シリコンにおけるFe不純物のゲッタリング
著者 青木 正樹
雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告
巻 22
ページ 178‑180
発行年 2001‑03‑30
出版者 静岡大学大学院電子科学研究科
URL http://hdl.handle.net/10297/1503
氏名 。(本籍
)
青木
正
樹 (神奈川県
)
学 位 の種 類
博
士
(工
学)
学位 記 番号
工博乙第
88
号学位授与の 日付 平 成 H年 11月 24日 学位授与の要件
学位 規則 第4条第2項該 当
学位論文題ロ
シ リコンにお けるFe不純物 のゲ ッタ リング
論 文 審査 委 員 (委員長)
教 授 福 家 俊 郎
教 授 田 部 道 晴 教 授 畑 中 義 式
教 授 星 野 敏 春 教 授 藤 安
洋
助教授 石 田 明 広
論 文 内 容 の 要 旨
ULSIは 微細化が進み、重金属汚染がデバイスの歩留 りや信頼性に与える影響が大 きくなっている。
そのため、デバイス活性領域の重金属汚染を除去するゲッタリング技術が重要になっている。イン ト リンシックゲ ッタリング(IG)技術 は、シリコン結晶中に含 まれている酸素 をシリコンウェハ内部 に 析出させ、ここにLSI製 造プロセス中に混入 して くるFeなどの重金属不純物 を取 り込み、デバイス活 性領域 となるウェハ表面近傍をクリーンにする技術である。本論文では、イントリンシックゲ ッタリ ングの基本的な特性 を明らかにし、その結果に基づいてLSI製 造プロセスにおける効率のよいゲッタ リング技術 を開発 した。またP/p+エビタキシャルウェハのメボロン高濃度基板のグッタリング効果に 関す る研究 も行 った。
一般的にチ ョクラルスキー法で結晶成長 したシリコンウェハ中には酸素が約1018cm‐3含まれてい る。IG技術 は過飽和 な濃度で存在 している酸素 をシリコンウェハの内部に析出させ、この酸素析出 物 にLSI製造 プロセス中に混入 して くる
Fc、 Cu、
Niな どの重金属不純物 を取 り込む技術である。デバ イス特性の安定 と歩留 り向上のためにゲ ッタリング機構の解明と効率のよいゲッタリング技術が必要とされている。
FeはLSI製造プロセス中の代表的な汚染金属不純物である。Feはシリコン中に深い不純物 レベルを 作 りpn接 合のリーク電流 を増や した り、致命的な結晶欠陥を発生 させるなどしてLSIの 歩留 りを低下
させ る。 また、cu、Niと比較 してFeは ゲ ッタリングされに くい とされている。筆者はシリコンにお けるFeのゲ ッタリング機構を明らかにするために、ゲッタリングの温度条件、ゲッタリングの時間特
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性 を調べた。酸素析出量 とFeの汚染濃度の各種のウェハについて、熱処理温度670℃か ら1000℃の範 囲で、15秒からlo分の短い時間領域における等温度熱処理 を行い、各熱処理温度で起 きている現象を 凍結す るためにサ ンプルを室温 まで急冷 した。熱処理後、Fe濃度 をDLTS(Deep level transient spectroscopy)法 により求めた。また、選択エ ッチング法および亜M(透過電子顕微鏡)一EDX(エネル ギー分極 線分光法)法を使 って、ウェハ内部 と表面の結晶欠陥について評価 した。
一連の実験からFeのグッタリングの過程 を補えることに初めて成功 した。すなわちウェハ表面のFe 濃度は酸素析出量が多いほど速 く減少するが、一定の濃度に達するとFe濃度の減少は止 まることを初 めて明 らかにした。その一定値は酸素析出量 に関係な く、シリコン中のFeの固溶限界濃度であること が判明 した。すなわちウェハ表面 と内部の酸素析出層 におけるシリコン中のFeの固溶濃度は等 しいこ とがわかった。また、熱処理温度 を上げると、酸素析出物にゲッタリングされたFeは容易に再放出 し て、Fe濃度はその温度における固溶限界濃度まで上昇することを見い出 し、Feのゲ ッタリングと再放 出は可逆的な反応であることを明 らかにした。以上のことから、Feのイン トリンシックゲッタリング は過飽和なFeが酸素析出物に優先的に析出する現象であることが判明 した。ウェハに混入 したFeは高 温熱処理時ではシリコン中での固溶限界濃度が高 くすべて固溶 し、酸素析出物にはゲッターされない が、熱処理温度が下がると固溶限界濃度 も下が り過飽和の状態にな り、酸素析出物に析出する。これ
に伴いウェハ表面のFe濃 度は減少する。 これがゲ ッタリング効果である。
