BYQ水環境レポート(琵琶湖・淀川の水環境の現状 平成 21年度),pp.16, 2011. 6) 農林水産省:農林水産省農業センサス(2005,2010)
第3 章 分析方法 3.1 序 農薬の調査を実施するにあたり、従来行っている一般水質項目の調査方法と農薬の分析方法を 詳しく記載する。 農薬の分析は、当研究室にて実施している一般水質の研究と比較し、分析の精度や試料水の調 整など注意深く対応する必要がある。また、農薬の分析においても、様々な要因から、検出状況 が異なるため、分析条件を記載することにした。さらに、測定対象の農薬についての基本物性値 の文献調査をした。 3.2 一般水質項目の現地測定方法1) 3.2.1 水温 (Temperature) 各採水地点で溶存酸素計、EC メーターに付属した水温計により測定する。水温の変化は、 付着藻類や河川中の生物活動や溶存酸素の飽和量の増減に関係する重要な項目である。水温は 日照量の変化や生活雑排水、下水処理場放流水等の流入によって変化する。 3.2.2 電気伝導度 (EC:Electric Conductivity) 電気伝導度とは電気抵抗の逆数で電気伝導率とも言い、河川水中の電流の伝わりやすさを表 す。断面 1cm2、長さは 1cm の溶液の相対する面の間を電気が流れるときに生じる非抵抗の逆 数で示す。単位はS/m であるが、自然水の電気伝導度は小さいので mS/m で表す。 河川水にはさまざまな無機イオンが存在し、電気伝導度はこれらの無機イオン量を示す指標 である。汚れている水は無機イオンの量が多く、無機イオン量が多くなると電気をよく通す。 つまり電気伝導度計の値は高い値を示すようになる。 <測定方法> 電気伝導時計(EC メーター)により測定する。 3.2.3 溶存酸素 (DO:Dissolved Oxygen) 溶存酸素とは、水中に溶解している酸素のことである。水中の有機物質が細菌等による分解 を受けると、溶存酸素が消費されるので、溶存酸素の濃度は水域の有機汚濁の指標となり、単 位はmg/l で表す。また溶存酸素は河川の自浄作用や水中の生物の生存にとって必要不可欠なも のである。有機物質による汚染度の高い水中では消費される酸素の量が多いので溶存する酸素 の量は少なくなる。一般的にきれいな水ほど酸素は多く含まれ、晴天時に水温が上昇して藻類 が著しく増殖する昼間には光合成活動で過飽和の状態になる。 <測定方法> 溶存酸素計(DO メーター)により測定する.
3.2.4 透視度 透視度は水の透明さの程度を示す指標で、主に河川水や下水の透明さあるいは濁りの程度を 採水現場で測定するのに有効である。 <測定方法> 試料水を採取後直ちに透視度計に入れ、その上部から透視し、底部に置いた白い標識板の二 重線がはっきりと識別できるまで、底から試料水を抜いてゆき、二重線の印が見える時点の目 盛りの深さを読み取る。測定中に懸濁物質が沈殿しないように、迅速に作業を行わなければな らない。 3.2.5 水深と流速と流量 1cm 刻みの目盛りのついた 1m のポールを用いて測深を行う。水深は各河川の横断面に対し て穂谷川、芥川は50cm の間隔で、天野川は 1m の間隔で測深を行う。なお、読みとりは目盛り の1/2 まで読む。これらの値をもとに、流水断面積の算定を行った。 同様にプロペラ式の微流速計を用い測定を行う。流速計のスクリューを6 割の水深に維持し、 流速計が約10 秒間の平均流速の安定した値の平均を記録し、再び 2 回目を行い 1 回目と 2 回 目の平均をその位置での流速とする。なお、穂谷川、芥川は 1mの間隔で、天野川は 2mの間 隔でこの測定を行う。 上記で述べた水深と流速をもとに中小規模河川の流量を算出した。なお淀川は流量を自ら測 定することはほぼ不可能であり、淀川河川事務所の協力を得て流量データを頂いた。 3.3 一般水質項目の室内分析方法1) 3.3.1 浮遊物質 (SS:Suspended Solid) 水中の懸濁物質量を測定する水質指標が浮遊物質であり、不溶解性の粒子態物質を表す。