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微⽣物学 2010 年度験対策資料(解答解説編)
◆編集:⽊下貴⽂(医学科 2008 年度⼊学) ◆履歴: 2010.7.27〜7.30 初版を公開。 2010.9.7 真菌学と細菌学のファイルを統合。2010 年度本試についてのコメントを追記。この資料について
2010.7.30 に⾏われる微⽣物学の期末試験向けの資料です。過去問の解答解説をしていきます。 <⽬次> 真菌学編 細菌と真菌と寄⽣⾍の違い 2010 年度本試についてのコメント 2009 年度本試 解説 A、真菌の成⻑/増殖様式の分類 解説 B、真菌感染症の分類と原因菌について 解説 C、抗真菌薬について 解説 D、⽷状菌の同定 解説 E、酵⺟の同定 2008 年度本試 2008 年度再試 2007 年度本試 2006 年度本試 2005 年度本試 2004 年度本試 2003 年度本試 細菌学 2010 年度本試についてのコメント 総論編 1、細菌の染⾊と分類 2、細菌の遺伝学 3、細菌の病原因⼦ 4、細菌感染症(⼀般的な疾患と臨床症状) 5、抗菌薬と耐性菌 6、感染症の対策と予防 各論編 7、グラム陽性球菌 8、グラム陽性桿菌 9、グラム陰性球菌 10、グラム陰性桿菌、グラム陰性螺旋菌 11、抗酸菌 12、スピロヘータ、⾮定型細菌2
主に参照した⽂献
①「シンプル微⽣物学」②「標準微⽣物学」③「⼾⽥新細菌学」④「病気がみえる Vol.6」 ★①〜③はいずれも微⽣物学全般を扱う教科書で、この順でページ数が多く内容が詳しくなる。④は感 染症についてのビジュアル資料。医真菌学編
細菌と真菌と寄⽣⾍の違い、真菌の特徴
真菌とはどんな特徴を持つ微⽣物で、またどのように分類されか。資料の最初に、この点を細菌や寄⽣ ⾍との違いに注意して整理しておこう。 まず基礎医学としての微⽣物学では、ヒトに対して感染症を引き起こす微⽣物、つまり「病原性微⽣物 学」を扱う。その下位分類として、細菌 bacterium、真菌 fungus、寄⽣⾍ parasite、ウイルス virus の 4 つがある。 では真菌とは何か。右に、⾼校⽣物履 修者にはお馴染みの五界説に基づく系 統樹を⽰す。真菌とはカビ、キノコ、 酵⺟の仲間、つまり菌類のこと。菌類 はバイオマスとして地球上で最⼤量を 占め、エコロジー的には動植物遺体を 分解して物質循環に組み込む役割を果 たしている。菌類は推測で 25 万種が存 在すると考えられるが、医真菌学 medical mycology で扱う真菌は 50 種 類ほどである。 細菌、真菌、寄⽣⾍の主な違いを、下 表にまとめる。 注意を促しておくと、細胞内⼩器官の 違い、細胞壁・細胞膜の成分の違いは、 各系統に対する抗菌薬の作⽤点や、副作⽤にとって重要な意味を持つ。細菌に対しては、ペプチドグリ カンや 70S リボソームなど、原核⽣物特有の構造をターゲットにした抗菌薬の開発ができるが、真菌に 対してはヒト細胞との共通性が⾼いため、副作⽤の少ない抗真菌薬の開発はより難しい。悪性腫瘍やそ の他の免疫不全患者で<真菌症が怖い>理由、また真菌感染症では切除術を⾏うことが多い理由の 1 つ はここにある。 では残りの 1 つ、ウイルスはどう位置づけられるか? ⼀説では、ウイルスは真核細胞から⾶び出した「さまよえ る遺伝⼦」である。そしてウイルスのゲノム性状や増殖機構の多様性は、ウイルスはさまざまな時代の様々な細 胞から、何度も⾶び出したことを⽰唆している。以上は仮説に過ぎないのだが、この説からすると、ウイルスは 系統樹のさまざまな所から⼩枝を出し、さらにもとの枝と枝を繋いでしまう、そういう形で書き込まれるのでは ないかと考えられる。 「フォトサイエンス⽣物図録」より 真菌 蠕⾍ 原⾍3 細菌 真菌 寄⽣⾍ 界 原核⽣物 真核⽣物 主な分類 (染⾊)グラム陽性、陰性 (形態)球菌、桿菌、螺旋菌 など (形態)酵⺟、⽷状菌、⼆形 性真菌 (⽣物学的)接合菌、⼦嚢菌、 担⼦菌 (⽣物学的) 原⾍ 蠕⾍(ぜんちゅう) 扁形動物⾨(条⾍、吸⾍) 線形動物⾨(線⾍) 細胞内⼩器官 ⼩型(70S リボソーム) 細胞内⼩器官なし ⼤型(80S リボソーム) ⼩胞体、ゴルジ体、ミトコンドリアなどを持つ 細胞壁 細胞壁あり ペプチドグリカン 細胞壁あり β-D-グルカン、マンナン、キ チン 細胞壁なし ※運動性あり 細胞膜 ステロール系なし エルゴステロールを含む コレステロールを含む
医真菌学 2010 年度本試についてのコメント
問 1、は過去と全く同じ問題だった。 問 2、は過去問同様、何に着⽬してどう書いたらいいのかが不明で悩ましい出題である。以下は著者が 解答作成時に考えた過程を⽰す。 まず脳脊髄液といえば髄膜炎→Cryptococcus neoformans→酵⺟、⽖といえば⽖⽩癬→⽷状菌が強 く疑われると考えた。この選択は「可能性が⾼い」にすぎないが、教科書的な内容と実習で扱った⼿ 法の範囲内では無理のない推論だとおもう。 脳脊髄液については、酵⺟の同定の⼿順について述べた(本資料の解説 E を参照)。Cryptococcus neoformans が疑われることから、墨汁染⾊による莢膜の有無の確認について説明しておいた。 ⽖については、⽷状菌の同定⼿順について述べた(本資料の解説 D を参照)。医真菌学 2009 年度本試
問 1. 以下の⽂章中の空欄に当てはまる適切な語句を解答せよ。 病原真菌はその形態的な特徴から⼤きく酵⺟様真菌と( 1 )とに分けられる。酵⺟様真菌は⼆形性真菌 をのぞけばその成⻑様式は( 2 )により、⼀⽅( 1 )は主として( 3 )により増殖する。 真菌感染症の病態は主に 3 つに分類される。1 つは表在性真菌症であり、表⽪、特に⾓質に好んで感 染する⽩鮮菌として( 4 )、( 5 )、( 6 )等が知られている。その他頭⽪の⽪脂を資化できる( 7 )や⼝腔 や瞳に感染する( 8 )もこのカテゴリーに⼊る。2 つめは( 9 )で、偶発的な穿刺等により真⽪に感染が⽣ じるものであり、代表的な菌種としては( 10 )が挙げられる。また⾓膜真菌症の起因菌として( 11 )も 知られている。3 つめは( 12 ) と呼ばれる全⾝性疾患である。このケースでは患者が基礎疾患として悪 性腫傷やエイズウイルス陽性などをすでに羅患している場合が多く、その進⾏とともに( 13 )状態にな って真菌感染症に⾄る。菌⾎症の起因菌となる代表的な菌種は( 14 )、主として気道感染により肺に病 巣を形成する( 15 )、中枢神経好性を持ち髄膜炎の起因菌となる( 16 )等が知られている。4 真菌感染症の治療には抗真菌剤が⽤いられる。代表的なポリエン系の抗真菌剤は( 17 )である。この 薬剤は薬剤スペクトルの広い天然の抗真菌剤であるが、難点は( 18 )が出やすいことである。代表的な 合成抗真菌剤としてはアゾール系抗真菌剤である( 19 )や( 20 )等が知られている。これらは( 17 )と は異なり殺菌的でなく( 21 )的である。また細菌の場合と同様に( 22 )の出現が危倶されている。 近年になり新しいタイプの抗真菌剤が市場化されている。そのうちの( 23 )はアリルアミン系の抗真 菌剤でアゾール系とは異なり殺菌的に作⽤する。また( 24 )は細胞壁の成分である( 25 )を合成する酵 素の阻害剤である。 問 2. ⽷状菌の同定怯について、具体的な⼿技を説明せよ。 ★問 1 について、多少の整形や補⾜を加えた、解答つきの全⽂を提⽰する。問 2 は後に説明する「解説 D」を参照。 ①真菌の成⻑/増殖の様式。病原真菌はその形態的な特 徴から⼤きく酵⺟様真菌 yeast と( 1 ⽷状菌 fungs )と に分けられる。