様式8の1の1 別紙1
論文の内容の要旨
専攻名 システム創成工学専攻 氏 名 浅野功輔
光学技術の応用分野は、光情報処理、ディスプレイ、照明、レーザー加工・プロセス、バイオ センシングなどと多岐に渡っており 、空間並列性、超高速性などの光の物理的特性と屈折、回折、
干渉などの光の物理現象が駆使されている。古くはレンズやミラーなどの屈折、反射素子に始ま り、回折光学や微小光学を利用した素子も既に多くの分野で利用されている 。例えば、光信号を 低損失で伝送可能な光ファイバーによる高速通信や 、媒体に書き込まれた情報を光で読み出す DV D、Blu-rayなど日常生活でも広く見られる。表面プラズモン共鳴を利用したバイオセンサーも実 用化に至っている。フォトニック結晶やより短い周期のサブ波長構造素子は基礎研究から実用化 に向けた研究に変わりつつある。メタマテリアルに関しては新領域の技術であり 、具体的な応用 に関してはこれから盛んになると期待される。
一方、今日の情報化社会を支える LSIの高集積化は、半導体微細加工プロセスによって実現さ れてきた。Intelの創設者の一人であるG。 Mooreが1965年にLSIの集積度は、1年半で2倍になる という予測を提唱した。この予測は Mooreの法則と呼ばれるようになり 、この法則に従って 、半 導体微細加工プロセスは発展し続け 、現在では最小加工寸法は、20 nmにまで微細になっている 。 半導体微細加工プロセスの進歩に伴って、微細周期構造を有する光学素子の実現に向けた微細加 工技術に関する研究が盛んになった 。回折格子、構造性複屈折波長板、ワイヤーグリッド偏光子、
無反射構造などがある。設計・解析技術としては、計算機の進歩に伴って、1990年代中頃より電 磁場問題として厳密に透過率、反射率を算出することが容易になり、現在では厳密結合波解析理 論(Rigorous Coupled Wave Analysis: RCWA)を使って解析する例が多くなっている。
著者らの研究グループでは、光源にKrFエキシマレーザー(波長248 nm)を搭載した縮小投影型 半導体露光装置を用いた微細周期構造を有する光学素子の微細加工プロセスを開発している 。こ れまでに、近赤外波長レーザー向けの光学素子として 、周期がミクロンオーダーの回折格子、サ ブミクロンオーダーの構造性複屈折位相板、ワイヤーグリッド偏光子などの 微細周期構造光学素 子を開発し、光学調整の簡素化や装置の小型化に成功している 。一方、紫外波長光源や超短パル スといった光の極限技術を駆使した精密加工装置の開発において 、微細周期構造光学素子の導入 による高精度化、高性能化が期待できる。これらの素子を実現には、格子周期の微細化、素子面 積の大型化が重要な課題である。
本研究では 、微細周期構造光学素子における半導体露光装置による微細加工技術の適用範囲を 拡張することを目的とする。このためには、装置の制約を超えた微細周期構造光学素子加工技
術を実現する必要がある 。本論文では、格子周期の微細化、および、素子面積の大面積化のた めの微細加工技術を提案する 。さらには、半導体加工技術だけでなくマイクロマシニング技術 を光学素子加工へ適用することを検討する 。加工プロセス開発だけではなく 、新規あるいは付 加価値の高い光学素子の実現を併せて検討する 。
以下に本論文の構成と内容を示す。
第1章では、微細周期構造素子に関する概要について述べ 、具体的な装置搭載例について述べ た。光学素子加工に適用する半導体微細加工技術について 、露光技術を主に概説した。
第2章では、微細周期構造光学素子の加工微細化の手段としてダブルパターニング技術の適用 を提案した。試作対象とした微細周期構造光学素子は、深紫外波長で機能するワイヤーグリッド 偏光子であり、格子設計から光学性能の評価までを実施した。
第3章では、微細周期構造光学素子に付加価値を与える手段として 、マイクロマシニング技術 である常温接合の適用を提案した。 試作対象とした微細周期構造光学素子は 、高出力の紫外光源 に対して耐性の強いワイヤーグリッド偏光子であり 、素子試作からその有効性を理論的実験的に 検証した。
第4章では、微細周期構造光学素子の大面積化の手段と してステッチング露光の適用を提案し た。試作対象とした微細周期構造光学素子は 、フェムト秒レーザーの高出力化に有効なチャープ パルス増幅器のパルス圧縮器に搭載される透過型石英回折格子であり 、格子設計から実験的な光 学性能の評価までを実施した。