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左肺S6に同時発生した腺癌と扁平上皮癌の1例 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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全文

(1)

左肺S6に同時発生した腺癌と扁平上皮癌の1例

市立甲府病院 外科 砥石政幸 宮澤正久 兵庫谷章 小山洋 巾芳昭 加藤邦隆 村松昭 同 内科 小澤克良 赤尾正樹 同 放射線科 南部敦史 同 病理科 宮田和幸

要旨

 症例は88歳男性。検診胸部X線写真上、左肺野に異常陰影を指摘され当院 内科に紹介入院となうた。胸部crにて左ぎに不整形の25mm径の陰影を認め、 B6aからの経気管支肺生検にて腺癌の診断となった。また胸部㏄上B6近位の 気管支血管束が肥厚して見え、別の結節の存在が疑われたが術前確定診断には 至らなかった。左肺腺癌cTI NOMOの診断で手術を施行した。術中所見にてS(s の胸膜陥入を伴う腺癌病変の他に、B6根部に別の病変を認めた。高齢である ことを考慮し、胸腔鏡補助下左S6区域切除+肺門リンパ節サンプリングを施 行した。術後病理組織学的診断にて、後者の病変が扁平上皮癌であることが判 明した。両病変の連続性はみられず明らかに組織型を異にしており、腺癌と扁 平上皮癌の同時多発肺癌の診断となった。同一区域内発生の多発肺癌の報告は 非常に稀と考えられたので報告した。 Key words:肺癌、多発肺癌、腺癌、扁平上皮癌

はじめに

 近年、診断学および治療の進歩により同時性の肺多発癌がしばしば報告され ているが、同時性で同一区域内多発肺癌の報告は非常に稀である。今回我々は 左肺S6に同時発生した腺癌と扁平上皮癌の1手術例を経験したので若干の文献 的考察を加えて報告する。

(2)

症例

 症例:88歳、男性。  主訴:胸部異常陰影。  既往歴:高血圧、高尿酸血症。  喫煙歴:20本/日50年。  家族歴:特記すぺきことなし。  現病歴:平成12年11月に施行された検診胸部X線写真上、左肺野に異常陰 影を指摘され、同年12月、当院内科紹介入院。精査の結果、左肺癌(腺癌 cTI NOMO)の診断にて手術目的で当科紹介となった。  入院時現症:表在リンパ節を触知せず、胸部理学所見上、特記すべき異常を 認めなかった。  入院時検査所見:血算、生化学検査に特記すべき異常はなかつた。腫瘍マ ー…一JーではSCC 1.7 NG/ML(正常値1.5以下)と若干の上昇を認めたが、他CEA、 SLX、 NSE、 CYFRAは全て正常範囲内であった。呼吸機能検査では、肺活量2.77 L、%肺活量98.4%、1秒量1.90L、1秒率66.9%で軽度の閉塞性換気障害を認 めた。  胸部単純X線:左中肺野に辺縁不正な淡い索状の陰影を認めた(図1)。  胸部Cr(図2、3):左S6にspicula、胸膜陥入像を伴なう25mm径の不整 形腫瘤影を認めた。内部には不整形の空洞がみられた。HRcrでは中心部の空 洞周囲が高濃度で、辺縁はスリガラス影を示し境界は鮮明であった。またS6近 位の気管支血管束は肥厚し別の結節の存在が疑われた。  気管支鏡検査:可視範囲に異常を認めなかった。左B6aからの経気管支肺生 検で腺癌を認めた。  以上より左肺腺癌cTI NOMOの診断にて手術の方針としたが、高齢であるた め縮小手術を選択しS6区域切除を予定した。  手術所見:第5肋間に約7cmの小開胸を置き、胸腔鏡を併用し胸腔内にア プローチしたところS6に胸膜陥入を伴う腫瘍を認めた。またB6の中枢部に別 の硬結を触知しcrでみられたもう一方の病変と判断した。いずれの病変もS6 区域切除で切除が可能であり、肺門リンパ節サンプリングを併せて施行した。  切除標本肉眼所見:切除標本末梢部に胸膜陥入を伴う22xllmmの腫瘤が認 められた。 一36一

