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補 体 制 御膜 蛋 白 質, 麻 疹 ウイ ル ス レセ プ タ ー;

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 岩 田 和 憲

学 位 論 文 題 名

補 体 制 御膜 蛋 白 質, 麻 疹 ウイ ル ス レセ プ タ ー; MCP く membrane cofactor prNoteln ; CD46 ) の構造と 機能

学位論文内容の要旨

  補 体系は抗体依存 的な古典的経路及ぴ非依存 的な第二経路により活性化し ,脊椎動物の感 染防 御において抗体 と共に主要な役割を果して いる。一方,血漿中での無秩 序な活性化や自 己膜 上での活性化を 制御し,補体系の活性化を 異物表面上に限局する働きを 担う補体制御蛋 白群 が 存在 する 。C3/C5コン ベル タ ーゼ に働 く補 体制 御 因子 には ,ア ミ ノ酸 約60残基から 成るShort Consensus Repeat (SCR)と呼ばれる共通した反復配列が見られ,遺伝子スーバーファ ミリーを形成して いる。これらの制御因子のう ち,MCP (membrane cofactor protein; CD46) とDAF (decay‑accelerating factor; CD55)は補体系に接するほとんどすべての細胞において発 現が認められ,自 己細胞を自己補体系から守る 働きをしている。

  ま た , 最 近MCPが麻 疹ウ イ ルス のレ セプ ター で ある こと が明 らか に なっ た。 筆者 はMCP (CD46)の補 体制 御因 子と 麻 疹ウ イル スレ セ ブタ ーと しての機能部位の解析 を進めてきた。

以下にこれまでの 研究成果について記す。

  1.補 体制 御 効果 にお けるDAFとの 比駛 .

  MCPとDAFは と も に4個 のSCRド メ イ ン を 持 つ 制 御 蛋 白 で あ る が , そ の 制 御 機 構 は 異 な りMCPがI因 子 のcofactorと し て 働 き ,C3bとC4bを 不 活 性 化 す る の に 対 し ,DAFは コ ン ペル ターゼ の分子集合体に作用し,そ の解離を促進する。また,両 者の細胞膜への結合様 式 も異 なり ,MCPの 膜貫 通 型に 対しDAFはglycosyl‑phosphatidylinositolくGPI)を介して細 胞 膜 に 結 合 し て い る 。こ れま で ,MCPとDAFに 関 して 個々 の機 能及 び 作用 援序 につ いて は 報 告さ れてい るが,それぞれの補体制御 における役割分担及ぴ補体制 御活性の比較は明らか で な い 。 そ こ で MCPと DAFの 細 胞 上 で の 補 体 制 御 効 果 を 比 較 し た 。   ヒ トMCP, DAF及 ぴDAFのN末 端 にMCPを つ な い だMCP‑DAFハ イ プ リ ッ ド 分 子 ( MCP‑DAF)を ハ ム ス タ ー 由 来 のCHO細 胞 にstableに 発 現 さ せ た 。 ま た ,MCPとDAFを 両 方 発 現 さ せ たCHO細 胞 も 作 製 し た(MCP十DAF)。 こ れ ら4種 の ト ラ ン ス フェ クタ ント を 抗CHO抗体 で感 作し たの ち ,ヒ ト血 清を 補 体源 とし て加 え, 古 典的 経路 及び 第二 経路を介 し たヒ ト補 体 系に よる 細胞 傷害 に 対す る抵 抗性 を比 較 した 。そ の結 果 ,MCPとDAFiよ共に 古 典的 経路 よ りも 第二 経路 を効 率よく制 御すること,古典的経路に 対する制御効果は,MCP 十DAF>DAF冫MCP‑DAF冫MCPで あ り , 第 二 経 路 に 対 す る 制 御 効 果 は ,MCP‑DAF>MCP 十DAF>DAF>MCPで ある こ とが 明ら かに な った 。

‑ 522

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2. MCPの3種のフェノクイプにおける擬艚の比較

  MCPの細胞外領域は,4個のSCRドメインと糖鎖の結合したセリン・スレオニン(ST)に 富む領域からなる。ST領域は,ほぽサイズの等しい3つのエクソン(STA.STB及びSTC) によルコードされ,スブライシングの違いにより3種のフェノタイプ(STABC, STBC及び STC)が種々の比率で発現している。筆者は,3種のフェ丿タイプをCHO細胞に発現させ,

フェノタイプ間におけるMCPの補体制御活性及ぴ麻疹ウイルス感受性について検討した。

  MCPの3種のフ ェノタイ プ及びST領域を欠 損させ た変異体 (△ST)をCHO細胞に発現 させた。これら4種のトランスフウクタントにっき,補体制御効果を比較した。その結果,

