博 士 ( 獣 医 学 ) 田 保 充 康 学 位 論 文 題 名
創 薬早 期における薬剤誘発性 QT 延長リスクの 励ぴあ〇評価法に関する研究
学位論文内容の要旨
医薬 品 開発 に お いて 心 電 図QT間隔 の 延 長に 伴 う致 死 性 不整 脈の発生 が問題 と な って お り、hERGチ ャ ネル の 抑制 がQT延 長 作 用の 主 原因 と考 えられ、 創薬 早 期段階で はin vitroにおけ るhERG遮断評価 が行われ ている。 しかしな がら、
hERGチ ャ ネ ル を 抑 制 し て もQT延 長 作 用 を 示 さ な い薬 剤 も 多く 、hERG評価 だ け では十分 なりスク 評価とは言 えない。 本研究で は、創薬 早期にお いて薬剤 誘 発 性QT延 長作 用 を 正確 に 評 価す る こと を 目 的と し て、 麻 酔 モルモッ ト、麻酔 イ ヌ 及 び 覚 醒 マ ー モ セ ッ ト を 用 い た in vivo評 価 法 を 開 発 し た 。 心 筋 再 分 極 時 間(QT間 隔 )は 心 拍 数( あ るい はRR間 隔 ) の変 動 によ り 生 理 的 に 変化 す るの で 、 薬剤 のQT間 隔 に対 す る 作用 を 正確 に 評 価するた め、麻酔 モ ルモット と麻酔イ ヌでは心房 にぺーシ ング刺激 を行い、 心拍数を 一定にし た 条 件 下で 実 験を 行 っ た。 ま た、 麻 酔 イヌ と 覚 醒マ ー モセ ッ トではQT間隔とRR 間 隔 の関 係 を求 め て 最適 なQT補 正 式を 作 出 する こ とに よ り 、QT延長作 用の検 出精度を向上させた。
麻 酔モルモ ットに心 房ペーシン グを行い 、心拍数 を一定に した条件 下で単相 性活 動電位(MAP)を 測定した。陽性対照薬8種(E‑4031、cisapride、astemizole、 terfenadine、bepridil、haloperidol、quinidine、d/‑sotalol)及ぴ陰性対照薬4種 (diltiazem、verapamil、chlorpheniramine、captopril)を濃度を変えて静脈内投与 し た 時 のMAP持 続 時 間 ( 活 動 電 位 の 振 幅 が90% 減 衰 す る ま で の 時 間 : MAP90(pacing)を 調べた結 果、陽性 対照薬はい ずれも濃度依存性にMAP90QaCg) の 延長作用 を示し、 陰性対照薬 はいずれ も延長作 用を示さ 栓かった 。本試験 に 茄い て陽性対 照薬がMAP90(paCg)を延長し た用量(ED5:5%延長用量)は、臨 床 に お い てQT延 長 作 用 を 示 す と 報 告 さ れ た 濃 度 と 高 い 相 関 性 を 示 し た
(R2=O.7214)。
麻 酔イヌに おいて心 房ペーシン グ刺激が 可能な処 置を行い 、心電図 を測定し た 。 心 房 ぺ ー シ ン グ に よ り 、 薬 剤 未 処 置 下 に おい てQT間 隔 とRR間 隔の 関 係 を 求 めた 結 果、RR間隔 が 長 くな る とQT間 隔は 延 長し た 。 これ らの数値 を用い て 、 心拍 数 の変 動 の 影響 を 受け ないQT間 隔を得る ためにBaZett、Fddericia、
