モ ン ゴ ル の 遊 牧 に お け る 移 動 の 理 由 と 種 類 に つ い て
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(2) 移動の 理 由. ⁝二八. ⑨家畜が一定のときに必要とするホジルの不足︒㈹一つの場所におけ. る長期問の滞在ののちの︑畜糞による土壌の汚染︒ωキャソプ地の近. いはまた移動の理由となる家畜の流行病その他が起った場合︒⑫ホト. くでの人の死︑もしくは未知の理由で家畜の疫病がはじまるか︑ある. ○さまざまな移動の理由. の灘脱の可能性︵20⊥二〇頁︶︒. ソ組織における牧養のための︑他のアイルとの結合もLくはそれから. として︑ソ連邦のイ・エフ・シュリジェンコの考えが︑よく引用され. 以上のツェベルの記述のうち︑③は︑家畜が食べたことやその他の. モン.コルの遊牧におげる移動のさまざまな理由についてのべたもの. る︵101二一九頁︑61四三頁︶︒かれの考えは︑つぎのとおりである︒. なるのである︒⑤はよくわからない点がある︒各季節において牧地に. 理由による牧地の草の状態の悪化についてのぺたものと思われる︒ω. 一方︑モソ.コル人の側では︑シュリジェンコよりずっと前に︑ヤ・. 主要な牧草というものがあり︑そうした主要な牧草の作柄のよい牧地. ω夏の水不足︑冬の雪不足︒②家畜のための飼料の不足︒㈹主要な. ツェベルがこのことについて︑つぎのように記している︒ω夏の高温. があれぱ︑その牧地は牧民をひきつげ︑移動の理由となるという意味. の︷亭とはモンゴル語のa自︵肋α一︶のことで︑﹁秋に枯れることな. は涼しい︑風が吹きつげる場所を探し求めさせ︑冬のいてつく風は防. か︒ωのホトソ︵誉昌=︶とはモンゴル語の曽↓︵君冨︶︑のことであり︑. 種類の家畜のために不満足な牧地の植物の稚成︒ω暑いときには涼し. 護された場所を探し求めさせる︒②夏の水の欠乏︑冬の雪の不足︒㈹. 家族︵アイル邑という︶がいくつかいっしょにまとまっているキャ. く残った草をさす︵211四八三頁︶︒っまり秋になって草が枯れる時期. 土地の条件を理由とする飼料の欠乏︒ω四季によっての飼料の存在ま. ソプをいう︒それらアイルやホトンがある場所にキャソプし︑その. い︑冬には暖かい場所をもつ必要性︒⑤家畜のための塩沢の不足︒㈲. たは欠乏︵春には早く草が出る場所︵oξ︶を求め︑秋にはそれがより. 結果その付近の牧草が悪くなることを言っていると思われる︒⑧のゾ. に︑さまざまな条件によって枯れる−﹂とが遅れた草の−﹂とである︒こ. 遅くまで残っている場所︵ρ亭︶を求める︶︒⑤それらの収且皿を決め. ドには︑過度の降雪または過度の積雪によるゾドだけがあるのではな. 畜糞によってキャソプ地がよごれること︒ω家畜の疫病︒⑧他の経営. る条件とされた牧草の存在︒㈹飼料植物の種類の構成︒ω家族また. く︑無積雪によるゾド︑酷寒によるゾド︑長時間の猛吹雪によるゾド︑. ういう草は︑言うまでもなく枯草より養分が多く︑家畜の良い飼料と. はホトソが駐営した区域において飼料がなくなったこと︒⑧ひでり. トモル・ゾド↓婁召ξト︵εヨ亭N3︶つまり鉄のゾドという意味で︑. 体との連合の必要性︒⑨人の死︵23⊥⁝頁㌔. ︵曇 Ω昌︶または過度の降雪︵ω着一豊︷︶の結果による飼料の消失︒.
(3) に凍結し︑家畜が草を食べられなくなるゾド︑以上の二つ以上のゾド. 稜雪が気温上昇の結果溶け出したのち︑気温の降下によって氷のよう. ェベルのωはシュリジェソコのωと⑨に対応する︒ツェベルの⑫とゴ. ル不足の記述は︑ツェベルの⑨︑シュリジェソコの⑤に対応する︒ツ. 体対応するとみて許されるであろう︒また.コンゴルのωの文中のホジ. 以上のようにみた上で︑以下に三人の研究者の説に基本的に依拠し. ソ.コルの⑤は︑シュリジェソコの③に対応する︒. が競合しておこるゾドの︑計六種類がある︵4−=一六頁︑注2︐221 一〇〜一七頁︑21四一頁︶︒⑨のホジル︵ξ美︷一看青︶とはソーダの. こと︑シュリジェソコの㈲の﹁塩沢﹂もホジルのことである︒. ω牧草の不足または牧草の状態の悪化︒すなわち各季節において︑. つつ︑私見も加えて移動の理由を具体的にまとめてみる︒. た︒今かれの見解に私が便宜上番号を付して︑列挙してみる︒ω夏に. 牧地の草が家畜に食われた結果不足すること︑またはその状態が悪化. 最近モソゴルの歴史学老デー・ゴソ.コルも移動の理由について記し. は雨が降らず︑青草︑ホジルと水が不足し︑表土が乾燥していること︒. ②四季いずれにおいても︑良い牧草を求めること︒特に春には青草. すること︒. 地が氷雪に覆われ︑草が繰返えし食われること︒③春になれぱ︑保存. が早く生えてくる場所を求め︑秋には遅くまで枯れないで残っている. ω冬の厳寒のときには︑暖かな︑風よげ場である冬営地︑そして牧草. されていた枯草がなくなること︒ω秋になれぱ︑邑を求めること︒. ㈹牧民の所有する家畜の種類と︑それらの家畜が食う牧地の植物. 青草︵邑︶の多くある場所を求めること︒. ㈹その屠住地において︑かんぱつやゾドなどの天災をのりきる希望の. ︵家畜によって食ぺる草の種類が異なる︶の構成が一致しないこと︒. ㈲草の構成と土地被覆が家畜の種類に︑あまりにも不適当になること︒. ないことがあらかじめ知られること︒ω季節を間わず︑人と家畜のさ. ω家畜の飲料とLての︑暖かな季節の水︑寒い季節の雪が不足する. 三二九. ⑧キャソプ地や牧地が焼けたり︑洪水がおこる−﹂と︒. 住地にとどまってのりきることが困難なこと︒. ω暖かい時期のかんぱつ︑寒い時期のゾドなどの天災を︑現在の居. 所︑冬は風をさえぎる︑日当たりのよい場所を必要とすること︒. ㈹夏は風通しがよく涼Lい︑ハェや蚊︑ブヨ︑アプなどの少ない場. ⑤ホジル重たはホジルの濠出地が不足すること︒. こと︒. まざまな病気や伝染病の発生︒⑧キャンプ地が焼げ︑牧地の火箏と洪 水の苦しみに出会うこと︒⑨大戦乱などの勃発︵8⊥二〇八頁︶︒. 以上の三人の学老の考えを整理すると︑ツェベルの③〜⑧は︑要す るに家畜の飼料である牧草の問魎に関係し︑同じくゴンゴルのω〜⑤ は︑ωの中でのべられているホジルと水の不足という異質な移動の理 由を除げぱ︑すべて牧草に関係している︒ゴソ.コルのωの水不足とい. うのは︑夏季の水の不足についてだけのべたものであり︑冬の雪不足 については何ら触れていないが︑ツェベルとシュリジェンコのωに犬 モソ一ゴルの避牧にお什る移動の理由と稲獺について.
