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須戸幹:琵琶湖流域河川における水田施用農薬の残留の現状とリスク低減対策の提案,河川整備 基金助成事業 (2011) ,助成番号: 22-1211-024

(31) MEP

2)  須戸幹:琵琶湖流域河川における水田施用農薬の残留の現状とリスク低減対策の提案,河川整備 基金助成事業 (2011) ,助成番号: 22-1211-024

1 10 100 1000 10000

1 10 100 1000

水田面積

[km

2

]

農薬の総流出負荷量 [kg]

ブロモブチド シメトリン ピロキロン

R.Yodo

R.Kidu

R.Katsur

R.Uji

R.Amano

R.Akuta

10.2

  流域内の水田面積と農薬流出負荷量

図10.1で示した流域面積と農薬流出負荷量の関係から、流域面積が大きくなるに従って、農薬 負荷流出量も増加する傾向にあった。また、図

10.2

に示した流域内の水田面積と農薬流出負荷量 の関係でも、水田面積が大きくなるに従って、農薬の流出負荷量も大きくなる。したがって、流 域面積や流域内の水田面積の増加に伴ってほぼ定率で増加することが明らかとなった。得られた 解析結果より流域面積と水田面積による流量と主要農薬の回帰式と相関係数について表10.1に示 す。結果より、回帰式の傾きから流域面積よりも水田面積の増減に伴い、農薬の流出負荷量の変 化も大きくなると考えられる。

表10.1  流域面積と水田面積による流量と主要農薬の回帰式と相関係数

項目 流域面積 水田面積

回帰式 相関係数 回帰式 相関係数

流量

y 0 . 0674 X

1.2847

r 0 . 984 y 4 . 5274 X

1.3391

r 0 . 963

ブロモブチド

y 0 . 0189 X

1.2048

r 0 . 828 y 0 . 9678 X

1.2587

r 0 . 813

シメトリン

y 3 . 0 10

7

X

1.2048

r 0 . 957 y 0 . 0015 X

2.3974

r 0 . 935

ピロキロン

y 0 . 0085 X

1.2845

r 0 . 885 y 0 . 4565 X

1.4053

r 0 . 910

10.3  まとめ

      解析結果より、流出負荷量に影響を与えている項目は、流域面積もさることながら水田面積も 大きな要因となりうることが明らかとなった。この解析では、中小規模流域河川から大規模流域 河川までが含まれているため、他の河川流域での農薬流出負荷量の推定に利用することができる。

参考文献

1) Hironori KAWAMURA

Senichi EBISE

High-frequency observations of pesticide runoff characteristics in the Yodo River with reference to three major tributaries,Journal of Water and Environment Technology,

Vol.12

(2014)

No.3

pp.309-322

2)  須戸幹:琵琶湖流域河川における水田施用農薬の残留の現状とリスク低減対策の提案,河川整備

11

章  水質基準に基づいた評価1),2),3),4)

11.1

  序

今回調査を実施した淀川、桂川、宇治川、木津川は、大阪市、大阪府、京阪間の諸都市、神戸 市、および阪神間の諸都市の水道水源として取水される。水道水質基準では、農薬は水質管理目 標設定項目であり、総農薬方式による検出指標値(DI値)で評価され、算出された検出指標値(DI 値)が

1

以下であることが求められる。

そこで本研究では、各河川ごとに

DI

値を求め、水道水源に対する、農薬の流出影響を評価し た。

評価方法は、前述の通り

DI

値による評価となり、計算方法は以下の(式

11.1

)にて示される。

DI

値は、ある調査日の農薬

i

の検出濃度(DVi)を農薬

i

の目標値(GVi)で除し、それぞれの 農薬について総和したものが検出指標値(DI値)(DI)となる。また、農薬

i

の目標値(GVi)を 表

11.1

に示す。

i

GVi

DI DVi

    (式

11.1) 

11.1

  農薬

i

の目標値

(GVi)

農薬名 目標値

(

μ

g/l)

農薬名 目標値

(

μ

g/l)

農薬名 目標値

(

μ

g/l)

