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博士(工学)川崎睦男 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)川崎睦男 学位論文題名

逆 浸透膜に よる海水 淡水化の ホウ素除去率向上に関する研究

学位論文内容の要旨

   本研究は、逆浸透膜による海水淡水化において、その透過水は高性能の分 離膜を用いるために非常に純度が高いと考えられていた。しかし、水道水質 基準値 85 項目の全てを測定した結果、監視項目としてのホウ素のみが特異 的に除去率が低いことがわかった。逆浸透膜の透過水はホウ素の水質基準値 よ り 数 倍 高 く て 基 準 値 を 満 足 す る こ と が で き な か っ た 。    この現象に関する既往の研究は全くなく、新しい知見であった。著者は逆 浸透膜によるホウ素の除去に関しての研究を行い、ホウ素除去の運転条件に ついて実験を行った。これらをもとに逆浸透膜透過理論に基づいたシュミレ ー シ ョ ン を 行 っ て 実 証 実 験 と の 整 合 性 の 検 討 も 行 っ た 。    本論文の主な成果を要約すると次の通りである。

( 1 ) 「 逆 浸 透 膜 に よ る 海 水 淡 水 化 装 置 の 実 証 プ ラ ン ト 」 逆浸透膜海水淡水化実証装置により得られた透過水を飲料水として利用する 場合には、水道水質基準値の観点からトリハ口メタン類、ホウ素、臭素と陸 水とのブレンドによる消毒副生成物が問題となる。本論文では実用規模の実 証プラント(造水量 80 トン/日)を用いた実験を行った。その結果、本研 究で用いた芳香族架橋ポリアミド膜ではトリハ口メタン類、臭素の除去率に 関しては全く問題ないことが分った。しかし、ホウ素に関しては他の無機イ オ ン な ど と 比 べ て 特 異 的 に 除 去 率 が 低 い こ と が 明 ら か と な っ た 。    一方、透過水中に残存する臭素と陸水を処理して供給される水道水とのブ レンドにより生成する消毒副生成物の増加量は微量で問題ないことが明らか になった。

( 2 )「ホウ素物性値と水質管理基準値及びホウ素の除去方法について」

ホウ素の物性値と健康障害について調べた。ホウ素の物理的な特徴としては、

イオン化エネルギーが高くて水中では錯体を形成しにくくその分離は非常に

難しいことが予想された。また水道水源及び水道中のホウ素について、一般

的な処理技術である凝集沈殿、オゾン、イオン交換樹脂、市販の浄水器など

では全く除去できないかまたは非常に除去困難で実用的なレベルではなかっ

た。

(2)

(3 )「逆浸透膜による海水淡水化におけるホウ素低減化システムの研究」

   逆浸透膜装置を用いたホウ素の分離実験を、操作圧力、膜の種類やpH な どを変化させて基礎実験を行った。その結果、ホウ素含有水のpH を変化さ せた場合にホウ素の除去性は、pH の上昇とともに比例的に向上する ことが 明らかになった。この原因としてはpH を高くすることにより分子状態のホ ウ素からイオン状態のホウ素の存在比が増加する。また架橋芳香族ポリアミ ド膜は表面荷電は負であり、pH を高くすることによりさらに膜表面の負荷 電が高くなるという相乗効果によルホウ素の除去性が向上することが明らか となった。

   これらの結果を踏まえて実証プラントにて海水淡水化の透過水のpH を上 げて実験を行った。実験としては高圧逆浸透膜による1 段目の透過水をさら に超低圧逆浸透膜にて処理する方法と、またこの透過水をさらに超低圧逆浸 透膜にかける2 段処理についてそれぞれ実験を行った。なおこの2 段処理す る目的は1 段目の膜処理において淡水の回収率を非常に高くすると硫酸カル シ ウム などの スケ ール 成分 が発生 し処 理が 不可 能とな るた めで ある。

   これ らの処 理シ ステ ムに おいて ホウ 素濃 度を WHO 基準 値の O.5mg/l を 満足する運転操作条件を見出すことができた。

( 4 ) 「 ホ ウ 素 除 去 シ ス テ ム の シ ュ ミ レ ー シ ョ ン 解 析 研 究 」    逆浸透膜理論による解析手法により1 段目、2 段目の膜における物質移動 係数、膜輸送係数を実用上の8 インチ膜モジュールにより実験的に求めた。

この結果を基に1 段処理システムや2 段処理システムにおけるホウ素除去に ついてのシュミレーションモデルを確立した。このモデルを用いた解析結果 と実験結果とは非常に良く整合していた。

