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廃 棄 物 処 理 プ ロ セ ス の 制 御 応 用 に 関 す る 研 究

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廃 棄 物 処 理 プ ロ セ ス の 制 御 応 用 に 関 す る 研 究

S t u d y o n C o n t r o l A p p l i c a t i o n o f Wa s t e D i s p o s a l P r o c e s s e s

2008 年 2 月

早稲田大学大学院情報生産システム研究科 情報生産システム専攻  プロセス制御研究

葉  怡君 

(2)

第1章  序論 

1.1 研究背景···1

1.2 研究目的···2

1.3 本研究の有用性···4

1.4 本論文の構成···5

第2章  廃棄物処理プロセス    2.1 廃棄物について···6

2.2 循環型社会の推進···7

2.3 廃棄物処理技術の現状と発展···8

2.4 本研究の対象プロセス 2.4.1 紙おむつ廃棄物処理プロセス···11

2.4.2 焼却処理プロセス···18

第3章  微生物による新たな紙おむつ廃棄物処理手法の提案  3.1 微生物による紙おむつ(セルロース)分解の概念 3.1.1 微生物について···22

3.1.2 土壌微生物···24

3.1.3 酵素···26

3.1.4 セルロース···27

3.1.5 セルロースの分解···30

3.2 微生物による紙おむつ処理基本特性についての試験 3.2.1 紙おむつの含水率とpH値···33

3.2.2 水量と分解力の関係···33

(3)

3.2.5 高分子吸収材(ポリマー)の脱水試験···41

3.2.6 高分子吸収材の脱水実験結果による紙おむつの分解力向上試験···46

3.3 小型装置における分解試験 3.3.1 生ごみの分解試験···50

3.3.2 紙おむつの分解試験···52

3.4 提案した処理手法による大腸菌増殖への抑制効果 3.4.1 菌種における優勢判断の実験···55

3.4.2 牛糞を用いた大腸菌の増殖への抑制効果及び発酵熱の測定···59

3.5 まとめ···62

第4章  微生物による紙おむつ廃棄物処理プロセスモデルの構築と制御  4.1 紙おむつ廃棄物処理プロセスモデルの構築 4.1.1 Monodの増殖式を用いた微生物反応の表現···64

4.1.2 紙おむつ廃棄物処理プロセスに適用する微生物モデルの構成···66

4.1.3 温度モデルの構成···70

4.1.4 紙おむつ廃棄物処理プロセスモデル···72

4.1.5 モデルパラメータ及びプロセス応答···73

4.2 紙おむつ廃棄物処理プロセス制御系の提案 4.2.1 プロセス制御の仕組みと制御系の設計···75

4.2.2 PID制御···78

4.2.3 選択制御とその制約条件···79

4.2.4 制御入力におけるPI制御の応用···80

4.3 シミュレーションと考察···85

(4)

5.1 はじめに···90

5.2 大規模データベースオンラインモデリング(LOM) 5.2.1 Just-In-Time(JIT)モデリング···92

5.2.2 LOM ···94

5.2.3 相空間の量子化と近傍検索···95

5.2.4 局所モデル···95

5.3 LOMを用いた焼却処理プロセスの予測制御 5.3.1 焼却処理プロセスへ応用のためのLOMシステムの構築···96

5.3.2 LOMシステムにおけるフィルタリング処理···98

5.3.3 LOMによる焼却処理プロセスへの応用···99

5.4 焼却処理プロセス用の LOM システムを用いたガイダンス方法の提案とその 予測制御シミュレーション 5.4.1 提案したLOMシステムによるガイダンス方法···108

5.4.2 提案したLOMシステムによるガイダンスを用いた予測制御シミュレー ション···109

5.5 まとめ···112

第6章  結論···113  謝辞 

参考文献 

(5)

第1章 

序論

1.1 研究背景

生物制御システム,焼却炉などは多様なダイナミクスを持ち,さらに内部の物理現 象が複雑であるため,理論的解析が困難な場合が多い.このような非線形性が強いシ ステムでは,その本質を捉えてモデルを開発し制御系を設計することが必要となる.

また,そのモデルに多くの不確かさを含むため,モデルパラメータの推定が重要な課 題となる.このようなシステムは時間的に複雑な挙動を呈するため,高度な制御技術 が求められる.

一方,人間の行為や日々の生活,産業の発展などに伴い,大量の廃棄物が排出され 続け,排出量は年々増加傾向にある.環境省の報道発表資料[1]によると,平成16年 度の実績においては,一般廃棄物総排出量は5,059万トンに達し,東京ドームの約136 杯分となり,産業廃棄物の総排出量は前年度より1.3%増加し,約4億1,700万トンに 達した.このような大量の廃棄物を処理するために多くの時間と経費が必要となり,

さらに,廃棄物処理に伴って発生するダイオキシン類の防止対策や最終処分場の不足,

不法投棄ごみの処理などの問題が環境保全の話題となっている.その対策として,環 境意識が高まった現在では,廃棄物の排出を抑制し,再生利用を行うという「循環型 社会」への転換が図られている.

また,地球温暖化問題に対応するため,国際的には,1992年5月に「気候変動枠組 条約」,1997年12月には「京都議定書」(2005年2月に発効)が採択された.「京 都議定書」は,先進国全体の2008年から2012年までの温室効果ガス排出量を1990年

(6)

比で少なくとも5%の削減を目標としている.(日本は6%削減することを義務付け られている.)[2]しかし,国土が狭く,埋め立て量に限界がある日本では,廃棄物の 約8割近くを焼却処分するため,日本にある焼却炉の数が他国に比べると多く,ダイ オキシン類の排出濃度が高いと言われている.そこで,京都議定書目標を達成するた め,循環型社会の3R(リデュース,リユース,リサイクル)を活用し,「少量焼却 社会」への転換が求められる.

「循環型社会」と「少量焼却社会」を実現するための廃棄物を減量化する一方,廃 棄物の焼却処理プロセスにおいては,ごみの発生量や質により求められる環境保全対 策等が変化し,特に,家庭ごみは水分を多く含むため,燃焼時の温度変動が大きくな り,安定的な操業が難しいと考えられている.多種多様な装置を用いた廃棄物処理プ ロセスにおいては,廃棄物処理を行うと同時に,プロセスの安全性や環境基準,経済 性などの要求を満たすことが求められ,また,最適な運転条件だけではなく,外部環 境などの変化から処理プロセスに与える影響を軽減できることも期待され,廃棄物処 理プロセスにおける「プロセス制御」技術の応用が望まれている.

このように,地球温暖化問題を始めとする環境問題への関心の高まりと制御理論の 発展に伴い,環境問題を解決するための計測技術,制御技術,モデリング技術への期 待が高まっている.

1.2 研究目的

上述した背景のもとで,本研究では,環境問題にかかわる制御問題として廃棄物処 理を対象として,第1に化学反応の促進による処理方法である微生物を用いた小型廃 棄物処理プロセスのモデル開発とその制御方法の提案をしている.第2に,焼却によ る大型廃棄物処理プロセスの合理的な操業支援を実現するため,データベースに基づ く予測制御技術を提案している.