LSI製 造プロセスでの最終的な高温の熱処理プロセス とその熱処理温度から室温 までの冷却工程が 重金属のゲ ッタリングに効いていると考えられる。実際に16M―DRAM製造プロセスの最終的な高温 900℃ 熱処理後、徐冷熱処理 を行 うことにより、電荷保持時間の短いフェイルビッ ト数を減少 させる
ことがで きた。
さらに、ボロン高濃度基板 におけるFeのゲ ッタリングについて研究を行った。ボロン高濃度基板 に エ ビタキシャル成長 した
P/p十
二ピゥェハは64M¨DRAMから使 われている。p/p+エピウェハにおいて も、重金属のゲ ッタリング技術 は必要 とされている。筆者はP/p+エピウェハのp+ボロン高濃度基板は 酸素析出熱処理 を行わな くてもFe不純物をゲ ッタリングする能力があることを見い出 した。P/p+エピ ウェハの場合には、本来、Fe不純物が過飽湘 な状態でな くても、100o℃熱処理 と急冷処理において、pエピ層のFe濃 度の減少が検出された。このゲッタリング効果はp+ボロン高濃度基板でのFeの国溶限 界濃度力ヽエ ピ層 よりも大 きくなるため と考 えられる。
本研究により、Feのイン トリンシックゲ ッタリングの機構 に関する基本的な現象が明 らかになっ た。その結果 に基づ き、LSI製造 プロセスにおける効率の良いゲ ッタリング方法 を提案 し、16M―
DRAMの電荷保持特性の向上に有効であることを実証 した。また、P/p+エピウェハのp+ボロン高濃度 基板 において も、Feのグッタリング効果を見い出 した。本研究によりLSI特 性の安定化 と歩留 り向上 が可能 とな り、本研究は LSI製造プロセスに大 きく寄与 している。
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論 文 審 査 結 果 の 要 旨
シリコンLSIは微細化 と高集積化が進み、LSI製造プロセス中での重金属汚染による製造歩留 りや信 頼性への影響が よリー層大 きくなつて きている。これまでシリコン結晶中で汚染不純物 を捕獲する (ゲッタリング)方法が採用 されてきたが、本研究はチ ヨコラルスキー(CZ)法 で成長 させたシリコン 結晶申の酸素析出物によるFe不純物のゲッタリング機構の解明、並びにエビタキシャルウェハにおけ るボロン高濃度基板 によるFeゲ ッタリング効果に関する検討 を行い、LSIプ ロセスにおけるゲ ッタリ ング技術の効率化をめざしたものである。
第1章は序論で、本研究の背景お よび現状での問題点を明らかにすると共に、研究 目的 とその意義 を述べている。第2章 ではシリコン中の重金属不純物の結合状態、形成するエネルギー準位、拡散系 数や固溶度な どの基本的性質及びデバイス特性 に与える影響についてまとめている。
第3章では、CZシリコンウェハを用い、酸素析出物によるFe不純物ゲッタリングの基本特性を明ら かにしている。ゲッタリング効果の定量的評価 を行 うために、Fe不純物濃度を量的に制御 して汚染す る溶液汚染法 という実験手法を考案するとともに、各種ゲ ッタリング処理後のウェハにおける残留Fe 不純物量はDLTS法で測定 している。その結果、酸素析出物の存在によりFe不純物濃度は急速 に減少 するが、ゲ ッタリングによるFe濃度の減少は熱処理温度における固溶限界までであること、ウェハ内 部での酸素析出量には依存 しないこと、酸素析出量 にゲッタリングされたFe不純物は再熱処理温度の 上昇により容易に再放出され、グッタリングと再放出は可逆的な反応であることなど基本的なFe不純 物のゲ ッタリング機構 を明 らかにした。
知 章では、LSI製 造プロセスでの最終的な高温熱処理プロセスに前章の結果を適用 して、ゲ ッタリ ング効率について検討 している。熱処理温度からのランプダウン処理によつてFe不純物の固溶濃度を 下げられ、pn接 合のリーク電流 を低減で きること、また、16M―DRAMにおいて電荷保持時間の短い
フェイルビッ トの数が少な くな り、歩留 りが改善 されることを示 した。
第5章では、CMOS‐LSI用基板 として最近用いられているP/p+エビタキシヤルウェハのボロン高濃度 基板 によるFe不純物ゲ ッタリングの基本特性 を調べている。ボロン高濃度基板 によるゲッタリングで は、Fe不純物濃度は固溶限界以下まで下げることができ、また、ウェハ内部での酸素析出処理の有無 には無関係であることを示 した。tt6章 は総括で、研究成果 を纏めている。
本論文 において得 られた結果はLSI特 性の安定化 と歩留 り向上をもたらし、LSI製造プロセスの進歩 に大 きく寄与 している。 よって、博士(工学)の学位 を授与するに十分な内容 を有するもの と認定す る。
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