Matsunaga、Van de Waterの各補正式及び今回確立した試験別補正式の補正精度 を 比 較 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 試 験 別 補 正 式(QTcX=QT/RR01 3879)がRR間隔 の 変 動 の 影 響 を 最 も 受 け にくく 、変 動係 数(CV)値 も少 ない 良好 な補 正能 を示 し た 。こ の試 験別補正式を用いて、陽性対照薬2種(astemizole、d/‑sotalol)及び 陰 性 対 照 薬1種(propranolol)を濃 度を 変え て静 脈内 投与 し、 陽性 対照 薬の 血 漿 中 濃 度 を 測 定 す る と と も に 、 ぺ ー シ ン グ 刺 激 を 行わな い条 件下 のQTc間 隔 (QTcX間 隔 ) と ぺ ー シ ン グ 刺 激 下 のQT間 隔(QT(paCig))に 対 す る作 用 を 調 べ た 。そ の結 果、 陽性 対照 薬は 濃度 依存 性に延長作用を示したが、陰性対照薬は 延 長 作 用 を 示 さ ず 、 さ らに陽 性対 照薬 がQT延長 作用 を示 した 濃度 は、 報告 さ れた臨床試験成績とほば一致した。
テレ メト リー 送信 器を コモ ンマ ーモ セットに埋め込み、無麻酔無拘束下で心 電 図 を 測 定 し た 。 マ ー モ セ ッ ト のQT間 隔 とRR間 隔 の 関 係 を 求 めた 結 果 、 イ ヌ と 同 様 、RR間 隔 が 長 くなる とQT間隔 は延 長し た。 心拍 数の 変動 の影 響を 受 け ないQT間 隔を 得る ため にBazett、Fridericiaの各補正式及び個体別補正式の 補正精度にっいて検討した結果、個体別補正式(QTci=RRf。fpX QT/RRp、p:個体 別 補 正 係 数 ) がRR間 隔 の 変 動 の 影 響 を 最 も 受 け に く く 、 変 動 係数(CV)値 も 少 な い 良 好 な 補 正 能 を 示 し た 。 こ の 個 体 別 補 正 式 を用い て、 陽性 対照 薬2種 (astemizole、d/‑sotaIoD及ぴ陰性対照薬2種(propranolol、nifedipine)を経口 投 与し たと きの 薬剤 の作 用お よび 血漿 中濃度を調べた。陽性対照薬はいずれも QTc間 隔 を 延 長 し た が、 陰性 対照 薬で はQTc間隔 の延 長は 認め られ なか った 。 ま た 、 陽 性 対 照 薬 がQT延長作 用を 示し た濃 度は 、報 告さ れた 臨床 試験 成績 と ほば同等であった。
本研 究に おい て開 発し た麻 酔モ ルモ ット、麻酔イヌ及び覚醒マーモセットを 用 いた 評価 系は 、い ずれ も感 度・ 特異 度ともに非常に優れており、また陽性対 照 薬の 反応 性が 臨床 結果 と相 関を 示し たことから検出感度も適切であり、薬剤 誘 発 性QT延 長 評 価 に お いて有 用で ある こと が明 らか とな った 。麻 酔モ ルモ ッ ト は多 検体 処理 が可 能で 最も スル ープ ットに優れており、麻酔イヌは多時点で 血 漿中 薬物 濃度 測定 用の 採血 を行 うこ とができることから明確な被験薬の安全 域 を求 める こと が可 能で ある 。覚 醒マ ーモセットでは臨床投与経路と同じ投与 経 路で の薬 剤評 価が 可能 であ り、 最も 有用性は高いと考えられる。被験薬の特 性 や評 価化 合物 数に 合わ せて 適切 な評 価系を選択して、医薬品開発の非常に早 い 研 究 段 階 か ら 新 規 薬 剤 の 正 確 な 統 合 的QTリ ス ク 評 価 を 行 う こと に よ り 、 安 全性 の高 い医 薬品 をよ り早 く医 療現 場に提供することが可能にをると期待さ れる。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
創薬 早期における薬剤誘発性 QT 延長リスクの 励7)zv0 評価法に関する研究