微生物を応用した廃棄物処理では,微生物の成長現象が,環境因子と微生物自身の 影響を受けるため,時間的な変動を示すことより,非線形性のダイナミクスを有する

(7)

複雑なシステムとなる.そのプロセスを効率的に制御するため,廃棄物処理プロセス モデリングと微生物の処理特性を踏まえた制御技術の開発が課題となる.そこで,微 生物の動的挙動を表現した廃棄物処理プロセスの物理モデルを構築し,ごみの減量化 を促進し,環境負荷の低減の期待できる研究を行なう.廃棄物の中に,紙おむつ,生 理用品,介護ケア用品などの衛生用品,特に,紙おむつの排出量が多く,図1.1に示 しているように毎年の生産量はますます増えていくと予測されている.平成16年度 の生産実績に基づいて推測された使用済紙おむつの排出量は約225万トンとなり,当 年度の一般廃棄物の総排出量(5059万トン)の約4.45%を占める.このような大量の 紙おむつの処理問題は将来の社会的な問題となり,紙おむつ処理に技術的な課題が残 っている.そのため,本研究では,紙おむつを廃棄物の処理対象とし,プロセス制御 技術を生かして廃棄物の減量化する処理プロセスを開発し,一般家庭向けの紙おむつ 専用小型処理装置を提案する.

一方,焼却による廃棄物処理では,炉内で不特定の廃棄物による化学反応,物理反 応が進行するため,多数の物理現象が絡み合い複雑な挙動を示す非線形性の強いプロ セスである.そのため,物理モデルの構築が困難であり,また,投入される廃棄物成 分が特定できないため,燃焼時の温度変動が大きくなり,安定かつ効率的な制御が難 しい.そこで,近年,高炉のような大規模かつ非線形性の強いプロセスに対して,デ ータベースに基づく予測制御技術として大規模データベースオンラインモデリング

(Large-database Online Modeling,LOM)が提案されている.本研究では, このLOM 技術を用い,プロセス値を適切に予測することにより,焼却炉の安定操業を支援する. 

(8)

大人用紙おむつの需要見通し

(2005年〜2011年)

500 600 700 800 900 1,000 1,100 1,200

2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 生産数量

(単位:百万枚)

    図1.1  大人用紙おむつの需要見通し

1.3 本研究の有用性

地球に多く存在している微生物が有機物の分解処理する能力を持っていることが知 られており,その能力を環境保全技術の開発に応用し,環境に低負荷な紙おむつ廃棄 物処理手法を提案した.このような杉チップに依存する微生物群を用いた自然処理技 術による使用済紙おむつを杉チップによって消臭,殺菌まで考慮した処理システムを 実現し,選択制御を応用した温度制御により適切な熱量を加え,紙おむつ分解処理の 効率を改善できた.使用済紙おむつを埋め立て処理した場合では,数十年もかかるの に対して,提案する廃棄物処理システムを用いた場合では,約 4 日で分解処理が可能 となり,廃棄物の減量化に成果をあげた. 

さらに,ハウステンボス環境研究会では,ごみの元素組成,処理に必要なエネルギ ー量などから,ごみ1トン当たりの環境負荷量を算出している.その資料から,焼却 処理の場合では,二酸化炭素(CO2)=1.979(kg/t)となり,コンポスト処理の場合は二 酸化炭素(CO2)=0.6506(kg/t)となることが報告されており,提案する廃棄物処理手法 は二酸化炭素の削減に効果があり,環境負荷低減への貢献が期待できる.

(9)

一方,焼却処理プロセスを研究対象とし,より安定な廃棄物処理プロセスを求める ため,本研究では,廃棄物処理プロセスのための大規模データベースオンラインモデ リング(LOM)システムを構築した.構築した LOM システムは,操業上重要な指標 である炉内プロセス値を適切に予測することにより炉の安定操業を支援することがで きる.また,既存 LOM システムを廃棄物処理プロセスに適用した場合では予測精度 が十分得られなかったのに対して,廃棄物処理プロセスに適用するために LOM シス テムに平滑化処理を具備し,プロセスに適したサンプリング間隔や条件を検討した結 果,実用上十分な予測精度を得ることができた.さらに,提案するガイダンス手法は, 構築した LOM を応用することによって,操業中のプラントのプロセス状況に応じた 望ましい操業条件を探索し,提示していくことにより,プラントの更なる合理的な運 転が可能となる.

1.4 本論文の構成

本論文の構成は以下のとおりである.

第2章では,廃棄物の定義と分類方法を述べ,循環型社会の発展,廃棄物の処理技術 と課題について述べる.第3章では,微生物の成長現象などのダイナミクスを解明する ための分解処理実験を説明する.第4章では,紙おむつ廃棄物処理プロセスを最適化す るプロセス制御技術を提案している.第5章では,LOM 技術を用いたごみ処理プロセ スの予測制御について説明する.最後に,本研究の研究成果を第6章でまとめる.

(10)

第2章 

廃棄物処理プロセス

2.1 廃棄物について

「廃棄物処理法」により,「廃棄物」とは,「ごみ,粗大ごみ,燃え殻,汚泥,糞尿,

廃油,廃酸,廃アルカリ,動物の死体その他の汚物または不要物であって固形状又は 液状のもの」と定義されている.言い換えると,占有者が自ら利用または他人に有償 で売却することができないために不要になったものをいう.廃棄物に該当するか否か は,そのものの性状,排出の状況,通常の取扱い形態,取引価値の有無および占有者 の意志などを勘案して総合的に判断.例えば,野積みされた使用済みタイヤが約 180 日以上の長期間にわたり放置されている場合には,廃棄物とみなされる[3]

また,図2.1のように,廃棄物は大きく一般廃棄物と産業廃棄物の2つに分類され,

事業活動から生じる廃棄物のうち,燃え殻,汚泥,畜産業から排出される動物の糞尿,

廃油,廃酸,廃アルカリ,畜産業から排出される動物の死体など20種類の廃棄物を「産 業廃棄物」とし,一方,一般家庭から排出される家庭ごみ,及び工場等から排出され る産業廃棄物以外のごみを「一般廃棄物」と言う.さらに,廃棄物の中で,爆発性,

毒性,感染性,その他人の健康や生活環境に被害を生じる恐れがあるものを「特別管 理一般廃棄物」,「特別管理産業廃棄物」と区別し,収集から処分まで全ての過程にお いて管理されている[4]

(11)

廃棄物 一般廃棄物

産業廃棄物(事業活動に伴って生じた廃棄物で政令に定める19種類)

家庭系廃棄物(一般家庭の日常生活に伴って生じた廃 棄物)

事業系一般廃棄物(事業活動に伴って生じた廃棄物で 産業廃棄物以外のもの)

特別管理一般廃棄物(感染性廃棄物、その他)

特別管理産業廃棄物(爆発性、毒性、感染性のある廃棄物)

図2.1  廃棄物の分類

2.2 循環型社会の推進

地球上では,様々な生物(有機物)と,生物を取り巻く非生物的な環境(無機物)

が相互に関係しあって,自然の物質循環を作り出している.しかし,最近の数年間で,

人類の開発行為が大気や水,土壌などを汚染し,地球環境を悪化させる最大の要因と なり,多くの生き物たちの命を支えている地球生態系に大きな打撃を与えている.さ らに,温暖化ガスの放出や,森林資源の減少,砂漠化の進行など様々な異常現象が世 界中に起こっている.このような異常現象のため,「地球が無尽蔵の資源を持っている のではない,地球環境は無限なものでもない」という認識が世界中の人々に広まりつ つある.地球環境の物質循環や生態系の破壊を回避するために,私たちは地球という 有限な器の中で「持続可能な社会」を築く必要がある.

