長崎県方言語彙調査
︱分布相を中心として︱
ま え が き
西
島宏
本稿は長崎県方言語彙調査の中︑主として昭和三十一年度八月一
十二月現在調査の分の報告である︒長崎県は︑語彙面においても特
に分布相の多彩な地域であるので︑調査も遅々として進まないが︑
語彙調査五ヶ年にして︑ようやく基礎語彙に関してのみの全県的様
相がはっきりして来た︒特殊語彙・特殊地域の語彙についてはなお
今後の研究調査をまって逐次公表して行きたい︒ 本稿は従来刊行の方言書所収の語彙を加えず︑本年度調査により
あらわれた︑つまり現在五十五才−六十五才の男子の現に使用して
いる甑盟案のみを収録している︒
凡
例
以下の記述に当って︑長崎県下町村名は︑詳密を期して町村合併
以前の旧町村名に拠った︒また郡市名はそれぞれ︑対馬︵上県郡・
下県郡︶・壱岐︵壱岐︶・北松︵北松浦郡平戸︶・佐世保︵佐世保市︶
・東彼︵東彼杵郡及大村市︶・西彼︵西彼杵郡︶・北高︵北高来郡及
諫早市︶・南高︵南高来郡及島原市︶・長崎︵長崎市︶・南松︵南松浦
洲郡︶と・略称した︒また︑各説Cの記述に当っては対H対馬・壱11壱
岐・平︵北松浦︶・大︵東彼杵︶・西︵西彼杵︶・諌︵北高来︶・島 ︵南高来︶・長︵長崎︶・五︵南松︶と略称した︒
一 調査の方法
1 調査地点の選定
過去五ケ年に亘る県下各市町村の基礎語彙・語法の調査の結果︑
︼応の方言区画の設定の根拠を見出し得たので︑今回は︵A︶対馬
︵峰・久田︶︵B︶壱岐︵勝本・武生水︶︹註今年度調査不可能であった
ので︑やむを得ず︑旧調査に拠った︺︵C︶平戸︵中野︶︵D︶大村︵大
村︶︵E︶諌早︵諌早︶︵F︶島原︵山田・南有馬︶︵G︶長崎︵長
崎︶︵H︶五島︵有川・福江・玉之浦︶︹さらに大村方言区域に属す
ると考えられる西彼杵郡瀬川・三浦・三重の各町村︵!D︶︺の各町村
を選んだ︒
2
調査方法並に調査事項
調査は臨地調査によった︒ただし上記以外の各町村から通信調査
によって参考資料を寄せていただいた︒
今回は語彙を主として調査した︒調査事項は昭和三十一年度国立
国語研究所地方言語委託調査事項に拠った︒ただし国語研究所へ調
査報告した地点は西彼杵郡三重村・南高来郡吾妻村︵山田村・守山
村合併による︶の二地点であったが︑従来この種の杢県下に亘る同
︼調査項目による調査資料の乏しいのを残念に考えていた折であっ
たので︑敢て利用させて頂いた︒また全県下に亘る調査資料の︼部
は昭和三十一年月長崎大学学芸学部研究報告第6号所収﹁長崎県方
言語彙の一考察﹂において﹁虹・氷柱・夕立・蜻蛉・蟷螂・臆病者
・胡座・腰巻﹂の8語の全県下分布相︑また﹁踵﹂方言については
千葉大学大岩正黒氏の日本方言地図﹁踵﹂に資料として提供した︒
次年度︵三十二年度︶のさらに徹底した語彙調査の基礎資料を得る
33 卿
一
ことが目的であったので︑分布相︑とくに全県一語形︑二語対立形︑
三語鼎立形については︑その対立・鼎立の地区の関連性に注目し︑
さらに一方語彙的に孤立している地域についても考慮を払った︒ま
た県下に方言量の多い語彙︑例えば︑おはよう・がま・さつまいも
・さといも・じゃがいも・耕す・つむじ・ふくろう・みずおち等々
の分布相の調査の結︸果の発表は他日に譲りたい︒
二 調査の結果
1 総
