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長崎県千々石湾の底質-とくに泥質堆積物の分布について-

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(1)

長崎県千々石湾の底質

‑とくに泥質堆積物の分布について‑

鎌田泰彦・堀口承明・井上昌幸・渡辺博光

長崎大学教育学部地学教室 (昭和47年10月50日受理)

Bottom Sediments of Chijiwa Bay, Nagasaki Prefecture, with Special Reference to the Distribution

of Muddy Sediments

Yasuhiko KAMADA, Yoshiaki HORIGUCHI, Masayuki INOUE and Hiromitsu WATANABE

Department of Geology, Faculty of Education, Nagasaki University, Nagasaki

(Received October 30, 1972)

Abstract

The particle‑size distribution of the bottom sediments collected from Chi‑

jiwa Bay, West Kyushu, have been studied. Five major types of sediment were recognized based upon the particle‑size distribution. Each of types are characterized by the environments of deposition which are dependent upon the sea‑water current. The muddy sediments, classified as Type Ⅲ, Ⅲb and Ⅳ, were found in the two separated areas in Chijiwa Bay. The separated distri‑

bution of muddy sediments are well illustrated by the maps of median diame‑

ter and mud content. The close relationship between the median diameter and the mud content indicates that in some instances the mud content measured by the wet sieving method is useful for determination of the distribution of the muddy sediments. This method may be applied for determination or

*日本地質学会第70年学術大会(於東北大学)にて講演

1)長崎大学教育学部地学教室2)長崎南高校5)応用地質調査事務所4)対馬高校(定時制)

(2)

62 鎌田泰彦・堀口承明・井上昌幸・渡辺博光

interpretation of the ancient sedimentary environments.

まえがき

長崎市より南西にのびる野母半島(長崎半島ともいう)と,雲仙火山群をもつ島原半島によ

1・'∴tl

ってかこまれた千々石湾(橘湾ともいう)は,その南は天草下島に面しているが,南西に大き く開いて天草灘に通じている。千々石湾の湾口部を,野母半島南端の樺島と,天草下島の富 岡半島とを結ぶ線とすれば,その幅は22.5fcmとなり,それより湾奥部の千々石海岸までは約 40*サーとなる。したがって,近接する有明海や大村湾のように,開口部の狭い,閉塞的な内湾 と異なり,外洋水の影響の強い沿岸水城をもつ内湾として,海況や堆積環境にも異なった特性 をもってPることが考えられる。

千々石湾の堆積物の調査・研究は,長崎大学教育学部地学教室の野外実習の一環として行な われてきた。その採取試料の分析により,これまで粒度組成・砂粒組成および貝類遺骸群集の 分布について報告してきたが,その調査範囲は,主として西部の野母半島沿岸部に限られてい

た。さいわい1964年に実施された阿蘇鉱山KKの砂鉄調査の際,湾央部より北東部の湾奥に かけての底質試料が,筆者の1人である井上により採取され,その一部がわれわれの研究のた

めに提供されたOここでは,とれらの両者の試料に基づいて,千々石湾の底質分布を総括し, とくに泥質堆積物の分布の特性について考察した。

千々石湾の堆積物については,筆者らがこれまでしばしば述べたことがあるが,これとは別 に満塩(MITSUSI王io, 1967)は,九州北部の湾内堆積物の研究を行ない,千々石湾の底質につ いても簡単にふれている。最近,水産庁西海区水産研究所の漁場調査の際,井上(1970)は, 千々石湾の唯漬物の粒径分布について研究し,とくに海水流動との関係を詳細に論じている。

本論に入る前に,貴重な試料を提供して下さった池田商店阿蘇鉱山KKの関係者,また野外 実習の際の船上作業に協力された地学教室学生諸君に深く感謝する。また水産庁西海区水産研 究所浜田七郎・井上尚文の両氏より多くの御助言を頂いたことに厚く御礼を申し上げる.本研 究は「浅海堆積物の基礎的研究」の一部として行われ,文部省科学研究費の補助を受けた。

I底質試料採取と分析

長崎大学地学教室の海洋地質実習においては, 1961年7月17, 29日と, 1962年8月7日に, 野母半島の長軸に直交する2km間隔の測点上に,1 km.毎に6‑8の測点をとり,自作のドレッ

