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長崎県方言語彙の分布相概観(上)

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(1)

長崎県方言語彙の分布相概観(上)

  まえがき

 本調査は︑国立国語研究所の﹁日本言語地図作成のための準備調

査﹂の調査項目である︑二百四十一語の長崎県下における分布状況

を明らかにし︑全国的分布相との関連性を考える手掛りにしようと

意図したものである︒

 なお︑記述にあたっては︑県下各地を左記の︵ ︶内のように略

称した︒ 長崎市︵長崎︶佐世保市︵佐世保︶島原市︵島原︶諌早市︵諌

早︶大村市︵大村︶平戸市︵平戸︶福江市︵福江︶東彼杵郡︵東

彼︶西彼杵郡︵西彼︶南高来郡︵南高︶北高来郡︵北高︶南松浦郡

︵南松︶北松浦郡︵北松︶壱岐郡︵壱岐︶上県郡および下県郡︵対

馬︶ 単語の右傍に﹁シリコギドリ︵対馬佐須奈Hせきれい︶﹂のよう

に傍線を施したものは︑東條操編﹁全国方言辞典﹂ ︵昭三四︶に載

っていないものである︒

 ①目

 県下一般に単独に呼ぶときはメー︒ ②眉毛

 大村・諫早・西彼・北松・南松はミャーゲ︒壱岐・南高の北部・

   長崎県方言語彙の分布相概観︵上︶ ︵西島︶

西

西彼の西部・対馬にメーゲ︒対馬豆殴にマヒゲ︑南高の南部にメヤ

ンケがある︒

 ③ものもらい︵目の腫れもの︶

 南高山田・西彼雪裡・平戸・福江・対馬峰にインノクソ︑大村・

東彼・西彼・南高にメモリャー︑諌早・北高にメットソギョ︑西彼

矢上にメツンゴ︑長崎にメイボ︑対馬久田・対馬豆殴にメボ︑西彼

広見にメッパ︑南松有川にメーモロ︑南松岐宿・南松三井楽にメム

ラがある︒このうちメモリャー・メーモロ・メムラは︑それぞれ

﹁貰い﹂という点を命名の根拠にしているし︑メイボ・メポは﹁目

+イポ﹂であろう︒ ④鼻

 ﹁鼻﹂には県下に方言形はない︒しかし︑ ﹁鼻の穴﹂はハナンス

という︒スは︑ ﹁耳の穴﹂をミミンス︑ ﹁肛門﹂をジゴソスという

ことから推測できるように﹁穴﹂の意︒ ⑤耳

 県下︸般にミミ︒南高・南松でミンという︒ ⑥口

 県下一般にクチ︒南松有川でクッ︑南松玉之浦にクツンがある︒ ⑦唇

 県下一般にッバ︒対馬北部でクッッバ︒⑧舌

      一五

(2)