説
長崎県において対馬は豊日方言区域に入るべきことは従来より説かれて来たが︑この点が再確認された︒とくに共通語形における二
重母晋アイが長母音工1となる現象は顕著である︒⁝ω 次に︑対
馬においてとくに久田・豆酸地方は他地域に比して独特の方.冒語彙
を使用していることがわかった︒⁝② 第三に︑五島における促晋
化現象︒⁝⑧ 次に平戸・大村両方言の接触地帯である西彼杵郡瀬
川.面高二村における語彙の混諦状態をやや明確にし得た︒⁝ω
従来大村方言区域に入れていた西彼杵郡一帯のうち︑ とくに外海
︵瀬戸.雪浦.神浦.黒崎・三重・式見︶地域は︑大村市を中心と
する地域を仮に﹁大村方言A地区﹂と名付けるならば︑外海地域は﹁大村方言B地区﹂とも名付けることが妥当であるほど︑方言語彙
に両地区の差異が認められること︒⁝⑤ 等々の諸点が判明した︒
2 各
説
A 長崎県下同一語彙使用のもの
調査項目申︑とくに県下ほとんど同一語彙が使用されていたもの
は左記のごとくである︒ アサ︵朝︶アサツテ︵明後日︶アサイ︵浅い︶アシタ︵明日︶アツマル︵集る︶アラウ︵洗う︶イロ︵色︶イト︵糸︶イヌ︵犬︶ウェ︵上︶ウスイ︵蒲薄い︶ウラ︵裏︶オトコ︵現〃︶オモテ︵士衣︶カウ︵買う︶カク︵書く︶カス︵貸す︶カゼ︵風︶カベ︵壁︶カル︵借りる︶カンゲ︵髪毛︶クルル︵くれる︶ヶサ︵今朝︶ゴアサッテ︵明々々後日︶コメ︵米︶シアサッテ︵明々後日︶シタ︵下︶シモバシラ︵霜柱︶シ・ージ︵障子︶ゴ︑・︑︵ごみ︶タク︵煮る︶タケ︵竹︶タネウマ︵種馬︶ツラ︵顔︶テ︵手︶ナガシ︵一梅雨︶ナメクジ︵なめくじ︶ニワ︵土聞︶ネバシ︵真綿︶ネコ︵猫︶バカ︵三一︶ハシラ
︵柱︶ハタヶ︵畑︶ハナ︵鼻︶ホガス︵穴をあける︶ホル︵掘る︶
マク︵蒔く︶モラウ︵貰う︶モリ︵森︶ヤネ︵屋根︶ヨナカ︵夜中︶
ワタ︵綿〃︶ンマ︵馬︶
更に対馬の二重母音の長晋化によるもの︑五島の促音化現象によ
る方言以外は県下各地で同一語形であるものは左の如くである︒
︹︵ ︶内︑対H対馬︑五五島を示す︒︺
アォカ︵青い︶︵対アェー︶アッカ︵赤い︶︵対アヶ1︶アマカ︵甘
い︶ ︵対アメー︶イビキ︵いびき︶ ︵五イビッ︶ウル︵売る︶ ︵五
ウッ︶カラカ︵辛い︶ ︵対カレー︶キンナカ︵黄いろい︶ ︵対キネ
ー︶クチ︵口︶ ︵五クッ︶クロカ︵黒い︶ ︵対クレー︶コユビ︵小
指︶︵五コユッ︶シロカ︵白い︶︵対シレー︶スリバチ︵摺鉢﹁︶︵五
スッバッ︶クカカ︵高い︶ ︵一対タケ!︶ネズミ︵︷鼠︶ ︵五・不ズン︶
ヒダリ︵左︶︵五ヒダッ︶ヒッカ︵低い︶︵対ヒキー︶ヒラクチ︵ま
むし︶ ︵五ヒラクッ︶フトカ︵太い︶ ︵対フテー︶ミギ︵右︶ ︵五
ミン︶ミジカカ︵短かい︶︵対ミジケ!・五ミヒカカ︶モチゴメ︵餅
米︶ ︵五モ︒ゴメ︶ヨム︵読む︶ ︵ヨン︶
以上のように県下において対馬・五島の託音形を別にすると同一
語彙の分布量はさらに多くなる︒とくに傍線を施した語彙は︑長崎
34 囎
一
県下のみならず︑ひろく肥筑方言地域と共通性を有する点で注目さ
れる︒また形容詞語尾がいわゆる﹁力語尾﹂に終るのも特徴的であ
る︒ B 対馬方言における久田・豆殴・峰地方の
語彙の特異性
対馬方言において︑特に豆酸地方はその民俗・生活とともに語彙