(4) ⑨キャソプ地が家畜の排泄した糞尿によってきたなくたり︑ぬかる むことo. ㈹家畜が現在の牧地に飽き︑ひいて食欲が減退することを避けるこ と︑または逆に食欲を増進させること︒. 三三〇. がわかる︒中でも牧地が最も重要である︒従って遊牧におげる移動と. いうのは︑基本的には牧地利用上の問魎であるということになるので. ある︒そしてこの牧地の条件を構成する種々の要素のうちでも︑牧草. の間魎が最も基本的な移動の理由であると思われる︒. ○移動の根本的理由. ⑩アイルが他のアイルと共同して牧畜するためホクなどを形成する こと︑およびそのホタたどが解散したり︑アイルがホタなどから分離. さて︑前節において私は︑移動の理由をその種類別に列挙し︑牧地. の間魎が最も基本的であると思われるとのべたのであるが︑本節では︑. することo. ⑫未知の理由による家畜の病気の発生︑また流行病の発生︒. そうした考えを踏まえて︑モソゴルの遊牧におげる移動の根本的理由︑. 要因というのは︑どこに求められるかについて︑私の考えをまとめて. ㈹キャソプ地およびその周辺での人の死︒ .岬大戦乱などの勃発︒. 果として︑家畜が牧地に飽き︑食欲を失うに至ることを避げ︑逆に早. フを扱かう場所でのべるように︑一つの居住地に長期間とどまった結. 配的であることの理由を︑第一に自然的気候的条件︑第二に革命前の. のち︑それに何のコメソトも加えず︑モソ.コルにおいて遊牧経済が支. モソゴルのジャグバラルは︑シュリジェソコの右の考えを引用した. みたい︒. め早めに移動して家畜を常に新鮮な気分にLて食欲を増進させること. モソゴルの生産力の発展とその杜会−経済制度の低い水準に求めた︒. 以上の一四種類の移動理由のうち︑⑩は︑次章でシャグラジ・ヌー. が移動の理由として存在し︑これは他の二二種類の移動理由のいずれ. 牧地の条件︑状態を理由とするものであることがわかる︒すなわちω. これら一四種類の移動の理由をみると︑その多くは︑キャソプ地と. 牧地の植物の収几皿の不均等さを指し︑このような条件のもとで︑特に. さ︑そLてまた厳しい大陸性気候によって毎年ひきおこされる各地の. の広大さとその領域内の地貌と気候条件の複雑さに基づく植生の多様. 今︑このうちの第一の自然的気候的条件というのは︑モソゴルの領域. 〜⑨がそうである︒⑩は家畜の精神衛生の問魎であるが︑牧地の間魎. 完全に植物資源を利用し︑よい太り具合︑冬の無事なのりきりを組織. にも入らないので︑一項目として加えたものである︒. も関連している︒帥〜⑭は牧地と無関係な移動の理由である︒以上の. するためには︑転々と絶えず移動しなけれぱならないとする︵10− =一九頁︶︒. ことから遊牧における移動の理由のうち︑最も多くを占めるのは︑キ ャンプ地と牧地をあわせた︑遊牧民と家畜の居住地の間題であること.
(5) だが︑−﹂の︑牧地の植生の多様さと毎年の各地の牧地の間の牧草の. 成育のむらに移動の大きな理由を求める考えに︑私は疑間をもつ︒こ. れでは︑モソゴル人が冬の居住地を根拠地とし︑それ以外の季節に比. 較的定期的な移動を︑比較的定まった場所で行なうことを︑うまく説 明できないであろう︒. ジャグバラルの指摘した第二の点については︑モソゴルの他の研究 著も﹁牧畜に移動の方法によって従事する主要な理由は︑当該杜会の 生産力の水準が未発達なことである﹂と指摘しており︵71一七〇頁︶︑. 現在のモソゴルにおける共通的な見解と思われる︒. 私は︑こうした生産力の間魎の重要性を認めるげれども︑それ以上 にその生産力の間魎の根底に横たわっているモソゴルのステヅプの自 然環境を重要視せざるを得ない︒生産力の向上が顕薯な最近のモソゴ. ルにおいてさえ︑あまり良好でないステヅプでは遊牧の定着化が緩慢 であるとみられるのが︑逆にステヅプ的自然環境と遊牧との関わりの 深さを示していると︑私は思うのである︒. 一方︑ゴソゴルは︑つぎのようにのぺている︒﹁移動して生活する 習償の決定的要因はというと︑屠住地が広大であり︑人口が比較的少 なくて分散居住し︑個人に割り当てられる家畜の頭数が多く︑住居家 財をはじめとするものが定住地域に比ぺると移動生活の状態に適合し た軽くて携帯しやすいものである︒これらのことはモソゴル族の歴史 の具体的な活動によって︑すでに証明されているのである﹂︵81三〇 九頁︶︒. モンゴルの遊牧における移動の理由と禰類について. 私はこの考えの多くの部分に同調しがたい︒なぜなら︑住屠︑家財. が携帯に便利であるという点は︑移動の理由とはなることができず︑. それは遊牧にたいする生活様式の適応の結果とLて生じたことである. L︑人口が少なくて分敵して屠住Lているという点も︑遊牧生産様式. とその生産力の反映であるとみられ︑移動の要因とはなることはでき. ない︒・屠住地が広大であるという点も︑移動の理由と無関係である︒. 採るぺき点は︑結局︑牧民各人に割り当てられる家畜の頭数が多いと. いう点だけである︒この一文を私なりに牧民の所有家畜の多さという. ように言いかえるならぱ︑−﹂れは前節で紹介した三人の研究老の移動. 理由のいずれにも含まれていなかったが︑私としては一つの立派な移. 動の理由となりうると思う︒多くの家畜をもっている牧民の移動回数. は多い︵7−一七七頁︶という当然の事実が︑このように考える根拠で. ある︒遊牧民の生活を支えるに足る程度の頭数の家畜を所有L飼育す. るならぱ︑必然的に移動せざるをえなくなる︒そしてその所有家畜が. 増えるにつれて移動回数も増えるのである︒. それとともに移動の要因として︑すでに記したように︑何といって. も牧地の問題がとりあげられるぺきであろう︒. 牧地は︑モソゴル語でピルチェールまたはベルチェールα⁝毒ωP. 8⁝3勺︵重暑巴という︒モソ.コルの牧畜というのは︑昔も今も︑−﹂. のピルチェールの牧畜だとされている︒ビルチェール牧畜とは︑定着. 的飼料給養牧畜︑半定着的飼料給養または半ピルチェール牧畜ととも. に︑牧畜の三つの種類の一つであり︑﹁家畜を年中ピルチェールによ. ⁝三.