ジ型採泥器(開口部の断面25×10cm:容量約82)によって採泥を行っiz。 1966年8月12, 15日には,さらに南下して,野母半島南半部沖の5測線50点の試料を追加したO

井上が担当した阿蘇鉱山KKの千々石湾調査は1961年5月10日より6月1日の問に,湾の 東北部において行われた。この時は,直交する1km間隔の測点の交点と,さらに汀線付近の 測点をあわせた284点において,熊田式採泥器により試料を採取した。

底質試料の粒度分析は,野母半島沿岸部の75点と,湾東北部の284点よりえらびだした160点 の,合計255試料について行った。砂質部については節分法,泥質部はピペット法を用い,粒 度尺度はWentworthの区分に従った。分析値より,粒径中央値(Md), Traskの分級係数 (SO)と歪度(Sk)とを算出した。また含泥量(siltとclayの含有率の和)ど, sand‑silt‑clay ratio (Shepard, 1954)を算定した。また一部の試料については,砂粒分析(鎌¥, 1966)

(3)

を行なった。

皿 干々石湾の海底地形

海図(No・205)によって考察する。 (第1図)千々石湾の天草灘に接する湾口部では,60〜

       ぜヨ ロ

  第1図 千々石湾の海底地形および底質試料採取地点(地点番号は2000台のものを示す)

Fig.1.Bottom topography and the location of sediment samples in the Chijiwa Bay.

 Station numbers indicate2000

       ためし80mの深度をもつ広い平坦面がある。また,野母半島中央部の為石付近と,島原半島南端の 早崎瀬戸とを結ぶ線上にある60m等深線は,かなり直線的であるのは顕著である。

 湾奥部においては,海岸より30mの等深線まで比較的急な勾配で深度をますが,その沖合 には一55〜40mの広大な平坦面が認められる。この水深の平坦面は,隣接する有明海にも広 く分布するもので,ウルム氷期最末期の海退によって形成されたものと考えられている(有明 海研究グルーフ。,1965)。

 湾の西部には,野母半島に平行した浅い沈水谷があり,その末端は為石沖の一60m等深線 付近で消滅している。谷頭は,湾の北西隅に位置する牧島の沖で分枝し,その一つは網場湾中 の沈水谷に連続する(鎌田,1959)。また同様な沈水谷は,湾の中央部にもあって,60m等深 線より真北に入る浅い谷が刻まれ,谷頭は一40mで消滅する。

 湾の東部の加津佐町津波見沖には一50m以浅(最浅部一21m)の北西一南東にのびる堆が あり,これより内側にいま述べた一55〜40mの広い平坦面が広がっている。またこの堆の南 には,水深90m以上のいくつかの海釜がならび,その東の延長は有明海の湾口部である早崎 瀬戸に連続している。

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64 鎌田 泰彦・堀口 承明・井上 昌幸・渡辺 博光

皿 千々石湾の水塊分布

 千々石湾における海況調査は,これまで長崎海洋気象台・長崎県水産試験場・水産庁西海区 水産研究所などが行なってきている。とりわけ西海区水産研究所においては,1966〜68年の5

力年間,毎年7月上旬を中心として海洋調査を行い,詳細な報告を公表している (近藤・浜田

・井上,1970)。 これによれば,湾内の水塊を湾奥水・混合水・外海水に5大別し,それぞれ 7月における特徴を次のように述べている。 (第2図)

5 撃3σ2 .σ

、4

0   鰯

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,霧総鰹

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     ∂

早崎頼戸付近における下げ潮時の水の動き

 第2図 千々石湾の水塊分布模式図(近藤・浜田・井上,19ワOによる)

Fig.2. Schematic diagram of the water body in Chijiwa Bay.

