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博士(工学)石川 稔 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)石川   稔 学位論文題名

環境対応精錬技術とスラグの有効利用技術に関する研究 学位論文内容の要旨

  精 錬反応の効率向上を目的として、製鋼プロセスの機能分化が進められてきた。転炉の脱りん機 能を 溶銑処理段階に分化する溶銑脱りんプロセスを導入することにより製鋼プロセス全体でのスラ グ発 生量が低減され、廃棄物発生量低滅の観点から有利となる。反面、低温で反応を進行させるた め、 石灰系脱りん剤の溶融滓化が遅れ、反応速度の面では不利であるとともに、発生したスラグの 有効 利用の点で制約が生じる。このため、ホタル石を添加することによって脱りん剤の溶融滓化を 促進 する方法が採られた。しかし近年の環境規制強化を背景に、ホタル石を使用しない石灰系溶銑 脱り ん法の研究がなされた。そ のーつの方法が添加物として ホタル石の替わりにAl203を 用いる 方法 である。しかしこの方法で はAl203による脱りん剤の融 点低下効果がホタル石ほど大 きくは なく 、完全な代替品とはならな かった。

  ー 方、種々の手段によルホタル石の使用を中止できたとしても、フッ素を含有した溶銑脱りんス ラグ を完全に無くすることが必ずしも経済的に最適ではないことから、フッ素を含有したスラグか らの 溶出挙動と溶出抑制技術が研究された。しかし実プロセスにおけるスラグ成分の設定に必要な スラ グ組成の影響、スラグの冷却速度の影響を考慮したフッ素溶出挙動、フッ素溶出を低減するた め の 溶 出 フ ッ 素 固 定 化 機 構 と そ の 条 件 も 必 ず し も 明 ら か に は な っ て い な い 。   一 方、環境規制をクリアーし て溶銑脱りんスラグの路盤材 等への再利用が可能になったとして も、 スラグ中に含まれる酸化マンガン、燐酸、酸化鉄は製鉄ブロセスの中で有効利用されないまま に廃 棄されることになり、資源の有効利用の観点からはそれらを回収することが望ましい。このよ うな 観点から、脱りんスラグを鉄浴型の還元炉で還元し、スラグからりん、鉄、マンガンを回収す るス ラグ回生プロセスが提案されている。しかし還元炉における各元素の実際の還元挙動について は検 討されていない。

  以 上を鑑み、本研究では、溶銑脱珪プロセス、溶銑脱りんプロセスにおける反応速度を向上する 条件 について明らかにするとともに、溶銑脱りんプロセスで発生するスラグを回生炉で還元し、り ん、 マンガンおよぴ鉄を回収するプロセスでの反応挙動を明らかにした。さらにフッ素を含んだ溶 銑脱 りんスラグからのフッ素溶 出挙動を解明すると共に、フ ッ素溶出を抑制する条件を明らかに した 。

  第1章 は 緒 言 で あ り 、 従 来 の 研 究 状 況 を 調 査 し 、 本 研 究 の 意 義 を 明 確 に し た   溶 銑脱珪プロセスについては 第2章で取り上げ、2t溶銑実 験における脱珪挙動を競合反 応モデ ルを 基礎とした反応モデルで解析した。溶銑脱珪処理における各元素の反応挙動をシミュレートす る た め 、酸 化剤 とし て従 来 考慮 され てい たFe0に 加え てFe203お よびMn0を考 慮し た競 合反 応 モデ ルを構築し、反応機構を考察するとともに、効率的な脱珪処理を実現する条件について検討し た。 強撹拌条件が相対的に脱炭を抑制し、脱珪を優先的に進行されるために好適な条件であること を明 らかにした。

  溶 銑脱りんプロセスにっいて は第3章で取り上げ、脱りん剤の滓化を速め溶銑脱りん処理を効率 化す ることを目的として、Al203を含有した低融点の焼結脱りん剤による溶銑脱りん挙動を調査し た。 また従来より報告されている競合反応モデルにおいて考慮されているスラグ、メタル中物質移 動、 反応速度に加え、脱りん剤の滓化速度を新たに考慮した脱りん反応モデルを構築し、溶銑脱り んに おける反応を解析した。Al203含有焼結脱りん剤使用時 は、Al203含有による脱りん剤の溶解