(6) ができず︑家畜は犬きた損害を豪る︵2−三九〜四三頁︶︒こうして移. 三三二. って飼育するL牧畜である︵nI一八〜一九頁︶︒. 以上の説明は︑森林ステヅプ帯と純ステップ地帯北部では移動が行. 動は不可避となる︒. ル3芽畠昌葦α⁝ε︷つまり﹁白然の牧地﹂ともしぱしぱいわれ︑. なわれたいということを意味していない︒そこでは他の地域に比べて. ところでこのピルチェールというのは︑パイガリーソ・ピルチェー. これがモソ.コルの国土の犬部分を占めることが強調されてきた︒そし. 牧地の条件が移動に密接に関係Lている−﹂とを具体的に示すと︑ま. 移動回数と距離が少ないだげである︒. 備しているとしても︑四季にどこの地帯においてもピルチェールを利. ず次章のノタク・ソリフの項でのぺるように︑草量の多いハソガイ地. て﹁現代において︑たとい草の飼料︵干草のこと1吉田︶をかなり準. 用しているのであって︑従って毛ソ.コル国の家畜の飼料の基礎は︑自. 帯︵高山帯︑タイガ帯︑森林ステヅプ帯から成る︶とその次に草量の. 二四三頁︶では︑移動回数︑距離ともにハソガイ地帯が最も少なく︑. 多い純ステッブ地帯︑そLて最も草量の少たい.コピ地帯︵31二四二i. 然のピルチェールなのである﹂などとのぺられている︵91八頁︒また. このようなモソゴルの自然のピルチェールにおいてば︑乾燥アジア. 121四頁など︶︒. つぎに同じ地帯で牧畜する場合でも︑利用する牧地の草且皿の具合に. 純ステヅプ地帯がやや多くなり︑.コピ地帯が最も多い︒. 概Lて少なく︵251一七五〜一七六頁︶︑家畜に食われた草の復元力は弱. よって移動に違いが生じる︒すなわち﹁中級の家畜を有する.コピのア. の気候条件とその他の地理的条件がそのまま支配しており︑草の且皿は. い︵251一七七頁︶︒モソゴル人民共和国において︑ある年に平年並の. イマク︵行政単位−吉田︶の家庭の移動の状態において︑イ・ア・ツ. ァツェソキソ︵=.>.ξ号妻⁝︶︑ア・ユナトフ︵>.δ=彗畠︶らの行. 降雨且皿があったとして︑生えてきた青草を家畜に食わせたのち︑同じ. なった研究からみると︑中級の生産且坦のある年において︑よい牧地で. 年のうちにその草がもとのようになり︑もう一度家畜に食わせられる. 牧地のある地域というのは︑森林ステヅプ帯と純ステヅプ地帯の北部. さらに同じ地方であっても︑平年と天災の年では︑大きた違いがで. 五〜一〇回︑中級の牧地で一五〜二〇回︑悪い牧地で二五〜三〇回移. ルの自然の牧地の多くでは︑家畜が数目間食ぺた草は︑来年また生え. てくるのである︒すなわち﹁普通の年︑それほど遠い移動をせず︵三. だげであり︑国土の多くを占める高山帯︑純ステヅプ地帯の南部︑.コ. てくるまで利用が困難であり︑無理に利用したとしても家畜を太らせ. 〇〜四〇キロメートルの範囲で︶︑ただ天災の年のみ︑よい居住地を. 動しているという﹂とある︵71ニハ一頁︶︒. ることはできたい︒青草の生えている暖かい時期に家畜を太らせられ. 求めて︑牧人たちは数百キロメートルもの遠い移動を行なっている⁝. ピ地帯では︑その可能性がたい︵12−二八〜二九頁︶︒従って︑モソゴ. ないならぱ︑その牧畜は失敗であり︑厳Lい冬春を無事のりきること.
(7) ⁝﹂と︑ある地方についてのべられているとおりである︵251一七七: 一七八頁︶︒. 法も可能であろう︒. だが本稿では︑別の方法に基づく分類法を採用したい︒それはモソ. .コル人が移動を表わすために用いている言葉に基づいて移動の種類を. 分ける方法である︒この方法によると︑従来あまり注意されていなか. モソゴルの遊牧における移動の基本的な要因は︑明らかに牧民が自 然の牧地に四季を通じていつも全面的に依拠して牧畜することにある︒. った移動の側面︑特に移動様式について︑多くのことを知ることがで きると思われる︒. これに既述の︑牧民が自己の生計を支えるに足る頭数と種類の家畜を. 飼育するというもう一つの重要な条件が加わって︑移動の根本的な要. モソ.コル人が移動を表わす言葉として︑ヌーフミ貢︵罵琶雪︶︵動. 詞︶︑ヌーデル曽ミト彗︵篶畳宣︶︵名詞︶がある︒これは移動一般を. 因が形成されているとみたい︒. 前節でまとめた移動のさまざまの理由の多くのものは︑−﹂のような. ノタク. 表わす語である︒このヌーフ︑ヌーデルの具体的方法として︑つぎの. ︶ イ ︵. オトルロフ. 根本的要因を基礎として生じるものであることは︑言うまでもないこ. 態の悪化を理由とする移動が生じ︑②の良草を求めるという稜極的な. ロ. ゾーポル・ヌー一アル・ヒーフ. ものがあげられる︒. 移動が生じ︑その他の牧地に関速した移動の理由が規則的あるいは場. い. ポーリ・ソリフ. とである︒この移動の根本的な要囚を基礎として︑まずωの牧草の状. 合によって生じ︑さらに牧地外の条件を理由とする移動が加わり︑全体. ↑. シャグラジ・ヌーフ. ソリ7. としてモソゴルの遊牧民の移動というものが行なわれてきたのである︒. ㈱. これらについて︑以下に順次説明していく︒. 移動の種類というと︑前章でのぺたさまざまの移動の理由がそのま. ぽ同じ意味内容で用いられることがある︒ノタク・セルゲフξ畠﹃. これは﹁居住地を変える﹂という意味をもつ︒この語はヌーフとほ. 二 移動の種類. ま独立した移動の種類となるともいえる︒例えぱ︑﹁牧草の悪化によ. 8弓賢︵⁝εo器一口竈睾饒︶という語もこれと同じ意味で使われることが. 川⁝⁝ノタク・ソリフ=︸富﹃8﹄雪x︵目目巨Ω呂=o目︶. る移動﹂とか︑﹁天災から避難する移動﹂という具合に︒こういう形. あるようである︒しかしノタク・セルゲフとは︑後述のように本来︑. 三三三. より近くに居住地を移すという意味をもつ語だと思われる︒. の移動の種類の分類法も︑確かに存在するであろう︒. またそれとともに︑季節的移動とか一季節内での移動とかいう分類 そソゴルの遊牧における移動の理由と稲類について.
