円柱鋼製橋脚隅角部亀裂の補強検討
阪神高速道路公団 正会員 ○若槻 晃右 阪神高速道路公団 正会員 甲元 克明 阪神高速道路公団 正会員 鈴木 威 (株)綜合技術コンサルタント 大畑 啓一
1.はじめに
円柱鋼製橋脚隅角部の亀裂損傷について,隅角部端部に作用する活荷重応力を,補強前の活荷重応力の 50%
程度に低減することを目標とし,あて板による補強方法を FEM 解析により検討した.なお,あて板補強は,補 強対象隅角部が圧縮領域となる T 型単柱橋脚と,引張領域となるラーメン橋脚について検討を行ったが,本稿 においては,ラーメン橋脚の検討結果についてのみ述べる.
2.解析モデルおよび 検討項目 あて板補強構造の基本モデルとし て,図-1に示す構造を考えた.あて板 の突出寸法は梁高の1/3以上確保する ことを考えた.また,あて板の補剛材 として水平補剛材を3段配置した.本 体への取付構造は,支圧接合ボルト
(柱側・梁側ともに4列)とし,水平 補剛材,橋脚内部の補剛材,および,
ダイアフラムを避けるように配置し た.あて板の板厚は22㎜とし,材質 は梁と同質のSM490材とした.また,
これを基本モデルとし,補剛材の配置,
あて板の板厚および突出寸法を変化 させ,その効果について検討を行った.
解析モデルは橋軸方向に1/2モデルとした.着目 する隅角部から2mの範囲の橋脚柱・梁部材,およ び,あて板補強板をシェル要素でモデル化し,柱と 梁との接線上から100mmの範囲においては,主応 力方向のメッシュサイズを20mmとしている.着目 隅角部以外は梁要素によりモデル化し,シェル要素 と梁要素とは剛体要素で結合し,また,橋脚本体と あて板補強板とは支圧接合ボルトの剛性を有する バネ要素で結合した.橋脚基部において完全固定の 境界条件を与え,本橋脚の設計活荷重を支承位置に 載荷した.
3.補強検討結果 1)基本モデル解析結果
解析結果を,図-2 に示す.活荷重による梁部材上フランジ隅角部の垂直応力度は,補強前の 138kN/㎜ 2に 対して,補強後は 89kN/㎜2(補強前の垂直応力度に対して約 64%)となり,目標とする 50%には達しなかった.
キーワード 鋼製橋脚隅角部,円柱橋脚,あて板補強,FEM 解析
連絡先 〒552-0006 大阪市港区石田 3-1-25 阪神高速道路公団 TEL06-6576-3881 図-1 あて板補強基本モデル
図-2 活荷重による垂直応力度分布 137.9
89.0
0 50 100 150
0 200 400
600 800
1000
幅員方向位置 (mm)
垂直応力度 (N/mm2 ) 補強前
補強後
ウェブ側 フランジ
中央 土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)
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支圧ボルトのせん断力は最大 43kN であり,許容せん断力 (72.2kN)に収まる値となった.また,あて板補強板に作用 する引張力により,母材と接していない R 部分(図-1 ”A”
部)において,図-3 に示すような板曲げ変形が生じる解析 結果となった.これは,あて板補強板の曲げ剛度が不足し ているためと推察され,補強効果を高めるためには,あて 板補強板構造の板曲げに対する剛性(面外剛性)を上げるこ とが有効と考えられた.
補強板厚を変化させて解析を行ったと ころ,補強後の垂直応力度は,板厚 32 ㎜ の場合は 74.6kN/㎜2(約 54%),板厚 44
㎜の場合は 67.1kN/㎜2(約 49%)であっ た.板厚を増すことにより隅角部の応力 は低減する傾向であるが,鋼材の増加量 に対して得られる補強効果はそれほど大 きくなかった.
2)補剛材配置の最適化
あて板補強板の面外剛性を向上させる 方策として,補強板厚の増厚以外に,補 剛材配置の最適化が挙げられる.基本モ デルでは補剛材を水平に配置していたが,
変形の大きい斜辺方向に補剛材を配置し,
補強効果を検討した.図-4 に解析結果を示す.補剛材をあて板補強板の斜辺に 1 段配置した場合(板厚 22 ㎜)
では,補強後の隅角部の応力は補強前に対して約 69%となり,基本モデルより若干劣る程度となった.板厚22
㎜で傾斜補剛材を2段配置した場合(柱側端部も延長)では,補強後の隅角部の応力は補強前に対して約 52%
となった.これより,斜辺方向に補剛材を 2 段配置し,あて板補強板の曲げ剛度を上げる方法が,最も効率の 良い構造であると判断した.
3)あて板補強板寸法およびボルト配列数
あて板補強板の突出高さが,梁部材隅角部の応力度へ与える影響を把握するために,補強板突出高さをパラ メータとした解析を行い,その影響を整理した.補強板突出高さh/梁高H(=2000mm)の値は,0.35~0.5で ある.
解析の結果,隅角部の応力度は,応力低減効果はそれほど大きくないが,補強板突出高さの増加にともない,
おおよそ線形の関係で減少することが分かった.この結果より,決定形状により十分な補強効果が得られない 場合には,補強板寸法の調整により補強効果を高めることも可能と考えられる.
本検討においては4列配置を基本に検討を行ったが,柱側ボルトについては施工の確実性(橋脚円柱とあて 板補強板とのなじみ)の観点から,実施工では5列配置を予定している.
4.まとめ
円柱鋼製橋脚隅角部の亀裂損傷に対するあて板補強を,パラメトリック解析により検討した結果,①あて板 の突出長hは梁高Hとの比率が0.35程度,②あて板には傾斜補剛材を2段配置,③支圧接合ボルトは梁側で は4列,柱側では5列を配置することにより,効率よく活荷重応力を低減できる可能性が明らかとなった.
対象隅角部は本検討結果に基づき補強行い,補強前後の応力頻度測定を実施し,補強の効果について確認を 行う予定である.
外側に変形
図-3 あて板補強板の板曲げ変形概略図
89.0
74.6
67.1 137.9
78.1 94.9
70.3
56.4 61.4
71.6
0 50 100 150
0 10 20 30 40 50
補強板厚 (mm) 隅角部の垂直応力度 (N/mm2 )
補強前 補強前の 60%
50%
図-4 補剛板の配置と隅角部応力の関係
基本モデル
傾斜補剛材1段
傾斜補剛材2段 土木学会第59回年次学術講演会(平成16年9月)
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