ウ イ ク セ ル の 資 本 構 造 論
児 玉 元 平 一
社 会 的 実 質 資 本 の 増 加 が
︑ 賃 銀 水 準 に あ た え る 効 果
︑ し た が っ て
︑ ま た
︑ 資 本 価 値 に あ た え る 効 果 は
︑ 通 常
︑ ウ イ (
1 )
ク セ ル 効 果 と よ ば れ て い る
︒ ウ イ ク セ ル の 資 本 理 論 は
︑ ベ ー ム
・ バ グ エ ル ク の 資 本 理 論 の た ん な る 数 学 的 定 式 化 を こ え て
︑ こ の ウ イ ク セ ル 効 果 を 明 示 的 に 分 析 し て い る 点 で
︑ 彼 の 資 本 理 論 の 重 要 な 貢 献 が あ っ た と 考 え て よ い
︒ と こ ろ で ウ イ ク セ ル 効 果 の 分 析 に お い て
︑ 実 質 資 本 の 増 加
︑ 資 本 の 蓄 積 と い う 場 合
︑ ベ ー ム
・ バ グ エ ル ク 的 観 点 で は
︑ 平 均 生 ( 2 ) 産 期 間 抄 延 長 化 を 意 味 す る が
︑ ウ イ ク セ ル 白 身 の
﹁ 講 義
﹂ 記 お け る 観 点 か ら い う と
︑ そ れ は
︑ 全 体 と し て の 資 本 を 組 成 す る 各 種 の 投 資 期 間 を 異 に し た 資 本 財 グ ル ー プ の 構 造 変 化 を 含 む も の で あ る
︒ そ れ 故 に
︑ 貸 銀 及 至 地 代 に あ た る 資 本 変 化 の 効 果 も
︑ こ の よ う な 資 本 構 造 の 変 化 を 通 じ て は あ く す る こ と が 必 要 と な る
︒ ウ イ ク セ ル は 既 に
﹁ 価 値
・ 資 本 お よ び 地 代
﹂ に お い て
︑ ウ イ ク セ ル 効 果 と 生 産 期 間 乃 至 投 資 期 間 と の 関 係 に つ い て の 考 察 を 通 じ て 資 本 構 造 の 素 描 を あ た え て い る
︒ し か し
﹁ 講 義
﹂ に お け る 彼 は 更 に 前 進 し て
︑ 資 本 変 化 を は っ き り と
︑ 水 平 的 デ ィ メ ン シ ョ ン
︑ 立 体 的 デ イ メ イ シ ヨ ン の 変 化 と し て と ら ま え
︑ 貸 銀 地 代 に あ た え る 効 果 を 両 デ ィ メ ン シ ョ ン の 側 か ら 考 察 し て い る
︒ リ ン ダ ー ル は
︑
﹁ 講 義
﹂ に お け る こ の 分 析 こ そ
︑ 資 本 理 論 に お け る ウ イ ク セ ル の 最 大 級 の 重 要 な 寄 与 で あ る と い っ て い る
︒ ウ イ ク セ ル の 資 本 構 造 論 一 九
経 営 と 経 済
三O
﹁この基本的な命題(資本が増加し︑利子率が低下するとき︑概して長期投資は短期投資よりも大なる割合で増加す
るという命題)はベlム・パヴエルクにおいては判然としていない︒彼はただ全体としての社会の平均生産期間のみ
を考えていたのにすぎず︑どのようにして︑この平均時聞が︑長さを異にした各種の投資から調合されるのかという
問題を無視している︒その結果︑彼にとっては︑資本の増加は︑平均生産期間の延長をともなうというにげであり︑
そして︑投資の延長化は個人的な立場からしても有利であるという説明をあたえたにすぎない︒さまざまな現存資本
投資は比例的には増加せ︑す︑相対的に長期投資がより有利となり︑かっ︑このことを通じて資本増加にもとづく賃銀
その他の本源的用役の価格の上昇が中和されるという命題を明確に組織的に定式化した功績は︑事実上︑ウイクセル
にあたえられる同きものと考えられる︒それは︑恐らく︑資本理論の分野における彼の主要な業績をなすものといっ