「持続可能」という理念は,1987年,国連の環境と開発に関する世界委員会(WCED)

(12)

の最終報告書「地球の未来を守るために(Our Common Future)」において提唱された.

この最終報告書では,「持続可能な開発」とは「将来の世代のニーズを充たしつつ,現 在の世代のニーズも満足させるような開発」のことであると定義されている.それ以 来,「持続可能な開発」という考え方は世界中で広く用いられるようになり,1992 年 の国連地球サミットでは,この考え方をもとに,「環境と開発に関するリオ宣言」や「ア ジェンダ21」が合意され,今日の地球環境問題に関する世界的な取り組みの基礎と なっている[2]

2006年4月に閣議決定された第3次環境基本計画においては,持続可能な社会は「健 全で恵み豊かな環境が地球規模から身近な地域までにわたって保全されるとともに,

それらを通じて国民一人一人が幸せを実感できる生活を享受でき,将来世代にも継承 することができる社会」と定義されている[2].持続可能な社会を実現するためには,

以下の2つの問題について考える必要があると言われている.

(1)地球に存在する資源の制約の問題

(2)人間活動によって排出される汚染に対する自然のシステムの処理能力の問題.

すなわち,循環型社会を構築するためには,廃棄物の発生抑制(リデュース),再使 用(リユース),再生利用(リサイクル)の3Rの推進が必要であり,重要である.具 体的には,まず,できる限り廃棄物の排出を抑制し,次に廃棄物となったものについ ては,不適正な処理の防止やその他の環境への負荷の低減などに配慮しつつ,再使用,

再生利用,熱回収の順に循環的な利用を行うことである[5],[2]

2.3 廃棄物処理技術の現状と発展

産業革命以降の人類社会は,機械設備を備えた大規模な工場で,人手をかけずに良 質で安価な工業製品を大量に生産し,生産された工業製品を人々が大量消費するスタ イルになっている.先進国は,このような大量生産・大量消費スタイルによって豊か さと繁栄を獲得した.発展途上国においても,先進国のような豊かさと繁栄を求める ため,大量生産・大量消費化が進んでいる.

(13)

その発展を支える大きな原動力となったものが石炭や石油などの化石燃料である.

化石燃料は世界中で大量生産・大量消費化が進むとともに,大量に使用されるように なり,その消費量が加速度的に増えていった.しかし,化石燃料の消費は,自然のシ ステムの処理能力を超えた二酸化炭素の排出を招いている.このような人間活動の増 大により大量排出した二酸化炭素の量が森林などによる吸収量を超えていることが,

地球温暖化の大きな原因となっている.

そこで,地球温暖化問題に対応するため,国際的には,1992年5月に「気候変動枠 組条約」,1997年12月には「京都議定書」(2005年2月に発効)が採択された.「京都 議定書」は,先進国全体の2008年から2012年までの温室効果ガス排出量を1990年比 で少なくとも5%削減することを目的として,各国ごとに数値化された削減約束を定 めており,日本においては,6%の削減約束を確実に達成することが必要である[2],[7]

このような循環型社会を構築するため,3R の推進が必要となる.一方,循環型社 会を目指す日本の社会に支えられている様々な技術には,先進国から導入した技術も あるが,元の技術に日本独自の工夫を加えて改良したもの,また独自性のある,日本 が提案した技術が多くある.これらの技術は世界中に,特にアジア地域における廃棄 物の適正処理や3R の推進に大きく貢献している.3R に関する技術の発展成果を次 のように説明する.また,近年の廃棄物処理における関連法・政策の整備や3R の発 展などを図2.2に示す.

(1)リデュース・リユース技術[2]

リデュース・リユース技術においては,原材料などの使用合理化や,製品の 長寿命化などが求められている.例えば,容器包装に利用するプラスチックの 使用量を低減することや,家電製品に関しては,部品点数の削減や部品の小型 化,ユニット化などによる製品の軽量化などが実現されている.長寿命化の例 として,液晶バックライトの長寿命化やエンジンオイルの交換時期の延長など がある.

一方,リユースは,リサイクルに比べ,追加的な消費エネルギーや環境汚染

(14)

が少ないので,リサイクルより優先される場合が多くある.事例として,自動 車においては,使用済み自動車から外した部品などをベースに,摩擦・劣化し た構成部品を新品と交換した後,再組立・品質確認を行い,製品本来の機能を 回復させる取組みが行われている.

(2)リサイクルに配慮した製品などの設計[2],[6]

製品を設計する際に,リサイクル時の解体性や再資源化の可能性を向上させ ることを考えた上で開発することを「環境配慮設計」と呼ばれる.

例えば,自動車製造において,リサイクルに配慮したリサイクル材・再生可 能資源の採用,解体しやすい構造・部品を採用する.洗濯機に関しては,パル セータの中心部分にねじ込まれているボルトを一般工具で分解できるような易解 体設計がされている.

(3)廃棄物から資源へ[2-3]

廃棄物から資源への技術(「マテリアルリサイクル技術」という)は,廃棄 物を再び素材や原料として再生利用するものである.例えば,材料のリサイク ルであるペットボトルのリサイクルや紙のリサイクル,部品の再資源化である 自動車のリサイクルなど,様々の領域で進められている.

(4)廃棄物からエネルギーへ(サーマルリサイクル)[2],[5],[8-9]

焼却処理に伴って発生した熱エネルギーを電力や蒸気などの形で回収し,再 利用するのが「サーマルリサイクル」である.また,食品廃棄物や家畜排泄物,

建設発生廃材などのバイオマスをメタンなどに転換し,エネルギーとして利用 する技術の導入も進んでいる.さらに,サーマルリサイクルにより,廃棄物焼 却時の熱エネルギーを電力などに変換し,化石燃料の代わりに使用されている ことや,近年,微生物を活用し,建設木材を主原料に紙くず,食品残渣などの 廃棄物を転換し製造したバイオエタノールなどより,二酸化炭素の排出削減へ の期待ができる.

(15)

図2.2 廃棄物処理・3Rの発展

(資料:『平成19年版  環境・循環型社会白書』)

2.4 本研究の対象プロセス

2.4.1 紙おむつ廃棄物処理プロセス

(1)  紙おむつの構成

紙おむつのデザインはメーカーによって異なるが,内部の構造は図 2.3 で表 しているように,おおざっぱに表面材,防水材と吸水材の3つの部分と構成さ れている.各部分の役割と組成素材は以下のようである.

(16)

• 表面材:

(a)  役割:直接肌に接する部分は,着用中の快適性を向上させるのが役 割で,ポリエステルやポリプロピレンの不織布などが使用されてい る.排泄物に含まれる水分を素早く吸水材に送り込み,表面材自体 はぬれにくく,サラッとした状態を保って,肌をぬらさないよう工 夫されている.

(b)  組成素材:ポリオレフィン系不織布,ポリプロンピレン不織布,ポ リエチレン/ポリエステル不織布,レーヨン不織布などの素材を使う.