(A)湾奥水:高温・低塩で,湾奥部から野母半島寄りに茂木沖にかけて分布する。

(B)外海水:低温・高塩で,湾口から深みに沿って為石沖と早崎瀬戸方面に向って進入す  る。この水塊の周辺には,水平的・鉛直的に著しい不連続帯が形成される。

(c)混合水:湾奥水,外海水や有明海水などが混合して養成された高温・低塩な混合水は,

 湾中央部から湾口部にかけて中層以浅にひろく分布する。

IV 堆積物の粒度組成とその分布

A.粒径中央値の分布

 粒径中央値をMdφであらわし,等値線によって千々石湾の底質分布の状態を示すと第5図 のようになる。聞隔は1.0φとし,湾央部の試料の少ない部分の連続は破線によって結んだ。

また,Md>4.0φの範囲には横線を施したが,この部分には50%以上の泥(silt+clay)を含 む底質が分布する。4.0φの等値線は,後述するように,含泥量50%の等値線に一致する。

(5)

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       黛 ㎜     0      5K鰭一

        第5図 粒径中央値の分布(1%6年試料を除く)

F量g.5.Areal distribution of median diameters.Samples collecte(l in1966are omitted in  this figure.

 Md>4.0φの泥分布域は,東西に離れて分布する。北東部には,ほぼ楕円形の分布があり,

とくに湾奥部の千々石海岸に接近した部分に,Md>8.0φを含む最も細粒堆積物が認められ る。湾央部に移るのにしたがい,漸次Mdφの値を減じ,泥質から砂質に移行する。この湾奥 部の細粒質の堆積物は,周縁部の海岸における火山地形から判断して,カルデラ状の陥没地を 埋積し,現在の一40m平坦面を形成したものと考えられる。西部は,野母半島のすぐ沖合に細 長く帯状に分布するもので,浅い沈水谷を埋めた泥質堆積物をあらわしている。この野母半島 沿岸部の細粒堆積物の帯状分布の南端は,樺島北東部にまで達している。Mdφの最大値は,

湾奥部より小さく,北端の網場湾や牧島南東沖にMd>6φの底質が分布するのみである。

 湾央部には,これら細粒の底質を東西に2分する砂質の底質が分布し,南東方の早崎瀬戸に 向い次第に粗くなる。

 千々石湾全域にわたる粒径中央値の分布図は,井上(1970)によって描かれている。 これ は,120地点の採集試料のうち,116試料について粒度分析を行い,その結果を取まとめたもの である。これには,われわれの採泥がおよばなかった,湾口部東側の天草下島沿岸部や,早崎 瀬戸の潮流水の影響範囲における湾央部の分布状態が明らかにされている。

 井上(1970)も論じているように,Mdφの分布は,海底地形や水塊分布ときわめてよく対 応している。早崎瀬戸から排出される島原海湾(有明海)の潮流水は,千々石湾に入ると湾央 部に向って流れる。その流水が湾の西側に迫って流向を転じ,流速を減じながら野母半島ぞい に南下する際,野母半島沿岸の細長い泥質分布域を生ずる。一方,北東部の湾奥にあっては,

湾奥水が発達し,反時計回りの環流が存在し,混合水塊との境には潮目を生ずることが知られ ている。湾奥東部の広い細粒堆積物の分布域は,この湾奥の固有水塊の影響下に発達している ことは明瞭である。

(6)

66 鎌田 泰彦・堀口 承明・.井上 昌幸・渡辺 博光

B.堆積型の一般論

 浅海成の砕屑性堆積物は,その粒度組成における粒径中央値Mdに対する,分級係数Soや 歪度Skの分布により,一般的に5つの堆積型(1〜V〉に分類できる。この識別は,アメリ カのLa Jolla,Califomia;Rockport,Texas;MississipPi Delta地域の沿岸堆積物につ いて,INMAN and CHAMBERLAIN(1955)によって提唱されたものである。鎌田(1967a,b)

は,有明海や千々石湾茂木沿岸部などの底質調査の結果,浅海域の底質を表現するのに,INMAN らの堆積型の識別がきわめて有効であることを確認した。INMANらはφ一systemを用いて統 計値を算出しているが,ここではTRASKによる値を用いた。その理由は,有明海や千々石湾 のような,細粒堆積物が広く分布する海域より採取した試料の中には,8φまでの測定におい ても,各粒度の積算百分率が75%にも達しない場合が多く,それ以上の粒径の粒度分析にはか なりの時間を要するからである。

        MEDIAN DIAMETER IN mm.