酵⺟様真菌は⼆形性真菌をのぞけばその 成⻑様式は( 2 出芽 budding )により、⼀⽅( 1 ⽷状菌 ) は主として( 3 胞⼦ spore )により増殖する。 ②真菌感染症の病態は、主に 3 つに分類される。 1 つは表在性真菌症であり、表⽪、特に⾓質に好んで 感染する⽩鮮菌として( 4 Trichophyton )、( 5 Microsporum )、( 6 Epidermophyton )等が知られ ている。その他頭⽪の⽪脂を資化できる( 7 マラセチ ア属 )や⼝腔や瞳に感染する( 8 カンジダ属 )もこの カテゴリーに⼊る。 2 つめは( 9 深部⽪膚真菌症 )で、偶発的な穿刺等に より真⽪に感染が⽣じるものであり、代表的な菌種と しては( 10 Sporothrix schenckii )が挙げられる。ま た⾓膜真菌症の起因菌として( 11 Aspergillus fumigatus、 Candida albicans、 Fusarium sorani ) も知られている。 3 つめは( 12 深在性真菌症 ) と呼ばれる全⾝性疾患 である。このケースでは患者が基礎疾患として悪性腫 傷やエイズウイルス陽性などをすでに羅患している場 合が多く、その進⾏とともに( 13 免疫低下 )状態にな って真菌感染症に⾄る。菌⾎症の起因菌となる代表的 な菌種は( 14 Candida albicans )、主として気道感染 により肺に病巣を形成する( 15 Aspergillus fumigatus )、中枢神経好性を持ち髄膜炎の起因菌と なる( 16 cryptococcus neoformans )等が知られて いる。 ③真菌感染症の治療薬(抗真菌剤)について。 代表的なポリエン系の抗真菌剤は( 17 アムホテリシ ン B )である。この薬剤は薬剤スペクトルの広い天然 ⼆形性真菌 莢膜 分⽣⼦ ⽇和⾒真菌 菌⽷ 発芽管
5 の抗真菌剤であるが、難点は( 18 副作⽤ )が出やすいことである。 代表的な合成抗真菌剤としてはアゾール系抗真菌剤である( 19、20 ミコナゾール、イトラコナゾー ル、ボリコナゾール )等が知られている。これらは( 17 アムホテリシン B )とは異なり殺菌的でな く( 21 静菌 )的である。また細菌の場合と同様に( 22 耐性真菌 )の出現が危倶されている。 近年になり新しいタイプの抗真菌剤が市場化されている。そのうちの( 23 terbinafin テルビナフィ ン )はアリルアミン系の抗真菌剤でアゾール系とは異なり殺菌的に作⽤する。また( 24 micafungin ミカファンギン )は細胞壁の成分である( 25 β-D-グルカン )を合成する酵素の阻害剤である。 ★問 1 は真菌学全体の導⼊となるような⽂章になっている。また問 2 は実習で扱った真菌の同定⽅法に ついて問われている。以下の解説は、次の 4 つのテーマを順に説明していこう。 A、真菌の成⻑/増殖の様式 B、真菌感染症の分類と原因菌 C、真菌感染症の治療薬 D、⽷状菌の同定 E、酵⺟の同定
解説 A、真菌の成⻑/増殖様式の分類
真菌はその⽣活環の多くの時期を⼀倍体で過ごし、無性的に有⽷分裂で成⻑し、また無性胞⼦を作って 増殖する。多くの真菌は、それに加えて有性⽣殖の能⼒を兼ね備えている。そこで 有性⽣殖能を持つ真菌を完全真菌 perfect fungi、 有性⽣殖能を持たない、または確認されていない真菌を不完全真菌 imperfect fungi と呼ぶ。つまり完全真菌の⽣活環には、無性⽣殖を⾏う時期と有性⽣殖を⾏う時期があるのだが、 無性⽣殖を⾏う時期の形態をアナモルフ anamorph 有性⽣殖を⾏う時期の形態をテレオモルフ teleomorph という。ana と teleo はギリシア語でそれぞれ”up”、”far”。anabolism「同化」、analogy「類似」、teleonomy「⽬的 論」など。 無性⽣殖期の成⻑/増殖様式の分類 無性⽣殖期の形態によって、真菌は⼤きく、酵⺟(酵⺟様真菌)、⽷状菌、⼆形性真菌の 3 つに分けら れる。 酵⺟ yeast(酵⺟様真菌) カンジダ属、クリプトコッカス属、トリコスポロン属などの⼀部の真菌は、⽣活環のすべてまたは⼤部 分の時期を単細胞の状態で過ごす。これを酵⺟という。細胞は球形や楕円形で、出芽により増殖する。 Cryptococcus neoformans のように、莢膜 capsule を持つ菌もいる。
莢膜は多糖類からなる厚い膜で、マクロファージによる貪⾷や⽩⾎球による認識を回避する役割を持つ。 ⽷状菌 filamentous fungi
⼤多数の真菌は、⽣活環のすべての時期を通して、菌⽷(hypha; いわゆるカビ)と呼ばれる分岐性フ ィラメント状の多細胞の構造体をとる。これを⽷状菌という。
6 ⼀部の真菌は、通常の培地では菌⽷、富栄養培地や⽣体内では酵⺟形と、上の両⽅の型の間で相互に転 換することができる。このタイプの真菌には、深在性⽪膚感染症のスポロトリコーシス(後述)を引き 起こす Sporothrix schenkii や、輸⼊真菌症を引き起こす外来真菌などがある(右図の上 4 つ)。また 普通は酵⺟に分類される C. albicans は、いずれの条件下でも両⽅の型が共存している(右図上から 5 番⽬)。C. albicans のこの相互転換は、深在性真菌症の病原性とも関連していると考えられる(後述)。 胞⼦ spore による分類 真菌は無性⽣殖期には無性胞⼦を形成し、 有性⽣殖期には核融合と減数分裂を経て 有性胞⼦を形成する。無性胞⼦や有性胞 ⼦は、形態論的にいくつかのタイプに分 類される。 無性胞⼦ 胞⼦嚢胞⼦ sporangiospore は、菌 ⽷の先端が袋状に膨らんで、内部で有 ⽷分裂して形成されたもの(右図 g)。 いわゆる「胞⼦のう」に胞⼦が⼊った パターンである。 分⽣⼦ conidium は、菌⽷の出芽や先 端部の分化により形成されたもの。菌 種によりさまざまな形態をとるが(右 図 a〜f)、形成様式により 7 種類に分 けられ、真菌の属や種の分類指標にな る。 先端部に数個連なる球形のものが 1 つの分⽣⼦で(⽮印で⽰した)、分⽣⼦を含む構造全体が分⽣⼦形成器であ る。実習では分⽣⼦および分⽣⼦形成器の形状により⽷状菌の同定を⾏った。 C. albicans は厚い細胞壁を持ち耐久性が強い厚膜胞⼦(厚膜分⽣⼦)を形成することが知られている。 有性胞⼦ 形態的に「接合胞⼦」「⼦嚢胞⼦」「担⼦胞⼦」の 3 つに区分され、この区別はそのまま真菌の⽣物学 的な分類における「⾨」に対応する。⾔い換えると、⽣物学的な真菌の分類は、まずテレオモルフの形 態で「接合菌⾨」「⼦嚢菌⾨」「担⼦菌⾨」「不完全菌⾨」に分かれる。不完全菌⾨はテレオモルフが 知られていないから、不完全菌⾨の中ではアナモルフ(とくに分⽣⼦の形態)によって分類する。 接合胞⼦ zygospore(下図 a)は、2 本の菌⽷のそれぞれの脇が膨れて、それが接着して肥⼤して 胞⼦となる。 ⼦嚢胞⼦ ascospore(下図 b〜d)は、菌⽷から発達した雌性配偶⼦嚢が受精し、袋状の⼦嚢を作 って、その中に胞⼦を含む。 担⼦胞⼦ basidiospore(下図 e)は、菌⽷から発達した担⼦器から 4 個の胞⼦担⼦が突出した形態 を⽰すもの。 「⼾⽥新細菌学」33版 P.301
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解説 B、真菌感染症の分類と原因菌について