粘 土鉱物に含まれる微粒子、動植物プランクトンとその死骸であり、その一方で、生活雑排水・ 工場排水などに含まれる有機物質や金属の沈殿物などで構成されていることが多いが、汚濁の 進んだ河川では有機物質の比率が高くなる。単位はmg/l で表す。 <測定方法> ガラス繊維ろ紙(孔径 1μm)を 105∼110℃の乾燥機で約 2 時間乾燥させ、デシケーター内で自 然に冷ました後、その質量B(mg)を天秤で量る。 そのガラス繊維ろ紙をろ過器に取り付け、試料水500ml(ただし淀川出水時連続調査は 250ml) をろ過器に注ぎ減圧吸引ろ過を行う。残留物質をガラス繊維ろ紙とともにろ過器から取り外し、 再び乾燥器に入れ105∼110℃の乾燥器で約 2 時間乾燥させた後、デシケーター内で同様に自然 に冷ました後、その質量A(mg)を天秤で量り、その質量差を求める。
ml
1000
B
-A
mg/l
試料水
浮遊物質
3.3.2 クロロフィル a (Chl-a) クロロフィルは水中の植物プランクトンや付着藻類に含まれる緑色色素であり、クロロフィ ルa、b、c、d に分類される。このうちクロロフィル a は光合成細菌を除くすべての緑色植物に 含まれるものである。水域において、藻類の存在量の目安となり、その値の大小は富栄養化の 進行の指標となる。降雨流出時にはクロロフィルの値は大きくなる、これは晴天が続くと付着 藻類が光合成を行って増殖が活発になって現存量が増加し、その増殖した付着藻類が降雨時の 流速の増大などにより剥離して流出したためである。単位はμg/l で表す。 <測定方法> メンブレンフィルター(孔径 0.45μm)をろ過器に取り付け、試料水 500ml(淀川流下方向の調 査の場合と枚方・高槻市内河川の定期調査は時間的、数量的なこともあり 250ml である。また 淀川出水時連続調査も同様の理由から200ml とした。)をろ過し、メンブレンフィルターを外し、 それを冷凍庫に保管する。保存しておいたメンブレンフィルターを試験管に入れ抽出を行うた めに、90%のアセトン溶液を 10ml(検液量)入れて一昼夜冷暗所に保管してクロロフィルを抽出 し、その試験管の上澄み液を石英ガラスセルにとり、この検液を分光光度計により、750、663、 645、630nm の 4 波長で各々の吸光度を測定し、次式からクロロフィル a を算出する。
の吸光度
・・・
の吸光度
・・・
の吸光度
・・・
の吸光度
・・・
試料水量
検液量
μ
nm
nm
nm
nm
a
Chl
750
D750
663
D663
645
D645
630
D630
1000
ml
ml
D750
-D630
0.10
D750
-D645
2.16
-D750
-D663
11.64
g/l
3.3.3 水素イオン濃度指数 (pH:Potential of Hydrogen) pH とは水の酸性度を示す重要な指標であり、一般的には 25℃の水で pH7 が中性となる。pH7 より大きくなるほどアルカリ性となり、小さくなるほど酸性が強くなる。 一般の河川では、pH6∼8 の中性域にあり、pH5 以下を示す水は異常であると考えられる。酸 性水はコンクリートの河床や堤防を浸食し、農業・水産用水、飲料水や一般工業用水にも不適で ある。工業や鉱物などによる排水や排煙中の酸性物質や、日照量の多い日に活動が活発になる 植物プランクトンや付着藻類の光合成作用などにより影響を受ける。 <測定方法> 試料水及びpH 標準液(pH7)を約 20℃(室温)にする。この pH7 標準液をスターラーで混ぜなが らpH メーターの電極の先端を浸し、pH メーターが標準液の正しい pH 値を示すようにする。 次に、電極を純水でよく洗い、pH9 の標準液でも同様に pH メーターの値が正しくなるように 設定する。これを何度か繰り返し、今度は試料水50ml(原液)に電極を浸し pH 値を測定する。3.3.4 アルカリ度 (Alkalinity) アルカリ度とは、一定量の試料水を強酸で滴定して、一定の pH に達するのに要する酸の等 量数をアルカリ度という。河川水のアルカリ度は上流で低く、下流に行くにしたがい少しずつ 増加する。一般に大理石や石灰石の地層を水が通過したり、アルカリを扱う工場の排水などに 影響されるので、水質汚染の指標となる。単位はmeq/l で表す。 <測定方法> 試料水50ml(原液)をビーカーに取り pH 計の電極を浸し、スターラーで約 10 分混ぜながら、 0.02N(N:ノルマル)の硫酸を pH 値が 4.8 になるまで滴下する。その滴定に要した硫酸 A (ml) から次式によりアルカリ度を算出する。 2