  2.O   I,O   .5   .25  .125  .062  .032  .006  .008  .004  .002

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2

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MEDIAN DIAMETER MdO         第4図粒度組成の分布と堆積型の区分

Fig・4.Size distribution diagram of sediments and classification of sdiment types.

(7)

 これまで粒度組成を調べた有明海(鎌田,1967a)や,本研究の千々石湾の粒度分析の結果 によれば,基本的には次の5つの堆積型が認められる。 (第4図)

 1型……もっとも分級の進んだ細粒砂よりなり,Mdは2.0〜5.0φである。佐藤(1961)の  sand−type d1agram methodの0型に属する堆積物に相当する。

 π型……Mdが0〜5φの砂質堆積物で,一般にSoは1.25〜5.0の範囲に集中する。Mdが   2φ付近をもって粗粒の互a型と, 5%以上の泥分を含む細粒の皿b型に2分される。こ   の際,豆aはSk>1,∬bはSkく1であり,両者はSk=1。0付近で漸移する。

 皿:型……Mdが5.0〜8.0φの堆積物であり,泥質堆積物の大部分はこの型に含まれる。堆積  域の実状に応じてMdの5φをもって皿a,皿bと2分したり,4φと6φとをもって皿a,

  皿(s.s.),皿bと5分することができる。5分の際の皿a型と皿(s.s。)型に含まれる堆積物

 が,S琴<1の値をとることは著しい特徴である。SoはMdが細粒になるにっれて増加   し,分散の度合が大きくなるが,皿b型よりW型に移る付近で,3。0 》4。0間に集中して分  級がよくなる傾向を示す。

 N……Mdが8φ以上の粘土を50%以上を含む細粒の泥質堆積物である。

 V型……Mdが0φ以下(1mm以上)の礫質堆積物であり, 多くは石灰質の生物遺骸の破  片を豊富に含んでいる。

C.堆積型の分布

 各堆積型に属する堆積物の分布は第5図にしめす。陸岸にもっとも近い部分では,五a型の

      有喜UK量

 BOTTOM SEDIMENT TYPES       ・。・・… …  千々石

      鵬二R・・。嚢罵:。一^

       戸石 江ノ浦  :母:一

       .一        II :1.

     第5図堆積型の分布(1966年試料を除く)

Fig。5.Areal distribution of sediment types in Chijiwa Bay.Types are defined in  figure 4。 .

砂質堆積物が優勢であり,湾内堆積物をふちどっている。湾の北東部と西部においては,岸よ りわずか沖にでた所より泥質堆積物の発達が始まる。野母半島にそった浅い沈水谷中では,南

(8)

68 鎌田 泰彦・堀口 承明・井上 昌幸・渡辺 博光

北に細長い皿(s.s.)型の帯状分布がある。また湾奥部の,水深55〜40mの平坦面1ごは皿b型 の広いまとまった楕円型の分布があり,局所的にclayが50%をこすIV型も発達する。

 湾奥部のこの皿b型分布域の外側は,皿(s.s.)をへて,湾央部の皿a型に漸移する。この部 分は,野母半島沿岸部における皿型の外側に発達する沖合相である。

 湾央南部から島原半島南西部の加津佐沖に至る地域には,砂質堆積物が広く分布し,とくに 互a型の粗粒砂の発達が著しい。この部分はすでに述べたように,有明海の湾内水が早崎瀬戸 より強くはきだされたものが,北西に進み,この海流の下で形成された残存性の砂質堆積物と みることができよう。また加津佐海岸や千々石海岸ぞいに,1型の海浜砂の発達が知られる。

D.Sand−silt・clayratio

 それぞれの堆積型は,sand,silt,clayの5成分の含有率より求められた三角座標上の位置 によって,さらに具体的な堆積物の名称を与えることができる(SHEPARD,1954)。 (第6図)

CLAY

BOT 『OM SEDIMENT TYPE

一1

×IIa

+II b

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●皿b

■W

75

CHIJIWA BAY

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   偽 別0

 3  1  1 5  1

20

SAND SILT

     第6図Sand−silt−clayratio

Fig.6. Sand−silt・day ratios of each sediment types.