も対馬の他の地方と比べて著しく異なっていることについては奥村
三雄氏のご研究︵註1︶があるが︑私もこの点に注目すると同時に︑
さらに豆酸の隣村久田及び上県郡峰地方の特異性につき一言したい︒
調査の結果により︑対馬の中心である厳原町と豆酸・久田・峰の方
言の異なるものを挙げると︑
寝小便凹ネショーベン︵厳︶/ヨバレ︵久︶
あばたセンキュ!︵厳︶/ジャギ︵久︶
しもやけHシモヤヶ︵厳︶/カンバレ︵久︶
唖Hユ!シ︵厳︶/ウグシ︵久︶
大みそかHトシノバン︵厳︶/オーツゴモリ︵久︶
/素目トシノヨ︵峰・︶
眉毛πマイゲ︵厳︶/マヒゲ︵豆︶/指墨ゲ︵峰︶
泣く1ーナク︵厳 ︶/ホエズル︵峰︶
下駄ゲタ︵厳︶/ブクリ︵久︶
耕す野スカセル︵厳︶/パル︵久・豆︶
植えるμウエル︵厳︶/メヤス︵峰︶
とうもろこしHトーキビ︵厳︶/マンマンキビ︵久・豆︶
いたどりηチャドリ︵厳︶/サイタナ︵久︶
頭醇アタマ︵厳︶/カバチ︵峰︶
まつふぐりーーマッツングリ︵厳︶/マッカゴ︵久︶ 仔牛ーーメーノコ︵厳︶/ベタロ︵久︶ 匂をかぐロクサム︵厳︶/カザム︵久︶/キク︵豆︶ もぐら1ーモグラ︵厳︶/ウングラモチ︵久︶ ふくろうHフクロウ︵厳︶/コーキチ︵豆︶/シモエビ︵峰︶ 桑の実封クワンミ︵厳︶/バズミ︵峰︶ ビンダレ︵久︶一1女の卑称 デコ︵久︶11人形 ゲーソ︵仁︶腎お玉じゃくしの如くに︑厳原と比較していちじるしい相異がみられる︒ ︵註1国語学第十七輯﹁対馬方言の性格﹂参照のこと︶ また︑これら久田・豆酸・峰の語彙は︑県内の他地方とも相異していることは︑各説のC及びEを参照されたい︒ C 県下における二語対立方言分布証
果下方言語彙中とくに二語が地域別に対立して用いられているも
のは調査項目中左の如くである︒ ︹語意については後姿参照せよ︺
一 マナイタ︵対・大・諌・島・長︶/キリバン︵壱・平・西︶
2 ヤキモン︵対︒大・西・良剛・長︶/セトモン︵㎡半・五︶
3ベニサシユビ︵対・平・西・島・長︶/クスリユビ︵大・諌・
五.︶
4 5 6 7
9 8
10
コーリ︵県杢︶/クーり︵良閲︶
コンマ︵県全︶/ホロンコ︵島︶
ヌカ︵県全︶/テンカ︵島︶
オドシ︵対∵平・長・五︶/トーボシ︵大.西・諌・島︶
コンヤ︵対∵並1・大・五︶ コンニャ︵西・馬丁・島・長︶
ユーダチ︵県全︶/サダチ︵大・西・島︶
オナゴ︵県全︶/メナ︵対︶
35 唄
嶋
12 11 13 14
16 15
17 18
ヨダレ︵県全︶/ユダレバ大・島︶
ジシン︵県全︶/ユリ︵西・本︶
ソーシキ︵県杢︶/ソーレー︵壱・西・島︶
アケガタ︵瓦全︶/アサマジメ︵対︶
キ・1︵対・平︶/キュー︵大・西・諌・島・長・五︶
トカギリ︵県全︶/トカゲリ︵対︶
ツバ ︵県全︶クッツバ ︵対一︶
オトトイ︵対・平︶/オトテ︵県全︶
さらに若干の託形・例外形を別として二語に大別できるものは︑
︹ ︺内は下形・例外形︒
1,@クワノ︑・︑︵平・西・大・諌・長・島︶/カーノ︑・・︵五︶︹ジュ
ミ対馬仁田・バズミ対馬峰︺
2−@オトコウマ︵平・大・西・諌・長・五︶/コマンマ︵島︶︹コ
マウマー−対馬︺
3 オナゴンマ︵県一全︶/ダマンマ︵・島︶︹ダンマ対馬︺
4一@イゲ︵県全︶/スイ︒バリ︵対︶︹ヘン五島玉之浦・シャーラ
ロ南高南有馬︺
