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博士(工学)星 卓志 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)星   卓志 学位論文題名

協働的地域まちづくりの計画技術に関する研究

―アメリカ諸都市における近隣計画の展開を事例として一

学位論文内容の要旨

  本論文は,市街地の開発 ,社会資本の整備,土地利用の純化等を中心とする20世 紀後 半 における成長型の都市を 支えてきた「都市をっくる」ための計画技術では,21世 紀の 成熟都市を支えることに 限界があり,新たな「都市の環境を管理する」ための計画技術の 確立が必要であるとの認 識のもと,地域住民,行政,その他関係主体が対等の立場で地域 環境整備の目標を設定し ,各主体の役割に応じて目標実現化のためのアクションを実行し ていく「協働的な地域の まちづくり」に関わる計画技術について論じる。その際,都市を めぐる状況変化と新しい 計画技術の確立が先行しているアメリカ諸都市において,コミュ ニティ活動の一貫として取組まれている近隣計画の事例分析を通して論考するものである。

  「序 研究 の背 景」 では ,21世紀 の成 熟都 市を め ぐる 社会・経済状況から,マク ロに は既存市街地の再構築等によるコンバクトな市街地の形成が必要である一方,ミク口には.

手法単位から地域単位の まちづくりへの転換が必要になること,まちづくりの総合化が必 要になること,関係主体 による協働的な取組みが必要になることから,協働的な地域のま ち づくりに関わる計画技術 の確立が必要であることを,本研究の背景として整理し た。

  「第1章 研究 の目 的 と枠 組み ,方法」では,協働的な地域のまちづくりに関わる 計画 技術の確立に向け,アメ リカ諸都市で展開されている近隣計画についての事例研究を行う ことの意義を明らかにしたうえで,「近隣計画の展開実態を,我が国の都市における協働的 な地域のまちづくりの実 現に向けた課題に対応させて把握することにより,地域レベルの 協働的なまちづくりに関 わる新たな計画技術を確立するための条件を探る」ことを,本研 究の目的として設定した。その際の課題として,「計画行政の中での位置付け」,「計画事 項」,「実現化の担保」,「策定プロセス」の4項目を挙げ,これらに即して分析の枠組み及 び研究方法を提示した。

  「 第2章 近 隣 計 画 の 沿 革 」 で は , ま ず1880年 代 の セ ツ ルメ ン卜 ・ハ ウス 運動 から 今日に至るまでの間のア メリカにおける近隣をめぐる計画行為の歴史的変遷を整理し,今 日の近隣計画が,近隣住 区論をめぐる論争や連邦政府による都市改造事業への反省から,

コミュニテイ・コント口 ールという概念を軸として定着していった経緯を確認した。次に 近隣計画をめぐる研究動向を整理し,近隣計画が成立した背景として,「総合計画の限界の 克服」,「資源配分の合理性確保」,「市民参加の要請」,「人口動態の管理」の4項目を挙げ た。また,既往文献に見 られる近隣計画の定義から,近隣計画は「総合計画との整合のも と,地域の環境を総合的 に捉え,その改善の方向と個別アクションを一体的に占める合意 文 書を,関係主体の協働的 な取組みによりまとめたもの」と理解されることを示し た。

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  「 第3章 近 隣 計 画 の 基 本 枠 組 み 」 で は , 近 隣 計 画 を 策 定 す る こ と の 根 拠 と プ ロ グ ラ ム の 構 成 , 都 市 の 計 画 体 系 の 中 で の 位 置 付け ,計 画策 定の 目 的, 計画 区域 ,策 定 の契 機等 , 近 隣 計 画 の 基 本 枠 組 み を 整 理 し た 。 そ の結 果, 多く の都 市 で, 近隣 計画 を策 定 する こと の 明 確 な 根 拠 規 定 を 設 け る と と も に 総 合 計画 の一 部と して 近 隣計 画を 決定 して お り, 計画 体 系 の 中 で 重 要 な 位 置 に あ る こ と , そ の 策定 目的 が, コミ ュ ニテ イの 能力 向上 や バー トナ ー シ ッ プ の 確 立 な ど も 含 め 多 面 的 に 設 定 され ,い わば 関係 主 体に よる まち づく り の契 約書 と も 言 え る も の で あ る こ と , 住 民 か ら の 要請 に応 じて 策定 に 着手 する こと が行 わ れ, 近隣 の 主体性を尊重した運 用がなされていることなどを 明らかにした。