医薬 品開 発に おい て心 電図QT間隔の延長に伴う致死性不整脈の発生が問題となって いる。 本研 究で は、 創薬 早期 において薬剤誘発性QT延長作用を正確に評価することを 目的と して 、麻 酔モ ルモ ット 、麻酔イヌ及び覚醒マーモセットを用いたわ汀vo評価法 を検討 した 。ま た、QT延 長作 用の検出精度を向上させるために、麻酔イヌと覚醒マー モセッ トで はQT間隔 とRR間隔 の関係を求めて、心拍数の変動で影響を受けない最適な QT補正式を作出し、以下の成績を得た。
麻酔モルモットに心房ぺーシングを行い、心拍数を一定にした条件下で単相性活動電 位(MAP)を測定した。陽性対照薬8種及び陰性対照薬4種を静脈内投与し、MAP90 (pacilg) 持続時間(活動電位の振幅が90%減衰するまでの時間)を調べた結果、陽性対照薬はい ずれもMAP90 (pacilg)の延長作用を示したが、陰性対照薬は延長作用を示さなかった。陽性 対照薬が延長作用を示した用量(EDs:5%延長用量)は、臨床においてQT延長作用を示 すと報告された濃度と高い相関性を示した。
麻酔イヌにおいて心房ぺーシング刺激下で、心電図を測定した。心房ペーシングによ り、 薬 剤未 処置 下に おい てQT間隔 とRR間隔 の関 係を 求めた 結果 、RR間隔 が長 くな る とQT間 隔は 延長 した 。こ れら の数値を用いて、心拍数の変動の影響を受けなぃQT間隔 を得る ため に今 まで 報告 され ている補正式及び今回確立した補正式の補正精度を比較 検討した結果、試験別補正式(QTcX=QT/RRo. 3879)が最適であり、変動係数(CV)値も少 なかった。この補正式を用いて、陽性および陰性対照薬を静脈内投与し、陽性対照薬の 血漿中 濃度 を測 定す ると とも にぺーシング刺激を行わなぃ条件下のQTcX間隔とぺーシ ング刺激下のQT間隔(QT (pacilg))に対する作用を調べた。その結果、陽性対照薬は延長 作用を 示し たが 、陰 性対 照薬 は延長作用を示さず、さらに陽性対照薬がQT延長作用を 示した濃度は、報告された臨床試験成績とほば一致した。
テレ メト リー 送信 器を 埋め 込んだコモンマーモセットから無麻酔無拘束下で心電図 を測 定 した 。マ ーモ セッ トのQT間 隔とRR間 隔の 関係 を求め た結 果、RR間 隔が 長く な るとQT間隔 は延 長し た。 イヌ の実験と同様に報告されている各補正式と個体別補正式 の補正精度について検討した結果、個体別補正式(QTcニニRRrefロxQT/RRロ、ロ:個体別補 正係数)が最も良好な補正能を示した。この補正式を用いて、陽性もしくは陰性対照薬
‑ 761 ‑
男 昭
喜 一
茂 芳
満 兼
藤 原
口 黒
伊 葉
滝 乙
授 授
授 授
教
教 教
教 准
査 査
査 査
主 副
副 副
を経口投与したときの薬剤の作用およぴ血漿中濃度を調べた。陽性対照薬はいずれも QTc間隔を延長したが、陰性対照薬ではQTc間隔の延長は認められなかった。また、陽 性対照薬がQT延長作用を示した濃度は、報告された臨床試験成績とほば同等であった。
以上のように申請者が開発した麻酔モルモット、麻酔イヌ及ぴ覚醒マーモセットを用 いたQT延長リスク評価系は、いずれも感度・特異度ともに優れていた。また、試験化 合物の数や化学的性質に合わせて、これらの評価系を選択することにより、医薬品開発 の非常に早い段階から新規薬剤の正確な統合的QTリスク評価が可能となった。よって、
審査員一同は、上記博士論文提出者田保充康氏の博士論文は、北海道大学大学院獣医 学研究科規程第6条の規定による本研究科の行う博士論文審査等に合格と認めた。