金 沢大 学 十 全 医学 会 雑誌 第8 7巻 第2号 2 1 7 ‑2 2 7 (1 9 7 8)
S r 89発現 骨 肉 腫の細 胞膜腫 瘍特異 抗 原 に つ い て
金沢大学 医学 部 整形外 科 学 教 室 ( 主任: 野村 進 数渓)
船 木 清 息
( 昭和5 3年2 月6 日受付)
悪 性 腫 瘍 細 胞の腫 瘍 特 異 抗 原 (tu m o r sp eci Ac a ntige n,T S A) と そ れ に対 する生 体の 免 疫 応 答に関 す る研究は, 近年t 著し く増加し て お り. 実験 腫瘍に つ いても, 人 体腫 瘍につい ても検 討が行わ れて いる.
が んの免 疫 学 的な診 断及 び治 療 を 考え る上でも. 第一
の問題 点が. が ん細 胞の腫瘍 特 異 抗 原 性である か ら で あ る・ し か し, 従 来, 腫 瘍特 異 抗 原と呼 ばれ て釆たも
のは, 必ずしも単 一 なもので は なく, 腫瘍 特 異 移 植 抗 原・ ウィル ス抗 原。 胎 児 抗原。 正 常細 胞 抗 原。 分 化 抗 原な ど を含ん だ抗 原 群であること が明ら か に なり, そ れ ぞ れの抗原が, 別 個に分析さ れ る様に なっ た. 腫 瘍 特異 抗 原は, 多く が腫 瘍特 異 性 表面 抗 原 とし て見 出さ
れ. 抗原 物 質の精 製や性状の分析 も,
一 部は行わ れ て いる が, ま だ未 知の点が多い. 実 験 動 物 腫 瘍につ い て は・
一 般に, 化学 的及 び物理的刺 激に よ る腫瘍は, ウ
イル ス性 腫 瘍に比して抗 原性が弱く, 特 異 抗原の存 在 は同定さ れつ つ あ る がt 抗原の精 製○分 析に関 する実 験は 2, 3 の化学 発が ん剤に よ る 腫湯につ いて試み ら れて いる だ け で‑ 州 .物理的刺 激によ り誘発さ れ た腫 瘍
につ いて は, 殆ん ど行わ れ ていない. 著 者は, 教 室で 継 代移 植さ れて いる Sr8 9
発 現マ ウ ス骨 肉 腫6】につ い て ‥瞳瘍特 異 抗 原の同 定。 部 分 精製を行っ た. 同 腫 瘍
につ い ては, 真 鍋7)や加 藤8躯, ミトコ ン ドリア。 ミク
ロ ゾー ム 。上 清 分 画に分 布 する特 異 抗 原 を 同 定し, 抗 原の部 分精 製を行っている が. 著 者は. 更に, 腫瘍細 胞 表面 抗原と して の特 異 抗 原の有 無と, 特 異 性の検討
を行い・ 抗 原の性 質につ い ても, 一
, 二の知 見を得た
ので, その結 果を報告 する.
実 験 材料と 方 法 1) 抗 原 材 料
生後 3 〜 4過 日のd、d N 系堆マ ウ ス( 体重 約20g) を 使用し, Sr8 9
発 現 骨 肉 腫 を作 製し た. 即 ち, Sr8 9
c l を 体重1g 当り0・3〟C i あ て過 2 臥 5 遅 達続. 計10 回
A T um O r‑Spe cific A ntige n in Sr89qindu c ed
M edicin e,K a n a z a w a univ e r sit y.
21 7
にわ た り・ 腹 腔 内に注 射し た( 真 鍋の方 法8り. Sr8 ¢投 与 開始 後9 ヶ月よ り 15 ヶ月に わ た り, 約20 % の発 生 率で, 管 状 骨の m etaphy sis に, 母指 頭 大の骨 肉 腫の 発生を見た. これを 初代 腫 瘍とし,無 菌的に割 出し てt
その腫 瘍の 一 部を,同じく 生 後 3 〜 4過d d N 系雄マ ウ ス の左 大腿骨々髄 内に移 植し た. な お,移植に先 立ち.
披移 植マウスに対 する前処 置と し て∴移 植4 日前にマ ウ ス1 匹 当りⅩ線100γ照 射. 移 植前日 に C O rtis o n e a c etate 2・5m g の皮 下注 射を行っ た. 移 植後 2 〜3 過 で腫 瘍は触 知 可 能と な る が. 4 〜5 過 七 母指 頭 大と な
っ た時に, 上 記と同 様の振 作で, 次の マ ウ ス に移 植し た・ 移 植率は 70 〜 80 % でありt 7 〜 8 過で腫 瘍 死 す る・長 期継 代 移 植し得たマ ウ ス のSr8 9
発現 骨 肉 腫1 系 統のう ち,154 代か ら158 代ま での骨肉腫( 合計 湿 重量 約100g) を プ ー ルして. 摘 出 腫瘍は壊死 部を出 来る だ け除 去し,使 用 時ま で ‑ 200c に保 存し, 本 実験 材 料と し て使 用し た. ま た, S・r8 9発現 骨 肉 腫の1 5 4 代 及び 1 56 代の腫 瘍 を, 20 % c alf s e r u m ・Med iu m 199 の培 養 液で prim a ry c ultu r ed c ell と して, 約48 時 間 後
に実験に供し た.
