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博士(工学)中津川 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)中津川 学位論文題名

積 雪 寒 冷 地 流 域 の 水 文 現 象 の モ デ ル 化 と 環 境 変 化 が そ れ ら に 与 え る 影 響 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    地球規模での温暖化情勢を背景に、流域規模での水文諸現象がどのように変化する   かを把握することは、河川計画あるいは流域管理上極めて重要である。すなわち、温   暖化による降雨・降雪、蒸発散、流出、土壌水分等の変化は、河道流出や貯留のパタ   ーンを変え、ダムや河川の計面・管理にも少なからず影響を及ほすからである。しか   しながら、このようなテーマ、特に積雪寒冷地流域における調査・研究はまだ緒につ   いたばかりである。

    本論文は、以上のような問題意識に立ち、積雪寒冷地流域における水文現象が温暖   化でどのような影響を受けるかを諭じるものである。温暖化にともなう水文現象の変   動を定量的に評価するには、水文現象を的確に記述で巻る手法の確立が不可欠である   .したがって、本艙文では最初に水文現象の現況の把掘にウエイトをおいた。特に降   水と融雪過程については観測やモデル化を通して詳細に解析している。その上で、既   往データの解析をおこなぅて過去の気候の動向を調ぺるとともに、気候モデルを用い   て、温暖化にともなう気候変化の可能性を解析している。さらに、ここで得られた気   候モデルのアウトプットを降水モデルおよび融雪モデルの設定条件として与え、その   応答をみることで、温暖化による水文現象の変化について可能性を論じた。  本論文   は全7章から構成されている。

    第1章は序諭であり、研究テーマの背景、研究の目的および論文の構成にっいて述   ぺている。

    第2章では、北海道における過去およそ100年の気温、降水量の動向をみるととも   寒冷な時期と温暖な時期の抽出をはかり、両時期でどのような降水特性が現れるのか   を考察している。また、両時期の雨量資料によって確率降雨量の試算をおこなぃ、算 出 の べ ー ス と な っ た 雨 量 デ ー タ の 特 徴 を 、 統 計 学 的 観 点 か ら 論 じ た 。     第3章では、地球温暖化にともなう気候変化の評価手法と、得られるシナリオにつ   いて諭じている。この中では、現時点で提案されている気候変化の評価モデルの概略   を解説し、その特質を.整理している。そのうえで放射対流平衡モデルを構築レ、実際   にモデル化をおこなって大気の温度構造の再現に成功した。これによって、気温だけ   でなく、大気の熱収支を規定する放射フラックスや水蒸気量などの状態の評価が可能   となった。さらに、温暖化によるそれらの変化を試算した。

    また、新たに経度方向のみのエネルギーバランスを記述する簡易な気候モデルを提   案した。本モデルは、GCMのように熱収支、水収支要因をモデル化して気候変化の動   向を評価する一方、経度方向のみの現象をモデル化の対象としたため、計算の負担は

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著しく軽減された。これにより、温暖化による気温や降水・蒸発散の変化が算出され た。

  第4章は、流域スケールの降雨特性について観測・シミュレーションをとおして解 析している。流域スケールでは主に地上雨量計や、近年はレーダー雨雪量計によって 降雨のモニタリングがなされている。しかしながら、山岳流域の降雨観測は、平地に くらぺて降水量が多いにもかかわらず、機器設置の困難さから充分おこなわれている とは菖えない。そこで、山岳流域に特徴的な、また防災上の観点から.も重要な地形性 降雨に着目し、観淵と数値モデル計算によって特性を明らかにした。また、降雨場の モデル化に不可欠な風速塲の推定を、ドップラーレーダーの観測結果からおこなう方 法を紹介した。これからドップラーレーダーで上層風を観測し、大気境界層では地形 を考慮したモデルを適用して風速場の再現をおこなった。

  以上のように再現された降雨現象が、温暖化による大気中の水蒸気量の変化でどの ような影響を受けるかを試算した。この際、第3章で算出した放射対流平衡モデルの 出力結果を、降雨モデルの段定条件として反映させている。

  第5章では熱収支をべースとした融雪の基礎的なメカニズムがシミュレーションを 通して闢ぺられている。最初に、第3章の放射対流平衡モデルに用いたパラメタリゼ ーションから、地表面での放射収支量を推算し、実測値と照合することで結果の妥当 性を検証した。これにより、積雪表面の融雷現象を大気と地表面相互の熱収支から評 価する手法を見いだしている。また、それに基づいて融雪熱収支を考え、関連要因で ある雪面の顕熱、潜熱、放射熱量の融雪熱量への寄与を調ぺた。なお、この時、気温