モリネート

5 IBP 90

ブタクロール

30

BPMC 30

ブロモブチド

100

イソプロチオラン

300

トリフルラリン

60

シメトリン

30

プレチクラロール

50

ベンシクロン

100 MEP 3

ダイムロン

800 CAT 3

マラソン

50

ブプロフェジン

20

プロペナゾ−ル

50

エスプロカルブ

30

ピリブチカルブ

20

ピロキロン

40

チオベンカーブ

20

ピリダフェンチオン

2

ダイアジノン

5

フサライド

100

ピペロホス

0.9 TPN 50

ジメタメトリン

20

メフェナセット

20

      なお、

1

つの農薬成分の項目で

1

を超えるようなことは、淀川と三大河川とも

1

度もなかった。

      また、

DI

値を支配している要因として、淀川流域で最も検出回数が多いブロモブチド、シメト リン、ピロキロンの

3

種類の農薬で計算を行った

DI

値と、通常の全農薬での

DI

値を求め、淀川 流域において

DI

値は何に支配されているかを解析した。

11.2  淀川の農薬類水道水質基準による評価

    淀川での農薬類の流出特性として調査を行った、

2005年と2011年のDI値の変化を図11.1と図11.2

に示す。また、全農薬の

DI

値と、検出回数が多いブロモブチド、シメトリン、ピロキロンの

3

種 類の農薬のみでDI値を算定した結果を表11.2に示す。

11.1  淀川の DI

値の変化(2005年)

11.2  淀川の DI

値の変化(2011年)

11.2

  淀川の農薬類水道水質基準による算定結果

調査河川 淀川

調査年

2001 2004 2005 2011

Ave. Min. - Max. Ave. Min. - Max. Ave. Min. - Max. Ave. Min. - Max.

全農薬 0.05 0.00 - 0.20 0.05 0.00 - 0.28 0.01 0.00 - 0.04 0.01 0.00 - 0.04

主要3農薬 0.01 0.00 - 0.06 0.01 0.00 - 0.03 0.01 0.00 - 0.02 0.01 0.00 - 0.01

主要3農薬/全農薬×100 [%] 32.6 3.5 – 75.0 34.9 3.6 - 94.7 61.8 10.7 - 100 88.4 13.9 - 100

  表

11.2

より、淀川では、全農薬の

DI

値に占める主要

3

農薬

(

ブロモブチド、シメトリン、ピロ キロン)の割合が大きく、DI 値を低下させるためには、主要

3

農薬の流出対策を図る必要がある と示唆された。また、DI 値は最大で

0.28

程度となり、基準となる

1

以下であったため、水道水 源としては問題なく使用できるものと考えられる。

11.3  桂川の農薬類水道水質基準による評価

桂川での農薬類の流出特性として調査を行った、

2008

年と

2011

年の

DI

値の変化を図

11.3

と図

11.4

に示す。また、全農薬の

DI

値と、検出回数が多いブロモブチド、シメトリン、ピロキロン の

3

種類の農薬のみで

DI

値を算定した結果を表

11.3

に示す。

11.3  桂川の DI

値の変化(2008年)

11.4

  桂川の

DI

値の変化

(2011

)

11.3  桂川の農薬類水道水質基準による算定結果

調査河川 桂川

調査年 2007 2008 2011 2012

Ave. Min. - Max. Ave. Min. - Max. Ave. Min. - Max. Ave. Min. - Max.

全農薬 0.01 0.00 - 0.04 0.01 0.00 - 0.14 0.03 0.00 - 0.15 0.03 0.00 - 0.16

主要3農薬 0.00 0.00 - 0.04 0.00 0.00 - 0.01 0.00 0.00 - 0.02 0.00 0.00 - 0.03

主要3農薬/全農薬×100 [%] 65.7 0.0 – 100 62.6 0.0 -100 45.4 0.0 - 100 29.7 0.0 - 100

11.3

より、桂川では、全農薬の

DI

値に占める主要

3

農薬(ブロモブチド、シメトリン、ピロ キロン

)

の割合が大きくなく、

DI

値を低下させるためには、総合的な農薬の流出管理が必要であ ると考えられる。桂川は、様々な農薬が流出しやすい環境で、上流には亀岡盆地をはじめとする 水田地域が広く存在しており、瀬戸内気候と北陸気候の境目にあたることから、使用される農薬 も異なることが原因の一つではないかと推測される。また水道水質基準での評価は

0.16

と基準値

1

以下であり問題ないレベルであった。

11.4  宇治川の農薬類水道水質基準による評価

宇治川での農薬類の流出特性として調査を行った、2008 年と

2011

年の

DI

値の変化を図

11.5

と図

11.6

に示す。また、全農薬の

DI

値と、検出回数が多いブロモブチド、シメトリン、ピロキ ロンの

3

種類の農薬のみで

DI

値を算定した結果を表

11.4

に示す。

0.00 0.10 0.20 0.30 0.40 0.50 0.60

4月23 4月29 55 5月11 5月17 5月23 5月29 64 6月10 6月16 6月22 6月28 74 7月10 7月16 7月22 7月28 83 89 8月15 8月21 8月27 92 98 9月14 9月20 9月26

D

0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500

 [m3/s]

DI値(測定農薬)(2008) DI値(主要3農薬)(2008) 流量(208)

11.5  宇治川の DI

値の変化(2008年)

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12

4月23 4月29 55 5月11 5月17 5月23 5月29 64 6月10 6月16 6月22 6月28 74 7月10 7月16 7月22 7月28 83 89 8月15 8月21 8月27 92 98 9月14 9月20 9月26 102 108 10月14 10月20 10月26 111 117 11月13 11月19

D

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

 [m3/s]

DI値(測定農薬)(2011) DI値(主要3農薬)(2011) 流量(2011)

11.6

  宇治川の

DI

値の変化

(2011

)

11.4  宇治川の農薬類水道水質基準による算定結果

調査河川 宇治川

調査年 2007 2008 2011 2012

Ave. Min. - Max. Ave. Min. - Max. Ave. Min. - Max. Ave. Min. - Max.