2) 対 照細 胞
吸 収用の材 料と し て正常d d N 雄マ ウ ス の諸 臓 器 及 び同系マ ウ ス の胎児 を使 用し た. ま た蛍 光抗 体 用の対 照 細 胞と して. 同 系 雄マ ウス の脳。 心。肺. 肝。 腎。 皐 丸・ 大腿 骨々髄 及び20 匹の同マ ウス脾臓の来 園 定
クリ オスタット切片 及び塗 抹 模本 を使 用し た. 対 照の 腫 瘍細 胞と しては, マ ウ ス腫 瘍のL 1218 ( 金 大が ん研 化 学 療 法 部)・ S‑180 ( 金 大が ん研 化 学 療 法 部), E hrlich が ん ( 金 大が ん研 化学 療 法 部). S C・42 ( 塩 野 義研 究 所). N F 肉 腫 ( 塩 野 義研 究 所) の各 細胞. ラ ッ
ト腹 水 腫 瘍のA 即97 4( 佐々木 研 究 所)及 び A H 13 ( 佐
々木研 究 所), ヒト由 来 腫瘍のO S T 細 胞 ( ヒト骨 肉 腫 由来 培 養 細胞, 金 大 整 形外 科) の新鮮 塗 抹棟 木 を 使用 し た.
Oste oge nic Sa r c o m a of M ic e. Fu n ak i Kiyotada, D epa rtm e nt of O rthopedic Su rge ry(D ir e cto r ‥ Pr of.S. No m ur a), Scho ol of
3 ) 抗原 分 画の作製
Sr8 9 発現骨肉睦膜 成分の抽出法は.ま ず,不溶性リ ボ 蛋 白分画を, S mith ら9 ト の方法に準じ た倉田 ・ 岡田 ら1 0 卜 13 ) の方法によって作 製■し た
. 凍結 保 存の瞳瘍 塊を融 解 後細切 し, 得ら れ た量の約3倍 容量の Solu‑ tio n I を加え, ユ ニ バ ー サルホモ ジナ イ ザ ー ( 日本
精 機) で ホモ ジネー ト と し, ガ ー ゼ 2 ・4 ・8 杖 を 順に 通 して から, 遠心 して沈漆 を集め た. 次に, 再 度 同 量
の Solutio n I を 加 え, テフロ ンホモ ジナ イ ザ 一 に約
5 分 か け, 遠心 し た. その沈 漬にSolutio n I I を加え,
テフロ ンホモ ジナ イ ザ ー で 約5 分間磨 砕し た後, 遠心 して沈漣 を得た. Solutio n II によ る磨 砕と遠心 を,
さ ら に7 回 く り か え して, 沈渡 "L P ''を得た. 全操 作 は, 0 〜 4 ℃ で行った. 遠心 は, すべて冷 凍 遠心器に よ り, 1 0 0 0 0 × g ・3 0分行った. 次に, こ の不溶分画
"
L P" を, 倉田 ・岡田法13) によって可溶 化し た. 即
ち, 得ら れ た湿 重 量 約1 0 g の L P に, 0.2 % デスオ キシコ ー ル醸ソ ー ダ(D ifc o) 溶液を約3 0 ml 加 え,
ホモ ジナ イズし た後, 1昼 夜 冷 室で, マ グ ネ チックス ター ラ ー を 用い, 急 速にし か も泡立てないよ うに捜 拝 し た. 1 0 0 0 0 × g ・2 0分冷遠心 して上清を集め, その沈 達を, デスオ キシコ ー ル酸溶 液によ る同 様な抽出振 作 で処理 し た. 抽 出操 作は3 回行い, 3 回の抽 出上浦を 合せ, 約1 0倍 容 量の冷アセ トンを加え, 1 畳夜 ‑2 0℃ の冷室で放置 し た. 生 じ た沈澱を, 低 速 冷 却遠心で集 め, 少 量の蒸留水に溶かし,
"
L Ps ol" を得た. ついで,
セ フ ァロ ー ズ 4B によ るゲ ル濾 過を行い, 第2 のピーク
(r etain する 分画 "L P fr
"
) を得た.
3 ) 抗血 清の作 製
プー ルし た L P fr をpe r v apo r atio n (セロ ファ ン チ
ュ ー ブに入れ, 冷 室で気流 中に おく) に よっ て濃縮し,
10 m g 蛋白/ 山溶液と し, 免疫抗 原と し た. その坑 噺 叡夜
に.同 容 量のFr e u nd14 1の完 全アジュ バ ンド( パ ラ フィ ン池 &.5mL, Arla c el A l,5 mL,B C G 乾 燥 死 菌10 m g) を加え てエル ムジョ ンと し, 1 回につきその2 m乙 を健 常 成 熟モ ル モ ット(ハ ー トレイ系, 体 重400 〜 500g)
の肩 甲下 腔に注 射し た.2 週 間 隔, 4匝卜注 射し.最 終 注 射 後7 日目に心臓 採 血して. 血清 を分 離し, 使 用 する ま で ‑ 20Oc で保 存 した. な お, 蛋 白定 量は,Lo w ry ら15 1の方 法に よっ た.