F
0.02N
50
1000
/
滴定硫酸ファクター
滴定硫酸濃度
試料水
アルカリ度
ml
A
l
meq
0.02N の炭酸ナトリウム 50ml に pH 計の電極を浸し、スターラーで混ぜながら、0.02N の硫 酸をpH 値が 4.8 になるまで滴下する。その滴定に要した硫酸 B(ml)から次式により滴定硫酸フ ァクターF2を次式から算出する。ター
炭酸ナトリウムファク
:
滴定硫酸ファクター
0.02N
F
F
B
50
F
1 1 23.3.4 化学的酸素要求量 (COD:Chemical Oxygen Demand) COD は、水中の有機物量を把握する重要な指標で一定の強力な酸化剤を用いて試料水中の被 酸化性物質を酸化する際に消費される酸化剤の量を酸素量に換算して表したものである。私た ちが今回用いた試験方法は、わが国で多く使われている方法で、酸化剤として過マンガン酸カ リウム(KMnO4)を用い酸性条件下、沸騰水浴中で 30 分間反応させる方法である。COD が大き いということは、水中の被酸化物質が多いことを意味し、有機物質量の指標として用いられる ことが多い。単位はそれぞれmg/l で表す。 T-COD(原液)・・・粒子態成分と溶存態成分両方を含めた総 COD D-COD(ろ液)・・・溶存態成分のみの COD P-COD=(T-COD−D-COD)・・・懸濁態成分のみの COD <測定方法> 試料水(原液(T)、ろ液(D)の計 2 本)100ml を室温にして、300ml の三角フラスコにとり、硫酸 10ml をピペッターで入れ、N/40 の過マンガン酸カリウム溶液をビュレットにて 10ml 加え沸騰 水中(100℃)で 30 分間加熱した後、N/40 のシュウ酸ナトリウム溶液をホールピペットにて 10ml 加え、温度が下がらないうちにN/40 の過マンガン酸カリウム溶液をビュレットにて微紅色にな るまで滴下し、この滴下量をA(ml)とする。 これとは別に蒸留水(3 本)100ml についても同様に試験を行い、その滴下量を B(ml)とし、ブ ランクとする。 次に蒸留水(2 本)100ml に硫酸 10ml をピペッターで、N/40 のシュウ酸ナトリウム溶液をホー ルピペットにて 10ml をそれぞれ加え、その混合液が沸騰水中(100℃)で約 5 分間加熱し、温度 が下がらないうちに N/40 の過マンガン酸カリウム溶液をビュレットにて微紅色になるまで滴 下し、その滴下量をD(ml)とし、ファクターとする。 そして蒸留水(2 本)100ml に硫酸 10ml をピペッターで加え、沸騰水中(100℃)で約 5 分間加熱 した後、温度が下がらないうちに N/40 の過マンガン酸カリウム溶液をビュレットにて微紅色 になるまで滴下し、この滴下量をE(ml)とする。次式により COD を算出する。
E
-D
C
C
10
F
のファクター
過マンガン酸カリウム
100ml
1000
0.2
F
B
-A
mg/l
COD
-T
T試料水
100ml
1000
0.2
F
B
-A
mg/l
COD
-D
D試料水
COD
-D
COD
-T
mg/l
COD
-P
−
3.3.5 全有機炭素量 (TOC:Total Organic Carbon)
試料水中の酸化される有機物質の全量を、その主要構成成分であり炭素量で示したものであ
る。COD や BOD とともに有機汚濁物質の指標として用いられてきた。有機物質中の炭素を酸
化して発生する二酸化炭素(CO2)を求め、燃焼酸化方式の赤外吸収法で測定するものであり、