古 典的経路 に対す る制御効 果は,STC冫△ST>STBC=STABCの順で 高かっ た。一方,

第 二経路に 対する 制御効果 は,STABC>>STBC>STCの 順で高く ,△STに は制御活性 は見られなかった。

  また,麻疹ウイルスの感受性はST領域の長さに反比例し,ST領域の最も短いフェノタ イ プ(STClとST領域欠損 変異体 の感受性 は,ST領 域の長い他の2種のフェノタイプ(

STABC.STBC) に比ベ約100倍強かった。ここで見られた感受性の違いはST領域に付加 し た糖鎖が ウイ渺 スの細胞 への取 り込みを 阻害する ことに よるもの と考え られた。

  3. MCPの補体制御および麻疹ウイ丿レヌ結合ドメインの解析

  MCPの細胞表面上における補体制御活性ドメインと麻疹ウイルス結合ドメインを決定す る目的で,各SCRを1つずつ欠損させた変異体をCHO細胞に発現させ,各変異体のトラン ス フ ウク タ ン トに つ い て, 補 体 制 御活 性 及 ぴ麻疹ウ イルス の感受性 を比較し た。

  各SCRを1っずつ 欠損させ た変異 体△SCRl‑4をCHO細胞に発現させた。補体制御活性 は,細胞膜より可溶化した各分子のC3bとC4bに対するcofactor活性と,補体系による細 胞傷害の制御活性について解析した。どちらの場合も,△SCR1でのみ制御活性が見られ,

△SCR2, △SCR3及 ぴ△SCR4では制御 活性は 見られな かった 。以上の 結果よ り,MCP の補体制御活性(cofactor活性)にはSCR2,3及び4が重要であると思われた。一方,麻 疹 ウ イル ス の 感染 は, △SCR3及び△SCR4を発現 したCHO細胞で 見られ, △SCRl及び

△SCR2を 発現し たCHO細 胞では 見られな かった 。以上の 結果より ,MCPの麻疹ウイル ス 結 合ド メ イ ン・ はSCR1とSCR2である と思われ た。さら に,10種 類の抗MCPモノ ク ローナル抗体のエピトープとcofactor活性及び麻疹ウイルス結合の阻害効果について検討し,

SCR2を認 識するM75とM177がcofactor活性 と麻疹ウイルス結合の両方を完全に阻害す ることを明らかにした。

  4. MCPの屡貫通 餌域と 細胞w餌域の廊 疹ウイ)レス レセブク ー擾館 にお´ナる役割   次に,MCPの膜貫通領域と細胞内領域の麻疹ウイルスレセプター機能における役割につ いて解析した。

  MCPの細 胞膜貫通 領域(TM)をDAFのGPI・anchorに置換した変異体(MCP.PI),及び細 胞内領域を欠損させた変異体(△CYT)をCHO細胞に発現させた。このトランスフェクタン トにっき麻疹ウイ渺ス感受性を検討した。

  そ の結果 ,△CYTを発現 させたCHO細胞は 麻疹ウ イルスに 感受性 であった。一方,

MCP‑PIを発現させたCHO細胞は麻疹ウイルスと結合したが,感染は見られなかった。以 上の結果より,麻疹ウイルスの感染(細胞内への取り込み)にはレセプターとの結合だけで は不十分でMCPを介した情報伝達が必要であること,アまたこの情報伝達にはMCPの細胞 内領域は必要でiよなく,MCPの細胞膜貫通領域近傍に結合し情報を伝達する別の機能蛋白 質が関与する可能性が示唆された。

    ‑ 523−.

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    長 澤 滋 治 副 査    教 授    有 賀 寛 芳 副査    助教授    加藤宏幸 副査    助教授    高橋和彦

学 位 論 文 題 名

補 体 制 御 膜 蛋 白 質 , 麻 疹 ウ イル ス レセ プタ ー; MCP く membrane cofactor proteln ; CD46 ) の構 造と 機能

   補体 系は 生体 防御 に働 く約 20 種 類の 血清 蛋白 質と数種類の膜蛋白質と からなる血液酵素系である,その主要な防御活性としては,侵入細菌の膜 表面で連鎖的な酵素の活性化を進め,i ;膜障害分子を構築する, 11 ;標的 膜 表面 にC3b と いう フラグメントを多数結合させ,食細胞による貪食処理 を促す,ことが挙げられる,

   このように,補体系は細胞に障害を与える酵素系であるため,自己の細 胞も攻撃する危険性を秘めている.しかし,自己の細胞膜での補体活性化 は 数 種 類 の 膜蛋 白質に よっ て制 御さ れて いる .MCP と呼 ばれ る蛋 白質 も そ のー つで , C3 転換 酵素 と呼 ばれ る分 子集 合型 プ口テアーゼの形成反応 を阻害することが知られている.