4) 吸収 抗 血 清グロ ブ リン の作 製
OOc 付 近で.Sr8 9発 現 骨 肉 腫 L P fr の抗モ ル モッ ト
血 清と等 量の生 理 食塩 水.っ い で飽 和 硫 安溶 液を加え.
マ グ ネ チックスタ ー ラ ー で約30 分 娩 拝し た後, 1500
× g で30 分 低 温 遠 心し, その沈 壇を,は じ めの抗 血清 量と等量の生 理 食 塩 水に溶か し, 冷 室で生理食 塩 水に
対し てtl 昼夜 透 析し た・ つ い で透 析し た グロ ブ リン液 20 m=こ対し. d d N 系 正 常マ ウ ス脾。 肝 。 肺 。 JL‥
腎。大腿骨々髄10 匹分及 び同マウス胎 児3 匹の生 理 食塩 水ホモジ ネー ト( 20 % ホモジ ネ ー ト) を 約20 雨 加え・室 温1時 間 放 置 後.40c で1 夜 置いた敏 速心 上 清を と り, 同 様 吸 収 操作を さ ら に3 固くり か え し た.
4 回吸収 終 了 後. 上 清をセ ファデックスG ‑1 0 0 のカラ ム に通して得ら れ たpa s s 分画を プー ルして , 吸 収 抗 体グロ ブ リン分 画 (Ig‑abs) と し た.
5) 寒 天 内二重 免 疫 拡 散法
Ou chte rlo ny 法一6 = 71E こよっ た. 透 析 精 製し た 4 % 寒 天 ブロ ック 15g,0.01 % E D T A を 含む0.1 N リン敢 緩 衝 液(PH 7.2 )15 mL. 1 N NaN3 3 mL ∴蒸 留 水2 mLを加 え. 全 量30 山 と し, 加 温 溶 解し.8 × 12c m のガラ ス
坂 上にこ の混 合 液 15 舶を 流し.冷 却 固 化さ せ,厚さ約 2 m m の寒天 板をつ く り使 用し た.40c の湿 潤 状態で抗 血 清 及び吸 収 抗血 清と正 常 臓 器ホモ ジ ネー ト を反応さ せ. 連日観 察し, 沈 降線が出そ ろった軌 写 真 撮影を 行っ た.
6 ) 免 疫 電 気泳 動 法
1 % Aga r o se(BI O 。R A D Labo r ato rie s, Calfo.,
U S A) に よ る 電気 泳動 法 を行っ た.緩 衝 液は Ve r o n al 緩 衝液(pH8.3 , 〟二= 0.05 ) を 用い,2m A/c m の定 電 流のもと に, 抗 原孔に S r8 9 発 現 骨 肉 腫膿 成分L Pfr を 入れ90 分 間泳 動し た.泳 動後,す み や かに抗体 溝に抗 L P fr モ ル モ ッ ト血 清を入れ, 40c 湿 潤 状 態で反 応さ せ, 48 時 間後 判 定 を 行っ た.
7) ディスク電 気 泳 動 法
L P fr 棲 品につい て , 7 .5 % 及 び 1 5 % のポ)l アク リ ル アミ ドゲルに よ る分 析 用ディスク電 気 泳 動 を 行っ た.各 管4m A で約1 時 間 泳動し.7 % 酢 酸で1 0 分 間固 定 後,1 % アミ ド黒10B 。7 % 酢酸 液で30 分 間 染色し.
つい で7 % 酢 酸で脱 色 を 行っ た.
8) 分子 量 測 定 法
Da vis o n 法1 8 )に よ るセ ファ ロ ー ズ6B ゲル濾過 で, Sr8 9 発 現 骨 肉 腫L P fr 2 の分 子 量測 定 を行った. 標 準 試 料と し て, 非 酵 素 分 子 量マ ー カ ー キ ッ ト (Sch w a r z/M a n n, D ivisio n of Be cto n D ick in s o n a nd Co,
,Or a ngebu rg, N. Y. U S A) を使 用し た.
9 ) 蛍光 抗 体 法
d d N 系 堆マウス正 常臓 器,Sr8 9
発 現骨 肉 腫の腫瘍 塊 は,
‑ 800c で凍 結し, 未 固定ク リ オスタッ ト切 片を作 製し た. ま た同マ▲ウス正 常 骨 髄や脾 臓,Sr8 g
発 現骨 肉 腫, その他の実 験 腫瘍の塗 抹 標 本 ( 冷ア セ トン3 分固 定)を使 用し た.原血 清の16 倍 稀 釈に相 当 する Ig・abs
( 約 0 .1m g 蛋白/ mりを模本 上に乗せ.370c の湿 潤状