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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

     博 士 ( 工 学 ) 本 問 学 位 論 文 題 名

フォトリフラクテイブ結晶における 回折格子の制御と光スイッチへの応用

学位論文内容の要旨

  最近,フォトリフラクティブ効果についての研究が贐んに行われている,フォトリフラク ティブ効果は,空間的に一様でなぃ光の照射により媒質内部の電荷分布が変化し,これによ り生じた空間電界によって屈折率が変化する現象である.屈折率変調の深さは入射光の強度 に依存せず,光強度分布のコントラストのみに依存するため,BaTi03やKNb03などの一部の フォトリフラクティブ結晶では数W/crr12程度の光でも大きな屈折率変調が得られ,効率の良 い回折格子となりうる.このフォトリフラクティブ結晶中の回折格子の空間分布及ぴ深さを,

入射する光の位相または偏光を変化させることにより制御することができれば,光を光で制 御する,っまり光・光制御のための能動素子として利用することができる.一方フォトリフ ラクティブ媒質中に誘起された回折格子は揮発性であり,一度回折格子が形成された後に新 たな光波が入射された場合,その回折格子が消去されてしまうという問題がある.この問題 を解決する手法として,電界定着,熱定着,2光子書き込みなどの定着技術についての研究 が盛んに行われているが,これらの定着技術を用いた場合,回折格子の書き換えが困難にな ってしまうという新たな問題が発生する,したがって,書き換えが必要な光スイッチなどの デバイスへの応用を考えた場合,定着技術を用いずに回折格子を維持する機能の実現が望ま れる.

  そこで本論文では光による光制御という観点から,フォトリフラクティブ結晶における回 折格子の空間分布や深さを純光学的に制御する方法と,その光スイッチヘの応用について検 討を行った.まず,入射光の位相を変化させることによルフォトリフラクティブ結晶中の回 折格子の空間分布を制御する方法について詳細に検討を行った.この方法を実現するために,

直交する偏光を用いた2組の2波混合を互いの回折格子を共有するように多重化させた光学 系を新たに提案し,回折格子の形成に大きく寄与する2光波の位相差を変化させることによ り,もう一方の2光波問のエネルギー移動を任意に制御できることを明らかにした.次に,

入射光の偏光を回転させることにより回折格子の深さを制御する方法について詳細に検討を 行った.特に強い偏光依存性を示す相互励起型位相共役鏡に着目し,入射光の偏光を回転さ せることにより相互励起型位相共役鏡における位相共役光発生を制御できることを明らかに した.さらに,共振器構造を用いて,回折光の一部を再度結晶に入射させ,回折格子を維持 する手法を新たに提案した.理論解析及び実験結果より,本手法を適用することにより格段 に回折格子の維持時間が延長されることを明らかにした.最後にこれらの制御方法を用いた,

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lX2の偏向光スイッチ,2X2のBypass‑Exchangeスイッチ及び接続の自己保持可能な光イン ターコネクションを提案した,これらの応用に適した光波の入射強度,結合強度及び共振器 におけるフイードバック率などの諸条件について理論解析による詳細な検討及び実験による 検証を行った.

  以下に本論文の概要を示す.

  第1章では,本論文の背景,目的及び構成について述べた.

  第2章では,フォトリフラクティブ結晶に光が照射された際,屈折率が変化する過程を,

バンド輸送モデルを用いて説明した.

  第3章では,多重2波混合において,入射する光波の位相を変調させることにより,結晶 中の回折格子の空間分布を変化させ,2光波聞のエネルギー移動を制御する方法について検 討を行った.まず偏光が直交した2組の2波混合が1つの回折格子を共有しうる各光波の入 射角度条件を求めた..次に,多重2波混合において,位相変化量に対する各光波の出力強度 を計算した,その結果より,2光波のエネルギー移動をもっとも効率よく制御するための結 合強度及び入射強度条件を明らかにした.また,多重2波混合の実験を行い,光波の位相を 変化させた場合の各光波の出力強度を測定し,理論解析の妥当性を示した.最後に本手法に よる光制御の応用例として,2つの出カポートのうちどちらか一方または任意の強度比で分 岐 し て 出 カ す る こ と が で き る lx2の 偏 向 型 光 ス イ ッ チ を 提 案 し た .   第4章では,入射光の偏光角に対するフォトリフラクティブ結晶の感受率の依存性tと着目 し,偏光を回転させることにより相互励起型位相共役鏡における位相共役光発生を制御する 方法について検討を行った.まず,相互励起型位相共役鏡について,結合強度及び入射光の 強度比に対する位相共役変換効率を解析した.さらに,2つの入射光のうち,どちらか一方 の偏光を回転させた場合について,その偏光回転角に対する位相共役変換効率を解析し,位 相共役光発生の制御に必要な偏光回転角閾値を明らかにした,さらに,本手法を適用した2 X2のBypass‑Exchangeスイッチを提案し,その動作実験を行った,ここで,入射光の偏光を 理論解析で求めた偏光回転角閾値まで回転させることにより,接続を切り替えることができ ることを示した.

  第5章では,ビームスプリッタとフォトリフラクティブ結晶により構成される光共振器を 用いて回折格子を維持する手法と,その手法を適用した接続の自己保持可能な光インターコ ネクションを提案した.共振器内のフイードバック率を決定するビームスプリッタの反射率 に対する出力特性を解析することにより,回折格子の維持に必要な結合強度,ビームスプリ ッタの反射率などの条件を明らかにした.また本手法を適用した3x3の光インターコネクシ ヨンの実験を行い,共振構造を用いない場合と比べ,格段に維持時間が延長されることを明 らかにした.最後に,さらなる光学系の簡易化及び小型化を目的とし,ビームスプリッタの 代わりに結晶端面を用いる光学系を提案し,実験によルビームスプリッタを用いた場合と同 等の効果が得られることを示した.