(8) ⁝二四. 動距離ば一〜三キロメートルであり︑一年に四〜五回移動するという ︵41一二四頁︶︒. ■タグ・ゾリフとは︑さまざまの理由から︑あるアイルまたばホタ. が︑現在の居住地つまりキャソプ地と牧地の双方を︑新しい居住地に. トプシフ↓冨⁝買︵ε多看︶は︑かなり離れた所に移動する︒すな. 〇〜一五キロメートルである︒そLて一年に一〇〜二百移動する. わち一キャソプ地に三〇〜四五日滞在したのちの一回の移動距離は一. 移すことをいう︒このためにアイルまたはホタの全員は︑ゲルその他 ︵限られた固定施設は除く︶を引き払い︑所有家畜の全てを連れ︑自. 己の希望にかなう居住地に移り︑そこに新Lいキャソプを設営し︑そ. ︵4−二一四頁︶︒. オルトーロフ⑦B⑦雪實︵α幕o・〇一〇雷︶は遠くに移動する︒すなわち一キ. の周辺の牧地で家畜 を 飼 育 す る ︒. これは﹁民衆が家畜群の牧地を変えるおもな方法である﹂とのぺら. セルゲフは﹁変える︑移す﹂という意味︑トブシフは﹁遠め遠めに. ャンプ地に一五〜二五日滞在したのちの一回の移動距離は二〇〜三〇. ノタク・ソリフは︑ステヅプの各地帯によって︑その具体的なあり. 突き通して縫う﹂︵211五三=頁︶という原義から︑そのように移動す. れているように︵51五三頁︶︑最も基本的な移動であり︑それだげに. 方に相違があり︑それにともなって︑それらの移動にたいLて特別の. るという意味をもつに至ったものであろう︒オルトーロフは︑オルト. キロメートルである︒そして一年にニハ〜一八回移動する︵4−二一. 言葉が用いられることがある︒﹁家畜のノタク・ソリフを︑ハンガイ︑. ー⑦弓8︵α碁ooω︶の動詞形であり︑オルトーとは駅伝制におげる駅. 前章でのぺた移動理由のほとんどのものが関係している︒季節的移動. ゴピ︑純ステップ各地帯によって区別してみると︑セルゲ7︑十ブシ. と駅の間の距離が約三〇キロメートルであることから︑犬体その位ず. 四頁︶︒. フ︑オルトー口7と︑三つの塞本的なものに分げてみることができる︒. つ移動するという意味が生じたのであろう︒. もノタク・ソリフの形をとって行校われる︒. すなわちハソガイ地方では水がよいので︑居住地を近くにセルゲフし︑. ステヅプの各地帯における移動回数と移動距離の違いは︑先に引用. した記述にも触れられていたように︑それら各地帯の水と草の量に基. 吉田︶が均等. でないから︑トプシフして移動しており︑二方ゴピでは水の量が少な. づく︒ところでハソガイ地帯でもその南部は純ステヅプ地帯と牧地の. 純ステップでは家畜の飼料︵となる草︑草の生え方. く植物は短かく疎であるので︑オルトーロフ・ヌーデルによって牧地. 近い︒そこで︑ハソガイ地帯ではセルゲフだけでなく︑トプシフも併. 条件が近く︑.コピ地帯でもその北部は純ステップ南部と牧地の条件が. セルゲフはノタク・セルゲフと同じであり︑近い所︑近い所へと移. 用され︑ゴピ地帯ではオルトーロフだけでなくトブシフも存在する. を利用してきた﹂とあるとおりである︵41二茜︶︒. 動する︒すなわち一キャンプ地に二〜三ヶ月滞在したのちの一回の移.
(9) ㈲オトルロフo昌ミ買︵9oま看︶オトル︑オトル・ヌーデルともいう︒. ︵41二一四頁︶︒. ︵3︶ いた﹂︵141一八〜一九頁︶︒. て従わぬ老たちを処罰するなどLて︑牧地を利用することを調整して. 前にもどって来るならぱ︑ふたたびおい出し︑冬営地に損害を豪らせ. にいるアイルまたはホタなどの一部の老︵多くは成年男子︑ときに. 在滞在しているキャソブ地と牧地はそのままにして︑そのキャソプ地. 分離して家畜を飼う−﹂と﹂とあるが︵211四=七頁︶︑具体的には︑現. まるまえに︑人里離れたすぱらしい牧地と水のある地方を自身で出か. とが少し入っている︒﹁わが国の大部分の地方の牧人たちは︑冬が始. たものを引用する︒この記述には︑模範化した点と近年の新しい変化. つぎにやや長文であるが︑より具体的にオトルの方法について記し. ︵2︶. 訳すのが難しい語である︒辞書にば﹁家畜の牧地に従って︑軽減し. は夫婦︶が家族︵女︑子供︑老人など︶と別れ︑小型のゲルや軽便な. を求めて︑大体において比較的遠くまたはかなり遠くに移動L︵オト. 全部または一部を伴って︑草︑水︑ホジルその他の条件が良好な牧地. る家畜の一部の稲類︵羊だげ︑山羊だけ︑羊と山羊︑馬だげなど︶の. おりに︑全ての馬群を︑牧畜する人びとにその頭数と毛色によって受. どを︑きちんと決めて︑本格的な冬が始まるとともに︑事前の相談ど. し︑オトルに出す馬群を誰と誰が責任をもって引受げて牧畜するかな. ついて︑付近のすなわち同じ地方に住んでいる牧民すぺてで一致協議. げてみて︑それから自分の全ての馬群をその土地にオトルすることに. ルに出た先でまた移動することもある︒この場合の移動はノタク・セ. げとらせる︒それらの馬夫たちは︑オトルする自分の馬群を記録して. .テソトそれに若干の必要品をもって︑そのアイルやホタなどが所有す. ルゲフとかゾーポル・ヌーデルの形で行なわれることが多いようで. 受けとり︑事前に計画して決めた地方に︑馬群とともに遠ざかって行. 仕事をする習慣をもっているのである︒︵中略︶オトルを﹂ていく馬夫. ある︶︑オトルの目的︵後述︶を達したならぱ︑また家族のいる屠住地. オトルについて具体的にのぺた文を二つ引用する︒まず最初は︑清. たちは︑軽い形式の暖かな住居︑飲食料︑小さな炊求道具を運ぶ馬車. き︑引受げたオトル馬群の太った状態を失わず︑無事に厳しい季節を. 代モソゴルに関するもので︑モン.コル人民共和国西都のハソホヒー山. を用いるのが好都合である︒そのような車につけた馬は︑仕事が終っ. にもどるという移動の様式である︵181七一〜七八頁︒91一=丁一一. 脈方面の一ホショー︵旗︶のオトルの状態をのぺたもの︒﹁冬営地を. たらすぐに仰間の所に入れて︑余分の労働に使わず︑もしある土地か. のりきらせるために︑横極的に努力し︑日ごとに時問ごとに︑細心に. 保護し︑厳しい時期をすごさせるために︑十頭以上の頭数の馬を冬営. ら別の土地に移動するときには︑馬群にいるまだ使っていない車用の. 六頁︒181二二〇〜一三六頁︒61五二頁︒その他︶︒. 地に残さないようにして︑冬の初めの月の五日以内にハソガイにおけ. 馬を用いて移動すると︑問魎が生じないのである︒︵︷略︶馬群のオト. 三三五. るいずれかの土地でいっしょにオトルに出﹂︑もしオトルの期問より モソ.コルの遊牧における移動の理山と祁類について.