qd
てよいであろうよウイクセルは︑資本問題研究の過程におって︑次第にベlム・パヴエルクの理論のもつ欠陥を認め︑
乙れを克服する努力をかきねている︒
のである︒以下資本構造の変化と賃銀地代及利子との関係について若干の考察を加えたい︒ ﹁講義﹂において展開された資本構造論はその果実の一つと考えられるべきも
まず︑ウイクセルの資本概念の展開について若干述べておこう︒彼は﹁価値・資本および地代﹂における第二章H
Sせ新しい資本理論dの最初の部分で︑資本の概念を全く満足のいく方法で定義することの困難を指摘してい列口そして︑
さらに︑ベlム・パヴエルクの社会的資本と私的資本との区別にまつわる困難を明らかにして︑彼自身は︑社会的資
本は単純に私的資本の合計からなると結論する︒Lかし︑彼が︑資本を定義する場合にとった立場は︑本質的には︑
ベlム・パヴエルクのそれである︒即ち︑生産過程そのものは︑時間消費的︑資本使用的な過程であるということが
実質資本に関連する現象の根本的な側面を示すものであるということである︒したがって︑資本の定義においても︑
乙の観点がおりこまれねばならない︒ウイクセルが︑資本と非資本とを区別するのに用いた基準は︑本質的にいって
迂図的生産過程によって加減しうる財のみが︑資本のカテゴリーに属するということであった︒ウイクセルは︑最初
資本に二つの定義をあたえている︒
( a )
広い意味における資本︒それは︑利子を生むすべての生産された物的財を
RU
いろいろな資本はすべて同じ経済的役割を演ずるものではないよそ乙で︑別個の定義が含むものである︒
﹁し
かし
︑
(b
)
狭い意味における資本︑それは非耐久的であって︑急速に消耗する生産財と︑消費者の手許にない
限りにおける消費財のイシベントリーからなるものである︒ウイクセルの広い意味の資本と狭い意味の資本との区別
は︑その物的財の耐久性を基礎としてなされている︒そこで︑土地として看倣されないところの生産された耐久的物 な
され
る︒
的財をウイクセルは︑
E3
・ 問 ︒ 5
︒ 門 田
ωことよんでいる︒この資本の広狭の二章一的な定義は後年の﹁講義﹂において放棄
され︑そこでは︑資本はつぎのごとく定義されている︒﹁資本は︑その本源的な形態における自然力と︑直接的人間
労働とを除外して︑生産にたいするすべての補助的手段を含む︒それは︑そこで仕事が為されると乙ろの家屋︑ビル
デイング︑仕事がそれでもって行われる道具と機械︑生存手段︑生産された原材料l最も重要性のないカテゴリーで
あるというのではないがーーもし仕事がなされつつあるならば︑貯えられ︑準備されねばならぬところの食糧その他
ρ0
の財を含む︒﹂この定義は︑勿論彼自身のいうCとく日常の慣行と一致する︒そして︑ウイクセルは﹁講義﹂では︑資
本を生産財の合計として︑横断面的側面からと︑貯えられた労働用役と土地用役の完成消費財への継続的な流れとし
て︑あるいは成熟化として縦断面的側面から眺めている︒そして︑まに︑その接近の角度から︑ウイクセルは︑つぎ
のととく定義する︒﹁かくて︑われわれば︑資本を︑年の経過のなかで蓄積されるところの︑貯えられた労働と土地の
﹃
d q u
一つ結合的な集合体と考える乙とができるc﹂﹁大部分の資本財は貯えられた労働と土地の結合からたりにっているご一
ウイグセルの資本構造論
経 蛍 と 経 済
ウイクセルの資本には既述のごとく︑耐久的な物的財が含まれているが︑﹁講義一において展開された資本構造の変
化において取上げた資本には︑耐久的資本財は排除されており︑耐用性の問題は全く無視されている乙たに︑そこで
は︑資本財の消費財への成熟期聞が問題とされ︑資本は流動的な資本財のみに限定され︑耐久的な固定的資本財の分
アツカ