  「 第4章 近 隣 計 画 の 構 成 と 要 素 」 で は , 近 隣 計 画 の 全 体 構 成 と 計 画 要 素 の 領 域 の 広 が り, 非物 的 計画 要素 の内 容 について整理した。そ の結果,「計画の位置付け 」,「計画の目標 等」 ,「 地 区の 状況 」, 「 計画策定の経緯等」に 区分できる計画要素以外の 構成要素は,計画 の 権 威 や ア ク シ ョ ン の 合 理 性 , 策 定 過 程で の住 民の 関わ り など を説 明付 ける も のと なっ て い る 実 態 を 確 認 し た 。 ま た , 扱 わ れ る 計画 要素 は, 物的 な もの を中 心に ,非 物 的な 社会 ・ 経 済 的 要 素 が 必 要 に 応 じ て 付 加 さ れ て いる こと ,非 物的 要 素の 内容 は, 近隣 組 織等 の地 元 の 活 動 主 体 に よ り 実 施 さ れ る も の が 多 く 位 置 付 け ら れ て い る こ と な ど を 明 ら か に し た 。   「 第5章 計 画 の 実 現 化 」 で は , 近 隣 計 画 の 内 容 と し て , 実 現 化 策 が ど の よ う に 定 め ら れているかを「具体 的なアクション」,「優先付け」,「実施主体」,「実施時期」,「投資額と 財 源 」 を 中 心 に 把 握 し た 。 そ の 結 果 , 実現 性の 高い 計画 と する 手法 とし て, 具 体性 の高 い ア ク シ ョ ン を 位 置 付 け る た め に ア ク シ ョン をカ テゴ リー 別 に列 記す る, ある い は課 題・ 目 標 に 対 応 さ せ て ツ リ ー 状 に 関 連 付 け る こと ,計 画実 現の 初 動段 階を 管理 する た めに 優先 的 に 実 施 す べ き 具 体 的 な ア ク シ ョ ン を 明 らか にす るこ と, 個 々の アク ショ ンに 対 応さ せて 多 様 な 実 施 主 体 を 明 記 す る こ と で 協 働 性 を確 保す るこ とな ど ,さ まざ まな 試み が なさ れて い ることを明らかにし た。

  「 第6章 計 画 策 定 プ ロ セ ス 」 で は , 策 定 に 関 わ る 主 体 の 役 割 を 把 握 し た う え で , 策 定 プ ロ セ ス の 類 型 化 を 行 い , 各 類 型 の 具 体例 から 各々 の特 徴 を把 握し た。 さら に 市民 参加 手 法 の 活 用 状 況 を 整 理 し た 。 そ の 結 果 , 計画 策定 プ口 セス に おい て, 近隣 と市 の 双方 が, 立 案 作 業 を 主 導 す る 主 体 と , そ れ に 協 カ して 合意 して いく 主 体の いず れに もな り 得る こと ,

「近隣主導型」,「 市主導型」,「共同型」に類 型化できる策定プロセスの いずれにおいても,

協 働 的 な 計 画 と す る た め の 方 法 が 多 様 に 確 立 さ れ て い る こ と な ど を 明 ら か に し た 。   「 第7章 協 働 的 な 地 域 の ま ち づ く り の 確 立 に 向 け て 」 で は , 近 隣 計 画 の 実 態 か ら , 協 働的 な地 域 のま ちづ くり に 関わ る課 題ご とに 新 たな 計画 技術 の方 向 を次 のよ うに整理した。

  「 計画 行 政の 中で の位 置 付け 」に 関連 して は ,「 地域 のま ちづ く りの マス タープランを都 市の 一貫 し た計 画体 系に 位 置付 ける こと 」「 必 要性 や住 民意 識等 に 対応 して ,重点的な取組 み を 順 次 進 め る 戦 略 的 な 展 開 が 必 要 で ある こと 」「 住民 等 のコ ミュ ニテ イ活 動 との 深い 関 わり を持 つ こと を前 提と し て多 様な 意義 を設 定 し得 るマ ス夕 一プ ラ ンを 確立 すること」が,

「計 画事 項 」に 関連 して は ,「 物的 環境 整備 に 止ま らず ,地 域の 課 題を 包括 的に扱うこと」

「コ ミュ ニ ティ の自 主的 な 活動 自体 も計 画事 項 とす るこ と」 が, 「 実現 化の 担保」に関連し ては ,「 計 画実 現ヘ 向け た 展開 を管 理で きる 実 現化 策の 位置 付け を 行う こと 」「アクション の実 施主 体 を明 記す るこ と 」が ,「 策定 プ口 セ ス」 に関 連し ては , 「一 貫し たーつの計画行 為 と し て の 策 定 プ 口 セ ス と す る こ と 」 「住 民, 行政 のい ず れも が主 体性 を持 ち うる こと 」

「自 由な 展 開を 許容 する 計 画プ 口セ スと する こ と」 「高 い権 威付 け を行 うこ と」が,それぞ れ必要であることを 論じた。

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  また,協働的な地域のまちづくりのための新たな計画技術を支える基本概念として,「柔 軟性」と「確実性」の2つの側面についての考察を行った。

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学位論文審査の要旨

主査   教授   小林英嗣 副査   教授   鏡味洋史 副査   教授   奥   俊信

副査   教授   倉田直道(工学院大学大学院工学研究科)

学 位 論 文 題 名

協働的地域まちづくりの計画技術に関する研究

―アメリカ諸都市における近隣計画の展開を事例として一

  本 論 は 、20世 紀の 成 長 都市 を 支えた 「都市を っくる 」計画技 術の限 界性と「 都市 の環境 を管理 する」新 たな計画 技術の 必要性の 認識に もとづいて、地域住民、行政、