  第6章では,本研究で得られた成果の総括を行った.

(3)

学位論文審査の要旨 主査    教 授    三島瑛人 副査    教 授    小柴正則 副査    教 授    山本    強 副査    助教授   岡本   淳

学 位 論 文 題 名

フォトリフラクテイブ結晶における 回折格子の制御と光スイッチヘの応用

  近 年,LSIの 高集 積・高性能化に伴い,装置問や装置内の信号配線の 高速化が性能向 上のボトルネックとなっている. この配線ポトルネックを改善する技術として,光によ る配線,光インターコネクション 技術の進歩が期待されている.その構成として,送信 されてきた光信号を一旦電気信号 に戻して処理し,再び光信号に変換し次段に送り出す 中継方法と,光信号を光のまま中 継する方法がある.前者の方法では,光‐電気変換に 伴う伝送遅延や発熱が問題となる ため,光のまま中継する後者の方法が有利である.こ れま でに 電 磁石 によ る機 械的 稼動 部を 利用 した光スイッチや液晶など の変調素子を用 いた光スイッチ,および,導波路 型光スイッチなどが実用化されている.一方で,光非 線形 効果 を 用い た光 によ り制 御可 能な 光ス イッチについても様々な検 討が行われてお り,全光ネットワークの実現が期 待されている,

  現在,光非線形効果のーつであ るフォトリフラクティブ効果に関する研究が盛んに行 われている,フォトリフラクティ ブ効果とは,光の照射により媒質内部の電荷分布が変 化し,これにより生じた空間電界 によって局所的に屈折率が変化する現象である.比較 的低強度の光の照射により高い屈 折率変調が得られるため,低電カで動作する光制御に よる光デバイスへの応用が期待さ れる.ここで,フォトリフラクティブ媒質を光・光制 御のための能動素子として用いる ためには,結晶中に誘起される回折格子を適切に制御 する手法の確立が重要である.ま た,フォトリフラクティブ媒質中に誘起された回折格 子は揮発性であり,一度回折格子 が形成された後に新たな光波が入射された場合,その 回折格子が消去されてしまうとい う問題についても検討する必要がある.これまでに電 界定着や熱定着などの定着技術に ついての研究が行われているが,これらの定着技術を 用いた場合,回折格子の書き換え が困難になるという新たな問題が発生する.したがっ て,書き換えが必要な光スイッチ などの応用を考えた場合,定着技術を用いずに回折格 子を維持する機能の実現が望まれ ている.

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  その ような状 況下で ,本論文 では,フォトリフラクティブ結晶における回折格子の空 間分 布や渫さ を純光 学的に制 御する方法と,その光スイッチへの応用を提案し,これら の 応用に適 した光 波の入射 強度及び 結合強 度などの 諸条件 について 理論解 析及び実 験 による詳細な検討を行った結果をまとめている.

  以下に本論文の概要を示す.

  第1章では研究の背景,目的及び構成について述べている.

  第2章では ,フエ トリフラ クティ ブ結晶に 光が照射 された 際,屈折率が変化する過程 を,バンド輸送モデルを用いて説明している.

  第3章 で は, 直 交 する 偏 光 を用い た2組 の2波 混合を 互いの回 折格子を 共有す るよう に多 重化させ た光学 系を新た に提案 し,回折 格子の形 成に大 きく寄与する2光波の位相 差を 変化させ ること により, もう一 方の2光波間の エネル ギー移動を制御する方法につ いて 詳細に検 討を行 っている ,ここでは,最も効率よく制御するための結合強度及び入 射強 度条件を 求め, また実験 により 理論解析 の妥当性 を示し ている.最後に,2つの出 カ ポ ート の う ちど ち ら か一 方 または 任意の強 度比で分 岐して 出カするix2の 偏向型光 スイッチを提案している.

  第4章では ,入射 光の偏光 を回転 させるこ とにより 回折格 子の深さを制御する方法に ついて詳細に検討を行っている,特に強い偏光依存性を示す相互励起型位相共役鏡|こ´着 目し ,入射光 の偏光 を回転さ せることにより位相共役光発生を制御できることを明らか に し てい る . 更に 本 手 法を 適 用 した2x2のBypass‑Exchangeスイッ チを提案 し,その 動作実験を行っている.

  第5章では ,ビー ムスプリ ッタや 結晶端面 を利用し た共振 器構造を用いて,回折光の 一部 を再度結 晶に入 射させ, 回折格子を維持する手法を新たに提案している.まず共振 器 内のフイ ードバ ック率を 決定する ビーム スプリッ タの反 射率に対 する出 力特性を 解 析し ,回折格 子の維 持に必要 な結合強度,ビームスプリッタの反射率などの条件を明ら か に して い る .更 に 光 イン タ ーコネ クション への応用 を提案 し,3X3のイン ターコネ クシ ョンの実 験を行 っている .その結果より,共振構造を用いない場合と比ベ,格段に 接続の維持時間が延長されることを明らかにしている.

  第6章では,本研究で得られた成果の総括を行っている.

  これ を要する に,筆 者は,光 による光制御という観点から,フォトリフラクティブ結 晶に おける回 折格子 の空間分 布や深さを純光学的に制御する方法を提案し,その光スイ ッチ への応用 に関す る有益な 知見を得ており,光情報通信工学の分野に貢献するところ 大なるものがある.

  よっ て筆者は ,北海 道大学博 士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める.

参照

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