IRUCAA@TDC : 近赤外線組織酸素モニター下の右腋窩動脈一側送血による脳分離体外循環法
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(2) 1)題名 近赤外線組織酸素モニター下の右腋窩動脈一側送血 による脳分離体外循環法 Unilateral antegrade cerebral perfusion via the right axillary artery with near infrared oxygen monitor 2)施設名・所属 1 ) 東 京 歯 科 大 学 市 川 総 合 病 院 透 析 ・ME セ ン ター 1) HD-ME center, Tokyo Dental College Ichikawa General Hospital 2) 東 京 歯 科 大 学 市 川 総 合 病 院 心臓血管 外 科 3) 著 者 及 び 共 著 者 樋 口 毅 1 )、 菱 沼 浩 孝 1 )、 森 光 晴 2 )、 笠 原 啓 史 2 )、 鈴 木 亮 2 )、 申 範 圭 2 ) Higuchi Takeshi 1 ) , Hishinuma Hirotaka 1 ) , Mori Mitsuharu 2 ) , Kasahara Hirofumi 2 ) , Suzuki Ryo 2) , Shin Hankei 2 ) 4) 連 絡 先 〒 2 7 2-8513 千 葉 県 市 川 市 菅 野 5 -11 -13 東 京 歯 科 大 学 市 川 総 合 病 院 透 析 ・ ME セ ン タ ー 電 話 番 号 : 047 -3 2 2-0151 Fax 番 号 : 0 4 7-325- 4456 電 子 メ ー ル ア ド レ ス : [email protected].
(3) 要旨 胸部大動脈手術におけるシンプルかつ安全な脳分離体外循 環(SCP)を目指し、遠心ポンプでの右腋窩動脈一側 SCP を近赤 外線組織酸素モニター(NIRO)下に行い、良好な初期成績を得 たので報告する。 対象は、2005 年 7 月から 2007 年 11 月に行った大動脈手術 10 例。NIRO 装置を装着、右腋窩動脈送血による人工心肺確立 後、膀胱温 25-27℃まで冷却。弓部 3 分枝をソフトクランプ で遮断し,右腋窩動脈からの一側送血の SCP に移行。遠心ポ ンプの回転数を一定に保ち、送血部の灌流圧監視下に,クラ ンパーにて送血流量を 10∼14 ml /min/kg に調整。NIRO で脳 組織酸素化指標(TOI)が左側で有意に低下する、あるいは左 総頚動脈と左鎖骨下動脈からの充分な逆行性血流を認めない 場合には、送血ライン側枝を用いて両側脳分離体外循環に移 行した。 3 例で両側 SCP に移行した。早期および遠隔死亡なく、術 後脳合併症も認めなかった。 脳虚血が疑われたときに速やかに両側送血に移行可能な本 法は、体循環から SCP への移行がスムーズで安全な脳分離体 外循環法と考えられる。 Key words 脳分離体外循環、遠心ポンプ、クランパー Selective cerebral perfusion , Centrifugal pump , Clamper.
(4) I.. 緒言 可及的シンプルかつ安全な脳分離体外循環を目指し、メイ ンポンプである遠心ポンプのみを用いた右腋窩動脈一側送血 による脳分離体外循環を近赤外線組織酸素モニター装置によ る脳酸素モニター下に行い、良好な初期成績を得たので報告 する。 II. 対象 2005 年 7 月から 2007 年 11 月に右腋窩動脈一側送血による 脳分離体外循環を行った大動脈手術 10 例を対象とした。年齢 は 46- 74 (63±7)歳、男性 4 例、女性 6 例、緊急手術は 7 例 であった。疾患は急性大動脈解離 A 型 6 例、慢性大動脈解離 A 型 2 例、上行大動脈瘤+大動脈弁閉鎖不全症 1 例、弓部大 動脈瘤 1 例、術式は上行置換術 7 例、上行弓部置換術 2 例、 弓部置換術 1 例であった。 III. 方法 近赤外線組織酸素モニター装置(NIRO200:浜松ホトニクス 社)を麻酔導入時より装着する。人工心肺の送血回路は、術野 側にて右腋窩動脈送血用、左側脳分離送血用、大腿動脈送血 用の 3 分枝に分かれ、左側脳分離送血用回路、大腿動脈送血 用回路はクランプしておく。(図1)。右腋窩送血カニューレ は Edwards 製 FEMⅡ014A もしくは 016A 、大腿動脈送血カニ ューレは FEMⅡ016A、018A を使用し遠心ポンプは泉工医科製 HAP-31、人工肺はメドトロニック製アフィニティ NT もしくは.