Total Organic Carbon を略して TOC(全有機炭素量)と呼ばれる。この方法は、微生物では分解し がたい有機物質等を含む水中の有機物質までも測れるという利点はあるが、その反面、自然界 では分解されないほとんど無害な有機物質まで測ってしまうので、汚濁源としての正確な実態 を示さない欠点もある。単位はmg/l で表す。 <測定方法> 試料水を取り2 規定の塩酸を加え、窒素ばっ気して、無機態の酸素を追い出し残った有機態 成分だけを測定するもので、一定量の試料水を石英ウールに染み込ませ、酸素が充満した900℃ に熱した炉の中に注入し、水中の有機物質を瞬間的に燃焼させて発生する炭素ガス量を、非分 散型赤外線ガスTOC 分析器によって測定する。
3.3.6 溶存態有機炭素量(DOC:Dissolved Organic Carbon)
水中に存在する溶存態の有機物質中の炭素量を表したものである。有機化合物は炭素と水素、 酸素を主成分としているもので、炭素が酸化されて二酸化炭素の形で定量測定される。単位は mg/l で表す。 <測定方法> ろ過した試料水に2 規定の塩酸を加え、窒素ばっ気して、無機態の酸素を追い出し、残った 有機態成分だけを測定するもので、試料水を酸素とともに 680℃の全炭素測定用酸化触媒充て ん管に送り、ろ過水の有機態を炭素の燃焼により二酸化炭素とした後、その濃度を非分散型赤 外線ガス分析器で測定し、炭素量を求める。 3.3.7 粒子態有機炭素量(POC) 粒子態物質に含まれている有機態の炭素量であり、時間的な変動が割合に小さい。また、富 栄養化に関する藻類の存在量の目安ともなる。単位はmg/l で表す。 <測定方法> 次式により求める。
DOC
TOC
l
mg
POC
/
3.3.8 無機イオン イオンクロマトアナライザーにより測定を行う。イオン交換分離によって目的とするイオン のみを取り出して、電気伝導率検出用セルに送って測定する方法をイオンクロマトグラフィー という。この方法を用いて陰イオン(塩化物イオン、亜硝酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、 硫酸イオン)、陽イオン(ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、マグネシ ウムイオン、カルシウムイオン)の計 10 種類について行う。単位は mg/l で表す。3.4 農薬の現地測定方法2) 調査を行うにあたり、事前に採水用600ml の褐色ガラス瓶を、採水前に洗剤を用いて通常に洗 浄したのち、アセトン(特級)で洗浄し、その後純水で洗い、サンプルビンを斜めもしくは逆さま にして、よく乾燥させる。 また、600ml の採水用褐色ガラス瓶と同様に、後述の固相抽出作業を行った後、保存しておく。 遠沈管の容器は、汚れがたまりやすいので、遠沈管は、ブラシでの洗浄を行った後、薄い酸で浸 したトレーにサンプル瓶を寝かして酸処理を行って汚れを洗浄し、さらに洗剤を用いて通常の洗 浄を行う。その後、アセトン10ml 程度で洗浄し、その後純水で洗い、乾燥させた。 中小規模流域河川調査以外は、橋上よりロープ付バケツで採水し、褐色ガラス瓶に入れた。中 小規模流域河川調査では、流水中に立ち入り褐色ガラス瓶を用いて、流水中に褐色ビンを浸漬さ せ直接、採水を行なった。いずれも試料を採取した褐色ガラス瓶は、氷冷し研究室に持ち帰った。 3.5 試料作成方法2) はじめに、持ち帰った試料水600ml を GF/C ガラス繊維ろ紙(Whatman)でろ過する。ろ過した試 料水は、冷蔵庫の中で低温2℃で保存し、ろ過済みの試料水が 12 本貯まった段階で以下の作業を 行う。 次に、ろ液をアセトン 6ml、純水 30ml でコンディショニングを行った固相抽出カートリッジ
(Bond Elut C18:Agilent Technologies)に通し農薬を吸着させた。農薬を吸着させたカートリッジに
アセトン6ml を通し溶出させる。上記の方法は固相抽出法と呼ばれ、農薬を測定するにあたり最 も多く使用されている農薬抽出法である。 最後に、溶出液に高純度窒素ガスを吹きつけ濃縮させ、濃縮後アセトン 0.5ml とアセトンに 2mg/l に調整したアゾベンゼン 0.5ml を正確に加え 500 倍濃縮の分析試料とした。 試料作成方法のフローを図3.1 に示す。また、具体的な作業方法を 3.5.1 から 3.5.4 に示す。 図3.1 試料作成方法のフロー