5一@ボーブラ︵対・平・西・長︶/ブナ︵諌・大・島︶︹ボッダー−
五島︺
σ シモヤケ︵対・平・大・長︶/シモバレ︵西・諌・島︶︹カン バレ目対馬久田︺
7一@センキュー︵対・大・西・諌・島・長︶\ジャンコ︵壱・平・
五︶︹ジヤギH対馬久田・オモクサ西彼瀬川︺
8一@セキ︵対・平・諌・西︶/コズキ︵大・島︶︹セッ五島︺
9一@ヒトサシユビ︵対・平・大・諌 ・島・長︶/テツボユビ︵西︶
︹ヒトサシイビμ五島︺P イド︵対・島・長︶/ツイカワ︵平・西・諌︶ツリカワ︵大︶
控
R ぽ 擢
モグラ︵県全︶/モンダ︵五︶︹ウングラモチー1対馬久田︺
オタマジャクシ︵対・平・長・五︶/ドンクゴ︵大・西・諌・
島︶︹ゲーソ対馬仁田︺
オヤユビ︵県全︶オヤユッ︵五︶/ウーユビ︵五︶
ユ!シ︵対・壱・平︶/イーシ︵大・西・諌・島・長︶︹ユッ
ヒ五・島・ウグシμ対馬久田︺
︵註1︑まないた 2︑せともの 3︑くすり指 4︑氷5︑子馬
6︑ぬか 7︑かかし 8︑今晩 9︑夕立 10︑女の子 11︑ゆだれ12︑地震13︑葬式14︑夜明け15︑今日16︑とるげ17︑
くちびる 18︑おととい 11︑桑の実 21︑雄馬 31︑雌馬 49︑と
げ 51︑かぼちや ♂︑しもやけ 71︑あばた 82︑咳 創︑人さし
指 10︑井戸 11︑もぐら 12︑お玉じゃくし 13︑親指 14︑唖︶ 以上の分布相によってみるに地域的に対馬・五島・島原三地方が
他地方より孤立していることが推察される︒また県の北部平戸地方
と県南部との語彙対立が窺える︒さらに僅々数例ではあるが︑従来︑
大村方言地域とされていた西彼杵郡各町村が東彼杵・大村地方とや
や対立している相がうかがえる︒
D 県下方言三語鼎立分布相
県下に三語の方言形が分.布する語彙は調査項目中次の如くであっ
た︒
2 1
4 3
コメビツ︵大・西・諌・島・長︶./リュービツ︵対︶/イビツ
︵五・壱・平︶
ニジ︵対・平・大・諌・長・五︶/ユージ︵西︶/ジュージ
︵島︶ニンギ・1︵平・西︶/ベン二上︵大・島・長︶/デコ︵対・
五︶ドンク︵県全︶/ビキ︵対︶/ジョーコ︵平︶
36 噂
【
6 5 7
9 8
10
12 11
13
キノー︵図画︶/キニ・1︵対・西・諌︶/キンヌ︵五︶
クテガミ︵県∵全︶/コウネ︵対・島︶/トウネ︵平︶
アカ︵平・大・諌・島︶/コケ︵対・五︶/ヨゴレ︵西・長︶
ニォイ︵対・平・五︶/ニエ︵大・西︶/ニメ︵諌・島・長︶
シタ︵長・大・諌・島︶/ベロ︵対・平・五︶/ヒタ︵西︶
スイカ︵長︶/シーカ︵大・西・諌・島・五︶/スバイイ︵対︶
タカタカユビ︵対・平・諌︶/ナカユビ︵・大︒長・五︶/ナカ
タロ︵島︶
ゲタ︵対・大・西・島・長・五︶/サシゲク︵諌︶/タカボク
リ︵平︶ス︑・・ラ︵平﹂大・西・諌・五︶/スモトリバナ︵対・島︶/コ
マカケ︵長︶
︵註Hユ︑米びつ 2︑虹 3︑人形 4︑蛙 5︑昨日 6︑︵馬の︶たてがみ7︑垢8︑匂い6︑舌10︑酸っぱい11︑申
指 12︑足駄 13︑すみれ︶
E
方言語彙中︑孤立しているもの
長崎県下の方言語彙調査において︑特に著しく地域を限定して使
用されている方言は左の如くである︒
インノへ︵北松・平戸Hどくだみ︶ウグシ︵対馬久田H唖︶エノ