lマンの批判によって導入されたにすぎない︒
析は
llウイクセルの資本理論は︑ベム・パヴエルクの資本理論を基礎として︑その拡充という形で展開された︒ベム ︑
の資本理論には︑二つの本質的に電要な概念がある︒生産期間と生存県本の概念がそれであるοわれわれは︑乙冶で
これら二つの概念について吟味する意図はないが︑生産期間の概念については︑ベlム以後資本間論の分野における
AHJV 論争の中心テlマーであったし︑またウイクセルも﹁価値・資本および地代﹂において乙の概念を使用しているが︑
その態度は懐疑的であったし︑むしろ投資期間の概念をもってこれに代えようとじた︒投資期間は︑つぎのCとく定
義されうるであろう︒即ち︑実質資本の生産に使用される労働土地用役の量にたいし︑賃銀地代を支払うことによっ
て資本が投入された時点から︑完成された消費財の販売によってこの資本が回収される時点にわたる期間を︑投資期
聞とよぶことができるであろう︒ウイクセル自身は最初︑単利計算の場合を例として︑生産と投資が継続的であり︑
同一量の生産要素が使用されるならば︑投資期間は︑生産期間の
12
にひとしいと考へた︒投資期間の概念のもつ直接点的な利点は︑それが︑労働と土地用役の投入に利用しうる資本の量を測ることができるということである︒と乙
ろで︑ウイクセルは︑後に︑複利計算の場合の投資期間の算定をとりあげ︑投資期間は利子率に依存することを明ら
かにしている︒﹁平均投資期闘が利子率に依存しないという仮定は︑に亡︑厳密にいって︑各種の資本投資が一つの
そして同じ将来の消費行為に関連する場合にのみ妥当する︒という事に留意すべきである︒反対に︑一つの或はそれ
以上の生産要素が︑単一の資本財或いは耐久消費財に投資される場合︑平均投資期間は利子率に依存することは容易
に理解しうるo﹂ウイクセルは狭義の意味における資本をK︑年で示された平均投資期聞をtで示して︑その比率K一t
についてつぎのC
とく
述︒
へる
︒
﹁これは︑年々に自由になる資本︑即ち︑労働︑土地の用役(或は他の収益財)を買
入れるために毎年支払に利用しうる完成財の額を示す︒そしてそれは賃銀地代の年基金をなすものである︒Kそれ白
体︑流動資本全体の価値で︑たとえ︑一度的でなく︑一期間にわたってのみ自由且流動的となるにしても︑全体の賃
銀土地基金と考へられるのであるごもっとも︑生産期間や投資期間の概念は︑ウイクセルにとっては︑最初から︑生
産過程分析の一用具にすぎず︑経済的諸力の働く一般的な方向についての知識をあたえることが︑この概念設定の日
的であったから︑現実的に可測的なものであるかどうかは問題外であった︒
ウイクセルの投資期間の概念とならんで︑資本変化と結びつく概念にH
資本の時間的成層化(己
E Z 2 2 z
︒ロ︒
同
u M
岬
2 1 z ‑ S
円 ︒ロ
m
F Z B O ) d
p
資本の技術的ディメンションと構成d(
言 ︒
F
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‑ E B O
ロ巴
︒ロ
ω
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B
︒U
︒己主
︒ロ
)
F水平的ディメンションと立体的ディメンション(﹃︒ュ
8
ロg
‑ E s o o
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ロ 巴 品22
芯巳
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︒ロ
)︑
グ資
本の
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高きと幅
( F E m E ω