3.5.1 ろ過方法 ろ過を行う前に、600ml の保存用褐色ビンを洗剤で洗浄する。その後、アセトン(特級)、純 水の順番で洗浄する。最後に褐色ビンを逆さまに置き、よく乾燥しておく。ろ過で使用する器 材を図3.2 から図 3.4 に示す。 図3.2 ろ過に使用する器材 図3.3 Whatman GF/C ガラス繊維ろ紙 図3.4 ろ過器材
ろ過器にWhatman GF/C ガラス繊維ろ紙をセットし、アセトン(特級)を入れ、吸引する。 図3.5 ろ紙をセット時 図 3.6 アセトンによる洗浄 その後、吸引したアセトン(特級)で、ろ過用ビンと 500ml のメスシリンダーを共洗いする。 最後に、共洗いに使用したアセトンは捨てる。 図3.7 ろ過器内の共洗い 図 3.8 メスシリンダーの洗浄 この工程を純水、試料水でも同じように行い、共洗いをする。 あらかじめ共洗いしておいたろ過器に試料水を入れ、ろ過を行う。ろ過した試料水を500ml メスシリンダーで正確に測り、余った試料水は保存用褐色ビンの共洗いに使用する。その後、 共洗いに使用した試料水は捨てる。 図3.9 試料水による共洗い工程
図3.10 試料水のろ過工程 保存用褐色ビンを冷蔵庫に入れ、保存し、ろ過に使用したろ過器、500ml メスシリンダーを 洗剤で洗浄する。最後に蒸留水、純水の順番で綺麗に洗浄する。 3.5.2 固相抽出 ろ過が完了した試料水が12 本揃った段階で、固相抽出作業を行う。固相抽出とは溶液や、 懸濁液中の目的とする化合物と不純物とを物理化学的性質に基づいて分離する手法である。固 相抽出は、化学分析の前処理として化合物を分離させたり、濃縮するために用いられている。 本研究では、試料水に含まれる農薬成分が固体(フィルター)の中を流れる間に、それぞれの親 和性に応じてフィルターに吸着する性能を利用する。したがって、試料水中に溶解した農薬を フィルターに吸着させ、アセトン等の溶媒に溶出させ、溶出した農薬成分を濃縮させ分析に用 いる。本研究で使用した固定相は、固相抽出カートリッジ(Bond Elut C18:Agilent
Technologies)を利用した。固相抽出用カートリッジを使用した固相抽出方法を記載する。
図3.12 固相抽出で使用する器材(詳細) はじめに、抽出装置を吸引ろ過装置に取り付け、Bond Elut C18 12 本と接続針 12 本を抽出装 置に差し込む。次に、アセトン(農薬 PCB 用液)入りメスシリンダーとピペットを用いて、Bond Elut C18 が満水になるまで入れ、吸引ろ過装置に接続し吸引を行う。吸引が完了後、再度この 工程をもう一度行う。その後、Bond Elut C18 にジョインター、リザーブの順番で装置につけ、 装着しているリザーブにメスシリンダーを用いて、リザーブが純水で満水になるまで入れ、吸 引ろ過装置に取り付け吸引を行う。吸引が完了後、再度この工程をもう一度行う。最後に接続 針とリザーブを取り外す。 図3.13 固相抽出装置の洗浄と前処理工程
次に、保存用褐色ビンにテフロン付の蓋を装着する。その後、ジョインター付きBond Elut C18 に差し込み、容器を吸引することで、Bond Elut 内に農薬が溶存した試料水を通水させ、フィル ター内に農薬成分を吸着させる固相抽出を行う。
図3.14 固相抽出の方法
固相抽出を終えた後、抽出装置に接続針を付け、ラックにあらかじめセットしておいた遠
沈管を抽出装置の中に入れて、Bond Elut C18 に装着していたジョインターを外す。Bond Elut
C18 にアセトン(農薬 PCB 用液)とピペットを用いて Bond Elut C18 が満水になるまで入れ、吸 引装置をゆっくり動かす。アセトン(農薬 PCB 用液)を吸引し終えたら、再度、Bond Elut C18 が満水になるまでアセトン(農薬 PCB 用液)を入れ、ろ過を行い、その後、冷蔵庫に入れ、保管 する。