真菌感染症は、病巣の部位によって「表在性真菌症」「深部⽪膚真菌症」「深在性真菌症」の 3 つに区 分される。順に説明しよう。 1、表在性真菌症 superficial mycosis は、感染が⽪膚や粘膜の表層部にとどまる場合。次の 3 つの疾 患が多い。なお下表で「内因性」とは、常在菌が活性化した場合を指す。 ⽪膚⽷状菌症(⽩癬 tinea)はいわゆる⽔⾍で、頭⽪、⼿⾜、股部などの主に⽪膚⾓質層に感染し、 掻痒感・発⾚・⽔泡などを引き起こす。表在性真菌症の 80%以上を占め、⽇本⼈全⼈⼝の 10%以上 が常時感染を受けていると推測される。 ⽪膚カンジダ症、粘膜カンジダ症。カンジダ属は⽪膚や⼝腔、消化管や膣に住む常在菌だが、HIV 感染・悪性腫瘍・免疫抑制剤などの免疫能低下状態で⽇和⾒感染するか、または抗菌剤の⻑期投与の ときに菌交代現象によって発症する。おもに⼝腔咽頭・⾷道・膣などで、ミルクかす状の病変ができ る。 ◆菌交代現象とは、抗菌薬の投与などで感受性の⾼い⼀部の菌が減少したときに、普段はあまり増えない菌が増殖す るような場合を指す。 ◆膣カンジダ症は、⽇和⾒感染や免疫能低下でなくても、性⾏為で感染したものが増殖して起こる場合がある。 癜⾵ tinea versicolor。原因菌のマラセチア属は、脂質好性で脂腺が多い⽪膚に存在する常在菌。 ⽪脂分泌が多くなる季節に増殖して、頚部、前胸部、背部などで増殖して、⽩⾊または褐⾊の⼩型斑 をつくる。 疾患 主な原因菌 感染経路 ⽪膚⽷状菌症(⽩癬) Trichophyton Microsporum Epidermphyton 内因性 性感染症 ⽪膚カンジダ症、粘膜カンジダ症 Candida 属 (C. albicans が最多) 接触感染 癜⾵ Malassezia furfur 内因性 「⼾⽥新細菌学」33版 P.3018 2、深部⽪膚真菌症 subcutaneous mycosis は、ふつう⼟壌中や植物表⾯に⽣息する特定の腐⽣性細 菌が、⽪膚の創傷にヒト体内に⼊って感染し、周囲の真⽪、⽪下組織、⾻などに病巣をつくるもの。疾 患の頻度ではスポロトリコーシスが多く、他にクロモミコーシスなど。⾓膜真菌症もこのカテゴリーに いれておく。 スポロトリコーシスは⼆形性真菌の S schenckii が農作業中の刺し傷などで感染したもので、顔⾯や 上肢に⾃覚症状のない慢性の⾁芽腫性結節、潰瘍性病変を作り(固定型)、症状が進むとリンパ管を 介して拡⼤して⾶び⽯状に病変を作る(リンパ管型)。 クロモミコーシスは⿊⾊真菌症の⼀種で、細胞壁にメラニン⾊素を含む⿊⾊真菌が感染し、⽪膚や⽪下組 織に難治性の慢性⾁芽腫をつくる。 ⾓膜真菌症は、やはり外傷(突き⽬)によって起こることが多く、⾓膜の潰瘍を起こす。原因真菌はさま ざまだが、表では(次の深在性真菌症でも出てくる)メジャーな菌種を挙げた。 3、深在性真菌症 deep mycosis では、真菌が全⾝に広まり、肺・肝臓・腎臓・脳などさまざまな臓器 に感染病巣をつくる、概して重症の感染症である。深在性感染症は原因菌および発症機序から、「輸⼊ 真菌症」と「⽇和⾒感染症」の 2 つに分けられる。 輸⼊真菌症は、外国の特定地域で流⾏性感 染症を引き起こす真菌が、海外旅⾏や輸⼊ 品を介して国内で発症するケース。右の 5 疾患が知られている。 これらの真菌は、⽇和⾒感染だけでなく、 健常者にも感染しうる点が特徴。またいず れも⼆形性真菌であり、この点が感染⼒の強 さや、深部臓器への感染性と関連しているかもしれない。 なかでも C. immitis は極めて感染⼒が強く、感染症新法では、真菌症のなかで唯⼀、コクシジオイデス症が4 類 感染症に⼊っている(感染症新法については、細菌学で扱う予定)。 ⽇和⾒感染症の原因真菌は健常者には感染症を引き起こさないが、HIV 感染・悪性腫瘍・免疫抑制剤な どの免疫能低下状態か、または抗菌剤の⻑期投与中の菌交代現象によって感染して、発症する。概して 重篤な全⾝性の感染症を引き起こし、これらの患者の予後を左右する。 AIDS や悪性腫瘍は、それ⾃体で死ぬというより、それが引き起こす⽇和⾒感染や、悪性腫瘍の場合は腫瘍巣のあ る臓器の機能不全で死ぬことが圧倒的に多い。 主な 5 疾患について下表にまとめる。 疾患 主な原因菌 感染経路 スポロトリコーシス Sporothrix schenckii 外傷 クロモミコーシス (⿊⾊真菌類) 外傷 ⾓膜真菌症 Aspergillus fumigatus、 Candida albicans、 Fusarium sorani など 外傷 疾患 主な原因菌 ブラストミセス症 Blastomyces dermatitidis パラコクシジオイデス症 Paracoccidioides brasiliensis ヒストプラスマ症 Histoplasma capsulatum コクシジオイデス症 Coccidioides immitis マルネッフェイ型ペニシ リウム症 Penicillium marneffei
9 カンジダ症について。 カンジダは⽪膚や粘膜に常在する菌で、カテーテルなどから体内に容易に侵 ⼊することができる。⾎中に⼊ってカンジダ⾎症となり、肝臓や脾臓、眼(眼内炎を起こす)など全 ⾝の臓器に拡がる。 アスペルギルス症について。アスペルギルス属は環境中に広く存在 し、分⽣⼦(無性胞⼦)は⾼温多湿を好むため、⽔回りやエアコン のフィルターなどで増殖する。経気道感染して、主に肺に病巣(肺 アスペルギローマ)を作る。 クリプトコックス症。C. neoformans は厚い多糖類の莢膜を持つ酵⺟ 型真菌で、ハトの糞で汚染された⼟壌中などに存在する。経気道感染 してまず肺に病巣をつくり、⾎⾏性で散布される。この菌はとくに中 枢神経系に親和性が強く、脳炎や髄膜炎を起こして重症化する。 ムーコル症。接合菌は環境中に広く⽣息し、経気道的に感染する。 病巣の拡がり⽅にはいくつかのパターンがあり、⿐腔や副⿐腔に感 染して中枢神経系へと拡がる⿐脳型、重度の進⾏性肺炎像を⽰す肺型などの頻度が⾼い。いずれも進 ⾏がはやく予後が悪い。 ニューモシスチス肺炎は、AIDS 患者が最初に発症することが多い AIDS 指標疾患として有名。は、かつ てはカリニ原⾍による肺炎(カリニ肺炎)と考えられていたが、原因真菌 P.jirobecii が同定された。 参考として AIDS 指標疾患のうち真菌症に含まれるものを右 BOX に⽰しておく。深在性真菌症のうち、 輸⼊感染症が 2 つ、⽇和⾒感染症が 3 つ⼊っている。 主な疾患 主な原因菌 感染経路 主な感染巣の位置 深在性カンジダ症 C. albicans、 C.tropicalis C. parapsilosis、C. krusei C. glabrata など 内因性 ⾎液(カンジダ⾎症) →肝、脾、眼内炎 アスペルギルス症 A. fumigatus、 A. flavus、 A. niger など 経気道感染 肺 クリプトコックス 症 主に C. neoformans (莢膜を持つ酵⺟) 経気道感染 肺 脳・髄膜(クリプトコックス脳髄膜炎) 接合菌症 (ムーコル症) Rhizopus など 経気道感染 ⿐腔・副⿐腔→中枢神経系 肺 ニューモシスチス 肺炎 Pneumocystis jirobecii 内因性? 肺 AIDS 診断のための指標疾患 (真菌症) カンジダ症 クリプトコッカス症 ニューモシスチス肺炎 コクシジオイデス症 ヒストプラスマ症
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解説 C、抗真菌薬について