毅、1および五型の大部分はsandに含まれ,それ以上の細分は佐藤(1961)のsand−type diagramによらなければならない。それゆえ,このSHEPARDの方法では,主として皿,W型 の泥質堆積物が適切に分類されることになる。

(9)

 丑fa型はほとんどsilty sandである。皿(s.s.)型の大部分はsand−silt・clayに属するが,

一部はstilty sandやsandy siltに属する。とくに野母半島沿岸部における皿型のほとんど がsandy siltに含まれ,湾奥部の同じ皿型とは異なった性質をもっている。大部分の皿b型 はdayey siltである。W型はclayを50%以上含み,またほとんど砂質を含まない堆積物で あるので,必然的にsilty clayとして分類きれる。

V 含泥量と泥質堆積物の堆積機構

 千々石湾における泥質堆積物の発達は著しい。湾央部の皿a型のsilty sandの分布域によ って,湾奥部の皿b型のclayey siltの広い分布と,野母半島沿岸部の皿型のsandy siltの 細長い帯状の分布域とに分離されている。ここで用いた堆積型の識別の基準は粒径中央値であ るから,Md等値線によっても,このような泥質堆積物の分布状態を表現することができるこ とはすでに述べた。

 底質試料中のsiltおよびcalyの含有率,すなわち含泥量について考えても,さらに東西に 分離した泥質堆積物の分布状態が明瞭になる(第7,8図)。含泥量が50%の時はMd=4φで あるから,Mdが4φの等値曲線と含泥量の50%のそれとは一致する。含泥量は湾奥部におい て高く,ここで90%以上の堆積物が大部分を占めている。しかし,野母半島沿岸部では80%以 下であり,堆積型の識別で認められたように,湾奥部より比較的粗粒の泥質堆積物として識別

される。

 野母半島沿岸部には皿:b型の堆積物は発達しないので,この地域の皿型と,湾奥部の皿b型 分布域の外側に連続する皿型のものと比較してみる(第1表)。両者ともに,平均して約65%

第1表  皿型における堆積物組成の地域差   地域(試料数)

堆積物組成 So Sk

Silt (%)

Clay(%)

Mud(%)

野母半島沿岸部   (12)

2,58 1.21 56.15

8.97 65.12

千々石湾湾奥部

  (!5)

4.49 0.57 25.51 57.55 65.04

の含泥量を有しているが,野母半島沿岸部ではいちじるしくclayの含有率が低い。Soの程度 は,野母半島沿岸部では普通であるが,湾奥部では不良である。Skは,前者でSk>1であ って,粗粒部がひずむのに対し,後者ではSkく1であり,細粒部が著しくひずんでいる。

 湾奥部と茂木沿岸部の泥質堆積物には,粒度組成の上でこのような相異があるが,堆積物中 の有機物の分布にも同様なことがいえる。浜田(1970)によれば,有機物の総量を示す強熱減 量は,湾奥部でもっとも高く(15%台),野母半島沿いではやや高い(8%)とされている。

浜田の図示した強熱減量の分布図(第9図)は,含泥量分布図ときわめてよく対応し,10%等 値線はほぼ50%の含泥量のそれに等しい。

 湾奥部のもっとも細粒で,しかも有機物の多い泥質堆積物は,海況的に閉塞された湾奥固有 水塊においてはじめて形成が可能であり,さらに,この部分に注ぐ陸水が少いことも,泥質物

(10)

ワ0 鎌田 泰彦・堀口 承明・井上 昌幸・渡辺 博光

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       迂ノ浦      戸石

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第ワ図含泥量の分布

Fig.ワ. Areal distribution of mud contents。

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 第8図 野母半島沿岸部における含泥量の分布および底質試料採取地点(地点番号は1000台の     ものを示す)

Fig.8.Areal distribution of mud contents in the Nomo Peninsula area and the location  of sediment samples.Station numbers indicate1000

の拡散を防ぐ一因をなしているものと考えられる。また野母半島沿岸部の泥質の帯状分布は,

有明海の排出水が湾奥水と合流して野母半島にそって南下する際に,泥質物が沈水谷に沈積し て生じたものと考えられる。

(11)