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促進効果よりもむしろ、事前焼成による脱りん剤の均一化の効果により低融点の複酸化物が形成さ れ た 結 果 、 滓 化 が 促 進 さ れ 良 好 な 脱 り ん 挙 動 を 示 し た も の と 考 え ら れ た 。   ス ラグ回生プロセスについては第4章で取り上げ、脱りんスラグを鉄浴型の還元炉で還元するプ ロセスに着目し、試験転炉を用いてその還元挙動を調査した。溶銑脱りんスラグと還元剤およぴ発 熱材としてのコークスを試験転炉に装入して酸素上吹きを実施し、スラグ中の酸化りん、酸化鉄、

酸化マンガンの還元を同時に進行させることが可能であった。しかし、りんおよぴマンガンは共に イン プット 量に対 して約20%の不明 分が存 在して いた。溶鉄からのりんおよぴマンガンの蒸気圧 を検討した結果、この不明分は主にスラグ/コークス界面での還元により生成する、りんおよびマン ガン濃度の高い粒鉄からの蒸発ロスによるものと推定された。

  溶 銑脱りんスラグからのフッ素溶出抑制技術の研究については第5章で取り上げ、合成スラグは フッ素を含有した溶銑脱りんスラグを想定した組成の合成スラグの振盪試験により溶出機構を明ら かにして、更にその知見をもとに、スラグからの溶出フッ素固定化機構について検討した。溶出機 構解明のための研究では、フッ素溶出量を低減するための条件として、スラグ粒径の増加、スラグ 中フ ッ素濃度の低減、スラグ塩基度およぴAl203濃度の上昇が有効であることを明らかにした。溶 出フ ッ素固 定化機 構につ いての 検討で は、カ ルシウ ム化合物、特にC12A7(12Ca07 Al203)をフッ 素含有合成スラグに混合することにより、スラグからの溶出フッ素を固定化することが可能である こと を明ら かにし た。C12A7をスラ グに混合 するこ とにより、100h振盪試験後のフッ素溶出量を 0.8mg皿以下に制御することが可能であった。

  第6章では本研究の成果を総括し、今後の展望を述べた。

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学位論文審査の要旨

主 査

  

教 授

  

井 口

  

学 副 査

  

教 授

  

大 塚 俊 明 副 査

  

教 授

  

高 橋 英 明 副 査

  

助 教 授

  

大 参 達 也

学 位 論 文 題 名

環境対応精錬技術とスラグの有効利用技術に関する研究

  精錬反応の効 率向上を目的として、製鋼プロセスの機能分化が進められてきた。転炉の脱りん機 能を分化する溶 銑脱りんプロセスを導入する ことにより製鋼プロセス全体でのスラグ発生量が低 減され、廃棄物 発生量低減の観点から有利となる。反面、低温で反応を進行させるため脱りん剤の 溶融滓化が遅れ 、反応速度の面では不利であるとともに、発生したスラグの有効利用の点で制約が 生じる。このた め、ホタル石を添加することによって脱りん剤の溶融滓化を促進する方法が採られ た。しかし近年 の環境規制強化を背景に、ホタル石を使用しない溶銑脱りん法の確立が求められて いる。

  一方、ホタル 石の使用を中止できたとしても、フッ素含有溶銑脱りんスラグを完全に無くするこ とが必ずしも経 済的に最適ではないことから、フッ素含有スラグからの溶出挙動と溶出抑制技術が 研究された。し かし実プロセスでのスラグ成分設定に必要なスラグ組成の影響、スラグの冷却速度 の影響を考慮し たフッ素溶出挙動、溶出フッ素固定化機構とその条件も必ずしも明らかにはなって いない。