(10) 三三六. 以上の各季節のオトルの目的というのも︑夏と秋の各オトルの目的. 早く生えてきた青草を求め食わせて︑厳しい状態からぬげ出させ体力. せることにいっも努める︵中略︶︒そのように多少を間わず︑自分たち. は家畜を太らせるという点で共通し︑冬と春の各オトルの目的も︑厳. ルを行なっていく各馬夫は︑牧養している自分の馬群を︑付近にある. の馬群をいっしょに童とめて遠方の牧地にオトルして草を食わせ︑厳. しい時期︑状態をのりきらせるという点で共通している−﹂とがわかる︒. の回復に努めるのである︒. Lい時期に元気で太ったままでのりきらせることは︑牧民それぞれの. 従ってやはり︑オトルの目的というのは︑夏秋と冬春のそれに大別で. アイルのキャソプの家畜の牧地から遠く離れた牧地に入れて草を食わ. 労働を節滅することとなっているのである﹂︵191七四〜七五頁︶︒. 私は︑以上の二つのオトルから︑天災すなわち暖かい時期のかんぱ. きるといえようo. せるオトル﹂冨彗富o冨畠翼kk自翼soo︵ヨ凹;彗Ω目睾3凹o巳固君〇一冒︶. つや寒い時期のゾドなど︵特にゾドが重要︶が現実に襲来したときに︑. オトルは︑その目的によって︑普通︑夏秋に行なわれる﹁家畜を太ら. と︑冬春に行なわれる﹁家畜に厳しい時期をのりきらせるオトル﹂竃自. の︑天災から家畜を避難させるオトルと︑先に二つ引用した冬季の馬. 家畜をそれから避難させるオトルというものを区別し︑一つの独立し. バトナサソは︑このような分げ方を用いる一方で︵61二五頁︶︑よ. のオトルとでは︑本来目的が異なることは明らかであろう︒こうした. ○書O睾ミ婁昌O勺︵⁝一昌まO;Ω邑看Oε①に︑大きく分げられるよ. り細かく︑季節それぞれのオトルの特徴︑目的についてものぺている︒. 天災時の移動というものが︑前章において︑移動の一つの独立した理. た目的をもつものとみてもよいのではないかと考えている︒例えぱこ. すなわち﹁夏は家畜を太らせる新鮮な牧地のオトルをする﹂﹁秋はと. 由として扱かわれていたことも︑ここで想起すぺきであろう︒しかも. うである︵9−五六頁︒18−七二頁︒21四五頁︶︒. ても家畜を太らせる青い草のソル︵前述−吉田︶を求めてオトルする﹂. 記している場合がしぱしぱある︒それは﹁ゾドのときに︑牧地ニサの. モソ.コルの牧畜書には︑天災のさいにオトルを行なうことについて特. らせるオトルを行なう﹂﹁春は︑孕んでいるかまたは子を持っているメ. 貯えが不足したために︑雪が少なく草がよい居住地を︑オトルによっ. ﹁冬はゾドから保護し︑他の土地に行って家畜に厳しい時期をのりき. ス家畜以外の家畜を分けて︑脊い草の生えてきた場所でオトルする﹂. は生まれたぱかりの子をもっているメス家畜は︑体力その他の問魑が. オトルは︑その様式によって︑四つの種類に分げられる︑イェリ. りである︵221四二頁︒他に171二四〇〜二五三頁︑91一ニハ〜一一八頁︶︒. て移動し利用する作業を各地でかなり広く組織していた﹂とあるとお. あるので︑手もとにとどめておき︑それ以外の孕んでいないメス家畜. ーソ・オトル︷=葦S毛︵着昌・首目oε﹃︶︑ホトグイ・オトルき;畠. ︵41二一六頁︑6ー二五頁︶春のオトルは︑孕んでいるメス家畜また. やオス家畜などだげを別に分けて一グループに編成Lてオトルに出し︑.
(11) ○葦︶︑アルスィソ・オトル彗o呈so勺︵巳篶・首冒oεH︶がそれである. o↓o勺︵oo冨・饒胴99昌︶︑オルトー口7・オトルΦO↓Φ⑩−ΦxgoO︵α二〇鴨一県o. に引渡すという方法である︒家畜を駅伝のように牧地側の牧人と水側. って水を飲ませ︑また連れもどして︑途中で待っている牧地側の牧人. で連れて行くと︑水側の牧人が待っていてこれを受げとり︑連れて行. の牧人が伝送するところから︑オルトーロフ・オトルという名が与え. ︵41=:ハ頁︶︒バトナサソの解説に基づきながら︑これらについて. 説明すると︑つぎのとおりである︒. アルスィン・オトルとは︑遠いオトルという意味であり︑﹁家畜の. られたと思われる︒従って駅伝的オトルとでも称せぱ当たるであろう︒. 毎年秋の終りごろに︑牧地のホジル気の強く︑戯い植物︵ターナ︑フ. いる牧地が不適当にたる︵天災などによって︶などによって︑近く. イェリーソ・オトルは︑通常のオトルという意味であり︑﹁牧人が. ムール︑マンギル︶の生えている地方に行って︑全ての家畜をオトル. のソム︑アイマク︵ともに行政単位−吉田︶の地方に︑牧人が家畜. ︵4︶. に出す﹂ことをいう︵41==ハ頁︑注3︶︒全ての家畜とは全ての種. を︑腹に子のいないメス家畜を別に分けて︑移動してオトルする﹂こ. にはるぱるオトルに出なけれぱならない場合に︑孕んだり生まれたぱ. いる行政区画内にそれがなく︑境界を越えて︑遠方の他の行政区画内. 地が悪化し︑他に牧地を求めなげれぱならないとき︑自分の所属して. とをいう︵41==ハ頁︑注3︶︒これは天災その他の理由で︑現在の牧. 類の家畜と解すぺきである︒. ホトグイ.オトルとは︑決ったホタのないオトルという意味であり︑. ﹁家畜の調子にあわせて牧地の新鮮な所に従って︑家畜が泊まる所に ︵オトルに出た牧人も1吉田︶泊りつつ行くことをいう﹂︵4−二=ハ頁︑. 注3︶︒家畜に調子をあわせて頻繁に牧地を変えっっ移動する︑最も. メス家畜やオス家畜を連れて行くオトルである︒﹁天災のときに︑近. かりの子がいるメス家畜を除いて︑遠方に行く力のある孕んでいない. オルトーロフ.オトルとは﹁.コピの地で家畜の牧地と水が遠すぎる. くの水︑牧地の所にセルゲフするよりも︑アルスィソ・オトル移動を. オトルらしいオト ル と い え よ う ︒. という条件のもとで︑牧人の半分は牧地に︑一方若干のものは家畜に. 非常によく準備して組織することが重要である﹂とのぺているものも. あるとみられる︒. ⁝二七. と︑ωの天災をのりきることの二つが最も大きなオトル移動の理由で. ω︑⑤︑ω︑などがあげられると思うが︑中でも②の良草を求めるこ. オトルと移動理由との対応関係については︑前章で記したω︑ω︑. ある︵91二六頁︶︒. 水を飲ませるぺき土地に居付いて︑家畜をオルトーロフするような方 法でオトルする﹂ことをいう︵4−二一六頁︑注3︶︒これは︑よい牧地. のある所には水がなく︑水のある所にはよい牧地がなく︑牧地と水が 遠く離れていることが生じうる.コピにおいて︑牧人の半分は牧地にと. どまり︑若干の牧人は水のある所にとどまり︑牧地側の牧人は家畜を. 牧養し︑水を飲ませるべきときに家畜を水のある所にむかって途中ま モソゴルの遊牧における移動の理歯と稲類について.