ここで冒頭の細菌・真菌・寄⽣⾍を⽐ 較した表を⾒直してほしい。真菌が他 の 2 つと異なる点が抗真菌薬の主な作 ⽤点となる。右図に真菌の細胞壁と細 胞膜の模式図を⽰すが、主に作⽤点と なるのは①細胞膜に埋め込まれたエル ゴステロール、②細胞壁のβ-グルカン などである。 以下では、主な抗真菌薬の⼀覧をまず ⽰し、順に説明していこう。 分類 薬剤名 主な作⽤機序 特徴 ★ポリエン 系 amphotericin B nystacin 細胞膜エルゴステロールに結合し て、直接に膜障害を起こす。 殺菌的。抗菌スペクトラムが広く作⽤も 強⼒だが、腎毒性など副作⽤も強い。 ★アゾール 系 miconazole itraconazole voriconazole 細胞膜エルゴステロールの合成を 阻害(14α-デメチラーゼ) 静菌的。抗菌スペクトラムや作⽤は⽐較 的優秀で、副作⽤も弱い。 キャンディ ン系 micafungin β(1、3)-グルカン合成阻害 菌種により静菌的/殺菌的にはたらく。 抗菌スペクトラムはやや狭いが、作⽤の 強さや副作⽤の点では優れている。 ピリミジン 系 flucytosine (5-FC) 核酸合成阻害(核酸アナログ) 耐性菌ができやすいため、他の薬剤と併 ⽤する。 アリルアミ ン系 terbinafin 細胞膜エルゴステロールの合成を 阻害(スクアレンエポキシダーゼ 阻害) 表在性真菌症向け。 抗⽣物質 griseofulvin 細胞分裂阻害(微⼩管) 表在性真菌症向け。 ポリエン系 ポリエンとは、単結合と⼆重結合が交互に連な った分⼦のこと。 作⽤機序。右図のように、細胞膜のエルゴステ ロールに結合して、内外を連結する孔を作る。 そのことで膜透過性が⾼まり、タンパクやイオ ン類が過剰に流⼊または流出することで、真菌 細胞は死ぬ。つまり殺菌的にはたらく。 抗菌薬の薬理作⽤は、「殺菌的 bacteriocidal」 なものと「静菌的bacteriostatic」なものに分 けられる。前者は⽂字通り細胞を殺してしまう のに対して、後者は細胞を殺すには⾄らず、そ の活動や増殖を抑制する。 #真菌の細胞壁、細胞膜の構造http://www.doctorfungus.org /thedrugs /antif_pharm.htmより エルゴステロール
#ポリエン系抗真菌薬の作⽤機序
http://www.doctorfungus.org /thedrugs/ antif_pharm.htmより
11 特徴。作⽤機序から想像できるように、多くの真菌類に効き(抗菌スペクトラムが広い)、しかも作⽤ は⾮常に強い。しかしすぐ後で⽰すとおり、真菌細胞膜のエルゴステロールは、動物細胞膜のコレステ ロールとごくわずかしか異ならない分⼦であるため、ヒト細胞膜でも同様に作⽤して、かなり強い副作 ⽤が出る(とくに腎毒性)。重症例などに副作⽤を覚悟して投与するなど、使う局⾯は限られる。 アゾール系 作⽤機序。真菌細胞では、動物細胞と同じようなステップで、ア セチル CoA からエルゴステロールを合成する(右図)。アゾー ル系抗真菌薬は、この最後のステップを触媒する酵素(14α-デ メチラーゼ)を阻害することで、真菌の活動や増殖を抑制する(静 菌的にはたらく)。 特徴。抗菌スペクトラムや抗菌⼒は優秀で副作⽤も少ないため、 抗真菌薬の中⼼的な存在である。 ピリミジン系 作⽤機序。5-FC は真菌細胞に取り込まれて、真菌由来の酵素に 代謝されて 5-FU となり、核酸アナログとして DNA 合成やタン パク合成を阻害することで、殺菌的に作⽤する。 特徴。抗菌スペクトラムや抗菌⼒、副作⽤の点では⽐較的優秀だ が、耐性菌が出やすいという⽋点がある。そこで他の抗真菌薬と 併⽤して使われる。 キャンディン系 作⽤機序。真菌の細胞壁を構成するβ1、3-グルカンを合成する 酵素を阻害する(この節の最初の図を参照)。菌種により静菌的 または殺菌的に作⽤する。 特徴。近年新しく開発された、新しい作⽤点を持つ抗真菌薬。抗 菌スペクトラム・抗菌⼒・副作⽤とも優秀で、アゾール系と並ん でよく使われるようになっている。 表在性真菌症に対しては、上記のアゾール系やポリエン系を外⽤薬として⽤いることが多いのだが、難 治性の場合は次の 2 つの抗真菌薬を内服で⽤いる場合がある。 アリルアミン系 アゾール系と同様にエルゴステロール合成を阻害するのだが、、より早い段階でははたらく(右上図)。 具体的には中間体のスクアレンに酸素を添加する酵素であるスクアレンエポキシダーゼを阻害する。 ⽖⽩癬などの難治性の表在性真菌症に、外⽤または内服薬として⽤いることがある。 ⾜⽩癬が進⾏して⽩癬菌が⽖にまで進⾏すると⽖⽩癬となり、外⽤薬では治りにくい。 抗⽣物質 ⻘カビの⼀種から抽出された抗⽣物質であるグリセオフルビンは、微⼩管に結合して脱重合を阻害する ことで、細胞分裂を阻害する。難治性の表在性真菌症に対して、内服薬として⽤いる。 #アゾール系/アリルアミン系の作⽤機序 http://www.riken.jp /r-world/info /release/press /2009/0901 13/detail.htmlより アリルアミン系 アゾール系 アセチルCoA
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解説 D、⽷状菌の同定
医真菌学における病原性真菌の同定では、まず光学顕微鏡で酵⺟と⽷状菌を区別する。次いで酵⺟群、 ⽷状菌群のそれぞれについて区別を進めて、原因真菌を同定する。 本節では⽷状菌の同定について述べる。医真菌学では、有性⽣殖の形態(テレオモルフ)による分類で はなく、無性⽣殖の形態(アナモルフ)、とくに分⽣⼦の形状による区別を⾏う点に特徴がある。実際 の同定では、①巨⼤培養を⾏って、発育速度、コロニーの性状、⾊素の有無や⾊などを⾁眼で観察する ほか、②スライド培養を⾏って分⽣⼦や分⽣⼦形成器官の形状や⾊調をみる。この両⽅から、主要な⽷ 状菌の多くを判別することができる。下表にその⽅法の概要をまとめる。より詳しくは実習で⾏った通 り。 ⽅法 説明 コロニーを⾁眼で観 察(巨⼤培養) ⾼濃度のグルコースを含む寒天培地(サブロー培地など)の中央に各菌 を接種し、適温で培養する。発育速度やコロニーの性状などを観察する。 分⽣⼦、分⽣⼦形成器 官の観察 スライド培養を⾏って分⽣⼦を形成させ、ラクトフェノールコットン⻘ 液で染⾊する。光学顕微鏡で、菌⽷・分⽣⼦形成器官・分⽣⼦の形態や ⾊調を観察する。 スライド培養とは……スライド培養シャーレ中に V 字型ガラス管を置き、そ の上にスライドグラスをのせる。⼩さく切った培地をスライド上に置き、4 辺に接種してカバーグラスで覆う。シャーレ内が乾燥しないように滅菌⽔を 注いで 25℃で培養する。解説 E、酵⺟の同定
⽷状菌だけではなく酵⺟の同定について問われることがあるから、簡単に表でまとめておく。 ⽅法 ⼿順 何を区別できるか 光学顕微鏡によ る形態の観察 スライドグラス上で、染⾊後に 観察 まず酵⺟と⽷状菌を区別する 発芽管の形成試 験 菌液を 37℃で湯浴して数時間 待つ 発芽管を形成した酵⺟は、C. albicans の可能性 が⾼い。 厚膜胞⼦の形成 試験 コーンミール培地上、25℃で数 ⽇間培養 この条件では、C. albicans のみが厚膜胞⼦を形 成する。 CHROMager に よる同定 CHROMager 培地に撒いて、 30℃で数⽇培養 臨床材料から分離されうるメジャーなカンジダ 属酵⺟数種を、それぞれ別の⾊に呈⾊させる 墨汁染⾊による 莢膜の観察 菌液に墨汁を加えて顕微鏡で 観察する Cryptococcus 属酵⺟は、多糖類からなる莢膜を 持つ。莢膜は墨汁染⾊によって、カンジダ属と容 易に識別できる。 ◆莢膜は墨汁に染まりにくく、周囲が⿊く染まる中菌 体だけが透明にみえる。 薬剤感受性試験 寒天培地上に菌を撒き、各種の 抗真菌剤、抗⽣物質を加える。 抗真菌剤の効き⽅は菌を区別する材料になる。ま た薬剤耐性株を⾒分けることができる。13
医真菌学 2008 年度本試
問1 以下の各菌種について属名を正確に書くことも含め特筆すべきことを簡単に説明しなさい.
Cr. Neoformans S. schenkii C. immitis M. furfur P. carinii (jiroveci) 問2 抗真菌剤に関する以下の記述の空⽩を埋めなさい.