3.5.3 濃縮 固相抽出にて取り出した農薬成分には、農薬成分以外に若干の水分が含まれている。従って、 さらに濃縮を行い純度の高い処理を行う必要がある。今回濃縮作業にて使用した器材を記載す る。 図3.16 濃縮に使用する器材 濃縮作業はあらかじめ、接続針をアセトン(農薬 PCB 用液)で共洗いを行い、濃縮用の蓋にセ ットしておく。次に、固相抽出により取り出した試料水を抽出装置内に取り付けたラックにセ ットし、接続針付の蓋を被せる。その後、高純度の窒素ガスを噴きつける。試料水が規定量に なったのを確認後、窒素ガスの噴きつけを終了し、再び冷蔵庫に保管する。 図3.17 濃縮作業 3.5.4 測定用試料水の作成 測定用試料水は、高濃度に濃縮した遠沈管内の農薬を再度定量出来る状態に調整する作業に なる。今回の試料水作成において使用した機材を下記に記載する。
測定用試料水は一定量のアセトンとアセトンにアゾベンゼン2mg/l を溶解させた液を使用す る。まず、マイクロシリンダーを使用するアセトン(農薬 PCB 用液)、アゾベンゼン 2mg/l それ ぞれで共洗いしておく。マイクロシリンダーを用いて、アゾベンゼン2mg/l に調整したアゾベ ンゼンを0.5ml 正確に量り、濃縮をし終えた遠沈管に加え、撹拌機で撹拌させた後、長期保存 ビンに移す。次に、アセトン(農薬 PCB 用液)0.5ml を正確に量って遠沈管に加え、再び撹拌で 撹拌させ、長期保存ビンに移し、500 倍濃縮の分析試料を作成する。 図3.19 測定用試料水作成の方法 図3.20 測定用試料水作成
3.6 試料の分析方法2) 3.5 で作成した試料は、島津製作所製 GC/MS 5050A を用い高感度の分析を実施した。GC/MS とはガスクロマトグラフ質量分析計の略称で、分析のメカニズムは、注入口からシリンジ等で打 ち込まれた試料を高温の気化室で気化させた後、キャリアガスによってカラムに移動する。カラ ム内に気化した試料が流れることで、農薬の成分ごとに分離され、検出器で電気信号に変換され る。また、カラムは時間的に温度を管理することで農薬の出現時間を管理でき、農薬の検出を行 いやすくする。表示方法は、出現時間を横軸に、検出器から得られた電気信号の強度を縦軸にと ることでグラフを作成でき、出現時間や保持時間から物質の同定、出現した山状のピークから高 さや面積から定量作業を行う。ガスクロマトグラフは、原則として分析対象物が気化する物質で なければ分析することはできない。したがって、分析を行うためには気化する物質で試料を作成 する必要がある。近年の農薬分析においてはジクロロメタンを使用した試料の作成を行うのが主 流になりつつあるが、今回は人体への発がん性や有毒性を考え、アセトンを使用した。 次に、質量分析計の中では、農薬をイオン化し分子量の強さから物質の特定を行う。ガスクロ マトグラフと質量分析計を併用することで、同時に大量の物質を測定することが出来る。従って 今回の調査は高感度で測定できるSIM 測定を行った。SIM 測定はあらかじめ農薬成分ごとに分子 量と出現時間を機械に認知させ、より高感度で測定出来る方法である。 また、このような高感度測定を行うには、量のわかった特定物質を試料に加え分析し、添加し た物質の量から試料の中の物質の量を計測する内標準法を採用した。内標準法に使用した物質は、 アントラセン、クリセン、フルオランテンの3 種類を用いた。 最後に、分析器の設定条件であるが、前述の通り、カラムの種類やカラムの温度管理などが問 題となってくる。したがって、分析の設定条件を示す。今回の分析で使用したカラムはRTX-5MS (Restek:内径 0.53mm、長さ 30m、膜厚 0.25 m)を用いた。キャリアガスはヘリウムを使用し、 ガス流量2ml/min に設定した。カラムオーブン温度は 60℃で 2 分間保持し、毎分 20℃で 290℃ま で昇温し0.75 分間保持させ、注入口の温度は 270℃に設定した。 図3.21 ガスクロマトグラフ質量分析装置