   長崎大学教育学部人文科学研究報告 第一九号

 県下一般にシタ︒西彼三重・同式見でヒタ︒平戸・西彼崎戸・南

       コ松・対馬でベロ︒県下では︑ ﹁七﹂をヒチ︑ ﹁教室﹂をキョーヒツ

など︑シ←ヒの傾向があるが︑ ﹁舌﹂に限ってヒタという地方は少

ない︒ ⑨いびき

 県下一般にイビキ︒南松・福江でイビッ︒ ⑩唖

 東彼・西彼・諌早・北高・南高でイーシ︒平戸・壱岐・対馬でユ

ーシ︒南松でユイ・ユッヒ︒北松小値賀でユヒ︒西彼瀬川ガγガ︑

南高多比良・同大三束でパー︒対馬久田・豆酸でウグシ︒福江でユ

ドンという︒

 ⑪唾

 県下一般にツヅであるが︑南高の北部にヅシ︑ツチ︑チュシがあ

り︑南松有川にツンがある︒ ⑫よだれ

 県下にヨダレ形とユダレ形がまじりあっている︒西彼式見でヨソ

ダ︑西彼三重でヨラレ︑西彼雪浦にユダイがあるQ ⑬咳

 県一般にセキ︒大村・南高千々石でコズキ︑南松でセツがある︒ ⑭頬

 ﹁頗﹂は県下に方言形が多い︒大村・西彼長与・同高島でブート

西彼・長崎・南高千々石でフータソ︒対馬でホータソ︒西彼三重で

フータンプラ︑同瀬川でフータソツラ︒諌早でフーベソヅラ︒北松

・平戸でホーベタ・フーベタ︒西彼面高でホーベンタ︒南松・南高

吾妻でビンタソ︑西彼瀬川・同式見でビンヅラなどがある︒また南

高吾妻にはフゲタンもあった︒ 一六

 ⑮顔

 一般にツラである︒ ⑩あばた

 長崎・南高・西彼・対馬にセンキューがあるほか︑南高吾妻・西

彼式見・同瀬川でオモクサ︑北松江迎にチョンボがある︒また平戸

・南松のジャンコ︑壱岐のジャンクォー︑対馬久田のジャギがあ

る︒現在︑幼少年層からは﹁あばた﹂の方言を聞き出しにくいが︑

平戸で︑表面がざらざらしてよくつけていない餅のことをジャンコ

モチといっている︒ 伊あざ

 県下一般にアザ︒なお︑諫早・対馬久田でホグロ︑西彼瀬川でア

カボヤ・クロボヤというのは﹁あざ﹂ではなく﹁ほやけ﹂のことで

ある︒ ⑱頭

 県下一般にアタマであるが︑壱岐・南松でカッポ︑壱岐鯨伏でガ

ンツ︑壱岐石田でオツモリ︑対馬峰にカバチがある︒南高吾妻で

﹁山の頂き﹂をヤマンカップ︑大村・諌早・西彼村松で﹁膝頭﹂を

それぞれピザソカップ・ピザンカッツ・ピザンコッポという︑カッ

プ・カッツ・コッポも︑ ﹁頭﹂に関係したことばであろう︒ ⑲髪毛

 県下一般にカミゲ︑あるいはカンゲ︒動物の毛はふつうにケとい

う︒ ⑳旋毛︵つむじ︶

 北松・西彼・長崎はキョウマキ・キョウマク︒大村・諌早はチョ

ーマキ︒南高はチョーマク︒北松小値賀はキョ!マー︒諌早・西彼

江島にチョンマゲ︒南松有川にギッギッ︑対馬昏昏にギリギリがあ

(3)