  また、環境規 制をクリアーして溶銑脱りん スラグの路盤材等への再利用が可能になったとして も、スラグ中に 含まれる酸化マンガン、燐酸、酸化鉄は製鉄プロセスの中で有効利用されないまま に廃棄されるこ とになり、資源の有効利用の観点からはそれらを回収することが望ましい。このよ うな観点から、 脱りんスラグからりん、鉄、マンガンを還元回収するスラグ回生プロセスが提案さ れ て い る 。 し か し 還 元 炉 に お け る各 元素 の実 際の 還 元挙 動に つい て は検 討さ れて いな い 。   以上を鑑み、 本研究では、溶銑脱珪プロセス、溶銑脱りんプロセスにおける反応速度の向上条件 とともに、ホタ ル石を使用しない溶銑脱りん法、溶銑脱りんプロセスで発生するスラグ中りん、マ ンガンおよび鉄 を還元回収するプロセスでの反応挙動を明らかにした。さらにフッ素を含んだ溶銑 脱りんスラグか らのフッ素溶出を抑制する条 件を明らかにした。

第1章 は 緒 言 で あ り 、 従 来 の 研 究 状 況 を 調 査 し 、 本 研 究 の 意 義 を 明 確 に し た 。   溶銑脱珪プロ セスについては第2章で取り 上げ、脱珪反応挙動をシミュレートするため、酸化剤 と して 従来 考慮 され て いたFe0に加 えてFe203およびMn0を考慮した競合反応モデルを 構築し、

反応機構を考察 するとともに、効率的な脱珪処理条件を検討した。強撹拌条件が脱炭を抑制し、脱 珪を優先的に進 行するために好適な条件であ ることを明らかにした。

  溶銑 脱り んプ ロセ スについ ては第3章で取り上げ、Al203を含有した低融点の焼結脱 りん剤に よる溶銑脱りん 挙動を調査した。また従来の競合反応モデルで考慮されているスラグ、メタル中物 質移動、反応速 度に加え、脱りん剤の滓化速度を新たに考慮した脱りん反応モデルを構築し、反応 を解析した。Al203含有焼結脱りん剤使用時 は、事前焼成により低融点の複酸化物が形成された結 果、滓化が促進 され良好な脱りん挙動を示し たと考えられた。

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  スラグ回生プロセスについては第4章で取り上げ、脱りんスラグを鉄浴型の還元炉で還元するプ ロセスでの還元挙動を調査した。溶銑脱りんスラグとコークスを試験転炉に装入して酸素を上吹き し、スラグ中の酸化りん、酸化鉄、酸化マンガンの還元を同時に進行できた。しかし、りんおよぴ マ ンガン は共に インプ ット量に 対して 約20%の不明分が存在していた。溶鉄からのりんおよびマ ンガンの蒸気圧を検討した結果、この不明分は主にスラグ/コークス界面での還元により生成する、

り ん お よ び マ ン ガ ン 濃 度 の 高 い 粒 鉄 か ら の 蒸 発 ロ ス に よ る も の と 推 定 さ れ た 。   溶銑脱りんスラグからのフッ素溶出抑制技術の研究については第5章で取り上げ、フッ素合成ス ラグの振盪試験により溶出機構を明らかにして、更にスラグからの溶出フッ素固定化機構について 検討した。溶出機構解明の研究では、フッ素溶出量低減条件として、スラグ粒径の増加、スラグ中 フ ッ素濃 度の低 減、ス ラグ塩基 度およ ぴAl203濃度の上昇が有効であることを明らかにした。溶 出 フッ素 固定化 機構の 検討では 、C12A7(12Ca0・ 7Al203)をフッ素含有合成スラグに混合するこ と により 、溶出 フッ素 を固定化 できる ことを 明らかにした。C12A7をスラグに混合することによ ルフッ素溶出量を0.8mg皿以下に制御できた。

  第6章では本研究の成果を総括し、今後の展望を述べた。

  これを要するに、著者は環境規制に対応しうる精錬プロセスとして、蛍石を使用しなぃ溶銑脱り んプロセスを開発すると共に、発生するスラグを有効利用して環境負荷を低減する方法に関して新 たな知見を得たものであり、鉄鋼精錬工学に対する貢献が大である。よって著者は北海道大学博士

(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。

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