3.7 分析対象にした農薬の特性3) 本研究において分析対象にした農薬の環境基準や、対象となる成分について、以下に記載する。 (1) イソプロチオラン 使用用途は殺菌剤・植物成長調整剤であり、いもち病に適用される。また、水面施用や地上散 布、空中散布で使用する。毒性に関してはPRTR 法により第一種指定化学物質で、水質基準の 目標値は300μg/l とされている。 (2) エスプロカルブ 使用用途は除草剤であり、水稲のノビエなどに適用される。また、湛水散布で使用する。毒 性に関しては PRTR 法による第一種指定化学物質で、水質基準の目標値は 30μg/l とされてい る。 (3) オキサジアゾン 使用用途は除草剤、水稲用除草剤であり、ノビエなどの一年生イネ科や広葉雑草に適用され る。毒性に関してはPRTR 法により第一種指定化学物質とされている。 (4) シメトリン 使用用途は除草剤であり、水稲のノビエやマツバイなどに適用される。毒性に関してはPRTR 法による第一種指定化学物質で、水質基準の目標値は300μg/l とされている。 (5) ジメタメトリン 使用用途は除草剤であり、一年生雑草のコナツやカヤツリグサ科、多年生雑草のマツバイな どに適用される。水質基準の目標値は20μg/l とされている。 (6) ダイアジノン 使用用途は殺虫剤であり、稲のウンカ、ツマグロヨコバイ、防疫用としてハエ、蚊、ノミ、 ゴキブリなどに適用される。毒性についてはPRTR 法による第一種指定化学物質で、水質基準 の目標値は5μg/l とされている。 (7) ダイムロン 使用用途は除草剤であり、水稲に適用される。水質基準の目標値は800μg/l とされている。 (8) チオベンカーブ 使用用途は除草剤であり、水稲のノビエやマツバイなどに適用される。主に雑草の生育初期 に散布されるか、田植え後の4 日∼10 日の間に湛水状態で散布される。毒性に関しては PRTR 法により第一種指定化学物質で、水質基準の目標値は20μg/l とされている。 (9) トリフルラリン 使用用途は除草剤であり、稲や麦、果樹などに適用される。毒性に関してはPRTR 法により 第一種指定化学物質とされている。 (10) ビフェノックス 使用用途は除草剤であり、主に田植え前後に湛水散布され、薬剤に接触した幼芽が光の作用
(11) ピペロホス 使用用途は除草剤であり、水質基準の目標値は0.9μg/l とされている。 (12) ピラゾスルフロンエチル 使用用途は除草剤であり、水稲のマツバイなどに適用される。 (13) ピリダフェンチオン 使用用途は殺虫剤で、稲のニカメイチュウ、イネドロオイムシに適用される。毒性に関して はPRTR 法による第二種指定化学物質で、水質基準の目標値は 2μg/l とされている。 (14) ピリブチカルブ 使用用途は除草剤であり、水稲のマツバイなどに適用される。毒性に関してはPRTR 法によ る第一種指定化学物質で、水質基準の目標値は200μg/l とされている。 (15) ピロキロン 使用用途は殺菌剤であり、稲に適用され、水質基準の目標値は4μg/l とされている。 (16) フサライド 使用用途は殺菌剤であり、稲のいもち病に適用される。毒性に関してはPRTR 法により第一 種指定化学物質で、水質基準の目標値は100μg/l とされている。 (17) ブタクロール 使用用途は除草剤であり、ノビエ、マツバイ、ホタルイなどの水田雑草に適用される。主に 田植え後間もない時期に散布される。毒性に関してはPRTR 法により第一種指定化学物質とさ れている。 (18) ブプロフェジン 使用用途は殺虫剤であり、稲や麦、果樹などに適用される。毒性に関してはPRTR 法により 第一種指定化学物質とされている。 (19) プレチラクロール 使用用途は除草剤であり、水稲のノビエなどに適用される。毒性に関してはPRTR 法による 第一種指定化学物質で、水質基準の目標値は500μg/l とされている。 (20) プロベナゾール 使用用途は農業用殺菌剤であり、稲のいもち病の予防剤に適用される。 (21) ブロモブチド 使用用途は除草剤であり、水稲に適用される。水質基準の目標値は100μg/l とされている。 (22) ベンスルフロンメチル 使用用途は除草剤であり、水稲のマツバイなどに適用される。水質基準の目標値は 400μg/l とされている。