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小牧 智 学 位 の 種 類

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Academic year: 2021

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全文

(1)

氏 名 こまき とも

小牧 智

学 位 の 種 類

博士(医学)

報 告 番 号

甲第 1684 号

学位授与の日付

平成 29 年 9 月 13 日

学位授与の要件

学位規則第 4 条第 1 項該当(課程博士)

学 位 論 文 題 目

The Change in Body Weight During Hospitalization Predicts Mortality in Patients With Acute Decompensated Heart Failure.

(急性非代償性心不全患者における入院中の体重変化は予後を 予測する)

論 文 審 査 委 員 (主 査) 福岡大学 教授

朔 啓二郎

(副 査) 福岡大学 教授

浦田 秀則

福岡大学 教授

有馬 久富

福岡大学 准教授

石井 寛

内 容 の 要 旨

【目的】

心不全患者は基礎疾患に関わらず、急性期に下腿浮腫、胸水貯留等、体液貯留状態が高 度になるため、急性期には利尿剤投与による体液コントロールに重点が置かれる。臨床 現場で急性非代償性心不全患者を治療する際、治療による入院中の体重変化は患者ごと に大きく異なることをしばしば経験する。しかし、現在まで、この体重の変動を病態の マーカーとする研究は行われておらず、臨床的意義は十分明確ではない。そこで、私た ちは、急性非代償性心不全患者における入院中の体重変化のパラメターは、心不全予後 を予測するのかについて検討した。

【対象と方法】

初回急性非代償性心不全を発症し、福岡大学病院に 2001 年から 2013 年の期間で入院した 130 人の患者を登録し、2 年間追跡を行った。2 年時点での心臓死を主要エンドポイントと した。入院中の体重変化は体重変化指数、Δbody weight index(ΔBWI)によって表した。

ΔBWI は(入院時体重-退院時体重/退院時体表面積)で算出した。

【結果】

2 年時点の心臓死は 14 人(全体の 11%)であり 13 人(92%)がポンプ失調によるもので、

1 人(7%)は突然死であった。死亡群は生存群と比較して、より高齢であり、入院時の収

縮期血圧が低く、入院治療期間も長期であった。血液データでは生存群と比較し、死亡群

(2)

では有意に血清 BNP・BUN が高く、低 Na 血症、貧血を有しておりクレアチニンクリアラン スも低値であった。また、ICD 植え込み術の治療歴も生存群と比較し、死亡群で多かった。

患者をΔBWI に従って四分位 (ΔBWI 1.3kg/m

2

未満、ΔBWI 1.3-2.9kg/m

2

、 ΔBWI 3-4.7kg/m

2

、 ΔBWI 4.8kg/m

2

以上)し、それぞれ最も低い群、2 番目に低い群、3 番目に低い群、最も 高い群と定義し、心不全死との関連性を調査した。結果は、ΔBMI が最も低い群(ΔBWI 1.3kg/m

2

未満) 、ΔBMI が 2 番目に低い群(ΔBWI 1.3-2.9kg/m

2

)、ΔBMI が 3 番目に低い群

(ΔBWI 3-4.7kg/m

2

)、ΔBMI が最も高い群(ΔBWI4.8kg/m

2

以上)における 2 年時点の心 臓死はそれぞれ 18.8%、12.1%、3.1%、9.1%であった。カプランマイヤー生存曲線では、未 調整比較において、ΔBMI が 3 番目に低い群(ΔBWI 3-4.7kg/m

2

)は心不全予後は良好で あり、ΔBMI が最も低い群(ΔBWI 1.3kg/m

2

未満)で予後不良であり、ログ・ランク検定 においてこれら2群間には統計学的有意差を認めた(P=0.045) 。2 年後の心臓死に独立し た関連性を示す変数を特定するために、コックス比例ハザード解析を行ったところ、DM の 併存、長期の入院期間、クレアチニンクリアランスが低いこと、β 遮断薬が未内服である こと、高血圧性心臓病、BNP が高いこと、入院時収縮期血圧が低いことに加え、ΔBWI が 低いことも統計学的有意差をもって心臓死と関連していた。また、2 年後の心臓死に関し て、ΔBWI が最も低い群(ΔBWI 1.3kg/m

2

未満)は、ΔBWI が最も高い群(ΔBWI4.8kg/m

2

以上)と比較して、相対危険度は 7.46 倍であった(95%信頼区間 1.03-53.99、P=0.04) 。

【結論】

初回急性非代償性心不全患者における入院中の体重変化指数(ΔBWI)は、退院後 2 年で の心臓死の独立した関連因子であった。入院中の体重変化が小さい患者群では、それが 大きい患者群と比較して、退院後の心臓死リスクが高い。よって、体重変化が小さい患 者に対しては、心不全治療薬の追加・心臓リハビリテーション・デバイス治療(心臓再 同期療法等)を追加し、治療強化を検討する必要がある。入院中の体重変化は心腎連関 を反映しており、個々の患者に対して適応することができる。また、本指数計算は簡便 であり、低コスト、どの医療機関でも測定しやすいため、使用可能なマーカーとなりう る。

審査の結果の要旨

本論文は、初回急性心不全患者における入院中の体重変化について、これまで十分な研究

が行われておらず、臨床的意義が不明であったことに注目し、入院中の体重変化をマーカ

ー(指数)としてとらえ、2 年後の心臓死との関連性を調査したものである。多変量解析

の結果、入院中の体重変化が少ないことは、2 年後の心臓死と統計学的有意差をもって独

立した関連因子であった。このことより、入院中の体重変化が小さい患者では、大きい患

(3)

