論文の内容の要旨
氏名:藤 井 亮 太
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:骨肉腫におけるmiRNA-1の抗腫瘍効果の検討
【背景】
骨肉腫は近年の化学療法と手術療法による集学的治療により生存率は60-80%まで改善したが、こ こ約30年間では一定で変わりがない。
近年、がんを含む様々な疾病においてmicroRNA(miRNA)が重要な役割を果たすことが分かっ
てきた。miRNAsは多くのがんにて発がんへの関与が報告されており、骨肉腫においても同様に様々
なmiRNAが関与し、診断や予後因子、さらには新規治療薬として研究されている。
miRNA-1(miR-1)は骨肉腫を含め様々ながんにおいて発現が低下している。腫瘍抑制因子として
作用し、miR-1を過剰発現させることは骨肉腫を含むがん治療における新規治療の発展にとても重要
なものと考える。
【方法】
骨肉腫細胞株(MG63,Saos2,G292)と骨芽細胞株(hFOB)におけるmiR-1の発現量をQuantitative real time PCR(qRT-PCR)で検討した。また、miRNA投与群とnegative control(以下NC)群での 増殖をWST8 assayで測定し、細胞周期および死細胞の割合をフローサイトメトリー法(FACS解析)
にて検討した。遊走能に関してはwound healing assayで検討し、浸潤能はmatrigel invasion assay で検討した。また、関連する遺伝子としてPAX3やSlug、細胞周期停止と細胞接着の関連遺伝子に関 してもReal-time PCR法とwestern blot法で測定し検討した。またvivoにおいてはmiR-1の生体内 における腫瘍抑制効果を検討した。
【目的】
本研究は骨肉腫におけるmiR-1の機能解析、またその標的遺伝子を同定・機能解析し、さらにマウ ス皮下腫瘍モデルにmiR-1を導入し抗腫瘍効果を検討することを目的とした。
【結果】
すべての骨肉腫細胞株で正常骨芽細胞株と比べmiR-1発現が有意に低下しており、骨肉腫細胞株
(MG63)にmiR-1もしくはNC-miRNAを導入したところ、細胞増殖はmiR-1群で有意に抑制され、
G0-G1期での細胞周期停止を誘導した。細胞周期関連遺伝子の解析をし、miR-1導入によりp21発現 は有意に上昇しp53に非依存的な経路でG0-G1期での細胞周期停止を誘導していた。そこで、p21 を制御し、miR-1の標的遺伝子の一つであるPAX3に注目した。miR-1群において、PAX3発現が顕 著に抑制され、さらにPAX3-siRNA(siPAX3)で細胞増殖の有意な抑制を確認し、G0-G1期停止と p21発現の上昇を認めた。マウス皮下腫瘍モデルでもmiR-1群が有意に腫瘍増大を抑制し、組織の Ki67染色により、miR-1群は腫瘍増殖活性を抑制した。
遊走・浸潤能はmiR-1群で有意に抑制した。miR-1の標的遺伝子の一つであり、かつ上皮間葉系転 換(EMT)の制御に関与するSlugに注目した。miR-1群は有意にSlug発現を抑制し、Slug-siRNA
(siSlug)にて遊走・浸潤能の有意な抑制を確認した。miR-1群ではE-cadherinおよびOB-cadherin 発現は上昇し、N-cadherin発現は低下していた。siSlug群ではOB-cadherinのみ発現が上昇し、E- cadherinおよびN-cadherin発現に変化はなかった。そこで骨肉腫の遊走・浸潤能にはOB-cadherin が中心的な役割をすると考え機能解析を行った。OB-cadherin-siRNA(siOBcad)では遊走・浸潤能 ともに促進した。