ロ 円四 げ
ω
円 ︒神宮
)
s︑グ資本投資の重心(吾
0 2 E 3
︒同
開門
ω
ヱ ミ えの
8
Z ω
‑ z
s
己g o E ) H
と
いうような概念がある口資本の水平的或いは横断面的ディメンションと立体的或いは縦断面ディメンションについて
は︑ウイクセルは﹁:::かくて現実に存在する資本(流動的と固定的)の横断面は︑資本の殆んどすべて
1
1も
し︑
もっと厳密な理想な観点をとるならばーーその全部は︑投資された資本の形態をとることを示すものである︒しかし
縦断面をとると︑各個の資本部分は︑遅々として文は迅速に循環過程をくりかえすものと考えられ︑その始点と終点
においては自由資本︑換言すれば消費財の形態をとることがわかるo﹂資本の立体的ディメンション或いは成層化とい
う概念は︑むしろ︑現存資本財の再生産費と関係する︒こ︑に︑われわれは︑ウイクセル効果とのリンクを見出すの
であ
る︒
ウイ
グセ
ルの
資本
構造
論
経 嘗 と 経 済
二回
本論に入る前に最初に指摘しておこう︒ウイクセルの資本構造変化の分析は︑主として比較静学的な分析のワクの
なかでなされており︑乙︑に︑ロビンソンの指摘するCとくウイクセル効果という本来的に過程的効果に関する問題
分析にとって一つの限界がある︒﹁われわれは︑われわれの観察の基礎として︑定常状態を仮定するであろう︒この
ことは︑もし︑更にまして複雑な問題であるところの事実上の過渡的な段階を考慮に入れず︑これらの変化が既に終
った︑そこで静態的均衡が再び回復したと仮定するならば︑関係量の変化を考察けるのを妨げるものではない︒した
がって︑われわれは︑毎年貯えられる労働と土地の量は同一と仮定するであろう︒﹂﹁われわれは︑資本が最初蓄積さ
れ問題の生産期聞にわたって適当に配分される過渡的期聞を無視しよう︒われわれはたV完全均衡が回復した後の状
態のみを考察する︒﹂
出発点を︑実質資本の存在しない封鎖的経済としよう︒生産の資源は︑労働と土地のみで︑年々利用しうるその用
役量を前者はA︑後者はBで示し︑いづれも一定と仮定しよう︒AとBとの結合により︑消費財Cが生産される︒い
ま︑賃銀率をw︑地代を
r
(いづれもリアルタlム)で示すと︑消費財年生産の価値は︑
ハulkrtξ+
回円
fヘ
・ーー晶
、
‑〆
で示され
40
0
つぎに︑資本の蓄積と成層化の問題にうつろう︒資本財の成熟期間はまず一年として︑そして完成した
資本財は︑直接消費財生産に使用せられる労働と土地の用役と結合して毎年消費財を生産する︒そしてその期聞に資
本財は完全に消耗すると仮定するcかくて︑資本の成層化にともなう成熟期聞は問題とされるが︑資本財の耐用性に
ついては全く問題とされない︒このことは︑ウイクセルの資本構造変化が耐周期闘が︑きわめて短い資本︑全く狭義の
資本に限定して考察されているからであるcそこでいま資本財生産がはじまるわけだが︑出発点で生産資源の完全雇
用を仮定すると︑最初の資本財の生産期間においては消費財の産出量は減少するであろう︒
産に転用された労働用役を︒︑土地用役を川で一下し︑完成長本財の価直土︑(﹀同君︑+F円)で示さう︒その投入
A
‑ B f l
生産費は
( kr =
同省+国三円)である︒そζで︑資本財が完成した後︑この一年成熟資本財と︑投資されなかった労働
土地用役量(﹀当
lp
ニ 当 + 回
I F
‑ ‑
円)とでもって生産される年間消費財は最初の資本財のない場合に比較し
てより大であろう︒われわれは︑ウイクセルにしたがって5Mの生産力の増大があったとしよう︒いはば︑資本財の 一年成熟期間の資本の生
価値は︑この5%だけ︑その投入生産費より大である︒こ﹀に︑限界生産力の差としてのウイクセルの利子概念が示