る︒壱岐は全島チリマキ︒西彼矢上にチョロマキ︒対馬佐須奈にツジがあるが︑壱岐で﹁山の頂き﹂のことをツジというのを関連する

ものがある︒ ︵壱岐では地名として﹁岳の辻﹂ ﹁神道の辻﹂などが

ある︒︶ ⑳禿頭

 一般にハゲアタマであるが︑平戸のコッパゲ︑西彼瀬別のガンバ

ゲ︑大村のヤカソアタマ︑西彼長与のビンチャ︑同三重のハゲチャ

ビン︑西彼矢上のハゲカッパ︑長崎のキソカソアタマ︑対馬峰の

トーハゲなど︑多少の嘲りの気持ちをこめた言い方に変化が多い︒ ⑳見る

 一般にミルという︒しかし﹁睨む︵にらむ︶﹂の方言としては︑

一般にネラムというほか︑北松・西彼・南高・大村・西彼江島でニ

ギル︑諌早・北高でガソツクル︑壱岐箱崎でメクリカヤスがある︒ ⑳聞く

 県下一般にキク︒

 ⑳匂い

 東彼・西彼はニエー︑北高・南高は油単ー・ニメというほかは一

般にニオイである︒

 ⑳すっぱい

 県下で一般にシ引々という︒対馬峰にスバイイがある︒

 ⑳辛い

 北松・東彼・西彼・南高はカルカ︒長崎カラカ︑諌早はカッカ︒

南松カラカ︒対馬はカレーという︒

 ⑳︵味が︶うすい

 長崎はウスカ︒南松はウヒカ︒南高はアマカ︑対馬はアメー︒東

彼・諫早・西彼長与・同矢上はサブナカ︑西彼は一般にサビナカと

   長崎県方言語彙の分布相概観︵上︶ ︵西島︶ いう︒ ⑳甘い 県下一般にアマカ︒ ⑳嘘をつく 長崎でダマシュウ︑大村・北松はスラゴトユウ︑西彼江島もスラゴトユウ︒西彼は一般にはシラゴトユウ︒壱岐はスラゴヅユウ︒諫早はドスクラユウ︑西彼古賀∵同矢上もドスクラユウ︑南高の西部はドクスラユウ︒対馬の北部はヘッパクヲユウ︑北松志々伎もヘッパクユウ︑南松有川はヘッパヲユウ︒ ︵熊本県天草でもヘヅパクヲユウ︶南松岐宿でウソベユウ︑西彼瀬川でオーバチユウという︒ ⑳親指 県下一般にオヤユビ︒西彼神浦・同式見にウーユビがある︒ ⑳人さし指 一般にヒトサシユビ︒西彼三重・同式見でテッポーユビ︒ ⑳中指 県下一般にナカユビ︒対馬の北部・平戸・南松岐宿・西彼式見・諌早にタカタカユビ︑長崎にナカタカユビ︑南高吾妻・同千々石にナカタロがある︒ 画くすり指 一般にクスリユビであるが︑ベニサシユビ・ベソサシといういい方が残っているのは対馬の北部・平戸・西彼瀬川・同神浦・同三重・同式見・同高島・南高吾妻・同千々石などである︒ 働小指 県下一般にコユビ︒南松三井楽・同玉之浦でコイツ︑福江でコーユッ︒ ⑨しもやけ

      一七

(4)

長崎大学教育学部人文科学研究報告 第一九号

 一般にシモヤケであるが︑対馬峰・西彼三重・同智見・同長与・

諫早・南高千々石でシモバレという︒対馬久田にカソ︒ハレがある︒ ⑳足

 一般にアシ︒対馬峰でエダという︒ ⑳かかと

 県の南部の大村・諫早・東彼・南高・島原にアドが多く︑県の北

部の平戸・北松でキビス︑西彼の北部にキビシャがある︒ ⑱みぞおち

 対馬・西彼・諌早でミズオトシ︑長崎城山でミジョオトシ︒平戸

にムナオチ︒福江・南松三井楽にキモサツ︑南松玉之浦にホトッサ

マがある︒

 ⑳︵身体の︶垢

 県下一般にアカ︒西彼・南松でヨゴレ︑対馬でコケ︒ ⑳寝小便

 西彼三重にシカブリ︑南松玉之浦にマッカグッ︑対馬久田にヨバ

レがある︒ ⑪男

 一般にオトコ︒

 ⑫女

 県下一般にオナゴという︒ ﹁女﹂の卑称としては対馬峰・同仁田

のメナ︑対馬久田のビンダレ︑大村のオナメンツ︑西彼式見のオナ

ハチ︑南松三井楽のコッカレがある︒

 ⑬赤ん坊

 県下一般にアカゴ︒対馬の南部にヤヤコ︑壱岐・北松にチノミゴ

南高︒西彼はイガ︑南松有川はガンガという︒なお南高土黒では︑

﹁おぼこ娘﹂ のことをイガという︒ ﹁男の赤ん坊﹂と﹁女の赤ん

坊﹂を区別するのは︑南高吾妻で男の方をボン︑女の方をピーとい

う例や︑南高千々石でオトコイガ・オンナイガと区別する言い方が

ある︒ ⑭子供・女の子

 一般にコドモ・コドンだが︑西彼雪浦・南高吾妻にコドム︑西彼

三重にコロモ︑同式見にワイベ︑西彼崎戸・大村にコンビがある︒

また﹁女の子﹂は一般にはオナゴソコだが︑対馬峰にメナソコ︑西︐

彼瀬川にゴゴ︑南高千々石にビクがある︒ ⑯末っ子

 対馬の北部にスソゴ・オトゴ・シッバレー︑対馬の南部にスソが

ある︒壱岐ではオトゴ︒北松はスソゴ︒北松志々伎と西彼野母にシ

リフタギ︒東彼・西彼はシリゴ︒西彼江島にシーポ︒諌早はシリゴ

・シーゴ︒南高はスソゴだが︑南高吾妻・同罪比良にオトジロ︑同

千々石にシメゴがある︒五島はスソゴである︒ ⑯若者

 県下一般にワッカモン︒対馬峰にバボサンがある︒

 何歳ぐらいまで﹁若者﹂といえるかについては︑県下で少しずつ

異なり︑二十歳ごろまでが対馬久田︒平戸︑︑二十四︑五歳ゼうまで

が大村・西彼三重・南高吾妻︑二十七︑八歳ごろまでが︑対馬仁田

・西彼雪浦・同式見など︑三十歳ぐらいまでが︑南松などである︒ @おとな 県一般にオトナまたはフトカモン︒対馬厳原でオセ︑西彼高島で

バー︒女の人にも﹁おとな﹂といえるのは県一般に通じているが︑

﹁女のおとな﹂を区別していうのは︑対馬仁田のべーベー︑西彼高

島のパッチーがある︒

 ⑱年寄り

(5)