amphotericin B (AMPH) は代表的な ( 1 ) 系抗真菌剤で Streptomyces 属の菌種が⽣産する抗⽣物 質である.その広い ( 2 ) から開発から 50 年以上を経た今でもよく使われている.この薬剤の標的は 細胞膜成分で、( 3 ) などに結合することで細胞膜の( 4 ) を撹乱し、その結果真菌に対して ( 5 ) 的に働 く.⼀⽅で細胞膜への障害は同じ真核⽣物に属する患者に対して ( 6 ) として現れ、その症状は発熱、 悪寒、腎障害など多岐にわたる. AMPH と並んで頻⽤される内⽤型抗真菌剤として ( 7 ) 系抗真菌剤が挙げられる.代表的な薬剤と して ( 8 )、( 9 ) などがある.これらの薬剤の標的は ( 3 ) 合成経路のうちの ( 10 ) と呼ばれる酵素で あり、真菌の主要なステロール分⼦である ( 3 ) 合成が抑制されることによりその増殖が抑制されるが、 その作⽤機作の特性上効果は ( 11 )的である.また AMPH と異なり近年 ( 12 ) の出現が問題となりつ つある. terbinafine (TBN) は ( 7 ) 系抗真菌剤と同様にエルゴステロール合成経路を標的とする( 13 ) 系抗 真菌剤である.但しアゾール系薬剤と異なりその標的は ( 14 ) と呼ばれる酵素で、この酵素への阻害作 ⽤の結果、蓄積する基質である ( 15 ) が細胞毒性を持つため真菌に対して ( 5 ) 的に作⽤する.またそ の効果は酵⺟様真菌より⽷状菌に対して有効であり ( 16 ) などの難治性表在性真菌症に対する内⽤薬 としても⽤いられる. 上述の抗真菌剤とは異なる標的を持つ薬剤として ( 17 ) と ( 18 ) が挙げられる.( 17 ) は⽷状菌、 特に⽩癬菌に対して有効な薬剤であり、その標的分⼦は微⼩管である.( 18 ) は近年導⼊された抗真菌 剤で、その標的は細胞壁のβ-1、3-グルカン合成経路の阻害である. ★2009 年度の解説 A〜E で解説はほとんど終わっているので、解答を簡潔にまとめていこう。 1、Cryptococcus neoformans メジャーな深在性真菌症の原因菌であり、肺炎や脳髄膜炎を起こす(クリプトコッカス症)。 多糖類からなる莢膜を持ち、貪⾷細胞による貪⾷や⽩⾎球による認識に対して耐性を持つ。莢膜を墨 汁染⾊することで、他の真菌と容易に識別可能。 2、Sporothrix schenkii ⼆形性真菌。農作業中の軽い刺し傷などで感染して起こるスポロトリコーシスは、国内の深部⽪下 真菌症の⼤半を占める。 顔⾯や上肢に⾃覚症状のない慢性の⾁芽腫性結節、潰瘍性病変を作り(固定型)、症状が進むとリン パ管を介して拡⼤して⾶び⽯状に病変を作る(リンパ管型)。 3、Coccidioides immitis 輸⼊感染症の 1 つで、⽇和⾒感染以外で深在性真菌症を引き起こすことがある。 極めて感染⼒が強く、コクシオイデス症は感染症新法では真菌症のなかで唯⼀ 4 類感染症になって いる。 4、Malassezia furfur
14 マラセチア属の⼀種で、表在性真菌症の1 つである癜⾵ tinea versicolor の原因菌としては最も⾼ 頻度にみられる。 脂質好性で脂腺が多い⽪膚に存在する常在菌。⽪脂分泌が多くなる季節に増殖して、頚部、前胸部、 背部などで増殖して、⽩⾊または褐⾊の⼩型斑をつくる。 5、Pneumocystis jirovecii ⽇和⾒感染による深在性真菌症であるニューモシスチス肺炎の原因菌であり、AIDS 患者に最初に発 症することが多い AIDS 指標疾患として有名。 かつてはカリニ原⾍による肺炎(カリニ肺炎)と考えられていたが、遺伝学的⼿法により原因真菌 P.jirobecii が同定された。 ★問 2 は解答と多少の整形を付した全⽂を提⽰する。内容は「解説 C」でほぼすべて扱ったはず。 主な抗真菌薬について整理する。 ポリエン系。
amphotericin B (AMPH) は代表的な ( 1 ポリエン系 ) 系抗真菌剤で Streptomyces 属の菌種が⽣ 産する抗⽣物質である.その広い ( 2 抗菌スペクトラム ) から、開発から 50 年以上を経た今でも よく使われている.この薬剤の標的は細胞膜成分で、( 3 エルゴステロール ) などに結合することで 細胞膜の( 4 透過性 ) を撹乱し、その結果真菌に対して ( 5 殺菌 ) 的に働く.⼀⽅で細胞膜への障 害は同じ真核⽣物に属する患者に対して ( 6 副作⽤ ) として現れ、その症状は発熱、悪寒、腎障害 など多岐にわたる. アゾール系。 AMPH と並んで頻⽤される内⽤型抗真菌剤として ( 7 アゾール ) 系抗真菌剤が挙げられる.代表的 な薬剤として ( 8、9 ミコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール ) などがある.これらの 薬剤の標的は ( 3 細胞膜のエルゴステロール ) 合成経路のうちの ( 10 14α-デメチラーゼ ) と呼 ばれる酵素であり、真菌の主要なステロール分⼦である ( 3 エルゴステロール ) 合成が抑制される ことによりその増殖が抑制されるが、その作⽤機作の特性上効果は ( 11 静菌 )的である.また AMPH と異なり近年 ( 12 耐性菌 ) の出現が問題となりつつある. アリルアミン系。 terbinafine (TBN) は ( 7 アゾール ) 系抗真菌剤と同様にエルゴステロール合成経路を標的とす る( 13 アリルアミン ) 系抗真菌剤である.但しアゾール系薬剤と異なりその標的は ( 14 スクアレ ンエポキシダーゼ ) と呼ばれる酵素で、この酵素への阻害作⽤の結果、蓄積する基質である ( 15 ス クアレン ) が細胞毒性を持つため真菌に対して ( 5 殺菌 ) 的に作⽤する.またその効果は酵⺟様 真菌より⽷状菌に対して有効であり ( 16 ⽖⽩癬 ) などの難治性表在性真菌症に対する内⽤薬とし ても⽤いられる. その他。 上述の抗真菌剤とは異なる標的を持つ薬剤として ( 17 グリセオフルビン ) と ( 18 ミカファンギ ン ) が挙げられる.( 17 グリセオフルビン ) は⽷状菌、特に⽩癬菌に対して有効な薬剤であり、 その標的分⼦は微⼩管である.( 18 ミカファンギン ) は近年導⼊された抗真菌剤で、その標的は細 胞壁のβ-1、3-グルカン合成経路の阻害である.
医真菌学 2008 年度再試
15 問1 ⼤多数の真菌の発育形態(栄養形)は、⽣活環の⼤部分ないしはすべての時期を通して( 1 ) とよ ばれる分岐性フィラメント状の多細胞性構造体である.このような真菌は、この形態学的特徴から ( 2 ) 菌と総称される.( 2 ) 菌とは別に、⽣活環の⼤部分の時期を単細胞の状態で過ごす単細胞性真菌は、( 3 ) とよばれる.第三のタイプとして、発育条件(環境)に依存して ( 1 ) 形と ( 3 ) 形のいずれか、また は両者の発育形態をとる菌種は ( 4 )性真菌と称される. a.空欄を埋めよ. b.( 2 )、( 3 )、( 4 ) に関係する真菌種を挙げよ(各4種). 問2 カンジダ属酵⺟の感染症の特徴について述べよ. ★問 1 は解答と多少の整形を付した全⽂を提⽰する。 真菌の成⻑/増殖の様式。 ⼤多数の真菌の発育形態(栄養形)は、⽣活環の⼤部分ないしはすべての時期を通して( 1 菌⽷ hypha ) とよばれる分岐性フィラメント状の多細胞性構造体である.このような真菌は、この形態学的特徴から ( 2 ⽷状 ) 菌と総称される.( 2 ⽷状 ) 菌とは別に、⽣活環の⼤部分の時期を単細胞の状態で過ごす単 細胞性真菌は、( 3 酵⺟ ) とよばれる.第三のタイプとして、発育条件(環境)に依存して ( 1 菌⽷ ) 形と ( 3 酵⺟ ) 形のいずれか、または両者の発育形態をとる菌種は ( 4 ⼆形 )性真菌と称される. ★問 2 について、酵⺟と⼆形性真菌は種類が限られており、残りが⽷状菌という点をまずおさえる。 (3)酵⺟は、以下の 4 属から挙げる:
カンジダ属:Candida albicans, C. glabrata, C. tropicalis, C. parapsilosis など クリプトコッカス属:Cryptococcus. neoformans
トリコスポロン属:Trychosporon asahii マラセチア属:Malassezia furfur
(4)⼆形性真菌:
Sporothrix Schenckii, Candida. arbicans,
輸⼊真菌症の起因菌(C. immitis, P. brasiliensis, H. capsulatum, P. marneffei, B. dermatitidis)
(2)上記以外の多くは⽷状菌なのだが、有名な真菌は意外と少ない。解説 B でとりあげた真菌から書く と――
アスペルギルス属:Aspergillus fumigatus, A. flavus, A. nigar フザリウム属:Fusarium sorani
トリコフィトン属:Trychophyton rubrum, T. tonsurans ミクロスポルム属:Microsporum canis
医真菌学 2007 年度本試
問1 深在性真菌感染症の治療に⽤いられる内⽤抗真菌薬の種類(クラスあるいは系)と特徴を書きな さい. 問2 カンジダ属酵⺟について、以下を答えなさい. (a) 代表的な起因菌5種16 (b) 感染の特徴について
★問 1 は「解説 C」を参照。深在性真菌感染症とあるから、「ポリエン系」「アゾール系」「キャンデ ィン系」「ピリミジン系」の 4 つを述べる。
★問 2
(a) C. albicans、C.tropicalis、C. parapsilosis、C. krusei、C. glabrata など (b) カンジダ属は⽪膚や⼝腔、消化管や膣に住む常在菌だが、HIV 感染・悪性腫瘍・免疫抑制剤などの 免疫能低下状態で⽇和⾒感染するか、または抗菌剤の⻑期投与のときに菌交代現象によって、カンジ ダ症を発症する。 表在性真菌症に分類される⽪膚カンジダ症、粘膜カンジダ症は、⼝腔咽頭・⾷道・膣などで、ミルク かす状の病変ができる。 重度の免疫不全患者などでは深在性真菌症を引き起こす。カンジダ菌が⾎中に⼊ってカンジダ⾎症と なり、肝臓や脾臓、眼(眼内炎を起こす)など全⾝の臓器に拡がる。
医真菌学 2006 年度本試
問1 真菌感染が疑われ、それが起因菌として最終的に確定するまでは様々なプロセスをたどる.次に 挙げる検査材料から2つを選択し、菌種の同定までを概説しなさい. 1) 肺アスペルギルス症を疑われた患者からの喀痰 2) ⾜⽩癬を疑われた患者からの患部鱗屑 3) カンジダ⾎症を疑われた患者からの⾎液 問2 抗真菌剤を5クラス(系)以上挙げ、それぞれの代表的な薬剤名と、特徴を説明しなさい. 問3 病原真菌を学名(属名+種⼩名、例 Candida albicans)で 10 種挙げなさい.ただし、1属につ いては2種以内とする. ★問 1 について。筆者には実習で⾏った以上の詳しいことは分からないし興味もないから、同定したい 菌が⽷状菌か酵⺟かを判断して、あとは実習のフロー通りに⾏う、と考えた。 1)⽷状菌。①光学顕微鏡で形態を観察したあと、②分離培地でコロニーを形成させ、③巨⼤培養で成 ⻑速度やコロニーの形態を⾒て、また④スライド培養で分⽣⼦の形状をみることで同定する。 2)⽷状菌。流れは 1)と同じ。 3)酵⺟。①光学顕微鏡で形態を観察したあと、②分離培地でコロニーを形成させ、③CHROMager 培 地に接種して培養し、呈⾊によりカンジダ属の主要な菌の有無を同定する。 ★問 2 は「解説 C」参照。 ★問 3 は 2008 年度 問 1 の解答を参照。医真菌学 2005 年度本試
問1 以下の5項⽬について簡単に説明しなさい. a.真菌の細胞壁を構成する多糖体成分は何か. b.深部⽪膚真菌症の起因菌を5種挙げなさい.17 c.抗真菌剤グルセオフルビンとテルビナフィンについて標的部位と適応する真菌症または
菌種を⽰しなさい.