(3)

 病理組織学的所見:腺癌部は、中心部に線維化巣を認め、異型細胞が肺胞 上皮を置換するように増殖する細気管支肺胞型に相当する像を呈し、高分化腺 癌の所見であった(図4)。また、中枢部の結節は、上皮の一部より肺胞組織 に向かって胞巣状増殖を示す異型な重層扁平上皮を認め、大きな胞巣は角化を 伴っていた。異型細胞が周囲に小胞巣状に浸潤する像も認められ、高分化扁平 上皮癌の所見であった(図5)。  両病変は明らかに組織型を異にしており、左肺S6に発生した腺癌と扁平上皮 癌の同時多発癌と診断された。  術後経過:経過順調で第15病日退院した。術後10ヵ月を経過した現在、無 再発生存中である。

考察

 同時性多発肺癌の定義は、異なった部位に存在すること以外に組織型が異な ること、もし組織型が同一の場合、異なった肺葉および区域に存在し、carcinoma in situからの発生が認められ、共通したリンパ系にも転移がなく、その他の臓 器からの転移ではないものとされている1)。本症例は同一区域内に2つの病変 が存在したが、両病変の連続性はみられず、かつ組織型を明らかに異にしてお り、同時性多発肺癌の診断に矛盾する点はないと考えられた。  多発肺癌の頻度は諸家の報告2)3)4)によりばらつきがあるが、同時性のみで は、いずれの報告でも10%未満である。また両側発生が60∼70%を占めると され2)5)片側の発生は比較的少ない。本症例のように同一区域内の多発肺癌の 本邦報告例は、今回の文献的検索で知り得た限りでは3例6)7)を認めるだけで、 非常に稀な症例と考えられた。  Fergusonら8)は多発肺癌の術前診断率を48%と報告しているが、いずれの場 合も両側性であって、一側性の場合は術中の開胸所見や術後の病理的検索によ り発見されており、術前に確診を得ることは困難となる場合が多い9)。本症例 も扁平上皮癌に関しては術前診断が得られなかったが、cr所見を考慮すると 気管支鏡的に術前多発肺癌の確定診断が得られた可能性が考えられた。  多発肺癌に対する治療については、同時性、異時性ともに手術例の成績は良 好である1°)とされ、積極的に切除を考慮すべきであると考えられるが、同時性 でも両側性の場合や異時性の場合は術式の選択に苦慮することも少なくなく、

(4)

個々の症例において十分な検討が必要であろう。本症例は・高齢であり縮小手 術を選択したが現在まで再発徴候はみられていない。        文献 1)Martini N, ct a1. Mu“iple primary lung comcers. J Thorac Cardiovasc Surg 1975;70:  606. 2)森田豊彦.剖検症例における肺多発癌の頻度二内容・推移.肺癌 1gg7;37:  283. 3)斉藤泰記他.・多発肺癌の診断と治療の現状・日胸 1993;52:95・ 4)近藤晴彦他.対側肺癌に対する外科治療・日呼外会誌 1988;2:237. 5)松毛真一他.両側多発肺癌症例の検討・胸部外科 2000;53:89. 6)中村博幸他.同時性、同一肺葉内、多発早期肺癌の2例・肺癌 1993;33:  605. 7)水口雅之他.同一区域内、伺時性多発早期肺癌の1例・・日胸 1998;57:14.7 ・ 8)F・rgU∞n MK・t・・al・ Diagil・・i・㎞d m醜・m・nt gf・ynch「°n°山1ung⑭e鳳」  ’Thorac Cardiovasc Sur91985;89:378・ 9)平井利和他.同時性肺多発癌の診断と治療.肺癌 1995;35:g11. 10)Saito Y, et aL Mu16ccn垣city in res㏄ted occult bronchogenic Squamous cell carcinomat Ann Thorac Surg 1994;57:1200. 一38一

(5)
(6)

図3

 図4

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参照

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