• 吸水材:

(a)  役割:吸収紙,綿状パルプ,高分子吸水材などの組み合わせで構成 されている.水分を吸収しやすく,一度吸収したら確実に取り込ん で後戻りをさせない工夫がされている.表面材の不織布を通過した 水分は,吸収紙,綿状パルプ,高分子吸水材で素早く吸収され,逆 戻りさせない.高分子吸水材は自重の50〜100倍もの水分を吸収し,

押しても,しみだしにくい特性を持っている.

(b)  組成素材:ポリエチレンフィルム,ポリエチレンラミネート紙(不 織布),ポリウレタンラミネート不織布などの素材を使う.

• 防水材:

(a)  役割:紙おむつの外側を覆う防水シートで,水分の漏れを防止する おむつカバーに相当する役割を果たしている.一部には水分を通さ ず通気性のある材質が使われているものもある.

(b)  組成素材:綿状パルプ,高分子吸水材などで組成する.

• その他:テープ型の場合の紙おむつをとめる粘着テープ,止着材,その 他漏れ防止など,各メーカーで用途や型によって独自の工夫がされてい る.

(17)

図2.3  紙おむつの構造(資料:『紙おむつのQ&A』)

また,紙おむつを構成される各成分の正しい比率はメーカーによって異なる が,本研究で使用した乳幼児用紙おむつ1枚(約26g)において,各成分の実 際の重さを量ってみると,概ね重さの49.4%はパルプ,4.6%は高分子ポリマー,

ビニールと不織布などプラスチックの部分は46%程度と推定される.

(2)  使用済紙おむつの処理現状と問題点[4],[10-13]

病院から排出された医療廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に分けられてい る.そこで,排出量が多い紙おむつは現在,一般廃棄物として処理されている.

ところで,高齢化社会に伴って,紙おむつの生産枚数は日衛連の調査結果に よると,2050までの新生児出生数の推移は図2.4のようになり,乳幼児用紙お むつは2005年の7343百万枚から2008年の7192百万枚までに減少すると予測 されている.それに対して,現在,日本の65歳以上の高齢者人口は約2,500万 人で全人口の 19.5%を占めている.図2.5のように,総務省統計局「日本の統 計」(2006年版)によれば,今後30年間は高齢者の増加傾向が続き,ピークと 予測されている 2035 年には3,633 万人に達し,全人口の33%を占めると予測 されている.このような高齢者の増加は今後の大人用紙おむつの需要が高くな ると予測された大きな要因である.

(18)

図2.4  新生児出生数の推移(資料:『日衛連ニュース』)

図2.5  老齢人口(65歳以上)の推移(資料:『日衛連ニュース』)

(19)

しかし,廃棄物対策とリサイクル対策を総合的・計画的に推進する「循環型 社会形成推進基本法」が「大量生産・大量消費・大量廃棄」型の経済社会から 脱却し,生産から流通,消費,廃棄に至るまで,物質の効率的な利用やリサイ クルを進めることによって,資源の消費を抑制し,環境への負荷が少ない「循 環社会」を形成することをねらいとしている.そのため,どんどん大量に生産 されてくる使用済紙おむつ処理問題の解決方法についての研究発展が注目さ れている.

使用済紙おむつの処理現状に関しては,国によって様々の処理手法があるが,

よく使われているのは概ね焼却,埋め立てとリサイクルの3つの方法である.

• 焼却

日本では,使用済紙おむつの処理方法では焼却が主流であるが,排泄物の水 分を含んだ使用後の紙おむつを完全燃焼させるためには 700℃〜800℃の炉内 温度が必要と言われている.自治体の焼却処理場では 800℃以上の高温が保た れて焼却処理が行われているが,焼却活動に伴って,ダイオキシンの発生がし やすい恐れが多少ともあり,自然環境に悪い影響を与えるという問題を抱えて いる.

それに対して,焼却を前提に完全灰化する素材,焼却時に有毒なガスを発生 させない素材や処理方法などの開発が盛んである.特に,紙おむつを炭化処理 に関する商品が開発され,全国的に発売されている.炭化処理とは,”火によ る空気中での焼却方法”ではなく,“酸素のない状態で,600℃の高温水蒸気によ る熱分解の方式”で処理を行うごみの処理方法である.熱分解とは有機物に温 度を与えていくと,そのもの自体が自然に熱を発し出すが,これを熱分解と言 う.熱と水による分解の熱分解を使うのは一般焼却処理との違い,炭化処理の 持つ大きい特徴である.また,炭化された処理物は最後に炭になるので,一般 廃棄物として処理するか,あるいは再利用することもできるという利点がある が,炭化するプロセスに,エネルギーが大量に消費されているという欠点もあ

(20)

ると言われている.そして,紙おむつの処理に普及されていないのも現実であ る.

• 埋め立て

アメリカでは,ゴミはほとんど埋め立てされるため,その紙おむつが雑菌,

ウイルスの繁殖地となり環境を汚染することになると言われている.なお,埋 め立てにするには,埋立地の余裕が年々少なくなり,また,ごみの分解に数百 年も要ると言われている.

可燃性の一般廃棄物は,焼却処理によって減量化が行われるが,焼却残渣や 排ガス・排水処理による廃棄物が発生する.これらの廃棄物は最終的に廃棄物 処分場で埋め立てられる.しかし,ユーロハズコン研究の報告書によれば,廃 棄物最終処分場は健康に害をもたらす可能性がある.日本において廃棄物処分 場から発生する浸出水の成分を分析した研究報告[14]によると,鉛,ヒ素,セレ ン,ホウ素,ニッケルなどの無機化学物質が,水環境基準値を越えている事例 が確認されている.その他,アルミニウム,カドミウム,クロム,銅,マンガ ンなど多種類の無機化学物質が検出されている.すなわち,ごみ埋め立て処分 場の近くに住む人は,空気や水,土壌中に出てきた化学物質にさらされる恐れ がある.

• リサイクル

高齢化社会の進化に伴い,紙おむつの使用量が年々増加している.そこで,輸入 原料であるパルプ使用量の増加は森林資源の減少,また使用後の焼却処理による環 境問題が懸念されている.この問題を解決するため,循環型社会の形成に向くリ サイクル紙おむつの研究が行われている.事例として,福岡大学が世界初の紙 おむつリサイクル施設を開発し,また,2005年 4 月に大牟田エコタウンの工場 で稼動が始まったというリサイクル紙おむつ研究の概要を図2.6に示す.

提案された紙おむつのリサイクルの手法を具体的に説明すると,使用済紙お むつの原材料が回収された後,上質パルプ,低質パルプとプラスチックの3種

(21)

類に分別され,上質パルプはリサイクル紙おむつの素材となり,低質パルプは 堆肥化で,プラスチックは焼却で処分するという「紙おむつの再資源化」の手 法である.

しかし,日本衛生材料工業連合会(略称:日衛連)の調査結果によると,現 社会では,「衛生的な観点から焼却処理が望ましい」,「し尿がついているので 再利用したくない」という声があり,ユーザの約70%はリサイクル紙おむつに 否定的な考えであることがわかった.