イモ︵西彼・雪浦H里いも︶オナメンツ︵大村H女の卑称︶オモクサ︵西彼・瀬川Hあばた︶オヤス︵西彼・雪浦H植える︶オランダ
イモ︵南高千々石目じゃがいも︶カバチ︵対馬∵峰一1頭︶カ填入ン
︵西彼三重Hがま︶ガンガ︵南松・玉之浦H赤児︶ガンツ︵壱岐・
勝本麗頭︶カンバレ︵対馬・久田11霜焼︶キク︵対馬・豆殴︑西彼
画才11匂いをかぐ︶キコブリ︵南高南有馬きつつき︶キモサツ︵南
松・福江︑同三井楽11みずおち︶キンコブ︵南松・大浜11くも︶ク リ︵西彼大島H田のあぜ︶ケシメ︵南高千々石Hうら︶ゲーソ︵対馬仁田Hお玉じゃくし︶ゴゴ︵西彼瀬川女の子︶コッカレ︵南松女の卑称︶コッテゴロ︵南高山田11雄牛︶ゴーロー︵対馬久田ひがん花︶コンビ︵大村11こども︶サイタナ︵対馬久田11いたどり︶シカブリ︵西彼倉見H寝小便︶ジゴクバナ︵西彼式見ひがん花︶シミー︵対馬仁田ふくろう︶シモエビ︵対馬峰ふくろう︶ジヤギ︵対馬久田11あばた︶シヤーラ︵南高南有馬げあばた︶ジャンガライモ︵西彼三重肘じゃがいも︶ジュ︼クワ︵対馬峰・どくだみ︶ジユミ︵対馬仁田H桑の実︶シユーメ︵南松三井楽Hすずめ︶ショーシカ︵西彼神浦H気の毒な︶ジヨーラ︵対馬峰1一くも︶ジラコブ
︵南松富江くも︶ダマイイ︵大村11嘘つき︶チョンマゲ︵諌早・西彼江島つむじ︶ツンゴ︵西彼神浦里いも︶テクサレバナ︵北
松中野Hひがん花︶ドウメ︵壱岐石田肘米びつ︶ドクバナ︵対馬峰
・南松玉浦11ひがん花︶ドーズドイ︵諌早Hふくろう︶ドロガミサン︵大村雷︶トンビ︵西彼矢上Hかかし︶ナンキン︵南高千々石
里いも︶ナベクジリ︵南松三井楽11なめくじ︶ネジビザ︵対馬久
田11あぐら︶パル︵対馬久田−一耕す︶ビク︵南高千々石女の子︶
ブクリ︵対馬久田H足駄︶フータンプラ︵西彼三重一−頗︶ベタロ︶対
馬久田肘子牛︶ヘン︵南松玉浦とげ︶ポッポ︵西彼三重1幽いたど
り︶ホトッサマ︵南松玉浦11みずおち︶マッカグツ︵南松玉浦封寝
小便︶マッカブ︵対馬久田Hまつぼっくり︶マヒゲ︵対馬豆酸H眉
毛︶マンマンキビ︵対馬久田・豆酸ロとうもろこし︶ミヤカゼ︵西
彼江島H旋風︶︑︑・ヤギリ︵南高南有馬旋風︶ムナオチ︵北松中野
みずおち︶メヤス︵対馬久田11植える︶メヤンヶ︵南高北有馬H
眉毛︶ユツル︵南松福江11植える︶ヨバレ︵対馬久田H寝小便︶ヨ
ヒトコッポ︵西彼雪国Hふくろう︶ヨヒトツ︵南松三井楽π1ふくろ
う︶ワイベ︵西彼式見Hこども︶
37 隣 一
F ﹁末子﹂方言分布相
県下の﹁末子﹂方言語彙は調査前に予想していた以上に多彩であ
った︒地域別にみると︑
対馬ーースソ︵豆酸︶スソゴ︵佐須奈︶オトゴ︵久田・仁田︶シッパ
レエ︵佐須奈・峰︶スェッコ︵厳原︶
壱唱スソ︵那賀︶スソゴ︵渡良︶オトゴ︵一一・渡良︒石 田・箱
崎︶
北松スソゴ︵中野︶シリフタギ︵志々伎︶
東彼1ーシリゴ︵大村︶
西彼Hシリゴ︵面高・神浦・三重・高島・長与・喜々津︶スソゴ
︵識見・野母・矢上︶シリボ︵面高︶シイボ︵江島︶シリフ
タギ︵野母︶オトンボ︵瀬川︶
北高シーゴ︵諌早︶シリゴ︵江浦︶
南高1ースソゴ︵山田・︑守山・多比良・大三束・西有家・南有馬︶オ
トジロ︵山田・多比良︶シメゴ︵千々石︶
南松Hスソゴ︵有m川・福江・岐宿・一二井楽・玉ノ浦︶
県下の﹁末子﹂方言はスソゴ系統・シリゴ系統が広く分布してい