 トシヨリ・トッショリ︒トショーレ・トシオレなどがあり︑トシ

オレは大村・諌早・西彼・南高北部に︑トシオリは壱岐にある︒男

の年寄りと女の年寄りを区別した言い方は︑男の場合ジーサン・ジ

ーヤン︑南松でジソジ︑女をバ!サン・バ︒ハヤソ・オバヤソ・ウン

バヤン・バーヤソ︑南松でバソバがある︒ ⑲凧

 対馬久田でヨーズ︑壱岐はタコ︵種類によって名称が異なる︶︑

平戸・北松御厨でヨーチュー︑西彼面高・同瀬川・同崎戸はトバタ

大村・諌早・西彼はトーバタ︑長崎はハタ︑南高はトージンバタと

いう︒ ⑳お手玉

 県下に方言が多いことばの一つである︒

 各地方ごとに挙げると︑

 対馬1ータマ︵佐須奈︶タマトリ︵仁田︶オヒトツ︵久田︶オジャ

  ミ︵豆酸︶       ︐

 壱岐1ーイッチョソドリ︵鯨伏︶ダマ︵田河︶オジャメ︵石田・那

  賀︹︶オチダマ︵平原︶

 北松1ーオザッコ︵青島︶ナンゴ︵福島︶

 西彼1ーオシト︵一般︶シットイ︵野母︶

 諌早1ーナソゴ︵一般︶

 南高1ーヒーデシ︵吾妻︶ヒーリシ︵多比良︶ヒッチョメッチョ

  ︵西有家・南有馬︶ヒホ︵千々石︶

 南松1ーオヒトツ︵一般︶セーボ︵玉之浦︶

 ⑪人形 一般にニンギョー︒対馬久田・南松岐宿でデコ︒南松三井楽でデ

コサン︒西彼長与はベンタロー︑南高吾妻もベンタロ︒ ︵ベソタロ

   長崎県方言語彙の分布相概観︵上︶ ︵西島︶ 1は熊本県日奈久の特産弁太郎人形からの命名であろう︒︶ ⑫さびしい 対馬はサビシイ︒北松中野はサムシカ︒西彼・大村・諌早・南高・南松はトゼソナカ・トージソナカ・トーゼニナカ︒福江にヒカビカがある︒ ⑲色名 色名は﹁赤い﹂は一般にアッカ︑ ﹁青い﹂はアオカ︑ ﹁黄色い﹂はキンナカ︑ ﹁黒い﹂はクロカ︑ ﹁白い﹂はシ戸惑であるが︑対馬のみは順にアケー︒アエi・キネー・クレー・シレーという︒ ⑭数える 長崎・南高はカンズル︒諌早・西彼はカンネル︒平戸はカズユル︒対馬にはカズエルとカドユル︑南松にカソズッがある︒ ㊨明けがた 県下一般にアケガタであるが︑ヨアケという地方も多い︒対馬久田にアサマジメがあるQ ⑯昼間 長崎でヒソノナカ︒西彼式見にヒーノマ︑西彼三重にヒンノメー大村ヒナカ︑南松玉之浦にヒッヒナカがある︒ ⑰夕方 県下一般にヒグレが多い︒諫早でユアガイ︑南高の北部でヨサッサメ︑北松志々伎・南松にヒナグレ︑対馬では一般にマグレ︑対馬久田にユーマジメがある︒ ︵久田の場合︑朝のアサマジメに対応した呼びかたをしている︒︶ ⑱夜

一般にヨサリ︒ ⑲眩しい

       一九

(6)