使

パルプ ポリマー ビニール

を洗浄分離

上質パルプ回収

低質パルプ・ポリマー回収

ビニール回収

汚水処理

処理水を再利用

高齢者支援用品原料(第2循環,光合成)

再生紙おむつ原料(第1循環,リサイクル)

使

パルプ ポリマー ビニール

を洗浄分離

上質パルプ回収

低質パルプ・ポリマー回収

ビニール回収

汚水処理

処理水を再利用

高齢者支援用品原料(第2循環,光合成)

再生紙おむつ原料(第1循環,リサイクル)

図2.6  紙おむつリサイクルシステムの概要

上記の各処理手法の問題点を踏まえて,超高齢化社会となる将来では,紙おむ つのニーズが年々増加することに対し,紙おむつの処理問題は将来の社会的な問 題になる可能性が高いため,効率的で環境にやさしい新たな処理手法を開発する 必要があると考られる.そこで,微生物を活用し,使用済紙おむつの自然に分解 処理する手法を提案する.

提案する紙おむつ廃棄物処理手法を第3章で紹介し,この手法を用いた紙おむ つ廃棄物処理システムの提案及びその制御応用については第4章で説明する.

(22)

2.4.2 焼却処理プロセス

廃棄物処理のフローを図 2.7 で表す.各地域から収集・運搬されてきた廃棄物 は,埋め立てなどの最終処分や有効利用に適するように,焼却,堆肥化,破砕,

圧縮などの中間処理が行われる[2].本論文では,中間処理の中の焼却処理を研究 対象とし,そこに存在する課題と解決方法を検討していく.

廃棄 分別 収集

運搬 保管 中間

処理

最終 処分

リユース ・ リサイクル リサイクル

図2.7  廃棄物処理フロー(資料:『平成19年版  環境・循環型社会白書』)

(1)  焼却処理技術

焼却,堆肥化,破砕,圧縮などの中間処理により,廃棄物の減量化・安定化・

無害化が図られている.中間処理のうち,我が国で最も一般的なものが焼却処 理であり,概に,一般廃棄物の排出量の8割に占めている.焼却することによ って,元の処理対象(廃棄物)と比べると,重量では約10分の1,体積では約 20分の1に減量されると言われている.

廃棄物処理法の施行規則では,一般廃棄物の焼却施設の構造基準として,燃 焼ガス温度を 800℃以上にして焼却することや,集じん室に流入するガスの温 度を200℃以下とすること,排ガス処理設備を設けることなどを規定している.

(2)  ごみ処理プロセスの処理現状と問題点[2],[15]

近年,ガス化溶融炉の導入が進んでいる.ガス化溶融炉は,ガス化炉(図2.8)

(23)

で廃棄物を熱分解してガスと炭化物を生成し,これらを溶融炉で高温燃焼させ て灰分を溶融し排ガスとスラグにするものである.ガス化溶融炉は,高温完全 燃焼によりダイオキシンの発生が抑制されること,廃棄物の保有熱量を有効に 利用して灰の溶融固化を行うことで,灰は無害化され,溶融スラグの有効利用 が図られること,燃焼に必要な空気量が少なくて済むことから排ガス量が少な く高効率の熱回収が可能となることなどの特徴がある.

図2.8  ガス化溶融炉基本フロー

(資料:『平成19年版  環境・循環型社会白書』)

ガス化溶融炉には,キルン式,流動床式,シャフト炉式の3種類がある.

キルン式ガス化溶融炉は,外熱キルン式分解炉と燃焼溶融炉により構成され,

酸素の供給を絶って間接的に加熱し熱分解が行われるように 150mm 以下に破 砕され,ごみ質の安定化を図るために,事前に直接気流乾燥を行って,熱分解 キルンに供給され,間接加熱され1〜2時間かけてゆっくり乾燥・熱分解が行 われる.キルン内が酸素供給のない還元状態であるため,未燃物中の鉄やアル ミニウムはリサイクルに適した状態で回収される.

流動床式ガス化溶融炉(図 2.9)は,流動床ガス化炉に投入されたごみの一 部を流動砂とともに燃焼させ,部分酸化を行い,その燃焼熱を利用して熱分解 を行う方法である.流動床式ガス化溶融炉では,500〜600 度と比較的低温で,

また,極低空気比でごみの乾燥・熱分解ガス化がゆっくり行われる.

(24)

図2.9  流動床式ガス化溶融炉

(資料:『平成19年版  環境・循環型社会白書』)

シャフト炉式ガス化溶融炉(図 2.10)は,熱分解ガス化と溶融を一体化して 行うもので,炉内は上方から下方に向かって乾燥・熱分解ガス化域と燃焼溶融 域から構成されている.廃棄物はガス化溶融炉内で乾燥・熱分解ガス化され,

残りの灰分と不燃物が下部の燃焼溶融域で溶融スラグ化される.

(25)

図2.10  シャフト炉式ガス化溶融炉

(資料:『平成19年版  環境・循環型社会白書』)

ところで,廃棄物の発生量や質により,求められる環境保全対策などが変化 する.特に,家庭ごみは水分を多く含むため,燃焼時の温度変動が大きくなる.

そのため,高度な完全燃焼技術と制御技術が必要となる.そこで,本研究では,

LOMの予測技術を用いて炉内温度の予測を行い,さらに,操業支援を図るため に,LOMを用いたガイダンス方法を提案する.この部分について,第5章で説 明する.

(26)

第3章 

微生物による新たな紙おむつ廃棄物処理手法の提案

3.1 微生物による紙おむつ(セルロース)分解の概念

3.1.1 微生物について

地球上には,少なくとも150万種類以上の生物が知られており,その約30%

は微生物であると言われている.微生物とは,肉眼で直接認識することができな い微小な生き物の総称であり,10分の1ミリメートル以下の生物と定義されて いる.これらの微生物は大きく原核生物(図3.1),真核生物(図3.2),ウイルス

(図3.3)の3種類に分けられる.

原核生物にはバクテリアやアーキアが所属している.その中に,グラム陰性菌 群に属する環境浄化菌群があり,活性汚泥や堆肥などの有機物の豊富な環境から 分離され,高分子化合物を分解する役割を果たしている.真核生物には,単細胞 であるカビや酵母などは動植物と同じ細胞構造を持つ真核細胞である.その中に,

環境改善などの研究によく使われているカビは糸状菌とも呼ばれ,分枝した 10

〜30µmの菌体細胞が連鎖している.ウイルスは,ゲノムとしてDNAかRNA のどちらかの核酸およびウイルス粒子(ビリオン)を構成する感染性の構造体で,

感染細胞内のみで増殖する.また,寄生する宿主によって,動物ウイルス,植物 ウイルスとバクテリオファージ(細菌ウイルス)に分類される[16]

また,酸素の有無が生存できるかどうかに関わることによって,好気性微生物 と嫌気性微生物に分別されている.酸素が存在する条件下で生存できる微生物を

(27)

「好気性微生物」と言い,一方,酸素が存在しない場合で生存できる微生物を「嫌 気性微生物」と呼ぶ.このような分類方法は環境浄化によく利用されている.例 えば,廃水処理においては,好気的処理である活性汚泥法もあるが,嫌気的処理 であるメタン発酵という処理法もある.