この結果は、このシュミレーションモデルはプラント設計に非常に有効であ ることを示している。

( 5 ) 「 ホ ウ 素 低 減 化 逆 浸 透 膜 シ ス テ ム に お け る コ ス ト の 試 算 」    ホウ素低減化システムを既設の海水淡水化プラントに設置する場合と新設 する場合について、処理水のホウ素濃度を目標水質として与えた条件下での イニシャルコストとランニングコストを求めた。これらの結果は、特に既存 の海水淡水化施設により水道水を供給している水道システムの施設改良計画 を合理的に設定することに資するものである。

以上の事項により逆浸透膜による海水淡水化のホウ素の除去特性とその除去

を可能とする設計手法を明らかにしたものである。

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

逆浸透膜による海水淡水化の ホウ素除去率向上に関する研究

  淡 水資 源 の 制約条 件が厳し い島嶼 地域の水 道施設 では逆浸 透膜によ る海水 淡水化が 行 わ れてい る。また 、中東 各国でも 海水淡水 化が行 われており、逆浸透膜による施設の占め る 割合が 高くなっ てきて いる。逆 浸透膜に よる海 水淡水化によって得られる透過水は、高 性 能の分 離膜を用 いるた めに非常 に純度が 高いと 考えられていた。しかし、その評価は塩 分 濃度等 総括的な 指標に より行わ れており 、健康 影響リスクが明らかになっている有害物 質についての評価は行われていない。

  本 論文は このよう なこと から、健 康影響 リスクを 基に定め られて いる水道水質基準値8 5項目 全てにつ いて測定 した結 果、ホウ 素のみ が特異的 に除去 率が低く 、基準値を超過し て いるこ とが明ら かとな った。こ の現象に 関する 既往の研究は全くなく新しい知見であっ た。そこで、逆浸透膜によるホウ素の除去特性、ホウ素除去効率向上を明らかにするため、

実 験プラ ントによ る実験 をおよび 逆浸透膜 透過理 論に基づくシュミレーションを行った。

そ の 結 果を 基 にWHO飲 料 水ガ イ ド ライ ン を達 成する ことがで きる逆浸 透膜に よる海水 淡 水化施設を提案している。

  本 論 文 は7章 か ら 構 成 さ れ て お り 、 そ の 内 容 は 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。   第1章では、本論文の背景、目的および構成について記している。

  第2章 では海水 淡水化 技術及び ホウ素に 関する 文献学的 考察を 行い、海 水淡水化の現状 と 水道施 設として 利用す る際の問 題点およ びホウ 素の健康影響リスクを論じている。すな わ ち逆浸 透による 海水淡 水化施設 が今後と も整備 される傾向があること。ホウ素の慢性毒 性 を 基 にWHO飲 料水 ガ イ ドラ イ ン や水 道 法に 定める 水質基準 等が定め られて いる。ホ ウ 素 は温泉 水の影響 を受け ている水 道原水を 利用し ている所等では高く、また、海水中でも 高いこと等をまとめている。

第3章では海水淡水化施設の水質特性を明らかにしている。すなわち実用規模の実証プラント

(造水量80rr132日)を用いた実験を行い、本研究で用いた芳香族架橋ポリアミド膜では塩分濃 度、トリハロメタン類、臭素の除去率に関しては水質基準等を満たす透過水を得られることを確認

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基 男

公 雄

眞 高

渡 清

授 授

授 授

   

   

(4)

した が、 ホウ 素 に関 して は他 の無 機 イオ ンな どと比べて特異的に除去率 が低い。そのため水質基 準等を満たすことが出来な ぃことを明らかにした。この知見は世界で初めてのものである。さらに、

わが 国の 淡水 化 施設 の実 態調 査を お こな い、 実験プラントと同様な状態 であることを確認した。

  第4章 で は 逆 浸 透 膜 海 水 淡 水 化 装 置 に お け る ホ ウ 素 低 減 化 シ ス テ ム に つ い て 実 験 を 行 っ た 結 果 を 論 じ て い る 。 す な わ ち 、 逆 浸 透 膜 装 置 の 操 作 圧 力 、pHな ど を 変 化 さ せ て 基 礎 実 験 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 操 作 圧 カ とpHに よ ル ホ ウ 素 の 除 去 が 影 響 を 受 け る こ と を 明 ら か に し た 。 特 に 、pHの 影 響 が 顕 著 で あ っ た 。 こ の 原 因 と し て はpHを 高 く す る こ と に よ り 分 子 状 態 の ホ ウ 素 か ら イ オ ン 状 態 の ホ ウ 素 の 存 在 比 が 増 加 す る 。 ま た 膜 表 面 荷 電 が 負 で あ る 架 橋 芳 香 族 ポ リ ア ミ ド 膜 は 、pHを 高 く す る こ と に よ り さ ら に 膜 表 面 の 負 荷 電 が 高 く な る相乗効果によルホウ素の 除去性が向上することを明 らかした。