   長崎大学教育学部人文科学研究報告 第一九号

 長崎はマブシカ︑諌早はマバユカ︑大村・北松はマバイカ︒南高

の北部・西彼の西部にヒマグルシカ・ヒメグラシカ︒南松にはマバ

ユカ・マブヒカ・マバヤシカ・マバラヘカがある︒対馬ではマバイ

イとヒムツカシイ︒ ⑳太陽

 長崎・大村・諫早・北松・壱岐はオテソトサソであるが︑南高・

西彼・南松・対馬はオヒサン︒

 ⑪梅雨

 一般にナガシ︒壱岐はツユ︒ ⑫夕立

 県下一般にはサダチ︒壱岐田河にソベ︑対馬仁田にヘーチがあ

る︒ソベは﹁そぼえ﹂であろう︒現在はサダチは次第にユーダチに

とってかわられつつある︒

 画雷

 県下一般にはカミナリ︒諌早・大村でドロガミサソ︑南松有川に

カンナッドンがある︒ ⑭虹

 一般にはニジであるが︑南高の北部にジュージ︑西彼式見にジュ

ーズ︑同三重にユージがある︒ ⑯氷

 一般にコーリ︒壱岐石田でイタガネ︒

 ⑯つむじ風

 壱岐渡良でフキマワシ︑北松志々伎でマイヵゼ︑西彼江島でミヤ

カゼ︑同長浦にツヅマキ︑南高の北部にマツカゼ︑南高南有馬にミ

ャ二郷リがある︒一般にはタツマキが多い︒

⑰地震        二〇 一般にはジシンといっているが︑ユリという言い方が南高山田・西彼喜々津・同氷見・同三重・同大串に残っている︒ ⑱井戸 大村・諫早・西彼・壱岐でツリカワ︒北松でカワ︒南松はツボカワ︑南松崎山にカータ︒ ⑲米びつ 県下一般にコメビツ︒南高山田・同守山・西彼式見・同三重・同江島にコメイレ︑北松志々伎・同宇久平・南松岐宿・壱岐柳田にイビツ︑壱岐石田にドーメ︑壱岐箱崎にセコ︑対馬佐須奈・同峰にリュービツがある︒ ⑩まないた 一般にマナイタ︒しかし西彼・北松・壱岐ではキリバソという︒ ⑳天秤棒 県下一般にオーコ︒大村でヤマオコ︑西彼瀬川はヤマコ︑南松三井楽でニナーコ︑同岐宿・玉之浦でニャーボー︒ ⑫︵ばらの︶とげ 県下一般にイゲ︒南高南有馬でシャーラ︑南松玉之浦でヘソ︑対馬の佐須奈と豆肉でスイバリという︒ ⑬糠 一般にヌカだが︑諌早の一部でソーズ︑南高の北部でテンカ︒ ⑭いなむら 諫早でイネコズミ︑北松中野でトシャク︑対馬仁田でコメコズミ同佐須奈にコメダがある︒ ⑮耕す 大村・諌早・南高・南松はウツ︑北松中野はスク︑西彼瀬川に

オコス︑西彼面高・矢上にサタル︑対馬佐須奈にカヤス︑同峰にパ

(7)