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第9図 強熱減量の分布(%)(浜田,ユ970による)

  Fig.9. Areal d三stribution of ignition Iosses。(%)

W 粒径中央値と含泥量との関係

 一般的に,粒径中央値が小さくなると含泥量が増加する傾向がある。すでに述べてきたよう に,底質の分布状態からみても,Mdの等値線図は,含泥量のそれとよく対応している。この 両者の相関を求めてみると,Md>4φ(含泥量>50%)の泥質堆積物では,Mdが8φにお いて含泥量が100%になるような傾向を示し,両者は片対数紙上において直線関係をもつ(第

旬図♪。

 実測値は必ずしもMdが8φの時に含泥量が完全に100%になっていないが,砂質として4 φの舗(250メッシュ)に残るものは,大部分が生物遺骸であって,鉱物質はほとんどない。

Mdが8φとなる試料について砂粒分析を行うと,粒径5〜4φにおいては,9〜15%の有孔 虫(大部分が浮遊性)と,64〜78%の珪藻の遺骸が含まれている。その他の砂粒は,貝類・海 胆・貝形類・植物繊維などの生物起原の破片である。鉱物質の砂粒はわずかに2〜5%含まれ るのにすぎない。したがって,これらの生物起原の砂粒を除去するならば,Mdが8φにおい て砂質がほとんど失われることが推測される。8φ(1/256mm)はシルトと粘土との境であ る。奈須(1961)は,この境においては,4φにおける砂とシルトを境する時のような流体力 学的な理由はなく,むしろ,この辺の値を境として,通常の鉱物から粘土鉱物へと移行してゆ

くという理由によると説明している。しかし,Mdが8φより細粒の堆積物には鉱物起原の砂 質が失われる点は,堆積学上重要な意味をもつものと考えられる。

(12)

72 鎌田 泰彦・堀口 承明・井上 昌幸・渡辺 博光

IOO

80

Z60

u ZO oO40

Σ

20

00  1

CHIJWA BAY で華8  ●

●    ●   ●

●●      ●   ●

 ●●    ●●      ●

●     ●●

●  ●

勉    ●●   ●

●  ●

●●      ●

●●●

8

●●

・   イ・    ●8    8●

●  ●

 2  3  4  5 MEDIAN DIAMETER

 6  7  8 MdOF

   第10図 粒径中央値と含泥量との関係

Fig.10.Relation between me(1ian diameters and mud contents.

 一方,Mdが4φより粗粒の砂質堆積物における含泥量の変化は,粒径を増すにしたがって 急激に含泥量がへる。Mdが1〜0φにおいて含泥量が0になるような傾向をもつ。

 ここに示した含泥量はピペット法により測定した4φ以上(1/16mm以下)のsiltとclay の総和である。一般に泥質堆積物の粒度分析をピペット法で行う場合,試料が多くなると測定 のみに莫大な時間と労力を必要とする。粒径中央値と含泥量とが強い相関をなすことが明らか にされると,含泥量のみの測定によって,ある程度の泥質堆積物の性質を表わすことが可能な はずである。

 現世海成堆積物では,その試料を250mesh(孔径1/16mm)を用いて水箭することにより,

簡単に砂質と泥質とを分離し,短時間で多くの試料の含泥量を求めることができる。

 実際に,千々石湾の湾奥部における105個の泥質試料の含泥量を,ピペット法と水舗による 箭分法で測定し,その結果を図示すると含泥量についてはほとんど直線的な関係をもつ(第11

図)。

 そこで箭分法により求めた含泥量をx,ピペット法により求めた含泥量をyとすると,

    y=・0.969x十5.82    標準偏差はσ=5.61

となる。餓分法で求めた含泥量よりピペット法で求めた値に換算する場合,95%の信頼度を保

(13)

lOO

90 80 70

oO60

Σ50

oZ

−40

1』』

 30

20

10

0

MUD CONTENT%

  CHIJIWA BAY

φ

●   ●

● ●●

●   

 ● ●●

●●

  ●

●  ●

● ●

  ●●  ●

   ●

  ●●●

. 鄭・

●     ● ●

●   ●

Fig.11.