、風速、温度、璽量といった外部条件が融雪熱量にいかなる影響を与えるかも考察し ている。さらに、以上でモデル化された融雪熱収支が、温暖化のような気温変化に対 してどの程度変化するか、感度分析をおこなった。

  第6章では、積雪寒冷地における水資源、また融雪出水.などの防災面からも重要な 融雪流出にっいて、実用的な算出手法を検討した。ここでは、北海道のダム流域を対 象に、積算暖度法により融冒流出量を推算した。また、航空写真を利用して積雪域を 判定し、積算暖度法を適用することで融雪流出量を算出して、融雪期の水収支を把握 した。さらに、温暖化による気温上昇で融雪流出バターンがどのように変化するか試 算した。

  第7章は結諭で、各章の主たる結果をまとめている。

  以上、本論文の構成を概観した。先に述べたように、全般的な主旨は、地球温暖化 が水文現象に与える影響を調べることにあるが、第4章、第5章、第6章で得られた 方法諭や知見は、その目的に対してだけでなく、現況の流域水文特性の記述、評価に も有用と考えられる。

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学 位 論文 審 査 の 要旨 主査    教授   藤田睦博 副査    教授   板倉忠興 副査    教授   佐伯   浩

副査    教授   佐渡公明(北見工業大学)

    学位論文題 名

  積雪 寒冷 地流 域の 水文 現象 のモデル化と 環境変化がそれ らに与える影響に関する研究

  地球規模での温暖化現象にともない降雨、降雪、蒸発 散、土壌中の水分量などが変化し

、この結果、流出形態が変化することが予想される。温 暖化現象が流域規模の水文諸現象 に与える影響を把握することは、今後の河川計画あるい は流域管理上極めて重要である。

  本論文は、積雪寒冷地流域における水文現象が温暖化 によって受ける影響を評価する手 法 に つ い て 論 じ た も の で あ る 。 本 論 文 は 全7章 か ら 構 成 さ れ て い る 。   第1章 は 、 研究 テIー マの 背景 、研 究の 目的 およ び論 文の 構成 につ い て述 べて いる 。   第2章 は、 北海 道内 にお け る過 去100年 間の 気温、降水量の観測 資料に基づいて温暖化 の傾向と降水量の変動を解析しているしている。年間降 水量は滅少しているが集中的な降 雨が頻発する傾向のあることを見いだしている。

  第3章 は、 地球 温暖 化にともなう気候変化の評価手法を論じてい る。先ず、これまでに 提案されている気候変化の評価モデルの特徴を述ベ、新 たに放射対流平衡モデルを提案し ている。このモデルによって、気温のみならず大気の熱 収支を規定する放射フラックスや 水蒸気量などを評価するこのできことを示している。こ のモデルによる大気の鉛直分布は

、米国の標準大気のそれに一致していることを確かめて いる。

  第4章 は、 流域 スケ ールの地形性の降雨特性について論じている 。パラメタリゼーショ ン法に基づく降雨場のモデルを提案し、山岳地における 降雨量の標高依存性を説明すると

,ともに夕張山地における観測値と比較してモデル妥当性を検証している。また、降雨場の モデル化に不可欠な風速場を、ドップラーレーダーによ る上層風の観測結果と大気境界層 では 地形 を考 慮し たカ 学モ デル によ って 推定 する手法を提案して いる。次に‑3章で提案 している放射対流平衡モデルから得られる温暖化にとも なう大気中の水蒸気変化量を降雨 場の モデ ルに 取り 込み、集中的な降雨 の発生する可能性のあることを指摘し、2章の実測 気象資料の解析結果と符合していることを示している。

  第5章 は、 融雪 の主 たる熱源である放射収支量を放射対流平衡モ デルを用いて日射量と 放射収支量を推定する手法を提案している。さらに、定 山渓ダム流域および御簾舞川流域 に試験地を設定し積雪表面における融雪の熱収支を観測 して、モデルの妥当性を検証して いる。

  第6章 は、 定山 渓ダ ム流域を対象に年間をっうじて流出計算の可 能な長・短期夕ンクモ

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デルを用いて温暖化にともなう気象変動が流出パ夕一ンにおよぼす影響を解析している。

流出パーンの変化の程度は、夏季の降雨流出よりは春先の融雪流出が大きいことを示して いる。北海道の利水形態は融雪流出水に依存する程度が大きく、今後の融雪流出パターン の変動は利水形態にも影響することを指摘している。

  第7章は結諭で、各章の主たる結果をまとめている。

  これを要するに、著者は、地球の温暖化にともなう流域規模の水文現象の機構とその変 化の程度を評価する手法を提案しており、水文学および水資源工学の進歩に貢献するとこ ろ大なるものがある。

  よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

参照

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