される︒即ち︑﹁資本は︑貯えられた労働と土地である︒利子は︑貯えられた労働と土地の限界生産力と︑現在労働
向日制と土地の限界生産力との差であるo﹂ウイクセルはこの関係をつぎのように示している︒資本に投入された労働と土地
用役の量を
a1
、
ムとし︑直接使用される労働と土地用役の量をa︑b︑とすれば︑消費財の産出量は︑次のC
とく示しうる︒
un
H
司
(p
・v
ωt v
同 )
( M )
直接労働の限界生産力を丸︑これはまた賃銀率
wにひとしく︑同様に︑直接土地用役の限界生産力をれ︑乙れ
はまた地代rにひとしく︑他方︑資本として貯えられた労働︑土地用役の限界生産力を︑それぞれ︑ア‑ugJ司E
H円
︑で
示す
と︑
明白 岡
141VFF‑u円︑V円
の関係があり︑均衡ではまた次の関係が成立するc
( ω )
ウイ
グセ
ルの
資本
構造
論
二五
経 営 と 経 済
一一‑‑'‑
ノ、
!~
毛i
「
,~
1 1
l円
円, 1
円
引い
]F
( h F )
の限界生産力よりも︑ こ
こで
︑
iは利子率を示すc
そこ
で︑
一年成熟資本財をもっ定常経済の資本構造は簡単に第一図 一年成熟の資本財(﹀同省+回目円)の限界生産力は︑直接労働用役と土地用役
昨(
﹀=
同省
十回
25.にけ大である︒
品 ︒
品M
の如
く示
しう
るで
あら
う︒
(k
r‑
d司
+回
目円
)は
期首
にお
いて
︑直
接使
用さ
れる
労働
土地
(﹀
当i
kr
=戸
建)
+(
回同
ll
回目
=円
)
とともに生産に協合される完全資本財の用役価値を示し︑
トlw+B乱払4H'1 r
l
│
い B1♂r卜I内(Awは山一 んh川1川w第 一 図
ニ当+国三円)は年々︑定常経済を維持するために再
( P
投資されるべき生産要素の価値で示された直接労働と土地用役を示す︒乙れは又完成一年資本財
のコストでもある︒乙こで︑同じく一年成熟の資本に投資し︑しかも︑資本蓄積量を異にすると
ころの二つの定常均衡の経済を比較しよう︒そして︑資本使用の増加が︑現在期間における所得
分配にどのような影響をあたえるかを吟味しよう︒一般的に︑直接労働土地用役の限界生産力は︑
貯えられた労働土地用役の限界生産力よりも小であるが︑しかし︑このことは︑資本使用の噌加
によって︑直接労働土地用役の限界生産力が増加しないことを意味するものではない︒資本家的
生産方法の拡張は︑総労働土地の量をコンスタントとするかぎり︑直接生産に使用しうる労働土
地の量を減少せしめるであろう︒これは後に述べる︑ウイクセルの資本構造の水平的デイメンシ
ヨンの拡張に相当するものであるが︑これら生産要素の限界生産力は相対的に増加すると考えて
よいであろう︒賃銀率と地代が直接的労働と土地の限界生産力によってきまるかぎり︑資本蓄積
品耳切削M量の大なる経済では︑賃銀率と地代の水準はより高いであろう︒しかし︑ウイクセルも指摘するととく︑資本蓄積が
技術進歩をともなった場合︑資本増加︑生産増加にかかわらず︑直接労働土地用役の限界生産力は相対的に低下する
ことがある︒ウイクセルは︑技術的進歩の類型については︑現代におけるが如︑き精密な分析は殆んど行っておらない
したがって︑ウイクセルがこ冶で意味する技術的進歩を単純に労働節約的︑資本使用的技術進歩と剖きってしまうわ
けにはゆかないcまた︑ウイクセルは別の個処で︑資本蓄積をともなわないところの︑長期投資を有利ならしめるよ
ω
うな技術的進歩を考えている︒下︑資本の成熟期間の延長という点に焦点を合せて考察しよう︒ 資本の構造は水平的ディメンションにおいて変化するのみならず︑立体的ディメンションにおいても変化する︒以
一年成熟の資本と弛んで︑二年成熟の資本投資が計
画されたとしよう︒計画実施前の出発点が︑一年資本の構造をもっ完全雇用の定常経済であったとするならば︑二年
