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博 士 ( 工 学 ) 木 村 道 哉

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 木 村 道 哉

学 位 論 文 題 名

p 型 GaAs に お け る 電 子 ス ピ ン 偏 極 の 動 的 挙 動 に 関 す る 基 礎 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  磁性材料のミクロな制御が現在、大いに求められており、また、磁気記録における記録密度は、

年とともに増加の一途をたどっている。それにともない、より高い分解能を持っ表面磁性評価手 段が求められている。スピン偏極STM(SP―STM)は現在開発途上にあり、原子分解能を持つ表面磁性 観察装置として期待されている。p型GaAsは、円偏光照射により伝導帯にスピン偏極電子を励起 できることから、有望なSP−STM探針材料であると考えられる。探針材料としての特性の向上をは かる上で、スピン緩和、再結合消滅など動的挙動のメカニズムを知り、これを制御することが重 要である。

  本研究は、これら動的挙動の効果およびその制御の可能性を検討し、SPーSTM探針設計の指針を 得ることを目的としている。

  本論文は、全八章から構成されている。

  第ー章では、本研究の背景として、磁気記録の発展および表面磁性評価法にっいて概説し、S P−STMに関する現在までの研究状況について述べた。さらに、円偏光励起p型GaAsの探針としての 特徴と課題にっいて述べ、SP―STM開発における本研究の果たす役割を明らかにするとともに、本 研究の目的および構成にっいて記した。

  第二章では、mーV族化合物半導体における伝導帯電子のスピン緩和機構の理論を解説した。ス ピン緩和はスピン偏極状態を左右する最も重要な現象である。また、バルクp型GaAsのスピン緩和 挙動にっいて、主としてLampelらの研究成果に基づきまとめた。本研究で扱う高ドーピングレベ ルのp型GaAsでは、電子一正孔間の交換散乱によるBAP機構が、支配的なスピン緩和機構であると考 えられる。

  第三章では、本研究で用いた実験手法にっいて説明した。本研究では試料の作製にMBE法を用 いた。伝導帯電子のスピン偏極の評価、および試料の電子構造の観察には偏光フォトルミネッセ ンス分光法を用いた。また、スピン緩和時間の測定には、時間分解フォトルミネッセンス分光法 を用いた。これらの原理と具体的方法を述べた。

  第四章では、電子スピン偏極の動的挙動が、p型GaAsのSP―STM探針材料としての特性にどのよう な効果をおよぼし得るかにっいて伝導帯電子のレート方程式に基づぃて予測し、問題点を整理し た。また、偏光ルミネッセンス分光の実験結果から、バルクp型GaAsにおける動的挙動の効果を推 定し、その制御の可能性について論じた。動的挙動の効果としては、減偏極効果と偏極分布の効果 が挙げられる。両者ともスピン緩和時間、および再結合時間によって決定され、ドーピングレベ ルや温度に依存する。動的挙動、特にスピン緩和の制御によって、SP―STM探針としての特性の向 上が見込まれることを述べた。

  第五章では、p型デルタドープAIGaAs/GaAs/AIGaAsダブルヘテロ構造の電子スピン緩和時間測定 の結果を示した。均一にドーピングを行ったダブルヘテロ構造の同実験結果との比較から、スピ ン緩和時間がアクセプターの分布に依存することを明らかにした。さらに、デルタドープダブル ヘテロ構造のスピン緩和時間が、バルクに比べて強いアクセプター濃度依存性を示すことから、

ルミネッセンススペクトルの測定結果と併せて、同構造におけるスピン緩和時間の長寿命化が、

電 子 ― 正 孔 間 の 波 動 関 数 の 重 な り の 減 少 に よ る も ので あ るこ と を 実験 的 に 検証 し た。

  第六章では、電子分布の計算からスピン緩和時間の制御の可能性にっいて論じた。p型デルタ ドープAIGaAs/GaAs/AIGaAsダブルヘテロ構造における電子スピン緩和時間の井戸幅依存性を示す。

これは井戸幅に依存した電子―正孔間の波動関数の重なりの変化を反映していると考えられる。

デルタドーピングによるポテンシャルスパイクを含む量子井戸を仮定し、シュレディンガー方程

528― ・

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式を解くことによって電子分布を求め、井戸幅、ドーピングスパイクの最適化によるスピン緩和 時間の制御の可能性を示した。

  第七章では、実際にトンネル過程における動的挙動の効果を検証し得る実験系として、磁性体 /p型GaAs偏光 エレ クト ロル ミネ ッセ ンス 測定 につ いて 初期 実験の 結果 と併 せて 論じ た。

  第八章では、本研究の結果を総括した。p型GaAsのSP―STM探針としての特性は、動的挙動、特に スピン緩和時間に依存する。デルタドーピングによる電子、正孔の空間分布の制御は、スピン緩 和時間の長寿命化をはかる有望な技術であり、この点を考慮して構造の最適化をはかることによ り、高性能な探針の作製が可能であることを示した。