  こ れ ら の 結 果 を 踏 ま え て 高 圧 逆 浸 透 膜 に よ る1段 目 の 透 過 水 を さ ら に 超 低 圧 逆 浸 透 膜 に て 処 理 す る 方 法 と 、 ま た 、 硫 酸 カ ル シ ウ ム の ス ケ ー ル 発 生 を 抑 制 で き る2段 処 理 に つ い て そ れ ぞ れ 実 験 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 何 れ の 方 式 で も ホ ウ 素 濃 度 をWHO基 準 値 の0.5ppm を 満 足 す る 運 転 操 作 条 件 を 見 出 す こ と が で き る 実 用 可 能 な 方 式 で あ る こ と を 明 ら か に し た。

第5章 で は ホ ウ 素 低 減 化 シ ス テ ム の シ ュ ミ レ ー シ ョ ン 解 析 に つ い て 諭 じ て い る 。 す な わ ち 、 膜 透 過 理 論 に よ り 逆 浸 透 膜 施 設 の 操 作 条 件 を 任 意 に 設 定 し た と き の 溶 質 の 透 過 流 束 お よ び 阻 止 率 を 求 め る こ と が 出 来 る 。 そ こ で 、 そ の シ ュ ミ レ ー シ ョ ン 解 析 に 必 要 な1段 目 、 2段 目 の 膜 に お け る 物 質 移 動 係 数 、 膜 輸 送 係 数 を 実 用8イ ン チ 膜 モ ジ ュ ー ル で 実 験 的 に 求 め た 。 こ の 結 果 を 基 に1段 処 理 シ ス テ ム や2段 処 理 シ ス テ ム に お け る ホ ウ 素 除 去 に つ い て の シ ュ ミ レ ー シ ョ ン モ デ ル を 確 立 し た 。 こ の モ デ ル を 用 い た 解 析 結 果 と 第4章 で の 実 験 結 果 と 良 く 整 合 し て い た こ と か ら 、 こ の シ ュ ミ レ ー シ ョ ン モ デ ル は プ ラ ン ト 設 計 に 有 効 で あ るとしている。

  第6章 で は 、 ホ ウ 素 低 減 化 逆 浸 透 膜 シ ス テ ム に お け る コ ス ト の 試 算 を 行 っ て い る 。 す な わ ち 、 ホ ウ 素 低 減 化 シ ス テ ム を 既 設 の 海 水 淡 水 化 プ ラ ン ト に 設 置 す る 場 合 と 新 設 す る 場 合 に つ い て 、 処 理 水 の ホ ウ 素 濃 度 を 目 標 水 質 と し て 与 え た 条 件 下 で の イ ニ シ ャ ル コ ス ト と ラ ン ニ ン グ コ ス ト を 求 め た 。 そ の 結 果 、 水 質 基 準 で あ る ホ ウ 素 濃 度lppmあ る い はWHO飲 料 水 ガ イ ド ラ イ ン0.5ppmを 満 た す た め の シ ス テ ム を 付 加 す る こ と に よ る コ ス ト の 上 昇 は 、 既 設 コ ス ト の 20% 程 度 で あ り 、 工 学 的 に 可 能 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。   第7章 は 本 研 究 の 結 論 で あ る 。 本 論 文 は 逆 浸 透 膜 に よ り 海 水 淡 水 化 水 は ホ ウ 素 濃 度 が 特 異 的 に 高 い と い う 世 界 で 最 初 の 発 見 を も と に 、 そ の 原 因 を 究 明 し 、 そ の 除 去 に 関 係 す る 因 子 を 考 慮 し た ホ ウ 素 も 低 減 で き る 逆 浸 透 膜 シ ス テ ム を 提 言 し て い る 。 さ ら に 、 透 過 水 の ホ ウ 素 濃 度 を も 考 慮 し た プ ラ ン ト 設 計 に 資 す る シ ュ ミ レ ー シ ョ ン モ デ ル を 確 立 し て い る 。 こ れ ら の 成 果 を 基 に ホ ウ 素 低 減 化 シ ス テ ム の コ ス ト を 試 算 し 、 工 学 的 に 適 応 可 能 で あ る と 結 論づけている。

  こ れ を 要 す る に 、 著 者 は 逆 浸 透 膜 に よ る 海 水 淡 水 化 に お け る ホ ウ 素 の 除 去 特 性 と そ の 除 去 を 可 能 と す る シ ス テ ム を 開 発 し 、 そ の 設 計 手 法 を 提 言 す る こ と に よ り 、 海 水 淡 水 化 技 術 上 新 し い 知 見 を 得 た も の で あ り 、 ま た 、 今後 の海 水 淡水 化技 術の 進 歩に 資す るも ので あ り、

都 市 環 境 工 学 と く に 環 境 衛 生 工 学 に 対 し て 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。 よ っ て 著 者 は 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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参照

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