資本の構造をもっ経済への過渡的期聞においては︑従来生産に直接投入された労働土地用役の若干が資本財生産に転
用される︒そこで︑消費財の生産が縮少する︒こ︑に待忍の必要が生じる︒利子をこの待忍に対する報酬として其の
観点が成立する︒いづれにしても︑過渡的期聞においては︑直接労働用役は縮少してゆくであろう︒その計画の第一
年目の初めには︑
( ﹀
4 5 4 ﹃
+
‑ g
回u s ‑ ‑
ーこ
︑で
︑
AとBの記号左側の添字は初年度︑右側の添字は︑二年成熟資本
投資を意味する︒ーーに相当する労働土地用役が︑消費財生産より転用される︒第二年目のはじめには︑やはり同量
の労働土地用役が転用される︒しかし︑第一年のはじめに投入された労働土地用役は第二年のはじめでは︑
した未完成資本財となって存在する︒これを︑(﹀
‑u
t弓+回二叫)で示さう︒ABとの左側の添字は成熟した期
聞を示す︒乙﹀で︑注意したいことは︑ウイクセルのモデルでは︑労働土地の用役が︑同一未完成資本財について︑ 一年成熟
成熟期聞にわたって継続的に毎年投入されておるのではなくて︑たとえば︑ブドウ酒の場合のごとく││・このモデル
では勿論︑資本財はブドウ酒でなくて︑直接労働土地用役と協合して消費財を生産する資本財││第一年目のはじめ
て労働土地用役が投入されて︑第二年目以後では︑労働土地の投入はなく︑た
J Y成熟を待つばかりの資本財について
ウイグセルの資本構造論
二七
︐ 経 嘗 と 経 済
二入
考察しているのである︒成熟期間の長短にかかわらず︑投入された労働土地用役の量は一年分だけである︒そして生
産力は成熟とともに増大することが前提とされている︒二年成熟の完全資本財を
(k
ru当
+ 回
u円)で示きう︒第二年
自の終り第三年目のはじめでは︑完成資本財は︑一年成熟の資本財と合せて︑
( ﹀
ud 司
+ 回
u円)+(﹀困者十回二)
となり︑これが︑直接労働土地用役と結合して消費財の生産に利用される︒この場合︑即ち二年成熟の資本財が現実
に使用された場合の産出且昆は︑一年成熟資本財のみの場合の産出量より大であるであろうcそこで︑二年成熟資本財
乙の資本構造が継続的に維持されるためには︑が完成した以後の均衡経済では︑
+ 回
=u
円 )
(﹀三者+国三円
) w
(﹀
=u
d弓
の労働土地用役が再投資されねばならぬであろう︒第三年目のはじめの資本構
A,,:.:w+B,,:!r
A01w+B川 rI
1 A ‑ 1 ‑
+I W ) l
(Br‑B,,:!r‑B川r)
図 A1w+B1w
A1:.:w+B1:!r
Aゴw+B:!r
年々
︑
造はつぎの図で示しうる︒資本成熟の延長化にともない︑直接生産に使用しうる労働土地
用役は減少している︒そして︑資本構造は︑横断面的にも︑縦断面的にも拡大している︒
乙のモデルでは︑資本財の耐久性は無視されているから︑完成資本財の成熟用役は現在 期間に於て完全に消尽される︒この資本構造を更に︑三年成熟資本︑四年成熟資本
1 1
(﹀
日目
当十
回目
︑)
"
(﹀
F
d司十回目同)でそれぞれ示すーーを持つ構造に拡大して想定するこ
第
とができまう︒既に指摘したCとく︑ウイクセルの分析の主たる目的は︑資本構造変化の
過程を考察することでなく︑定常均衡が成立した後の資本構造の比較であった︒そして︑
ウイクセルは︑短い成熟資本の構造をもった経済と︑より.長い成熟資本の構造をもった経
済とを︑企業者の側面からその有利性の問題を検一却する3一般的にいって︑労働と土地用
役をより長期間貯えるためには︑長期貯蓄の労働土地用役の限界生産力がより大であり︑
したがって︑その報酬もより大であらねばならぬ︒それ故に︑二年成熟の資本の限界生産
力は
︑
一年成熟資本の限界生産力より大︑したがってまた一年成熟資本の限界生産力は︑直接労働土地用役の限界生