一方,地球にも多くの種類の元素が存在している.元素を有効に利用される仕 組みは物質循環と呼ばれ,微生物はこの自然界の物質循環,例えば,炭素循環や 窒素循環などに大きい役割を果たしている.微生物の有機物を分解する能力は,

近年,環境保全技術開発への適用に期待されている.

図3.1  バクテリアの構造図(資料:『バイオのための基礎微生物学』)

図3.2  カビの構造図(資料:『バイオのための基礎微生物学』)

(28)

図3.3  ウイルスの構造図(資料:『バイオのための基礎微生物学』)

微生物菌体は,約 80%の水分と蛋白質,炭水化物,核酸,脂質及び無機物な どの化学物質から構成されている.しかし,これらの化学組成は微生物増殖の培 地組成,培養時間,増殖速度などによって変動する.また,微生物の生育,増殖 及び代謝などの生理学的性質は,環境のいろいろな条件によって促進されたり,

阻害されたりして,大きな影響を受ける.微生物の増殖には,炭素源,窒素源,

水分および無機塩類,ビタミンなどの生育因子が必要である.環境的には,酸素,

二酸化炭素,温度,水素イオン濃度,浸透圧,湿度と光線は,微生物の増殖(菌 体収量,生存率など)や菌体の組成に関与し,さらに影響を与えると考えられる.

従って,培養工学の主な問題は,考えている微生物反応が最適になるように,こ の環境因子を制御することにある.

そこで,本研究では,バクテリアに属する菌群を用い,環境因子を制御しなが ら,使用済紙おむつの分解処理を行う.

3.1.2 土壌微生物

自然環境下では,微生物は相互に様々な影響を及ぼしあって生存している.土 壌中には多種類の微生物が混在しており,お互いに助け合ったり,拮抗したりし

(29)

ている.土は,土壌粒子,砂,沈泥,粘土などが基本的な骨骼となって構成され,

土の内部には,大小さまざまな孔隙が存在し,土の粒子の豊富な表面と孔隙が微生 物活動における重要な拠点となっている.孔隙は微生物が生育するための水分や栄 養源を保持するという点でも重要な役割を果たしている.孔隙の様式は土の種類に よって大きく変わり,これらの違いが土に住む微生物に対して影響を及ぼすことに なる.通常,土壌細菌は,直径にして約0.25µm ~ 6µmの孔隙に付着して生える

1グラムの土の中に数百万から数億の微生物が存在していると知られており,

土壌微生物は自然環境中で植物や動物の遺体を分解し,毎年百万トンの有機物を除 去すると言われている.この過程により,有機物は,植物が利用可能な栄養物へと 変換されることから,土壌微生物はリサイクル活動をしていると言える.さらに,

近年,土壌微生物は天然の有機化合物を分解するだけではなく,油,農薬,ガソリ ン,有機溶剤などの化学物質も分解するのに重要な役割を果たしていることが示さ れた.また,土壌中では様々な種の微生物が,相互に関連しながら生息しており,

植物でも見られるように,場所や気候などが異なる場所で,それぞれの土壌に特徴 的な微生物フローラを形成しているものと推測される.

一般的な土壌微生物の主要的な役割は「分解」であり,落葉落枝などで供給さ れた植物由来の有機物を分解して,炭素,窒素,硫黄,リンなどの元素を再び植 物などが利用できる形態に変換する.このような落葉や,生物遺体などを栄養源 にして,様々な分解が活発に進んでいく土壌微生物には,セルロースの分解菌が いると言われている[17]

       

図3.4  電子顕微鏡で見た土壌微生物(桿菌の場合)

(30)

3.1.3 酵素

生物体内で新陳代謝を行うとき,反応を促進する触媒は酵素である.酵素は蛋 白質で構成されているので,温度,pH など蛋白質に影響を与える因子は酵素活 性と酵素の反応速度にも影響を与える.

1)  温度

酵素の活性は温度の変化によって変わる.一般的に,温度が上がると,活性が 高くなり,反応速度も増加する.ここで,酵素に対する最適温度を超えると,活 性が失活して,そのとき,温度を下げても,活性が回復できないことになる.逆 に,酵素は低温のとき,反応が遅い,あるいは全然反応していない可能性もある が,少しずつで温度を上げたら,活性も高くなって,最適温度で反応速度量は最 大となる.

酵素の触媒作用は,酵素に基質が取り込まれるところから始まる.下の反応式 に示すように,酵素Eに基質Sが取り込まれると酵素基質複合体E-Sが形成され,

酵素の活性部位で反応が起き酵素生成物複合体E-Pができ,最後に生成物Pが酵 素から離れて反応が終わる[18].       

       

) (

) (

) (

) ( ) (

E

生成物        酵素生成物複合体

    酵素基質複合体    

基質    酵素

 +      

         

    

S E S E P P

E ↔ − → − →

       

2)  pH

酵素の反応は,常温,常圧,pH 中性付近で働く.しかし,一般に化学反応は こうした外の因子が極端(温度を上昇させるか,pH を変化させる)であればあ るほど進行する.ここで,酵素は極端な高 pH,低 pH によって変性する.酵素 の反応に「酵素の最適温度」があり,「酵素の至適pH」も種類によって異なる.

さらに,種類の異なる酵素における反応速度は図 3.5[45]に示すように pH値によ って変化する.

(31)

図3.5  酵素反応速度とpH(資料:『酵素の化学』)

セルロース分解菌が生産する酵素はセルラーゼ(Cellulase)と呼ばれる.セル ラーゼとは,β-1,4-グルカンのような多糖類の還元末端から,グルコース残基を 加水分解により切り取る酵素である.主に細菌や植物において作られ,生物界に 広く存在する.植物細胞の細胞壁のみを分解し,プロトプラスト化する場合に使 われる. 牛や羊などの反芻動物や馬などは消化管にセルラーゼを産生する微生 物を生息させており,これらによるセルロース分解によって植物繊維の消化を可 能にしている.

セルラーゼを生産するセルロース分解菌の中に,糸状菌 Trichoderma reesei は セルラーゼ高生産菌として有名な菌であり,50〜60 g/lのタンパク質を分泌し,

その大部分がセルラーゼ,ヘミセルラーゼを占めている.一方,好熱嫌気性セル ロース分解細菌(Clostridium thermocellum)では複数のサブユニットからなるセ ルラーゼ複合体 ,セルロソーム (Cellulosome) を形成していることが知られてお り,これが高いセルロース分解能につながっていると考えられている.

3.1.4 セルロース(Cellulose)

この地球上で,最もたくさん存在している再生利用が可能な有機化合物の1つ がセルロースである.その生産量は年間640億トンと推定されている.普段の生 活でよく触れるセルロースは,紙であり,綿である.木にも,植物体,さらに紙

(32)

おむつにセルロースは多く含まれている.

セルロースとは,数千から数万の β-(1→4)結合した D-グルコース単位によっ て重合したシート状の高分子であり,水に不溶で,結晶状態で存在している.その構 造を図3.6に示す.これに対し,多数のα-D-グルコース分子がグリコシド結合に よって重合した天然高分子は図3.7で表しているらせん状のデンプンである.セ ルロースとデンプンともD-グルコースの重合したものですが,セルロースは水に 溶けない,食べても消化されない一方,デンプンは水に溶け,食べると消化され 吸収される. この違いは,図 3.8に示すように D-グルコース分子の結合様式の 違いによるものであると言われている[20]

セルロースの特徴として,高強度のほかにも,繊維状,紙のようにリサイクル 利用可能,植物によって再生可能,水に不溶だが親水性で水により膨潤,親油性,

化学的に比較的安定,生物分解性を有するなどがあるため,環境保護の観点から の優位性があり,セルロースの応用範囲は様々な分野で広まっている[46]

このようなセルロースをグルコース(図 3.9)にまで加水分解するためには,

セルラーゼと呼ばれる酵素が用いられる.