(12) りゾーボル・ヌーデル・ヒーフ8雷召昌くくト彗x畠葦︵Nασo耐需雪ユ暮・. 三三八. ことが︑意味内容の点で︑オトルする作業方法と同じでない﹂そして. を特別に組織することがない︑という特徴を有する﹂︵61五六頁︶っ. ﹁オトルするときのように︑家畜群をその内部で群れに分けず︑人手. ヅーポルとは﹁運搬﹂という意味であり︑ゾーポル・ヌーデル・ヒ. まりゾーポル・ヌーデルはオトルに似ているようだげれども︑オトル. oo星〇一斤岸目︶または単にゾーポル・ヌーデル︒. ーフは﹁近くに運ぶ移動を行なう﹂という意味をもつ︒−﹂の移動につ. れて行くものと速れて行かないものなどにグループ編成することなく︑. より近い牧地に移動する点でオトルとは異たり︑またそのさいに家畜. ﹁牧人たちは︑移動労働を節減し︑ゾーボルを行なう作業方法を用. 全家畜を連れて行き︑人問もそのために特別に選出することをしない. いては︑バトナサソが説明しているところに基づきつつ︑私見を加え. いているのであり︑ゲルの敷地︑家畜の休息所を変え︑近くの牧地に. で︑全部が移動して行くというのである︒このようにみてくると︑ゾ. を種類別や孕んでいるメスとそうでないもの︑それに同じ種類でも連. 接近して行くなどにおいて︑臨時的な住居を所持したゾーポルをいつ. ーポル・ヌーデルとは︑ノタク・ソリフとオトルの中間的形態の移動. てその内容をのべてみる︒. も行うようになったのである﹂︵61五二頁︶この文章の表現の仕方や. であるといえるかもしれたい︒. 態が悪くなったことなどを理由としてごく近くの牧地に移動するため. るという点に犬きな意味があるのである︒つぎにこれは︑牧草の状. ゾーボル・ヌーデルとはノタク・セルゲフの労働を節減する方法であ. 業を節減する方法﹂だと記Lているところからみると︵61五六頁︶︑. いられる︒バトナサソは他の場所でもこれを﹁ノタク・セルゲーの作. 式の一つである︒それはともかく︑これは移動労働の節減のために用. いる軽便た住居なども運ぶことがゾーポル・ヌーデルの条件にほぼ一. 近くに移し︑そのさい自己の牧養している家畜全部を伴い︑携帯して. ある︒オトルに出た牧人が︑オトルに出た先で︑牧地を少しずつ近く. を行なう﹂︵o旨肩呈蔓;o芸98雷⑦勺ミ喜彗彗言彗︶という表現が. ソゴル人の説明によると﹁オトルに行ったのち︑ゾーポル・ヌーデル. されるとともに︑オトルのさいにも併用されることがあるという︒モ. ゾーポル・ヌーデルは︑ノタク・ソリフを行ないつつ︑それに併用. ヘプテル. 他の記述によると︑ゾーポル・ヌーデルは︑近年盛んになった移動様. に︑ゲルの敷地と家畜の休息所つまりキャソプ地を変える︒この点は. 致するのであろう︒. 種類と牧草の構戒の不対応たどであろう︒そLてまたωの水不足︑⑤. 由のωの牧草の不足・悪化︑②のよい牧草を求めること︑③の家畜の. ゾーポル・ヌーデルの理由の大きなものは︑前章で整理した移動理. ノタリ・ソリフと似ている︒げれどもこれは本格的なノタク・ソリフ. ではたくて︑臨時的な住居つまり小型ゲルやテソトを携行するのであ る︒このため一見︑オトルのようにも思われる︒だが︑. ﹁ゾーポル・ヌーデルとは︑近くの牧地におげる牧畜であるという.
(13) のホジル不足なども関連すると考えているが︑詳しくは今後の検討課 魎である︒ゾーポル・ヌーデルについて記した文献は少なく︑不明の 点が多いのが残念である︒ ωポーリ・ソリフαkk勺庁8曽衰︵茅Ω昌−8−旦■︶. あるとおりである︵91五七頁︶︒. ポーリとは︑物を置き組み立てる場所︑用地︑跡地︑ゲルを建てる 敷地といった意味をもつ︒. ポーリ・ソリフの移動理由は︑前章でのぺた移動理由の⑨の﹁キャ. 土地に下営することをいう﹂とあるように︵91五七頁︶︑今までのぺ. ないのに︑家畜の休み場が泥簿にまみれたとき︑その付近のきれいな. ﹁ポーリ・ソリフというのは︑その周囲の牧地を完全に食い終ってい. ﹁それほど変わったことではない︒経験豊かな牧民の話によると︑一. ルが移動して行き︑問もなく別のアイルが移って来ることを﹂いい︑. これは内蒙古のモソゴル人から教えられたものであり﹁一つのアイ. ㈱シャグラジ・ヌーフ目胃畠美二く貢伽晶−昌目冨琶奮︶. ソプ地が家畜の排泄した糞尿によってきたなくなること﹂に当たる︒. た移動というのが牧地の条件︑状態の悪化の結果またはよい牧地を求. つの居住地に長く住むと︑家畜がその牧地に飽きることがあるという︒. これは今まで記してきた移動とは︑質的に異なる移動様式である︒. めて︑牧地を新しく良好たものに変えるために移動するものであった のにたいして︑これはキャソプ地の条件︑状態だげを理由として行な. 分が次第に広がり︑種々の害悪が生じる−﹂とがある︒二つの居住地. プ地は家畜の休息所を中心にして︑次第にぬかるみ︑そのぬかるみの部. し霜も降りる︒そこで︑モン.コルのような乾燥した場所でも︑キャソ. る︒ここに家畜が夜間休む︒当然それらは糞尿をたれ︑また雨も降る. キャンプ地には︑人の住むゲルのほかに︑家畜の休息する場所があ. 本章でこれを扱かうことをためらったが︑このシャグラジ・ヌーフを. 動は︑上述した移動とは極めて異なるものであり︑そこで私としては︑. のアイルが来るということになるのである︒そしてそういう内容の移. てシャグラジ・ヌーフとはまさに︑一アイルが去ったそのあとに︑別. て目を細かに縫うという意味をもつ動詞であり︵211八三〇頁︶︑従っ. シャグラジとは︑シャグラ7目彗曽x︵伽ら亙自︶つまり返し針をし. Aアイルにおげる︽古い︾屠住地は︑Bアイルにとって︽新しい︾居住地 ︵5︶ とたる﹂のである︒. にあまり長くいると︑家畜の休息所は泥まみれになって︑羊と山羊の. ひきおこす理由が面白いという−﹂ともあって︑特にとりあげたので. われる移動なのである︒. 毛が黄色くなり︑またぬかるみに長く休んだ結果として︑山羊の尻が. ある︒. 家畜が同じ場所にいつまでもとどまっていると心理的に落着かなく. ホ︸・ヘプテル. ひび割れて︑やがてオト⑦↓︵α2︶という虫がつき︑羊の蹄はブヨブヨ. になって肢となり︑近くの牧地の草が悪くなって︑キャンプと牧地の. なり︑草の食いも悪くなることは瑛実であり︑このことが牧民のさか. 三三九. 問および牧地と水の間の距離が遠くたり︑家畜の行程が増大する﹂と モソゴルの遊牧における移動の理由と稲類について.