る︒これを﹁長男︹方言のソーリョー︵県⁝杢︶ヨトリ︵壱岐︶アトトイ︵西彼江島︶イエツギ︵北松志々伎︶に比較した場合︑方言量
の多い点が注目される︒
G ﹁ものもらい﹂方言の分布相
県下の﹁ものもらい﹂方言はこれを地域別にみると左の如くであ
る︒対馬1ーデキモン︵佐須奈︶インノクソ︵峰︶メボ︵久田・豆酸︶
北松1ーインノクソ︵中野︶ 東彼1ーオモリヤー︵大村︶西彼1ーモリヤー︵面高・瀬川・三重・長与︶メモリヤー︵神浦︶メ モレー︵高島︶インノクソ︵神浦︶タッパ︵豪胆︶メツンゴ ︵矢上上︶北高Hメットンギ・︵諌早︶南高メモライ︵山田︶メモレエ︵守山・千々石︶インノクソ︵山 田︶メモリヤ︵南有馬︶長崎Hメイボ︵長崎︶南松ロメーモロ︵有川︶インノクソ︵福江︶メムラ︵岐宿・三井楽︶ ﹁ものもらい﹂方言をみると︑一般にはモライ系統の語が多いが︑長崎.対馬久田のようにメイボ︵眼のイボ︶系や︑メットンギ・つまり目のトンギ・︵吹出物・山の頂などをさす方言︶とする方言系統︑さらにインノクソと卑称する系統の三系列が見出される︒ H ﹁片足飛﹂方言の分布相 長崎県内の﹁片足飛﹂方言は語彙量が多いのは﹁鬼ごっこ﹂﹁お手玉﹂など子供の遊戯に関連するものによく見られる現象で︑筆者の調査した範囲では︑長崎県下の﹁鬼ごっこ﹂方言二十五語︑ ﹁お手玉﹂方言十六語︑ ﹁かくれんぼ﹂方言十二語が発見できた︒ さて
﹁片足飛﹂方言であるが︑
対馬1ースケスケ︵佐須奈︶スケコイ︵仁田︶ケンケン︵峰・厳原・
豆酸︶テンテン︵久田︶ケンパ︵峰︶
壱岐ーーケンケン︵杢︶ヶンケンパー︵田河︶ヶンヶントビ︵勝本︶
北松ケンケン︵中野・福島︶ケンケントビ︵青島・小値賀︶ケン
ケンゴ︵志々伎︶ケンチン︵志々伎︶
東彼Hチンバトビ︵大村︶
西彼Hヶンヶン︵神浦・野母・矢上・喜々津︶ゲンゲントビ︵長与︶
38 一
【
ケッツンゴ︵面高︶ケッゴ︵瀬川︶ゲッコン︵三重︶ゲコゲ
コ︵三重︶ヒッコゲン︵野母︶ケイツクロー︵江島︶テンコ
ック︵三重︶ケンコック︵式見︶スッヶンギ・ウ︵高島︶
北高スッケンゴロ︵諌早︶南高1ーケシケシ︵土黒・多比良・大三
束︶ゲシゲシ︵山田・千々石・西有家・南有馬︶
南松1ーゲイゲイ︵有川︶ヶヒヶヒ︵福江︶ヒッヶゲ︵岐宿︶ヒッカ
ヶッ ︵玉之浦︶イッカゲ︵三井楽︶
県下ではヶンヶン系統が広く分布しているが︑南高・島原地方はケシケシ系統でまとまっている︒また命名法をみるとケンケン・ケ
シヶシなど同音を反復した型式が多いが︑ケイックロー・ケッツンゴ・テンコック・スッケンゴロなど一語型のものも少くない︒西彼
高島スッケンギ・1は県下では珍しいが︑熊本県で一般にスッケン
ギ・と言っている︒炭坑があるため︑島原・熊本あたりからの移佳
者が多いが︑このスッケンギ・1も熊本からの移入語であろう︒熊
本県天草島ではシッテンゴという︒また諌早のスッケンゴロもスッケンギ・1と同系統であろう︒諌早方言と関係深い佐賀方言ではシ
ッケンギヨー・スッケンギョーを用いている︒
39 隅
一
あ と が き
以上︑県下の方言分布相の概略を記述したが︑語法については近刊予定の﹁方言ところどころ﹂に県下各地の方言会話録晋の丈字化
したものに解説を附して記載しているので︑その方につきご参照あ
りたい︒