d.Histoplasma capsulatum と Blastomyces dermatitidis に共通の事項は何か. e.テレオモルフとアナモルフは何の違いか. 問2 ⽪膚⽷状菌の同定に必要な検査項⽬を挙げ、それぞれの⽬的を説明しなさい. ★問 1 a. β-グルカン、マンナン、キチンなど b. スポロトリコーシス:Sporothrix schenkii ⿊⾊真菌症
クロモミコーシス:Fonsecaea Pedrosoi, Phialophora verrucosa フェオヒフォミコーシス:Exophiala dermatitidis, E. jeanselmei
⿊⾊真菌症の原因菌なんて、真菌マニア以外は覚える必要なし。趣味の悪い出題だとおもう。 c. 「グリセオフルビン」が正しい……微⼩管の脱重合阻害による有⽷分裂の阻害;⽩癬 テルビナフィン……スクアレンエポキシダーゼ;⽩癬 d. いずれも輸⼊真菌症により深在性真菌症を引き起こす。またいずれも⼆形性真菌である。 e. テレオモルフは有性⽣殖期の形態、アナモルフは無性⽣殖期の形態のこと。 ★問 2 は「解説 D」を参照。
医真菌学 2004 年度本試
問1 次の各問いに簡潔に答えなさい. (ⅰ)抗真菌剤アンフォテリシンB の標的部位は何か. (ⅱ)有性世代の知られていない真菌は何と呼ばれるか. (ⅲ)感染症新法(1998 年制定、2003 年改訂)で4類感染症に含まれる真菌は何か. (ⅳ)Malassezia 属酵⺟の⽣育上の特性は何か. (ⅴ)Cryptococcus neoformans に⾒られる形態学的特徴を調べる⽅法は何か. 問2 病原性⽷状菌を6種挙げ、好発感染部位、感染経路について説明しなさい. ★問1 (ⅰ)エルゴステロール (ⅱ)不完全細菌 (ⅲ)Coccidioides immitis(コクシジオイデス症) (ⅳ)脂質好性(発育に脂質を必要とする)で、脂腺付近の⽪膚に好んで住む。 (ⅴ)墨汁染⾊により莢膜を染めて光学顕微鏡でみる。医真菌学 2003 年度本試
1.表在性感染の原因となる真菌種を6種挙げ、感染症について簡単に説明せよ.18 2.増殖環境により異なる発育形態を⽰す真菌を4種挙げ、これらの同定法を説明せよ
★問 1 は解説 B.を参照。
★問 2 について。「増殖環境により異なる発育形態を⽰す」とは⼆形性真菌の特徴である。
⼆形性真菌
Sporothrix Schenckii, Candida. arbicans,
輸⼊真菌症の起因菌(C. immitis, P. brasiliensis, H. capsulatum, P. marneffei, B. dermatitidis)
同定法 問題⽂は「①⼆形性真菌とそうでない真菌の同定法」「②⼆形性真菌の中での各菌の同定法」のニ通り に読める。いずれにせよ、多くの⼆形性真菌は温度依存的に酵⺟型と菌⽷型をスイッチすることを知っ ておくことがポイントになる。 ①37℃の富栄養培地と、25℃の通常培地の両⽅で培養し、前者で酵⺟型、後者で菌⽷型をとることを 確認する(ただし C. albicans はこれに従わない)。 ②25℃の通常培地で培養し、菌⽷型の形状で各菌を同定する。必要によりスライド培養で分⽣⼦を観察 する。
細菌学
細菌学 2010 年度本試についてのコメント
全体として難易度が⾼かった気がする。問 5 や問 6 は知らなくても仕⽅がないような知識であり、 ⽐較的細かく知っていないと解答できない問題も多い。 以下のコメント中で、(→数字)は、本資料の細菌学編の当該章への参照を⽰す。 問 1. ⼤腸菌の表層構造を図⽰し、表層構造関連病原因⼦を⽰せ。 グラム陰性菌の構造を図⽰(→1) 表層構造関連病原因⼦として、敗⾎症の原因となる LPS や、上⽪細胞に付着するために必要な線⽑を挙 げておいた(→2) 問 2. 次の耐性菌を説明せよ。①VRE、②MDRP、③XDR-TB 抗菌薬については(→5)。 VRE:バンコマイシン耐性腸球菌。⼀般にバンコマイシンは、ペニシリンをはじめとするベータラク タム系の抗菌薬は効かないときに使われるから、バンコマイシン耐性とはかなり強⼒な耐性菌である ことを意味する。 MDRP:多剤耐性緑膿菌。もともと薬剤耐性が強い緑膿菌がさらに多剤耐性を獲得したので、かなり ヤバイ。多剤耐性化の機序として、「多剤排出ポンプ」遺伝⼦の獲得ということが考えられている XDR-TB:超多剤耐性結核菌。結核に対する主な第⼀選択薬が効かない結核菌を MDR-TB、さらに 主な第⼀選択薬が効かない結核菌を XDR-TB という。結核菌はもともと抗菌薬が効きにくいから、 XDR-TB はかなり厳しい。 問 3. ⻩⾊ブドウ球菌の産⽣する TSST-1 ならびに exfoliative toxin について説明せよ。19 TSST-1 はスーパー抗原で、T 細胞の過剰な活性化により毒素性ショック症候群を引き起こす(→3) exfoliative toxin(表⽪剥脱毒素)はその名前の通り、表⽪に⽔泡や剥離を引き起こす毒素で、次のよ うな疾患を引き起こす ⽔疱性膿痂疹(とびひ):接触感染で拡がり、乳幼児の⽪膚に⽔泡ができる。 SSSS(ブドウ球菌性熱傷様⽪膚症候群):毒素が⾎中に侵⼊して拡がり、全⾝で熱傷様の⽪膚剥離 がおこる。新⽣児〜乳幼児で好発。 問 4. Bacillus 属と Clostridium 属はどちらも病原性を持つ芽胞形成細菌である。臨床材料から芽胞形 成細菌が分離された場合、どういった点に基づいて両者を区別すればよいか。 芽胞染⾊を⾏い、芽胞の位置をみる(→1)。Bacillus 属の多くは中⼼性だが、Clostridium 属ではさま ざまな局在がみられる。 問 5. Haemophilus influenzae による細菌性髄膜炎の特徴と、その予防法について簡潔に述べよ。 インフルエンザ菌髄膜炎は、乳幼児では細菌性髄膜炎の中で最も頻度が⾼い。上気道炎、中⽿炎、副⿐ 腔炎、肺炎などから波及することが多い。髄膜炎を引き起こすタイプの菌に有効なワクチンが開発され ている(→10) 問 6.特発性⾎⼩板減少性紫斑病と Helicobacter pylori の関係について述べよ。 問題の特発性⾎⼩板減少性紫斑病(ITP)とは、⾎⼩板に対する⾃⼰抗体ができて⾎⼩板が減少し、出 ⾎傾向をきたす疾患である。多くの ITP の発症には、H.pylori 菌の感染が関与していると考えられてい る。H.pylori 菌に対する抗体が⾎⼩板の表⾯抗原にクロスした(⾎⼩板に対する⾃⼰抗体としてはたら いた)、というのが考えられる機序である。 問 7.⾷中毒統計において上位を占める細菌 5 種とその⾷中毒の特徴について簡潔に述べよ。 3.の⾷中毒の項でモロに扱った(→3) 問 8.リケッチア感染症について知るところを述べよ。 12.で扱った(が、この辺になるともうかなり適当に書いているので、もう少し調べてほしいとおもう)
細菌学 総論編
1、細菌の染⾊と分類
A. 染⾊⼿法と細菌の分類 (2008 再 問 2)(1) 細菌検査においてグラム染⾊は必須である.その理由について説明せよ. (2007 問 5)ある種の病原菌の同定において,特殊染⾊法が有効な場合がある.以下のA 及び B そ れぞれの染⾊法により観察される主要な病原菌について,以下の3点を簡潔に記述せよ.ただし,A に ついては2菌種以上記述すること. (染⾊法)A.芽胞染⾊ B.Neisser 染⾊ (記述する点) ① 菌の学術名あるいは通称名 ② 染⾊により識別される部位の名称 ③ その菌の病原性 (2006 問 4)細菌検査において,主要な染⾊検査法を挙げ,その意義を説明せよ. (2004 問 10)異染⼩体染⾊で異染⼩体の観察されるものは次のうちどれか.20 A : ジフテリア菌 Corynebacterium diphteriae
