長崎県の方言分布相
︱身体部分・ 人物名称︱
西
島 宏
ま え が き
長崎県の方言のうち︑以下の語についてその分布相を調査したも
のである︒
身体に関するものとして︑頭・額・顔・禿頭・頬・眉毛・唇・唾
・顎・旋毛・あばた・指・みずおち・かかと︑人に関係した語とし
て︑長男・末子・金持・乞食・神官・産婆を取り上げた︒
なお地名の表記は詳細を期するため︑町村合併前の旧町村名に拠
った︒ 一︑頭・額ほか
長崎県下で﹁頭の方言としてカップ・カッポ系のことばがある︒
注︵1︶
例えば壱岐郡の鯨伏・渡良・箱崎にカッポ︑平戸市にカップ︑北
松浦郡小値賀にカッパ︑大村市福重でカンポ︑南高来郡守山・多比
良・大三束・三会にカッ︒フ︑五島魚目・青黛・有川・奈良尾でカッ
ポといっている︒
さらに﹁膝頭﹂を︑佐世保市大野でピザカッポ︑佐世保市崎針尾
でピザンカッポ︵ピザのカップの意︶︑大村市池田・岩松でピザン
コッポ︑諌早市でピザコッポ︑ ﹁山の頂﹂を南高来郡守山でヤマン
カップ︵ヤマのカッ︒フの意︶といっていることからみても︑一般に
1身体部分・人倫名称︵申島︶ ﹁頭﹂の意昧でカップ︑カンポ︑カッパということばが県下全域に 拡がっていることがわかる︒ カップは古語﹁かぶ﹂と同系のことばであろう︒この﹁かぶ﹂は 古事記中巻応神七一の﹁中ツ土ヲ加夫︵かぶ︶突ク云々﹂︑日本書 紀神代紀下一七﹁頭槌ノ剣︑此ヲ箇歩豆智︵かぶつち︶ト云フ﹂と 見えるほか︑かぶき・かぶく・かぶると同系の語で︑方言としても
﹁ピザカブ︵膝頭︶﹂が﹁物類称呼﹂ほかの方言書に見えている︒
﹁頭﹂の方言としては︑ツムル・ツブル系のオツモリが壱岐郡石
田に︑オツムが諌早市︑ツベが南高来郡山田にあり︑カシラ系で壱
岐郡勝本で﹁頭痛がする﹂ことをタカガシラモツというのや︑五島
富江で﹁頭﹂をカシラと呼んでいる︒
対馬のビンタ︑カバチは︑他の地方では見られない︒北高来郡湯
江で﹁大頭﹂をカブラという︒また﹁頭﹂の卑称として佐世保市と
北高来郡小長井でズクニューを使っている︒注︵2︶
壱岐郡鯨伏で﹁頭﹂をガンツ︑五島崎山で同じくカラタマとい
㍗つ︒