図3.6  セルロースの分子構造[44]

(資料:『糖の話(2)』)

(赤色:酸素,灰色:炭素,白色:水素)

(33)

図3.7  澱粉の分子構造[44]

(資料:『糖の話(2)』)

 

図3.8  左はセルロース,右はデンプンの繋がり方[44]

(資料:『糖の話(2)』)

図3.9  グルコース(ブドウ糖)の分子構造[43]

(資料:『糖の話(1)』)

(34)

3.1.5 セルロースの分解[19]

セルロースは結晶性のミクロフィブリルを形成して存在するため,セルラーゼ による分解機構は複雑である.セルラーゼを用いて微生物によるセルロースの分 解は,菌体外に分泌生産された,反応様式の異なる複数のセルラーゼの共同作用 あるいは相乗作用により達成されると考えられている.

セルロース分子鎖の分解様式を2つに分け,1つはprocessive型であり,もう 1つはnon‐processive型である.一方,セルロース分子鎖の分解様式によって,

セルラーゼのタイプを2種類に分けられ,セルロース分子鎖をランダムに切断す るのはエンド型,分子鎖を非還元末端から順次分解するのはエキソ型と言う.

セルラーゼの相乗作用によるセルロース分子鎖の分解を図3.10に示す.process 型(process 型セルラーゼ:CBH,セロビオヒドロラーゼ)の分解では,活性中 心がペプチドループによって覆い被されているために,一度セルロース分子鎖が 活性中心に捕捉されると,加水分解後もセルロース鎖は容易に脱離されることな く活性中心の中を逐次的に移動しながら,セロビオース(C12H22O11)が順次切り 出されていく.一方,non‐processive 型(non‐processive 型セルラーゼ:EG,

エンドβ‐グルカナーゼ)では,活性中心を覆うペプチドループが欠落している ため,活性中心でのセルロース分子鎖の脱離がCBHに比べて容易である.EGに よる分解では,1回の加水分解反応ごとに酵素の活性中心からセルロース鎖が脱 離していると考えられる.

図3.11セルラーゼの酵素作用模式で表すように,酵素加水分解の模式を用いて 説明すると,セルロースの加水分解では,酵素が相乗的に作用して進行する.第 1種の酵素は,非結晶のセルロース鎖をランダムに解裂して,グルコース・オリ ゴマーを生成する.それから,第2種の酵素でアビセルのような結晶性微細セル ロースの非還元末端から作用して,セロビオースを生成する.最後は第3種の酵 素を用いて,セロビオースをはじめとするオリゴ糖類をグルコースにまで加水分 解する.

(35)

本研究では,このセルラーゼの分解特性を用いて,紙おむつに含まれる大量の セルロースの分解を行った.

セルラーゼ

(セルロース分子鎖) 活性中心

移動

移動

移動

脱離

捕捉

脱離

processive型分解 non-processive型分解

(セロビオース)

セルラーゼ

(セルロース分子鎖) 活性中心

移動

移動

移動

脱離

捕捉

脱離

processive型分解 non-processive型分解

(セロビオース)

図3.10  セルラーゼによるセルロース分子鎖の分解

(資料:『セルロースの科学』[46]

(36)

図3.11  セルラーゼの酵素作用模式

(資料:『機能性セルロース』)

(37)

3.2 微生物による紙おむつ処理基本特性についての試験

微生物の増殖速度と使用済紙おむつの分解処理効率は深い関連があって,菌数が多 いほど,分解効率が良くなると考えられている.そこで,提案する紙おむつ廃棄物処 理プロセスにおいて,常に増殖効率を最大限までに維持するため,本研究で利用する 微生物群の最適増殖条件を確保する必要がある.3.1.1に言及したように,酸素,温度 などの環境要素は微生物の増殖に関与し,影響を与えると考えられるため,ビーカー 実験により微生物による紙おむつ処理の基本特性・処理条件を調査する.

ここで,本研究で利用する杉チップの選択は,先行研究の「木材由来微生物による 牛糞の分解」により,平均径2.7cm程度の杉チップを用いることにした[20]

3.2.1 紙おむつの含水率とpH値

  本研究で使用する紙おむつは『パンパース,乳幼児用,Sサイズ, P&G社製』,

1枚あたり約26gのものである.まず,紙おむつの分解試験における最適条件を 決めるため,分解対象物である紙おむつの基本特性について調べることが必要と なる.調査結果は以下である.

• 1枚の紙おむつにおける含水率は7.1%である.

• 紙おむつのpH値は8.13(中性)である.

3.2.2 水量と分解力の関係

微生物の増殖に不可欠の栄養素の一つである,水分,その添加の量は菌の分解 力に対する影響を調べた.水をどのくらいの割合で加えたほうが,その分解効果 が最も出られるかについて検討し,水量と菌の分解力についての実験を行った.

実験器具: 

三角フラスコ(3L容)

(38)

紙おむつ1      1枚

滅菌水      0.5L,1.0L,1.5L,2.0L 杉チップ2*             300g

実験条件:

(ア) (ブランク)滅菌水0.5L+紙おむつ1枚+杉チップ300g (イ) (ブランク)滅菌水1.0L+紙おむつ1枚+杉チップ300g (ウ) (ブランク)滅菌水1.5L+紙おむつ1枚+杉チップ300g (エ) (ブランク)滅菌水2.0L+紙おむつ1枚+杉チップ300g (オ) 滅菌水0.5L+紙おむつ1枚+杉チップ300g

(カ) 滅菌水1.0L+紙おむつ1枚+杉チップ300g (キ) 滅菌水1.5L+紙おむつ1枚+杉チップ300g (ク) 滅菌水2.0L+紙おむつ1枚+杉チップ300g

      1  紙おむつを1cm×1cm程度の大きさに細かく切った.

2*   杉チップの平均サイズは2.7cm×2.7cmである.

実験手順: 

(ア) 0.5L,1.0L,1.5L,2.0Lの水量に対して,紙おむつ1枚と杉チップ300gを 3L容積の三角フラスコに入れて,純綿でふたをする.

(イ) ステップ(ア)で作った4つのサンプルをオートクレーブで滅菌して,

ブランクとして実験に使う.   

(ウ) 対照的に別の三角フラスコに滅菌水を 0.5L,1.0L,1.5Lと 2.0L入 れて,オートクレーブをかける.

(エ) 手順(ウ)で作った各サンプルに紙おむつ1枚,杉チップ300gを入 れて,無菌的に攪拌する.

(オ) 8つのサンプルは 35度の恒温培養槽で 7 日間の培養を行い,計時的 に各サンプルの重量変化を測定して記録する.なお,毎日1回,無菌 的に三角フラスコ内の攪拌を行う.