﹁このことは︑すべての場合において︑二年資本が有利だということを意味産力より大であらねばならぬc
しか
し︑
しないことに留意しなければならぬ︒そうであるためには︑上記の三つの量が相互に複利で計算されに場合に生ずる
ものに対応するある確定的な関係をもたねばならぬ︒換言すれば︑もし︑一年資本(一年間貯えられた労働土地)の
限界生産力が︑現在の資源の限界生産力と︑たとえば︑一・
8
二・
00の関係をもっており︑したがって︑一年資本は
5 M
m の利子を生むものであるならば︑二年資本の限界生産力は︑必然的に︑一年資本の限界生産力にたいして︑少な
一 ・
8
一プ
00の関係をもたねばならぬ︒そして︑それ故に︑現在の労働土地資源にたいしては︑
プ00の関係をもち︑したがって︑二年資本は︑二年計算では︑少なくとも T吋%︑の利子を生むものでなくてはな
凶岬
Ti向MW
らぬ
︒﹂
ノ¥
︑六
) '' h
u
( プ
O印)u
利子率をiで示すと︑完成した一年成熟資本の価値は︑投入された労働土地用役の価値に利子率を乗じて示きれる︒
(﹀同省+回目同)リ
(KF24
唱 + 国 三 円 ) ( 一 + 時 )
同様に︑二年成熟資本についても︑一年経過の未完成資本財については︑
( 印 )
( K F 5
4 弓
+ 回
Z
円 ) 日 (
3 ﹀
4 司
十 回
= u 円)(一+‑)
完成資本財については︑
(
∞ )
(﹀
ud司
+ 回
︑ ) リ (
﹀
zu
d司
+ 回
Z同)(一+日)凶
三年成熟の資本については︑一年経過のものについては︑
( 吋 )
(﹀同担当十回同日刊円一)日(﹀
A g h d
d弓
+ 回
AVhd
同)(一十伊)
(
∞ )
二年経過のものについては︑
ウイグセルの資本構造論
二九
経 蛍 と 経 済
O
(﹀
u日目当+回u
日 目 同 一 ) H
(﹀=日目当+回=‑h)(↓
+ C
(
∞ )
完成資本財については︑
(﹀日目当+回L)(﹀=u目当+回=L)(一+仲)
( 一
︹ ) )
同様の方法で︑
(﹀国両者+回:円)(﹀z二司+回=・円)(一+‑)
〆戸『
'ー・晶
・ーー晶
、....‑'
(KFUFd
弓 + 国 三 円) H
(﹀
‑epd
弓 + 回
5同)(一十昨
) u
( 一一 )
( ﹀
HWFd弓+回目二円)
H (﹀三者+国三円)(一+F)日目
( 一ω )
(k
r‑
d︿
+ 四 百 ) 日
利子率が
5M
であると︑複利計算で︑各資本グループの価値を置換投資によって示すことができる︒
(k
rz
二 司 + 回
z‑
円)(一+昨)
(一
ム)
( ﹀
‑4
﹃ + 回 二 ) 日一・0印(﹀34﹃
十 回
= λ )
(一
切)
( ﹀
ud﹃
+ 回 二 ) H
‑・
5M
印
( K F 2
4弓
+ 回 zu円
)
(﹀担当十回目四円
) H
プ一
切. B N
印
(k
rz
担 当 + 回
Z
同)
( ‑ m )
(一吋)
(﹀
Fd弓
+ 回 二 ) H
プ
N‑
ωω
om
(﹀
土 問 看 +
Z回
円)
そこで二年資本が年ι4%以上の利子を生まぬかぎり︑一年成熟資本投資が継続されるであろう︒資本の構造は︑本
源的生産資源がコンスタントであるかぎり︑利子率の水準に依存する︒ウイクセルは︑この関係をつぎのように定式
化している︒
ω
式より考えられるととく︑二年資本の構造をもっ定常均衡の経済では︑つぎの関係が成立している o( 一 ∞ )
d
宅 ︑ 一
d ' H H t 司︑ u t弓HH
同追
い円
川H
同
︑ 一 円
(↓∞)
語 ︑
H d︿(一十戸
)w
g‑
H
(一+吟)凶人
i t司(一+MF)
(M O)
てH
円(
一+
日)
・円
注目
(一