(5) テルモ製キャピオックス RX-25 を用いた。遠心ポンプを用い た右腋窩動脈送血−陰圧吸引補助脱血での体外循環を、灌流 指数 2.4 l/min/m2 、テルモ製 CDI-500 でのα-stat 管理で開 始する。送血圧が高く右腋窩動脈送血のみで規定灌流量に達 しない場合、大腿動脈送血も開け、術野にてハーフクランプ などを行い、順向性送血優位を保ちながら規定灌流量を維持 する。冷却を開始し、膀胱温 30℃程度で pH-stat 管理に切り 替え、25-27℃に到達した時点で一側送血による脳分離体外循 環の手技に入る。 大脳動脈輪(Willis 脳動脈輪)が正常に形成されている場 合、脳血流は左右で交通するため一側送血での脳分離体外循 環が可能となる(図2)。脳灌流圧は右腋窩動脈送血部よりモ ニタリングを行い、遠心ポンプは回転数を抑えて一定に保ち、 脱血は落差脱血に変える。クランパーを送血回路に挿入し、 圧閉を用いて右腋窩動脈送血の流量を約 10∼14ml/kg/min に 調整する。その後、術野にて腕頭動脈、左総頚動脈、左鎖骨 下動脈をソフトクランプにて遮断し、一側送血による脳分離 体外循環を確立する(図3)。 同時に、NIRO モニターを確認し、脳虚血の指標となる左右 の組織酸素化指標(TOI)を確認する。 速やかに大動脈を切開し、心筋保護にて心停止を得た後に、 左総頚動脈、左鎖骨下動脈のソフトクランプを開け、酸素化 血の十分な逆流を確認する。 左総頚動脈、左鎖骨下動脈からの酸素化血の充分な逆流が あり、TOI に脳分離体外循環開始前後での変化が認められな.
(6) ければ、そのまま一側送血による脳分離体外循環を続けるも のとした。 左総頚動脈と左鎖骨下動脈起始部からの充分な逆行性酸素 化血流が確認できなかった場合、もしくは TOI に左右差が生 じ、左側の TOI が明らかに低下し 55%以下になった場合、大 脳動脈輪の低形成による供給血液量不足からの脳虚血状態と 判断する。この時点で送血ライン側枝を用いて左総頚動脈、 左鎖骨下動脈に対し選択的に泉工医科製 12Fr もしくは 15Fr バルーン付脳灌流カテーテルを挿入、左側脳分離送血用回路 の鉗子を術野側にて解除し、遠心ポンプによる両側送血での 脳分離体外循環に移行する方針とした(図4)1)。 IV. 結果 脳分離体外循環時間は 68±18 分、体外循環時間は 235±35 分、手術死亡、遠隔期死亡、術後脳合併症とも全例で認めな かった。3 例で一側送血による脳分離体外循環開始後に NIRO モニターで左 TOI の低下が認められたため、両側送血に切り 替え、TOI の速やかな改善が確認された(図5)。他の症例で は脳分離循環開始後も TOI の有意な低下を認めず、一側送血 のみで脳分離体外循環を行った(図6)。一側送血続行可能症 例で術脳血管精査を行い、大脳動脈輪の形成は全例良好であ った(図7)。両側送血に移行した症例に脳血管精査を行い、 前交通動脈、右後交通動脈の低形成を認めた(図8)。.