O    l O   20   30   40   50   60

        PIPETTE METHOD

70   80   90 ・ 100

  第11図 ピペット法と飾分法による含泥量

Mud contents obtained by the pipette method and the sievlng method。

てば,誤差の限界は約11%である。この値は0〜8φについて求めたものであるが,実際上問 題となるMd>4φについては,誤差の限界は上記の値よりさらに小さくなることが第11図よ

り推定される。 その結果は,水箭法によって測定した含泥量をもってMdの近似値を求める ことの可能性を提供するものである。さらに,この方法は,若い地質時代の未固結〜半固結堆 積岩の粒度分析に適用できることを暗示するものである。

む  す  び

 千々石湾における海底の堆積物の255個の試料の粒度組成によって堆積型の識別を行い,底 質の地域的分布を示した。とくに北東の湾奥部と,野母半島沿岸部には,性質のやや異なる泥 質堆積物の発達がみられる。これは,Mdφや含泥量の等値線図によっても充分表現できるも のであることを確認した。またMdと含泥量が,強い相関を示すことから,舗分法より求め た含泥量により,ある程度の底質分布の特性をあらわせることを明らかにした。

 以上述べてきたことは,たんに現世堆積物の分布を扱う場合のみにならず,地質時代の浅海 成堆積岩の堆積環境を推定する際にも有効と思われる。本邦の新第三紀や第四紀の堆積岩は,

種々の微化石や重鉱物の検出の際に経験されるように,構成粒子を比較的たやすく分離でき

(14)

ワ4 鎌田 泰彦・堀口 承明・井上 昌幸・渡辺博光

る。しかし,泥質部は長期間の続成作用によって多少とも膠結し,たとえ粒度組成が測定され たとしても,初生的のものと異なることが予想される。そこで,少くとも水中で構成粒子の分 離が行われれば,水鯖により砂質粒子を測定し,含泥量を知ることは旬能である。今後,さら に多くの含泥量によって知られる堆積環境の資料が集まり,この方法が,古堆積環境の復元の 補助的手法として利用されることを期待する。

参 考 文 献

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(15)

付表 千々石湾海底堆積物の粒度組成

測点

St.Nα

1001 1002 1005 1004 1005 1006 100ワ1008 1009 1010 1011 1012 1015 1014 1015 1016 1017 1018 1019 1020 1021 1022 1025 1024 1025 1026 1027 1028 1029 1050 1051 1052 1055 1054 1055 1056 1057 1058 1059 1040 1041 1042 1045 1044 1045 1046 1047 1048 1049 1050 1051 1052

!0551054 1055 1056

Depth水深

(m)

25 56 42 42 42 41 40 27 59 42 42 41 41 40 29 55 55 42 40 57 56 25 40 47 45 45 56 15 51 55 50 46 41 11 45 58 55 50 47 41 46 50 54 60 57 56 55 52 58 50 57 61 62 62 64 10

粒径中央値 Md(㎜)

0.026 0.050 0.Ol9 0.072 0.082 0.085 0.081 0.20 0.041 0.028 0.069 0,075 0.076 0.81 0.085 0,051 0.055 0.092 0.0ワ5 0.098 0.12 0.11

0.04ワ 0.078 0.094 0.11 0.19 0.19 0.054 0.055 0.092 0.14 0.14 0.24 0.29 0.026 0.056 0.090 0.ユ5

0.26 0.24 0.41

0.04ワ 0.050 0,076 0.085 0.10 0.090 0.67 0.059 0.072 0.087 0,091 0.096 0.090 0。17

Mdの

5.5 5.0 5.ワ 5.8 5.6 5.5 5.6 2.5 4.6 5.2 5.9 5.8 5.7 5.5 5.6 5.0 4.2 5.5 5.ワ 5.4 5.8 5.2 4.4 5.ワ 5.4 5.2 2.4 2.4 4.2 4.2 5.4 2.8 2.8 2.1 1.8 5.2 4.8 5.5 2.9 2.0 2,1 1。5 4.4 4.5 5.7 5.6 5.5 5,5 0.6 4.1 5.8 5.5 5.5 5.4 5.5 2.6