(14) んな移動をひきおこすことは確かであるo. 例えぽ牛の夏の牧養について二つの牧地に長くいさせて憂薩にさ せないために︑牧地を短期問に︑順序を立てて区分して取換える﹂と のぺられ︵91八○頁︶︑また十九世紀の文献にも﹁家畜が子を生むと. き以外は︑多く移動して草を食ぺさせる︒家畜は興味をもって︑太 る﹂とある︵旭−一五一頁︒その現代語訳一一四頁︶これらはハルハーモ. ン.コル人民共和国側の資料である︒家畜の精神衛生を考えての移動と. 三四〇. 独立した理由になり得ると考えて加えたものである︒. ぴ. なお︑この移動は︑草が良好な牧地において生じるであろう︒. 結. 以上︑モソゴルの遊牧におげる移動の理由といくつかの移動の種類. についてのぺ︑その相互の関連についても触れた︒. ている牧地に行かせると︑落着きが悪いので︑毎目の牧地を選定する. 示す他の例を二つあげておく︒﹁ラクダは︑自分の足跡がはっきりし. 牧民が家畜の心理︑精神衛生を常に考えながら遊牧していることを. され︑そうLてモソゴルの遊牧の移動の全体が構成されてきたのであ. の牧畜の必要にこたえるために︑それらが本来もつ特色を牧民に利用. のである︒これらのいくつかの様式の移動は︑こうしたその時その場. よって︑さまざまの理由に基づく移動の必要にこたえることができた. 毛ンゴルの遊牧においては︑−﹂うLた移動の種類が存在することに. さいに︑その自分の足跡のあまりはっきりしていたい場所を選び︑一. るo. いうのは︑モンゴル全体に存在しているのである︒. 度牧養した場所には︑数目後牧養すぺく︑牧地の割当をすることが大. ソリ7が存在し︑さまざまた移動理由に−﹂たえている︒季節的移動の. その構成の骨格はつぎのようであろう︒塞本的移動とLてノタク・. いならぱ︑家畜は気持ちが落着かずにいて︑苦しむ︒よい屠住地でも︑. 全て︑季節内の移動と称すぺきものの多くも︑−﹂の移動の形をとる︒. 切である﹂︵13⊥一⁝頁︶﹁家畜の屠住地が︵家畜に−吉田︶合っていな. 家畜が慣れていないせいで︑生活しにくく落着かないかも﹂れないL. 前章でのべた移動理由の⑩の﹁家畜が牧地に飽き︑食欲が減退するこ. ずシャグラジ・ヌーフのみを導くということではたい−というのは︑. このシャグラジ・ヌーフをひきおこす理由−−﹂の移動の理由が必. の特色をもつゾーポル・ヌーデルが併用され︑これによって牧民の移. る︒ノタク・ソリフとオトル・ヌーデルの双方に︑両老の中間的形態. そLて牧民と家畜それに居住地も一時的に分かれるが︑やがて合一す. にこたえて︑滞在している居住地からオトル・ヌーデルが行なわれる︒. 一方季節的な牧畜の目的のためや天災の場合に︑移動理由のいくつか. とを避け︑逆にその食欲を増進させること﹂であるが︑これは既述の. 動作業は節減され︑移動が容易に行なわれる︒これらに加えて︑牧地. ︵131六一頁︶︒. ように︑私がこのシャグラジ・ヌーフにたいする考察の結果︑移動の.
(15) の間魎と無関係たキャソプ地の汚れに対処するためにキャソブ地だげ を移すポーリ・ソリフが行なわれ︑−﹂うして移動のあらゆる必要がほ. ︺内の算用数字﹁7﹂は﹁参考文献﹂にあげた文猷の番号︒漢数字二六九. ぽ満足させられるのである︒. 註. ︹. 〜一八一頁﹂はその文献の頁数︒以下同じ︒. ︵1︶. ︵3︶ パトナサソは︑−﹂の資料に基づいてかつて冬期にオトルを行なっていたとのぺて. ︵2︶ 彼藤寓勇氏はオトルを﹁見張りの仮住屠﹂と訳している︹11四四頁︺o. >.ioζ罧チ訂冒目↓自Ho■︒フムール■く;くく﹄︵パα冒邑︸︶. いる︹61二五頁︺が︑この資料一つだけでは何ともいえないであろうoLかLこの. ターナ■凹o=o ︵ 一 回 O 回 目 o ︶. 聞鰯は今後の検討課趣であるo ︵4︶. 皿>︑︼目o目匝o旨o自目1内胴−・マソギル雪口=﹃=勺︵目邑目胴胴庁︶8>.明冊目而8冊目阯﹇・︹以−. 内蒙古大学のチ旦イジ^ソジャブ︵繭精礼布︶氏の私宛八月二日付鴇簡からの引. 一〜一一七頁︺︒ニラ︑ネギ系統の植物である︒. ︵5︶. 匡︑ω一国藺﹃. =くく■︸ ﹃ω美 ■o由トω﹃ oo﹃ooト. 他匡U. 宙﹃. oo曽==. =﹃. =kH與﹃=﹃. ;凹当. H雷饅;. ;=︸. ︹︸︸団o﹄. ^一︸︸. ︸ト画凹=. 団音ト與凹昌. =︸H凹﹃H. ..>3. =ω﹃. O宝饒﹃ω=ω■. xω﹄ω一ω岨o−. ωO召 U ω ︸ 舳 員 凹 ■ 饅 目 ト O 白. ト匡二. ︷=−団﹃占画︸需. 用による︒原文は以下のとおりである︒﹁=肖田彗=くく美曽竃ト︸ト彗﹃く頸o︷団昏 =くく美. 一〇=ト■=α呂﹄. xωoω﹃o=F目.×団−自=o≡凹占. ..藺..oo﹄ト竃^目呂=撃=kH胃◎2−美◎口舳=凹目くく.