(7) V.. 考察 大脳動脈輪の形成が良好である場合、一側送血での脳分離 体外循環で脳保護は充分に行うことが可能である2、3)。本法 はメインポンプである遠心ポンプのみで脳分離体外循環も行 うため、脳分離用にサブポンプとしてローラーポンプを用い た場合に起こり得るエアーの引き込みなどの事象も考慮しな くて良い。また、回転数を抑えた遠心ポンプにクランパーを 用いて流量を操作するので、カニューレの壁あたりなどが起 こった際に血管を破損するような圧力がかかる危険が少ない。 加えて、脳分離体外循環中の操作がクランパーのみなので、 非常に簡便である。 NIRO は近赤外線を用いた組織の酸素飽和度の測定器として、 簡便にリアルタイムでの評価が可能である。脳分離体外循環 時には脳灌流障害とその左右差の有無を測る指標の一つとし て利用される4、5)。 左総頚動脈、左鎖骨下動脈からの充分な酸素化の逆流が得 られない場合、大脳動脈輪の低形成が疑われるため、一側送 血での脳分離体外循環では充分な脳保護が得られない2)。 一側送血による脳分離体外循環に、NIRO の監視と左総頚動 脈、左鎖骨下動脈の酸素化血逆流の確認をすることにより、 左脳の虚血の有無が非侵襲的に可視化でき、虚血が疑わしい 場合には速やかに両側送血の脳分離体外循環に移行が可能と なる。 当院の方式では体外循環開始時、右腋窩動脈送血と大腿動 脈送血それぞれの流量や、脳分離体外循環時の右腋窩動脈送.
(8) 血と左側脳分離送血それぞれの流量が数値化されていない。 このため現在フローセンサを追加し、灌流量も可視化でき るよう、検討中である。 VI. 結論 一側送血による脳分離体外循環は煩雑な操作が不要で、術 野をシンプルにすることができる。これに NIRO と左総頚動脈、 左鎖骨下動脈の酸素化血逆流の確認を併用することにより、 左脳の血流低下が疑わしい場合は速やかに両側送血の脳分離 体外循環に移行できるため、この方法は安全かつ簡便な脳分 離体外循環法であると考えられる。.
(9) 参考文献 1 ) Hagino I , Anttila V ,Jonas A Richard et al. :Tissue oxygenation index is a useful monitor of histologic and neurologic outcome after cardiopulmonary bypass in piglets. The Journal of Thoracic and Cardiovascular Suegery Volume 130. 2005 :p384 -3 9 2 2 ) Merkola P, Tulla H ,Ronkainen A , et al. :Incomplete circle of Willis and right axillary artery perfusion. Ann Thorac Surg. 2006;82:74 -80 3 ) Karadeniz , et al. :Cerebral flow with bracial artery perfusion. Ann Thorac Surg. 2005;79:139-4 6 4) 深谷隆史、目黒 勉:脳分離体外循環中の左右 別脳酸素飽和度測定について.体外循環技術 Vol.27 No.4 2000:27 -30 5) 船木哲也、長沼謙次、山火秀明ほか:脳局所酸 素飽和度測定は体外循環中の有用な還流の指 標 に な り 得 る か . 体 外 循 環 技 術 Vol.27 No.2 2000:24 -25.
(10) 図表表題 図 1 .体 外 循 環 回 路 図 2 .大 脳 動 脈 輪 概 要 図 図 3 .一側送血による脳分離体外循環法 図 4 .両側送血脳分離体外循環法 図 5 .両側送血移行症例の TOI(左側) 図6.一側送血続行可能症例の代表的 TOI 図7.一側送血継続可能症例の3DCT 画像 図8.両側送血移行症例の3DCT 画像.
(11) 送血圧 モニタリング 右腋窩動脈へ. 左側脳分離 送血用. Vacuum Assist. Flow Sensor. 大腿動脈へ. 遠心ポンプ クランパー. 図 1.体外循環回路.
(12) 9 8 5. 4 6. 3. 1. 7. 2. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9.. 右椎骨動脈 左椎骨動脈 脳底動脈 右後交通動脈 左後交通動脈 右内頸動脈 左内頸動脈 左前大脳動脈 前交通動脈. (Ann Thorac Surg 2006;82:74-80より). 図2.大脳動脈輪概要図.
(13) 送血. 図3.一側送血による脳分離体外循環法.
(14) 低形成位置(例). 送血. 送血. 図 4 .両側送血脳分離体外循環法.
(15) TOI. 一側送血脳分離 体外循環開始 両側送血脳分離 体外循環開始. 図 5 .両側送血移行症例の TOI(左側). 55%.
(16) TOI. Rt. 一側送血脳分離 体外循環開始. Lt.. 図6.一側送血続行可能症例の代表的 TOI.
(17) An 前交通動脈. L. R. 後交通動脈 Pos 図7.一側送血継続可能症例の3DCT 画像.
(18) An 前交通動脈 と 右後交通動脈 は低形成. R. L. 左後交通動脈. Pos 図8.両側送血移行症例の3DCT 画像.
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