全農薬 0.04 0.00 - 0.43 0.03 0.00 - 0.56 0.02 0.00 - 0.10 0.03 0.00 - 0.10

主要3農薬 0.00 0.00 - 0.02 0.00 0.00 - 0.01 0.00 0.00 - 0.01 0.00 0.00 - 0.01

主要3農薬/全農薬×100 [%] 63.9 0.1 – 100 72.0 0.1 – 100 54.0 2.5 - 100 37.7 0.6 - 100

11.4

より、宇治川では、全農薬の

DI

値に占める主要

3

農薬

(

ブロモブチド、シメトリン、ピ ロキロン

)

の割合が大きくなく、

DI

値を低下させるためには、総合的な農薬の流出管理が必要で あると考えられる。宇治川は、琵琶湖内で様々な農薬が混合し、流出するため、検出される農薬 も多く、総合的な農薬流出対策が必要である。また水道水質基準では、DI 値が

0.56

であり、基 準値の

1

以下に対し適合する結果となった。

11.5  木津川の農薬類水道水質基準による評価

木津川での農薬類の流出特性として調査を行った、2008 年と

2011

年の

DI

値の変化を図

11.5

と図

11.6

に示す。また、全農薬の

DI

値と、検出回数が多いブロモブチド、シメトリン、ピロキ ロンの

3

種類の農薬のみで

DI

値を算定した結果を表

11.5

に示す。

0.00 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08

4月23 4月29 55 5月11 5月17 5月23 5月29 64 6月10 6月16 6月22 6月28 74 7月10 7月16 7月22 7月28 83 89 8月15 8月21 8月27 92 98 9月14 9月20 9月26

D

0 50 100 150 200 250 300 350

 [m3/s]

DI値(測定農薬)(2008) DI値(主要3農薬)(2008) 流量(208)

11.7  木津川の DI

値の変化(2008年)

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14

4月23 4月29 55 5月11 5月17 5月23 5月29 64 6月10 6月16 6月22 6月28 74 7月10 7月16 7月22 7月28 83 89 8月15 8月21 8月27 92 98 9月14 9月20 9月26 102 108 10月14 10月20 10月26 111 117 11月13 11月19

D

0 100 200 300 400 500 600 700

 [m3/s]

DI値(測定農薬)(2011) DI値(主要3農薬)(2011) 流量(2011)

11.8

  木津川の

DI

値の変化

(2011

)

11.5  木津川の農薬類水道水質基準による算定結果

調査河川 宇治川

調査年 2007 2008 2011 2012

Ave. Min. - Max. Ave. Min. - Max. Ave. Min. - Max. Ave. Min. - Max.

全農薬 0.05 0.00 - 0.57 0.01 0.00 - 0.08 0.03 0.00 - 0.13 0.04 0.00 - 0.10

主要3農薬 0.01 0.00 - 0.02 0.01 0.00 - 0.03 0.01 0.00 - 0.03 0.01 0.00 - 0.02

主要3農薬/全農薬×100 [%] 70.4 0.0 – 100 71.3 8.9 – 100 55.1 0.0 - 100 28.0 0.0 - 100

11.5

より、木津川では、全農薬の

DI

値に占める主要

3

農薬

(

ブロモブチド、シメトリン、ピ ロキロン

)

の割合が大きく、

DI

値を低下させるためには、主要

3

農薬の流出管理が必要であると 考えられる。また水道水質基準では、

DI

値が

0.57

であり、基準値の

1

以下に対し適合する結果 となった。

11.6  まとめ

      水道水源として、使用する場合、淀川と木津川においては主要3農薬(ブロモブチド、シメトリ ン、ピロキロン

)

の流出対策が必要で、他の宇治川、桂川では、全農薬の流出対策が必要であるこ とが示唆された。なお、いずれの農薬成分でも目標値の1を遙かに下回っていた。

      しかしながら、長期的に流出し続ける、農薬を使うことが、

DI

値の底上げに繋がっていると判 断でき、抜本的な対策ではないが、主要3農薬の使用量を低減できる方策が必要でないかと考えら れる。

参考文献