﹂. 後震寓勇﹃内陸アジア遊牧民杜会の研究﹄︑吉川弘文館︑一九六八o. 参考文献. 頁︒. 吉田順一﹁北方避牧社会の基礎的研究. ﹂︑﹃中国. ξ葦=く着筆ρ老≡﹄⁝曽勺蔓害ミ芸皇らε山訂 モソゴルの避牧における移動の理由と禰類について. 靹昌富畠・一﹃.一ま量彗. 前近代史研究﹄︑雄山閣︑一九八○︑=三五〜=五九頁︒. モソゴルのステ︐ブと家畜. 吉田順一﹁モソゴルの遊牧の根底﹂︑﹃モソゴル研究﹄一一︑一九八O︑三九〜四九. 21. 5 −①①−. く﹄凹O=α団団一団勺.. −Oべω−. ︑−︺.㎝ω1藺︷.. −老.8ol−伽N.. 団胃雷8ξ﹃一一=く着嘗︷︸写目⁝=↓凄註富呈董一一目≡き雲葦凹畠. 向手目o雫岩ま冨↓o昌島−く1句鶉〇一9<■oo=α竃H0Pお吋. ﹀;﹃トO凹﹄.. 回u宍=﹄﹄画﹃団o︐ω一冒匹−o向一︸目o的H画︑チ⁝o画i一﹁o冒一■岨. くHl︷回岨o.−︑. ︑﹄団団=α団凹H凹o1−o↓oo■. 6望皇害畠一﹁.一団工峯>くト婁﹃轟﹃葛皇妄彗婁異意﹃団o誉昌實岩﹁與. 7団彗・O⁝P白一︵き寝着自o﹃胃隻扁息胃毛︶一靹=童>く・匡=8長団⁝qき葛o. 団美画一︸藺=Hくく■=齪=u凹o匡雪団︹︸︸ト凹由.<自国匝=α画団H画i.−oべ⑦.. 8﹁o;oP員−一誉臭↓o里8=昌一彗墨昌曽畠Pお富.. 9与昌一き−︵暑o妻島潟暮彗名︶一峯o胃畠毛⁝o⁝轟岩葦;彗室彗畠﹃竃一匡. 峯宝=↓k◎.. 団⁝1占. ■︸団団由o﹃↓凹螂田目−宝﹃﹄固一與︑﹃〇一. =bーく当o口=α凹団H凹i− −ω⑦①.. ωω︑舌藺﹃. 団凹與↓団o重画当. 工... FH.1. ﹂目一〇﹃田美與国︐. 春固団呂◎回回H凹i一. 目⁝き一買薫與窒>亭お彗二↓メき畠舌富畠PおN9勺︑二〇〇−ミ一. −り㍉⑩.. ︸宍凹﹃宙団七凹■1=.︐団〒=≦>く■ト雪o﹄団美団x︸饒螂o−自⁝1■o呂q何重=団=↓︸■団齪與o︸︸トo﹄ト︐. ︸宍団﹃回與i団﹄.=.−﹀︑岨H∩↓目o呂団i凹↓o−︷oo■o晒邑舳o↓田o︐<﹄画=.o画↓o︐1−oべ^一. 岩冨↓毫E畠員き画彗9回畠Pお留1 m⁝. u. 旭. E−二. 一﹁o田凹=. 一くく=雷鋏. き凹與=α匝画↓画o1 −o①oo−. −.1. 巨凹−. ︸宍.1﹄≦彗. ト匡=. ︹︸勺﹃o画吉−. き曲自. ◎=. 画H回匹. ︸自. α的庁目. <自画凹=α田與H凹︑.. H︷山goユo画 ﹈﹁o昌目岨. ;﹃一. くo■自目−而■一向. o凹宝凹冨美. −ω㎝①.. ︸団o崇−■o冒昌oo自 一自oo︸. ト団貞o宍ωo団占o﹄﹃ooーく﹄団凹=αo凹H凹o.. −o︷蜆.. 国−自 回^■川 山而旧冊H耐 庁而■. 凹凹1.﹃.︵両︑o=一宝舳刊oト団宍H0勺︶ー. ω凹目一庁自自−. O凹;α︸︸. 墨目印Ω三Ω凹呂HΩoFc−団Ω胆目げ胆o箒. 〃. −彗o〇一. ︑団﹃. <1司回山o■心.. =画月匝﹃トo勺美.. ︵×−×四︸︸=匡o月ωo糞凹︸︸=匡⑭■ω=︶︐<由與凹=α凹匝H與o︐−㊤N00.. 14寿畠舌彗肇P貝−一事o胃9匡■姜要旨曽昌畠畠葦⁝団≡彗ε目≡宵﹃豊. 正. 脆. ㎎. 而田宍=一〇〇団︑何呈o==與■−≦o=﹃o﹄=■︐−oωωき. −︐く﹄o=︑α與H001oo.. 190豊o善美二書皇⁝︷崔一;葦ξ彗婁事竃回ω畠昌豊9き畠=o竃畠? F一ωαω﹄︸1−.・宍o. おご.. 二〇錺美=﹄美凹回.x・−ω︸ト匡=H︸籏o団ω口︑宝呂. ﹇月凹匝ω白−肖..−≦o昌﹃o自一ω自==齪H0目. Mべ−ω−一. 州⁝. 刎. ookkト団■. oo. 冨與自. ト匡=. Hk︑目一自o﹃與団o1. 一.口饒曽α団o↓o﹄︸1<﹄凹四=α凹口↓o−︺−−o⑦①.. η. 三四一.
(16) く自凹凹=α與凹H団〇一一ω①oo. 目着庁蓋実9声e二美冒昌一畠£q呂冨o胃o亭臭婁=岩o⁝g需昌苔皇彗・. δ=彗員>.>:寒;工暮七夢漬異峯O彗畠吉トき量=曽誉豊9⁝ω岩. きー﹄一 −o︸︷.. 23. 団く﹁ト. 昌==美くくト. >.一. ≦員8=. >■ ︵Oo=o目宝匡o. ユO饒OO重ト饅X 而0H匡. きO=﹃O自. 目o弄︑o口凹. ︸i﹃由;﹄凹=. ℃凹罧宝H0自﹃=o﹃o. ﹀勺ト. 事o=﹃o自﹃︹需o饒=凹℃oト宝oo︐oo目︸o自=宍=︶.<﹄凹凹=o與凹↓oo︐−o①oo.. 宍U=団HO団1. 峯O彗O葦臭9=岩O誉9零n冒苔皇彗︶一春塞昌竃畠?−睾N・. =o雪︑o﹃匡錺=. く自O匡=. 葛一3蓋U蔓芸着畠喜ミ貞︵寄婁富毒雇幕彗竃目団ρ9⁝=︹空臭o︹昌. 幽. 25. 三四一一.
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