事業者 などが 対等の立 場で都市 の目標 像を共有 化し、 各々の役割に応じて目標像を実 現化し ていく 「協働的 地域まち づくり 」の枠組 みとそ の内容について、市民が参画す る協働 型のま ちづくり 計画が先 行して いるアメ リカ諸 都市の近隣計画の事例を通して 論じたものである。

  序章で は、わ が国にお ける都 市をめぐ る状況の 変化か ら、これからの都市計画にお けるコ ンパク トな市街 地への再 編、そ して地域 単位で 総合化された協働的なまちづく りの必 要性を 指摘し、21世紀型 の計画技 術の確立 が求め られる`ことを研究の背景と し て整 理してい る。本 論は、序 章を含 めて8章から成 り、各 章の要約 を以下 に示す。

  第1章では、 本論の 目的と調 査研究 方法、そ して近 隣計画を 分析する 視点と 枠組を まとめている。

  第2章 で は 、1880年 代 の セ ツ ル メ ン ト .ハ ウ ス 運動 か ら 今日 ま で の間 の ア メリ カ にお け る 近隣 を め ぐる 計 画 の歴 史的変遷 を整理し 、今日 の近隣計 画がコ ミュニテ イ・コ ントロ ールとい う概念を 軸とし て定着し てきた 経緯を明らかにした。さらに近 隣計画 をめぐ るアメリ カの既往 研究の 分析から 、近隣 計画が成立した背景は 総合計 画の限界の克服 資源配分の合理性確保 市民参加の要請 人口動態の管理 であ ること 、また 近隣計画 の概念は 「総合 計画のも とで地 域の環境を総合的に捉え、改善 の方向 と個別 のアクシ ョンの一 体的な 合意を関 係主体 の協働的な取組みとしてまとめ たもの」であると整理し、近隣計画における協働性を、 策定目的 計画内容 実現 主 体 策 定 プ ロ セ ス に よ っ て 確 認 す る こ と の 意 味 を 明 ら か に し て い る 。   第3章では 、近隣計 画の策定 事例の 分析から、計画策定の根拠とプログラムの構成、

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計 画体 系の 中で の位 置 付け、策定目的、計画区域な ど,近隣計画の基本的な枠組みを 整 理し 、近 隣計 画の 策 定には都市全体の計画を地域 へと詳細化させる方法と地域の詳 細 情報 を都 市全 体の ま ちづくりに反映させる方法が あり、いずれも都市全体の環境管 理 と地 域の 環境 管理 を 相互補完的に展開し、都市が 直面するまちづくりの課題に総合 的に対処す るものであることを明らかにした。

  第4章 では 、近 隣計 画の 全体 構成 と計 画項 目の 広 がりと内容にっいて整理し、計画 項 目は 、都 市施 設や 都 市空間などの物的詮内容を中 心にしているが、コミュニティ計 画 や運 営計 画な どの 非 物的な計画が必要に応じて付 加され、これらの非物的な内容の 計 画は 、地 域住 民やNPOな どの 地元 の活 動主 体に よ って実施され、近隣計画の協働性 が確保され ていることを明らかにした。

  第5章では、近隣計画の実現化方策を 具体的アクション 優先付け 実施主体 実施時期 投資額と財源 から把握し,実現性の高い近隣計画とするために、官民 の 具体 的行 動の カテ ゴ リー化に加え、実現可能性を 有する行動の峻別、そして課題・

目 標に よる 行動 の構 造 化、さらには実現化の初動段 階の具体的進行プログラムと実施 主 体 を 明 記 な ど に よ る 協 働 性 を 確 保 す る 具 体 的 な 手 法 を 明 ら か に し た 。   第6章 では 、策 定に 関わ る主 体の 役割 と策 定プ ロ セスの類型化を行い、各類型の特 徴 と市 民参 加手 法の 活 用状況を整理し、近隣住民と 行政のいずれもが立案作業を主導 する主体と それに協カして合意していく主体になり得ること、 近隣主導型 市主導 型 共同 型 プロセスにおける、協働的参画や合意形成の手法と主体が密接に関わり 続けること の重要性を明らかにした。

  第7章 では 、本 研究 で得 られ た結 諭と 今後 の協 働 的地域まちづくりに関わる課題と 新たな計画 技術の方向を整理し、協働性を高めるため、地域に根ざした近隣計画は 柔 軟 性 確 実性 プ ロセス性 及び 継続性 を 備えるべきであることを示した。

  これを要するに、著者は、成熟社会の 身近な都市環境を住民・行政・事業者などが、

協働 で計 画・ 管理していく、協働 型地域まちづくりの新しい計画体系の枠組みと計画 技術 の内 容に ついて、近隣計画の 事例を通じて整理し、わが国への適応可能性を提案 した もの であ り、都市計画学、コ ミュニティ計画学に貢献するところ大なるものがあ る。 よっ て著 者は、北海道大学博 士(工学)の学位を授与される資格があるものと認 める。

参照

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