+日
)・
同十
円(
一+
同一
ピ)
いま︑二年資本の限界生産力と︑一年資本の限界生産力が同一割合念で示きう)町八一)だけ減退したとしよう︒
君︑ud司(一+山)(一lh)朴当(一+Flh)
(M
一 )
(M M)
君︑目当(一+日lh)Vd弓(一+‑ーとu
(N
ω)
の関係が成立する︒そこで︑九川VFであれば︑一年資本投資は不利となり︑この投資は縮少する︒また︑mVN‑で
市 町
あると︑二年投資は不利となり縮少しなければならぬ︒そしてより長期の資本投資が有利となる喝これはウイクセル
的意味で︑縦断面的ディメンションの資本拡大であり︑資本構造の重心の上昇を意味する︒資本蓄積が︑資本の限界
生産力の低下をともなうかぎりでは︑それは︑資本構造の立体的拡大への傾向を含むものであるということができる︒
この問題は後で再び考察するであろう︒きて︑制式より
ω
式までの置換投資が相ひとしいと仮定しよう︒そこで︑.年から四年の成熟資本構造をもっ経済を想定すれば︑上の式の右辺を合計して︑
一 一 川
一一一一
2
一三
一 一 一 一
3
一 一 一 一 一
7
←成熟期間
ム ・
ω M ω
∞ω(
﹀三
者+
ロ=
同門
)
これを︑必要置換投資を差引くと︑
( M K干 )
0・ ωM
印∞ω(
﹀=
同者
十四
三円
)
(M
印 )
第 乙れが︑社会的資本の純生産物あるいは純限界生産物を示す︒直接消費財の生産に使
用しうる労働は︑(﹀当
I K E ‑
曲
‑
者)
土地
用役
は︑
(回
円l
kf
mw
‑二
円)
であ
たえ
られ
る︒
第三図は︑生産期間のはじめにおける資本構造を示す︒下部の1234の数字は︑そ
れぞれ異った成熟期聞を示す完成資本財を示し︑0は直接使用しうる労働土地用役を
ウイグセルの資木構造論
示す︒そして上部構造は︑各成熟期間の未完成資本財を示し︑上より下に向って成熟期間の経過を示す︒ところで︑
経 蛍 と 経 済
四年成熟資本に投資された生産資源の用役価値は︑生産期間の期首では︑各未完成財について求めて︑
(K
F2
4︿
+回
hZ
円)
+(
﹀2
4︿
+回
2円
)+
(﹀
:当
+回
:円
)+
(﹀
24
弓+
国三
円)
(M
m)
この
式は
︑
つぎのととく書きあらためることができる︒
︹一
+(
一+
昨)
+(
一+
昨)
u+
(プ
十吟
)h
w︺
(﹀
=担
当+
国三
円)
(N
ベ)
利子率が5%として︑乙れは︑
h干
・2
0M
印(
﹀三
者+
回三
円)
にひとしい︒同様にして︑三年資本について︑未完成資本財について求めると︑
(M
∞ )
(﹀
24
﹃+
回目
白叫
)+
(﹀
z d
﹃+回
二円
)+
(﹀
34
司+
回3
5u
ω・
一切
M印
︹}
(﹀
24
弓+
回=
hd
円)
(M
∞)
二年資本については︑
z d
( ﹀﹃+
回二
円)
+(
﹀2
4司
+回
=u
円)
HM
・0
印{
︺(
z d
﹀司+
回
AW U円 )
一年資本については︑期首においては︑
(ω C)
(﹀三者+回=同門)日プ
C C
(﹀
=回
当+
回三
円)
( ω
一 )
各資本財の置換投資は相ひとしいと仮定しているから︑上部構造の未完成資本財で示された資本構造の価値は︑右の
各式を合計して︑社会的資本K
は ︑
同
H一
0・
土M
∞M
U(
﹀2
4﹃
+国
三円
)
( ω M )
として示すことができる︒既述のととく︑社会的資本の純限界生産物は︑0・ωNω∞ω↓(﹀三者+回三円)であったから︑
乙れ
を︑
Kで割ると利子率i
が求
めら
れ︑
5%となる︒利子所得は︑‑問︑総所得は消費財ではかつて︑
﹀ 当 + 回 円 + 仲 間 u
ゎ
+0
・U
NU
∞一
(K
F2
4﹃
+回
三円
)
(ω ω)