(39)

実験結果: 

ブランクの重さを差し引いたものを消滅分解量(g)とし,結果は積算消滅 分解率(%)としてグラフで表した.図4-7により,培養7日間で滅菌水0.5L と1.0Lにした場合は,紙おむつ1枚(約26g)に対して,約4%が消滅分解さ れた.さらに,この2つサンプルにおける菌の動きを見てみると,1.0Lの方の 分解の動きが早かったという結果が明らかになった.

表3.1  水量による消滅分解力の変化

<分解結果:積算消滅分解率(%)>

培養時間[hr] 0 24 48 72 96 120 144 168

0.5 [L] 0 0 4 4 4 4 4 4

1.0 [L] 0 4 4 4 4 4 4 4

1.5 [L] 0 0 0 0 0 0 0 0

2.0 [L] 0 0 0 0 0 0 0 0

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5

0 24 48 72 96 120hr 144 168

培養時間(hr)

算消滅分解率

0.5L 1.0L 1.5L 2.0L

図3.15  水量による消滅分解力の変化(測定頻度:1回/日)

(40)

3.2.3 紙おむつの量と分解力の関係

紙おむつの量と菌の分解力に対する影響について調べた.300g杉チップと 1.0L の水量に対し,廃棄物処理対象である紙おむつの量はどのくらいにしたら,

分解率は最も高くなるかについての実験を行った.

実験器具: 

三角フラスコ(3L容)   

      滅菌水                       1.0 L

紙おむつ      0.5枚,1.0枚,1.5枚,2.0枚       杉チップ                 300g

実験条件:

(ア) 紙おむつ0.5枚+1.0L滅菌水+300g杉チップ (イ) 紙おむつ1.0枚+1.0L滅菌水+300g杉チップ (ウ) 紙おむつ1.5枚+1.0L滅菌水+300g杉チップ (エ) 紙おむつ2.0枚+1.0L滅菌水+300g杉チップ 実験手順: 

(ア) 三角プラスコに紙おむつを細かく切って,それぞれに0.5枚,1.0枚,

1.5枚,2.0枚を入れる.

(イ) すべての三角フラスコに1.0Lの滅菌水を入れて,純綿でふたをして,

滅菌する.

(ウ) クリーンベンチで300gの杉チップを入れて,攪拌する.

(エ) 4つのサンプルは 35度の恒温培養槽で 7 日間の培養を行い,計時的 に各サンプルの重量の変化を測定して記録する.なお,毎日1回,無 菌的に三角フラスコ内の攪拌を行う.

(41)

実験結果: 

図 4-8 にその結果を示す.培養7日間で紙おむつを 0.5枚にした場合の分解 率は約 8%,紙おむつを 1.0 枚にした場合の分解率は約 15%,紙おむつを 1.5 枚と 2.0 枚にした場合の分解率は約 12%に達したことがわかった.そこから,

1.0Lの滅菌水と 300gの杉チップの組み合わせに対して,1.0 枚の紙おむつに した方の分解効果が高いという結果が得られた.

表3.2  紙おむつ量による消滅分解力の変化

<分解結果:積算消滅分解率(%)>

培養時間[hr] 0 24 48 72 96 120 144 168

0.5枚 0 0 4 4 4 4 8 8

1.0枚 0 8 8 12 12 12 15 15

1.5枚 0 8 8 8 8 12 12 12

2.0枚 0 4 4 8 8 8 12 12

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18

0 24 48 72 96 120 144 168

培養時間(hr)

算消滅分解率(%)

0.5枚 1.0枚 1.5枚 2.0枚

図3.16  紙おむつ量による消滅分解力の変化(測定頻度:1回/日)

(42)

3.2.4 栄養源の種類,菌数の多少と分解力の関係

今まで,紙おむつ分解には杉チップを300gに対し,紙おむつ1枚,水を1.0L の分解条件は一番よかったことが明らかになったが,分解率は15%程度で止まっ てしまったので,その分解率を高める方法を考える必要があると考えている.そ こで,紙おむつの分解率を高めるため,菌に栄養源を与えるか,あるいは菌数を 倍にするか,それぞれの方法と菌の分解力についての関係を調べた.

実験器具: 

三角フラスコ(3L容)   

ジャーファーメンター

滅菌水                       1.0 L 紙おむつ      1.0枚

杉チップ              300g       実験条件:

(ア) 滅菌水1.0L+紙おむつ1枚+杉チップ300g (イ) 滅菌水1.0L+紙おむつ1枚+杉チップ300g+菌 (ウ) 滅菌水1.0L+紙おむつ1枚+杉チップ300g+NB

(エ) 滅菌水1.0L+紙おむつ1枚+杉チップ300g(滅菌済)+菌 実験手順:

<NBを用いた菌の培養>

(ア) ジャーファーメンターに3LのNB液を入れて,オートクレーブをか け,滅菌する.

(イ) クリーンベンチでジャーファーメンターに 20gの杉チップを入れて,

24時間以上液体培養して,菌を増やす.

(ウ) ジャーファーメンターから,液体を取り出して(1 本に 15mlで),

遠心分離して,菌の懸濁液を作る.

(43)

      <本実験>

(ア) 実験条件(ア)とおりに2つのサンプルを作って,滅菌する.そのうち,

1つをブランクとして,もう1つをサンプル4として,この先の実験 に使う.

(イ) 実験条件(イ)とおりに滅菌水 1.0Lと紙おむつ1枚を三角フラスコ に入れ,サンプル2を作る.また,実験条件(ウ)とおりに栄養源と してのNB,滅菌水 1.0Lと紙おむつ1枚を三角フラスコに入れ,サ ンプル3を作る.そして,サンプル2とサンプル3はすべてオートク レーブをかけ,滅菌する.

(ウ) サンプル2とサンプル3に 300gの杉チップを無菌的に入れて攪拌す る.さらに,サンプル2とサンプル4に懸濁液 30 本程の菌数を入れ る.

(エ) 5つのサンプルは 35度の恒温培養槽で 7 日間の培養を行い,計時的 に各サンプルの重さを測定する.なお,毎日1回,無菌的に三角フラ スコ内の攪拌を行う.

実験結果: 

図3.17により,横軸は培養時間(hr),縦軸は積算消滅分解率(%)を表す.

その結果,杉チップを滅菌した後,30 本の菌を入れたのでは,消滅分解率は 3.85%,杉チップを滅菌せず,菌数を倍にしたのでは,消滅分解率は 7.69%,

菌に栄養源を加えたのに対して,消滅分解率は 11.54%に達した.この結果に よって,1.0Lの滅菌水,1.0枚の紙おむつと,300gの杉チップに対して,栄養 源を加えた方が菌による消滅分解効果が高いと考えられた.

(44)

表3.3  菌数による消滅分解力への影響

<分解結果:積算消滅分解率(%)>

培養時間 [hr] 0 24 48 72 96 120 144 168

菌+杉 0 4 4 8 8 8 8 8

NB+杉 0 4 8 8 12 12 12 12

菌 0 0 0 4 4 4 4 4

0 2 4 6 8 10 12 14

0hr 24 48 72 96 120 144 168

培養時間(hr)

算消滅分解量(%)

菌+杉 NB+杉 菌

図3.17  菌数による消滅分解力への影響(測定頻度:1回/日)

参照

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