リカエス︑対馬久田・豆酸にパルがある︒ ⑯植える

 一般にウエルだが︑西彼雪浦・南松岐宿にオヤス︑対馬峰に引で

ス︑福江にユツルがある︒

 ⑰かかし

 長崎・南高・対馬はオドシ︒西彼・諌早・北松はトポシ・トーボ

シ︒西彼矢上はトンビ︒南松玉之浦はカガへ︑オドへ︒

 ⑱じゃがいも

 長崎にジャガタロ︑諌早ジャガタレ︑西彼高島・同野母・同長与

・南高千々石のオラソダイモ︑西彼式見・同三重のジャソガのほか

は一般にジャガイモである︒

 ⑳さといも

 長崎・西彼矢上・同蚊焼・同式見・同三重・同野母はナンキイモ

・ナンキ:︒西彼高島・南高千々石はナンキンイモ︒西彼長与はナ

ンキュー︑諌早はイモンコ︑南高山田はアゼイモ︑南高南有馬はヤ

シャイモ︑西彼神浦でツソゴ︑北松中野でアヵイモ︑西彼雪煙と南

松はエノイモといっている︒

 ⑳さつまいも

 一般にはイモまたはカライモというが︑諌早でハッチャソ︑南高

の北部でハチリ︑対馬でコーコーイモという︒

 ⑳そらまめ

 長崎・諌早・南高はナツマメ︑西彼・北松・南松はトマメ・トウ

マメ︑対馬はソラマメ︒

 ⑳とうもろこし

 県下一般にトーキビ︒対馬久田・豆殴でマソマンキビ︒

 ⑳かぼちゃ

   長崎県方言語彙の分布相概観︵上︶ ︵西島︶  一般にはボーブラ︒諌早・南高はすべてブナ︑福江・南松岐宿でポッダ︒ ⑭彼岸花 県下一般にはヒガンバナ︑南松玉之浦でドッバナ︵毒花の意︶対馬峰でドクバナ︑対馬久田でゴーロー︑北松中野にテクサレバナ︑西彼二見にジゴクバナがある︒ ⑳いたどり 長崎でカワタケ︑西彼式見でポッポ︑南高山田・守山でジムノキ対馬佐須奈でチャドリ︑同久田でサイタナという︒ ⑳どくだみ 長崎・西彼・南松はドクダン・ドクダソソー︒南高はドクダメ︒北松中野でインノへ︑対馬は一般にジューワクという︒ ⑳桑の実 長崎・西彼・諌早・南松は引訓・カーノミ︒南高はクワンミ︑対馬峰でバズミ︑同仁田でジュミ︒ 魯松の実 県下一般にはマツカサであるが︑諫早・南高北部にマツコンズ︑対馬にマッツソグリ︑対馬久田にマツカゴがある︒ ⑳馬 一般にンマ︒南松岐宿・玉之浦でウンマ︒ ﹁雄馬﹂はオトコンマ南高でコマソマ︒ ﹁雌馬﹂はオナゴソマ︑南高でダマ︑対馬でダソ

マ︒ ﹁子馬﹂は南高のみホロンコ︑一般にはコンマ︒ ﹁馬の鳴き

声﹂は南高千々石でインホホ︑同守山でホホーン︒ ﹁たてがみ﹂は

南高・対馬でコウネ︑北松中野はトーネ︒

 ⑳牛

 ﹁雄牛﹂は一般にコッテウシ︑南高守山でコッテゴロ︑対馬佐須

       二一

(8)

長崎大学教育学部人文科学研究報告 第一九号

奈でコットイという︒ ﹁雌牛﹂は南高・西彼・北松でウノウシ︑諫

早︒長崎でオナゴウシ︑南⁝松有川でオナメウシ︑福江でホーウシ︑

対馬でウナメという︒ ﹁子牛﹂は一般にはべベンコ︑西彼三重・式

見でべーベー︑対馬でメーノコ︑対馬久田でベタロという︒ ⑱猫

 一般にネコという︒ ﹁猫を呼ぶ時﹂に︑西彼雪浦・南松岐宿でカ

ーカー︑諌早・南高でミーミー︑対馬の中部ではカナカナという︒ ⑫ふくろう

 一般にフクロー︒諫早でドーズドイ︑西彼式見・北松中野でネコドリ︑西彼雪浦でヨヒトコッポ︑南松岐宿でヨヒトツ︑対馬仁田で

シミー︑同峰でシモエビ︑同豆殴でコーキチという︒

 @かたつむり

 県下一般にデンデンムシであるが︑対馬仁田でデーリョー︑北松

中野でツルマメ︑西彼瀬川でエグリミャー︑同高島でケーッムリ︒

 ⑭なめくじ

 一般にナメクジ︒南松崎山でナメズムシ︑同玉之浦でナメクジッ ⑳おたまじゃくし

 諌早・南高・西彼でドンクゴ︑南高南有馬でギャルコ︑南松崎山

でガッガッショ︑対馬仁田でゲーソという︒

 ⑳蛙・ひきがえる

 ﹁蛙﹂は一般にドンク︒平戸でジョーコ︑対馬でビキ︑福江でバップクドンクという︒ ﹁ひきがえる﹂については︑アオドソク・ア

オヒクドソク・オソジョコサン・オンタラジョーコ︒ガマドンク・

カロロン・シッピヤドソク・シビドソク︒ショーチャドンクなど県

下各地に方言が多い︒

 以上︑長崎県下の方言の分布相を概観したが︑被調査者を第一次 二二

調査︵一九五六年七月一八月︶当時六十歳以上の老人でその土地生

まれの者と限定しているため︑その後の少年層の調査結果などと比

較すると︑相当な隔りを示している︒

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