分級係数

 So(Trask)

2.19

2.ワ4

1.97 2.24 2.24 1.90 2.81 1.81 2.29

1.ワ4

2.15 2.74 2.45 1.90 5.16 1.91 2.19 2.06 2.58 2.17 1.78 2.29 5.55 2.85 2.67 2.20 1.56 1.41 2.85 2.24 2.78 1.62 2.54 1.50 5.65 1.96 5.16 2.78 2.74 1.41 1.57 1.65 5.92

5.ワ0

2.59 2.85 2.15 2.10 1。84 2.78 2.29 2.08 1.95 1.95 2.10 1.58

 SK歪 度

(Trask)

1.84 2.14 0.94 0.56 0.50 0.79 0.45 0.89 1.78 1.71 0.76 0.56 0.75 0.80 0.47 1.25 0.90 0.57 0.62

0.5ワ

0.ワ1

0.76 0.41 0.52 0.56 0.55 0.87 0。94 0.62 0,95 0.44 0.75 0.45 1.06 0.25 0.96 1.05 0.46 0.55 0.88 0.95 1.08 0.42 0.25 0.44 0.29 0.50 0,65 0.65 0.27 0.45 0.52 0,55 0.49 0。65 0.86

Grave1−Sand−Silt−Clayratio(%)

Gravel

2.8

,0.5

Sand 50.7 55.6 12.6 54.4 60.5 62.5 58.8

8ワ.6

40.5 26.1 55.4 55.7 56.2 69.2 55.6

26.ワ

46.1 65.2 54.2

67.ワ

75.8 65.8 45.6 58.1 65.5 66.8 86.8 89.4 46.7 46.5 60.0

ワ9.0

71.4 100.0

68.O l9.5 44.6 58.4 68.1 86.5 89.9

9ワ.4

42。8 45.7 59.5 58.7 66.4 65.0

ワ6.0

47.9 56.6 65.8 65.5 68.5 65.1 82.6

Silt 62.0 55.6

ワ0.8

58.6 51.4 51.5 54.7

8.2

52.5 67.5 58.5 52.5

5ワ.5

25.0

5ワ.5

70.5 47.4 29.2 58.5 24.7 19.2 26.2 58.5 27.9 22.8 21.8

6.9 6.ワ

45.4 48.0 52.6

9.9

21.5 20.2 67.6 50.6 52.7 22.2 10.7

7.5 0.0

57.5 54.2 25.6 25.4 19.7 25.0 12.0 55.7 51.1 25.0 21.0

2!.4

25.0 11.9

Clay

7.2 8.9

16.6

6.9 8.1 5.9 6.5 4.2 ワ.2 6.5 8.1

11.9

6.2 7.9 ワ.1 2.9 6.4 5.7 7.5 7.6 7.2 7.2

18.2 14.0 11.9 11.2

6.2 5.8 10.0

5.9 7.5

10.9

7.1 8.1

12。9

4.9 8.8 9.7 5.1

2.9 19.ワ

22.1 14.9 15.9 15.8 14.0

7.5

18.5 12.5 15.2

15。ワ

10.5 14.0

5.5

含泥量lMud堆積型   Type(%)

69.2 64.5 87.4 45.5 59.5 57.4

4工.2

12.4 59.5 74.0 46.6 44.2 45.7 50.9 44.4

ワ5.2

55.8 54.9 45.8 52.5 26.2 55.4 56.5 41.9 54.7 55.O l5.1 10.5 55.4 55。9 40.1 20.8 28.6 28.5 80.5 55、5 41。5 51。9 15.8 10.2

0.0

57.2 56.5 40.5 41.5 55.5 57。0 19.5 52.2 45.4 56.2

54.ワ 51.ワ

57。O

lワ.4

皿a 皿a 皿a 班a 豆b 皿a 皿a 皿a 皿a 皿a 皿a 皿a 皿a 皿a 皿a 皿a 皿a 皿a 豆b 豆b 皿aHb

皿a 亙a 皿b 皿a 皿a 豆b

−b 亜a 皿a 皿a 皿a 皿a 亙b 皿a 皿a 皿a 皿a 皿a

Ib

参照

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