B : ボツリヌス菌 Clostridium botulinum C : キャンピロバクター Campylobacter jejuni
D : 肺炎クラミジア Clamydia pneumoniae (Clamidophila pneumoniae) E : カンジダ Candida albicans (2003 問 4)(2)正しい組み合わせはどれか. 1 腸チフス Salmonella typhi ― グラム陽性球菌 2 髄膜炎菌 Neisseria meningitidis ― グラム陰性球菌 3 緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa ― グラム陰性桿菌 4 腸炎ビブリオ Vibrio parahemolyticus ― グラム陽性桿菌 5 ウェルシュ菌 Clostridium perfringens ― グラム陽性球菌 (選択肢)A 1, 2 B 1, 5 C 2, 3 D 3, 4 E 4, 5 B. 芽胞をつくる細菌 (2008 問 5〜問 7) 芽胞を形成する病原性細菌として2属がよく知られているが,それぞれの属名(種名ではない)を記 せ. また,それぞれの芽胞形成の特徴は,両者を鑑別する上で重要となる.それぞれの芽胞形成の特徴を, 相違点がわかるように記せ. それらの属に分類される病原細菌を,それぞれ2種挙げよ.学名か和名で記述すること.ただし,ス ペルミスがあった場合は無効とするので,注意すること. (2006 問 6)芽胞を形成する病原細菌を3つ挙げ,そのうちの1つにつき知るところを記せ. (2003 問 4)(1)次の細菌のうち,芽胞を形成するものはどれか.
1 リステリア Listeria monocytogenes 2 ジフテリア菌 Corynebacterium diptheriae 3 セレウス菌 Bacillus cereus 4 破傷⾵菌 Clostridium tetani
5 ペスト菌 Yersinia pestis (選択肢)A 1, 2 B 1, 5 C 2, 3 D 3, 4 E 4, 5 <解答> A. 染⾊⼿法と細菌の分類 (2008 再 問 2)(1) 解説を参照 (2007 問 5)解説を参照 (2006 問 4)解説を参照 (2004 問 10)A (2003 問 4)C ★髄膜炎菌 → グラム陰性球菌 腸チフス、緑膿菌、腸炎ビブリオ → グラム陰性桿菌 ウエルシュ菌 → グラム陽性桿菌 B. 芽胞をつくる細菌 (2008 問 5〜問 7)Bacillus 属の芽胞は⼀般に中⼼性、Clostridium 属は偏在性〜端在性が多い。その 他は解説を参照。 (2006 問 6)解説を参照。 (2003 問 4)D
21 ★順に説明していこう。 細菌の染⾊法について 細菌学で最も基本的なグラム染⾊、および各種の特殊染⾊について、まず下表にまとめる。 近代細菌学は光学顕微鏡による形態分類学としてはじまっている。17 世紀に顕微鏡を⾃作したオラン ダのレーウェンフックは細菌のスケッチも残しているが、近代細菌学の多くのビッグネーム(たとえば コッホや北⾥)は、19 世紀後半から 20 世紀初頭にかけて活躍している。デンマーク出⾝のグラム博⼠ がグラム染⾊法を開発したのもこの時期で、細菌の染⾊/分類のスタンダードになっている。 細菌の染⾊法の開発は、とにかくさまざまな染料を試して、各細菌に特徴的な構造を染め分ける染料を探す、と いう地道な⾏為である。この時期は有機化学の研究開発が⾮常に活発だった時期でもあり(たとえば合成染料の 第⼀号であるアニリンは 1856 年に最初に合成され、その後量産された)、⼈⼯合成されたさまざまな染料が利 ⽤できたことが、細菌の染⾊技術の(そして細菌学の!)進展の背景となった。 グラム染⾊は次の 3 ステップで⾏う。 染⾊法 対象となる細菌 呈⾊ 説明 グラム染⾊ すべての細菌 陽性:濃紫 陰性:淡⾚ 細菌の分類の第⼀歩となる最も⼀般的な染⾊ 法。 異染⼩体染⾊ (Neisser 染⾊) ジフテリア菌 菌体:⻩ 異染⼩体:⿊紫 ジフテリア菌が細胞内に持つ顆粒を染める。 咽頭のジフテリアの偽膜を検体に、ジフテリ アを迅速に同定できる。 莢膜染⾊ (Hiss 染⾊) 肺炎球菌 チフス菌 莢膜:薄⾚ 菌体:⾚ 多糖類やタンパクからなる莢膜 capsule を染 める。 同じ菌でも莢膜を持つ株と持たない株があ り、⼀般に莢膜を持つ株は病原性がある。 芽胞染⾊ (Moeller 法) Bacillus 属 Clostridium 属 芽胞:⾚ 菌体:⻘ 芽胞を染⾊し、芽胞をつくる菌( Bacillus 属、 Clostridium 属)を区別できる。芽胞ができる 位置によりどの菌種かもある程度分かる。詳 しくは次節で扱う。 抗酸菌染⾊ (Ziehl-Neelsen 染⾊など) 抗酸菌(結核菌 など) 抗酸菌:⾚ その他の菌:⻘ 特殊な細胞壁を持つ抗酸菌を染め分けること ができる。 ①クリスタルバイオレットで染⾊ → グラム陽性菌の細胞壁を⻘紫に染める ②ヨード処理後、エタノールで脱⾊ → グラム陽性菌は⾊が落ちない、陰性菌は落ちる ③サフラニンで後染⾊ → グラム陰性菌を淡い⾚で染める、陽性菌は変わらない
22 グラム陽性細菌とグラム陰性細菌は、右図の ように、細胞壁に⼤きな違いがある。グラム 陽性菌はペプチドグリカンの厚い層(以下 PG 層)があり、⼀⽅グラム陰性細菌では PG 層はごく薄く、脂質からなる外膜を持つ。ク リスタルバイオレットはこの PG 層を紫に染 める。エタノール処理をすると、グラム陽性 菌では染⾊された PG 層が残るが、脂質が多 いグラム陰性菌では⾊素が流出してしまう。 そこで淡い⾚で後染⾊をすると、グラム陽性 菌は濃い⻘紫なのでそのまま、グラム陰性菌 は淡い⾚で染まる。以上がグラム染⾊の染め 分けのメカニズムである。 詳しくは後述するが、この細胞壁の違いは、 当然ながら病原性の違いや抗菌薬の効き⽅の違いにも反映していることに注意を促しておく。 歴史的経緯とその有⽤性から、細菌の分類はまず「グラム染⾊ + 細菌の形態(球菌、桿菌)」で⾏う、 という⽅法がスタンダードになっている。Appendix の「細菌の分類(概要)」で、細菌全体の分類と、 主な菌に⽬を通しておこう。 また、ごく⼀部の菌が持つ構造を染め分ける「特殊染⾊」の⼿法もよく⽤いられており、代表的な⽅法 は上表にまとめた通り。Appendix の「細菌の分類(概要)」の「補⾜」欄でも書いているので、各⽅ 法の対象となる細菌が全体のどこにマッピングされるかを⾒ておくとよい。 芽胞染⾊について 特殊染⾊の中でも頻出の芽胞染⾊について、もう 少し説明しておく。右 BOX に⽰した⼀部の細菌は、 栄養不⾜や乾燥などの悪条件に置かれると、菌体 内に芽胞 spore と呼ばれる構造を作る。芽胞は⼀ 種の休眠型で、内部では代謝が停⽌しており、物 理化学的に厳しい環境に対して強い耐性がある (100℃の加熱、エタノールや化学薬品、乾燥など)。 環境がよくなると、芽胞から出芽して完全な細菌 が復元され、再び増殖することができる。 芽胞 spore は、真菌の「胞⼦」と同じ単語だが、機能が異なるので⽇本語では「胞⼦」「芽胞」と呼び分ける。 芽胞を完全に不活化するにはオートクレーブ処理(約 2 気圧の飽和⽔蒸気中で 121℃15 分以上)、乾 熱処理(180℃30 分あるいは 160℃1 時間以上)、または特殊な消毒薬による処理が必要で、芽胞を不 活化できる条件で器具などを処理することを「滅菌」と呼ぶ。 有芽胞菌は、芽胞染⾊で染め分けることができる。Moeller 法では、⽯炭酸 フクシンで芽胞を⾚く、メチレンブルーで菌体を⻘く染める。この⽅法は有 芽胞菌と芽胞を持たない菌を区別するほか、芽胞が菌体のどこで作られるか で、菌種を同定することもできる #グラム陽性細菌とグラム陰性細菌の細胞壁の違い (fig. 24-04) 芽胞を作る細菌 Bacillus 属(グラム陽性桿菌、⼀般細菌) 炭疽菌、セレウス菌 Clostridium 属(グラム陽性桿菌、嫌気性菌) 破傷⾵菌、ボツリヌス菌、ウエルシュ菌、ディフィ シル菌 #芽胞の局在 「シンプル微⽣物学4版」p.17より