     ー方,麻疹ウイルスはヒトとサルにしか感染しない.これは,麻疹ウイ ル スレ セプ クー がこ の 2 種にしか発現していないためである,最近,この 麻 疹ウ イル スレ セプ ク―の探索研究が進められ, MCP が麻疹ウイルスレセ プク―であることが明らかにされた.

   従っ て, MCP には 補体制御活性と麻疹ウイルスレセプクーのニつの活性

部位が存在する可能性を示唆する, MCP は分子量 5 ―7 万の糖蛋白質で,その

細 胞外 領域 は, SCR と総 称され るア ミノ 酸60 残基 からなるドメインが 4 個

とセリンートレオニンに富む領域(ST 一領域)とから構成されている,ST‑

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領域の遺伝子には3 種類(A ,B ,C 型)があり,蛋白レベルではABC ,BC ,C 型の3 種類が発現している,

   申 請者 は, 遺伝子 工学 的な 手法 によ り種 々のSCR を欠損したMCP 変異体 やST アイソフォ―厶をハムス夕一細胞(CHO 細胞)に発現させ,補体制御活 性と麻疹ウイルスレセプク一活性を解析した,その結果,補体制御活性と 麻疹 ウイ ルス 感染に関わるSCR 部位が異なることや,ST 一領域が両活性を 調節することを明らかにした,

A )補体制御因子としての機能部位   1 )補体制御に働くSCR ドメインの解析

  4 個 の SCR のうち,N ―末端側のSCR1 を削除しても補体制御活性には変化 が見られなかったが,SCR2 ,3 ,4 のどれーっを欠いても補体制御活性が消 失した.これは,補体制御活性部位は,これら3 種類のSCR から構成されて いることを示唆する.

  SCR に対 する単クロ―ン抗体を用いた解析では,SCR2 に結合する単クロ ーン 抗体 が最も強くMCP の補体活性を阻害した.これは,SCR2 が補体制御 活 性 部 位 の 中 心 的 な 位 置 を 占 め て い る 可 能 性 を 示 唆 す る .   2 )NfCP の補体制御活性に及ぼすST ―領域の効果

  MCP の補体制御効果はST ―領域の長さの影響をうけ,ST ー領域が最も長い ST ― ABC 型 のMCP が最 も強 く第 二経 路の 活性化を阻害する活性を示した.

  ST ―ABC 型のMCP はガン細胞に発現している場合が多い.これは,ガン細 胞が 第二 経路を 介し た補 体攻 撃を 回避 する機構とも関連して興味深い知 見である,

   補 体系 には, 免疫 複合 体に よっ て活 性化が始動する古典的経路と呼ば れる経路もある. MCP は古典的経路も制御するが,ST 一領域が長くなるにつ れてその制御効果が弱まった,

  B )麻疹ウイルスレセプクーとしての機能部位   1 )麻疹ウイルス感染とSCR

  SCR1 あ るい はSCR2 を 欠損 したMCP を 発現 した CHO 細 胞に は麻 疹ウ イル

スは 感染 できなかった,一方,SCR3 あるいはSCR4 を欠損させても麻疹ウ

イルス感染には影響を与えなかった.これらの知見は,SCR1 ,2 の2 ドメイ

     −525 ―

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ン が 麻 疹 ウ イ ル ス の 感 染 に 必 須 な 領 域 で あ るこ と を 示 唆 し て い る .   2 )麻疹ウイルス感染とST ー領域

  ST 一領域は麻疹ウイルス感染には必須ではなく,ST ←領域を欠落させた MCP を発現したCHO 細胞にも麻疹ウイルス感染が観察された,逆に,ST ー領 域の最も長いST −ABC 型lVICP を発現したCHO 細胞では,麻疹ウイルスの感染 効率が最も.低かった.

   以上,申請者はMCP の機能部位について,遺伝子工学,ウイルス学,免疫

学の 手法 を駆 使し て広範囲な研究を行うことにより,MCP の補体制御活性

や 麻 疹 ウ イ ル ス レ セ プ ク ー の 機 能 部 位 を 明 ら か に し た .

   これらの知見は,基礎研究の立場から価値あるだけでなく,医薬品の開

発の手掛かりを与える点でも大いに意義あるものである.以上,本研究の

業 績 は 博 士 ( 薬 学 ) の 学 位 に 相 応 し い 業 績 と 評 価 で き る .

参照

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