‑ 529

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名 ,

p 型 GaAs における電子スピン偏極の動的挙動に      関する基礎研究

  磁 気 材 料 の 応 用 、 と く に 磁 気 記 録 に お け る 高 密 度 化 に は 、 材 料 表 面 の 高 分 解 能 で の 磁 性 評 価 お よ び ミ ク ロ 制 御 が 不 可 欠 で あ る 。 ス ピ ン 偏 極 走 差 ト ン ネ ル 顕 微 鏡 (SP―STAI)は 原 子 分 解 能 を 持 つ 表 面 磁 性 観 察 装 置 と し て 開 発 が 期 待 さ れ て い る 。 こ のSP−STMの 探 針 材 料 と し て 、p型GaAsが 最 も 有 望 で あ り そ の 実 現 に は 、 ス ピ ン 緩 和 、 再 結 合 消 滅 な ど 動 的 挙 動 の メ カ ニ ズ ム の 解 明 が 必 要 で あ る 。   本 論 文 で は 、 探 針 材 料 の 動 的 挙 動 お よ ぴ そ の 制 御 の 可 能 性 を 検 討 し 、SP−STM 探 針 設 計 へ の 指 針 を 明 ら か に し て い る 。

  先 ず 、IJI−V族 化 合 物 半 導 体 に お け る 伝 導 帯 電 子 の ス ピ ン 緩 和 機 構 の 理 論 を 検 討 し 、 ス ピ ン 偏 極 状 態 を 支 配 す る 最 も 重 要 な 因 子 は ス ピ ン 緩 和 で あ り 、 バ ル クp型GaAsの ス ピ ン 緩 和 挙 動 は 電 子 ー 正 孔 間 の 交 換 散 乱 に 律 則 さ れ る こ と を 指 摘 し た 。 さ ら に 、 電 子 ス ピ ン 偏 極 の 動 的 挙 動 がp型GaAsのSP−STM探 針 材 料 の 特 性 に お よ ぼ す 効 果 を 伝 導 帯 電 子 の レ ー ト 方 程 式 か ら 予 測 し た 。 ま た 偏 光 ル ミ ネ ッ セ ン ス 分 光 に よ る 電 子 構 造 の 解 析 か ら 、 バ ル クp型GaAsに お け る 動 的 挙 動 と し て 、 減 偏 極 効 果 と 偏 極 分 布 の 効 果 が あ り 、 と も に ス ピ ン 緩 和 時 間 お よ ぴ 再 結 合 時 間 に よ っ て 支 配 さ れ 、 き ら に 、 ド ー ピ ン グ レ ベ ル や 温 度 に 依 存 す る こ と を 明 ら か に し た 。SP−STM探 針 の 特 性 の 向 上 は と く に ス ピ ン 緩 和 の 制 御 に よ っ て 可 能 と な る こ と を 見 出 し た 。

  次 に 、 MBE法 に よ り 作 製 し たp型6― ド ー プAIGaAs/GaAs/AIGaAsダ ブ ル ヘ テ ロ 構 造 に つ い て 、 時 間 分 解 フ ォ ト ル ミ ネ セ ン ス 分 光 法 に よ り 電 子 ス ピ ン 緩 和 時 間 を 測 定 し 、 ま た 、 偏 光 ル ミ ネ ス セ ン ス 分 光 に よ り 均 一 に ド ー ピ ン グ し た ダ ブ ル ヘ テ ロ 構 造 を 解 析 す る こ と に よ っ て 、 ス ピ ン 緩 和 時 間 が ア ク セ プ タ ー の 分 布 に 依 存 す る こ と を 明 ら か に し た 。 さ ら に 、6― ド ー プ ダ ブ ル ヘ テ ロ 構 造 の ス ピ ン 緩 和 時 間 は バ ル ク に 比 較 し て ア ク セ プ タ ー 濃 度 に 強 く 依 存 性 す る こ と を 確 認 し 、 ス ピ ン 緩 和 時 間 の 長 寿 命 化 は 電 子 一 正 孔 間 の 波 動 関 数 の 重 な り の 減 少 に よ る も の で あ る こ と を 実 験 的 に 明 ら か に し て い る 。

  さ ら に 、 電 子 分 布 の 計 算 か ら ス ピ ン 緩 和 時 間 の 制 御 の 可 能 性 と し て 、p型6 ー ド ー プAIGaAs/GaAs/AIGaAsダ ブ ル ヘ テ ロ 構 造 に お け る 電 子 ス ピ ン 緩 和 時 間 の 井 戸 幅 依 存 性 に つ い て 、6← ド ー ピ ン グ に よ る ポ テ ン シ ャ ル ス パ イ ク を 含 む 量 子 井 戸 を 仮 定 し て 、 シ ュ レ デ ィ ン ガ ー 方 程 式 を 用 い て 電 子 分 布 を 検 討 し た 結 果 、 井 戸 幅 と ド ー ピ ン グ ス パ イ ク の 最 適 化 に よ っ て ス ピ ン 緩 和 時 間 の 制 御 が 可 能 と

郎 一

明 夫

平 幸

惣 哲

橋 笠

貫 利

高 武

大 毛

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

なることを明らかにした。

  

最後に、以上の結果から、6 ―ドーピングは電子・正孔の空間分布を制御し、

スピン緩和時間の長寿命化を図ることが可能で、その最適化により高性能なSP

―STM 用の探針作製が可能であることを示した。

  

これを要するに、著者は、原子分解能のスピン偏極走査顕微鏡用化合物半導 体の探針に関して、有益な多くの新知見を得ており、材料物性ならぴに電子材 料物性の分野に貢献するところ大なるものがある。

  

よって、本論文は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるも

のと認める。

参照

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