者と比較して、退院後の心臓死リスクが高い。よって、体重変化が小さい患者に対しては、

心不全治療薬の追加・心臓リハビリテーション・心臓再同期療法等のデバイス治療を追加 し、治療強化を検討する必要性が示唆された。

1. 斬新さ

公式「 (入院時体重-退院時体重)/退時体表面積」で算出する体重変化指数 Δbody weight index(ΔBWI)を独自(オリジナル)で作成し、2 年後の心臓死との関連性を検討した結果、

ΔBWI が大きい患者では、2 年後の心臓死リスクが低く、ΔBWI が小さい患者ではリスクが 高いという臨床的意義を明確にした。

2. 重要性

ΔBWI が小さい患者では 2 年後の心臓死リスクが高いため、心不全治療薬の追加・心臓リ ハビリテーション・心臓再同期療法等のデバイス治療を追加し、治療強化を検討する必要 がある。一般に心不全による入院は数回にわたるため、ΔBWI 値により、心不全患者各々 の生存期間を予測することで、緩和治療の導入時期の決定、治療目標を決定することによ る医師・患者・患者の家族間においてオープン、かつ、良好なコミュニケーションを築く ことが可能となる。

3. 研究方法の正確性

統計は、一般的に認められた分析・解析法を用いた。研究方法、デザインは、福岡大学臨 床研究審査委員会(#16-1-21)で承認されている。また、本論文はすでに Journal of Clinical Medicine Research に掲載されている。

4. 表現の明確さ

目的、方法、結果は、正確かつ詳細に表現されている。結果に基づいた考察については、

過去の心臓死の予後に関する論文を十分に検討した上で、本研究で使用した入院中の体重 変化、ΔBWI の利点(ΔBWI は心腎連関を反映しており、個々の患者に対して適応するこ とができる。また、低コスト、測定しやすいため、すべての施設で使用可能なマーカーで あること)を明確に示している。

5. 主な質疑応答

Q1: ΔBWI を 4 分位した 4 群間の比較において、体重変化が少ない群(予後不良群、心臓 死因の多くはポンプ失調)で左室駆出率(LVEF)が高値を示したのはなぜか?

A1: 過去の論文では、LVEF が低い患者では心臓死が多いと報告されているため、それら

の結果とは矛盾する。体重変化が少ない群では、HFpEF 患者が多く含まれていた可能性が

ある。近年では HFrEF と同等に HFpEF も予後不良であることも報告されており、本論文

の体重変化が少ない群もその理由で予後不良であった可能性が説明された。また、後ろ

(4)

向き研究としては、登録された被験者数が少なかったため(被験者 130 人,2 年後の心臓 死数 14 人)、サンプルサイズの問題で十分な結果がでなかった可能性も考えられた。た だし、生存・死亡群の 2 群比較においては、死亡群で LVEF が低い傾向にあったため、過 去の論文の結果(LVEF が低い患者では心臓死が多い)と大きく異なっているわけではな いことが説明された。

Q2:ΔBWI を 4 分位した 4 群間の比較において、体重変化が大きい群(予後良好群)では BNP が高く、かつ入院期間も長かったが、それはなぜか?

A2: 体重変化が大きい群では BNP が高く、かつ入院期間も長かったことより重症の心不 全であった可能性がある。よって、濃厚な治療を行った患者群(体重変化が大きい群)

の方が予後がよいということが推測できる。過去の論文では、BNP が高い患者や入院期間 が長い患者では予後不良と報告されているため、それらの結果とは矛盾する。本研究 は、後ろ向き研究としては、登録された被験者数が少なかったため、サンプルサイズの 問題で十分な結果がでなかった可能性もある。ただし、生存・死亡群の 2 群比較におい ては、死亡群で BNP は高く、入院期間も長かったため、過去の論文の結果(BNP が高い患 者や入院期間が長い患者では予後不良)と大きく異なっているわけではないことが追加 された。

Q3:体重変化の少ない群は体重変化の大きい群と比較し、入院した際より体重が少ない傾 向にあった。体重変化の少ない群では、入院前より外来で心不全に対する介入が行われ ており、浮腫が改善して入院加療を行った患者群ではなかったのか?

A3:入院時の内服薬には 4 群間で有意差を認めていない。また、外来での心不全加療に反 応する患者が予後不良という矛盾する結果になるため、そのような可能性は低い。体重 変化の少ない群は体重変化の大きい群と比較し、男性が多い傾向にあったため、入院し た際の体重が体格により重かった可能性が考えられる。性別による差異を評価する必要 があるため、男女別に分け、詳細解析する必要がある。

Q4:心臓リハビリテーションが心不全患者の生存率を改善することは周知されているが、

心臓リハビリテーションの有無に関しては評価しているのか?

A4:本研究は 2001 年から 2013 年の期間で被験者の登録を行っているが、当院での外来心 臓リハビリテーションが開始となったのは、2011 年頃からであり、多くの被験者は外来 リハビリテーションの開始前であったため本論文では検討していない。今後、引き続き 研究を継続する上で、心臓リハビリテーションで得られる最大酸素摂取量やその他のフ ァクターなどのデータも採取していく必要がある。

Q5:死亡群で ICD 植え込み歴を有する患者が多く、データからは ICD を植え込むと予後が

悪いともとれるがどのように解釈するか?

(5)

A5:ICD による突然死予防効果は周知されているため、ICD 植え込み術を行って心臓死が 増えるということは、ICD 植え込み時の合併症で死亡しない限り通常はないと考える。

ICD 植え込み患者では、低心機能患者が多く、ポンプ失調で死亡するリスクも高い。よっ て、ICD 植え込み群で死亡率が高かったと考える。

その他の質問に関しても申請者は適切に答えた。本論文は体重変化指数(ΔBWI)で算出

した入院中の体重変化が、心臓死の予後予測因子の新しいマーカーである可能性を示した

研究であり、学位論文に値すると評価された。

参照

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