23 芽胞の位置は「中⼼性」「偏在性」「端在性」などに分類され(右図)、Bacillus 属は中⼼性、Clostridium 属は⼀般に偏在性〜端在性が多い。 以下では、Bacillus 属と Clostridium 属について、代表的な菌、芽胞の位置、病原性や関連疾患につい てまとめておこう。 ■Clostridium 属(グラム陽性桿菌;嫌気性) Clostridium 属は⼟壌中や動物の腸に住むが、Bacillus 属と違い嫌気性細菌であるという点が重要。つ まり腐敗した植物、壊死組織、真空パック中など、酸素濃度が低い特殊な条件下でしか増殖できない。 酸素があると増殖できないのは、実は活性酸素に対する防御能が弱いからだとされる。 菌種 芽胞の位 置 病原性など 破傷⾵菌 C. tetani 端在性 創傷感染し、嫌気的条件(虚⾎など)で破傷⾵毒素を産⽣する。毒素は 中枢神経系に⾄り、激痛をともなう⾻格筋の強い痙攣 tetanus が起こ る(破傷⾵)。 毒素は抑制性のニューロンの神経伝達をブロックし、末梢部のアセチル コリン過剰分泌を引き起こす。 ボツリヌス菌 C. botulinum 中⼼性〜 端在性 嫌気的条件でボツリヌス毒素を産⽣。真空パック⾷品や発酵⾷品(から しれんこん、いずし)などで⾷中毒を起こす。弛緩性⿇痺、副交感神経 ⿇痺の症状が出る。 毒素は神経の末梢部でのアセチルコリン分泌をブロックする。 成⼈では⾷中毒がほとんどだが、免疫能が弱い乳児では、ハチミツなど の芽胞が腸管で発芽・増殖し、毒素を産⽣する(乳児ボツリヌス症)。 ウェルシュ菌 C. perfringens 中⼼性〜 偏在性 ①ガス壊疽。創傷部から芽胞が侵⼊し、ガス産⽣を伴う急速な組織、筋 ⾁の壊死をきたす。 ②⾷中毒。⾷品中(カレー、シチューなど)から芽胞が侵⼊し、腸管で 増殖して腸毒素(エンテロトキシン)を産⽣し、軽症の下痢を引き起こ す。 ディフィシル菌 C. difficile 偏在性 腸管常在菌で、抗⽣物質の⻑期投与時に菌交代現象によって増殖し、偽 膜性⼤腸炎を起こす。 偽膜とは、局所の強い炎症により起こる膜上の形成物で、⽩⾎球フィブ リン、壊死物質などからなる。
24 ■Bacillus 属(グラム陽性桿菌) 封筒で送っても⼤丈夫なところがいかにも芽胞らしい。セレウス菌は穀物や乾燥⾷品、⾁・乳製品など を広く汚染している。嘔吐型は圧倒的に⽶飯によるものが多く、ご飯を炊いても芽胞は不活化しない→ 放置することで、ご飯中で出芽して増殖というパターンと考えられる。朝作ったお弁当を昼に⾷べるく らいはセーフで、室温で半⽇〜1 ⽇放置すると危険。ちなみに納⾖菌も Bacillus 属である。
2、細菌の遺伝学
(2006 問 8)ジャコブとモノが提唱し,後にノーベル賞を受賞したオペロン説について,ラクトース オペロンを例にとって説明せよ. (2004 問 15)次の⽂章の空欄を適当な語句で埋めなさい. 細菌は外来の遺伝物質を取り込むことで新たな形質を獲得することができる.これらにはいくつかの メカニズムが知られているが,裸の DNA が細菌に取り込まれ細菌の表現型が変わることを(1)とい う.遺伝物質の仲介が,細菌に感染することのできるウイルスである(2)によって起こる場合は,(3) と呼ばれている.プラスミドは染⾊体外の⾃⼰複製可能な DNA 分⼦であるが,プラスミドが供与菌と 受容菌の結合を介して伝達されることを(4)という.染⾊体あるいはプラスミド内に他の部位へ移動 可能な配列を持つものがある.このうち⽐較的サイズの⼤きいものを(5)と呼ぶが,これは最初にト ウモロコシで発⾒されたものである. <解答> (2006 問 8)解説参照。 (2004 問 15) 1、形質転換 transformation 2、バクテリオファージ 3、形質導⼊ transduction 4、接合 conversion 5、トランスポゾン ★「オペロン説」と「細菌の遺伝情報の変化と伝達のメカニズム」について、順に説明しよう。 ★まずオペロン説について。調節領域と複数の遺伝⼦を含む、DNA 上の単位領域をオペロンと呼ぶ。1 オペロンに含まれる複数の遺伝⼦は、まとめて mRNA に転写され、翻訳により複数のタンパクを作る。 菌種 芽胞の位 置 病原性など 炭疽菌 B. anthracis 中⼼性 炭疽菌はポリペプチドの莢膜を作る。 感染により炭疽 anthrax を引き起こす。創傷感染により⽪膚炭疽、 吸⼊により肺炭疽を発症する。後者は致死性が⾼い。 2001 年のアメリカで、炭疽菌の芽胞を郵便物で送付する無差別テロが起 こった。 セレウス菌 B. cereus 中⼼性 ⾷中毒。 ①嘔吐型:⾷品中で産⽣された嘔吐型毒素を摂取。 ②下痢型:セレウス菌が腸管内で繁殖して下痢原性毒素を産⽣。25 例としてラクトースオペロン(以下 lac オペロン)について説明する。まず、⼤腸菌のラクトース(乳 糖)代謝について、次の現象が知られている。 この現象は、遺伝学的にどのように基礎付けられるかを説明するのがオペロン説である。lac オペロン は、次の構成要素からなる(右図最上段も参照)。 ここで、培地中にラクトースが存在しない場合、 リプレッサータンパクが活性化されて、オペレー ター配列に結合する。このとき RNA ポリメラーゼ はプロモーターに近づけず、転写開始できない。 また培地中にラクトースが存在すると、リプレッ サータンパクは不活性化される。このとき RNA ポ リメラーゼはプロモーターに結合して、転写が開 始され、ラクトース代謝にかかわる 3 つの遺伝⼦ が転写、翻訳される。 簡単に⾔い換えれば、次のようになる。 ラクトースがないとき → lac オペロンは OFF になり、ラクトースをエネルギーとして使わな い ラクトースがあるとき → lac オペロンが ON になり、ラクトースをエネルギーとして使う 便宜的に「活性化」「不活性化」と書いたが、その 具体的な機序について述べておくと―― リプレッサータンパクは、ラクトースとオペレーター配列の両⽅に結合することができる。そこでラクトースが あるときはラクトースに結びついて、オペレーターに結びつかず、ラクトース代謝遺伝⼦が転写される。ラクト ースがないときはこの逆のことが起こる。結果的にこの仕組みによって、⼤腸菌はラクトース濃度依存的にラク トース代謝に関連する複数の遺伝⼦の活性を調節することができる。 図にかかれている「CAP」とグルコースの関係についても説明しておこう。⼤腸菌のエネルギー源とし ては、ラクトースよりもグルコースのほうが望ましく、両⽅あるときは主にグルコースを主に使う。ア クチベータータンパク CAP は、培地中にグルコースが少ないときに活性化され、エンハンサー配列に ⼤腸菌について知られている現象 培地中にラクトースが存在する場合、ラクトース代謝酵素が産⽣され、ラクトースが利⽤され る 培地中にラクトースが存在しない場合、ラクトース代謝酵素は産⽣されない オペロンにかかわる配列とタンパク ① エンハンサー配列:転写活性化因⼦(アクチベーター)が結合 ② プロモーター配列:RNA ポリメラーゼが結合 ③ オペレーター配列:転写抑制因⼦(リプレッサー)が結合 ④ ラクトースの代謝にかかわる 3 つの遺伝⼦ (ラクトースを細胞内に取り込む酵素、ラクトースを修飾する酵素、ラクトース分解酵素)