ツイスティド・ネマティック型液晶素子を用いた空 間光位相変調の理論と応用に関する研究
著者 山内 真
雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告
巻 28
ページ 113‑115
発行年 2007‑03‑22
出版者 静岡大学大学院電子科学研究科
URL http://hdl.handle.net/10297/1183
氏名 。
(本籍
)山
内
真
(茨城県
)/23学位 の種類
博
士 (工
学
)学位記番号
工博乙第
102号 学位授与の日付
平成 18年 3月 24日
学位授与の要件
学位規程第 5条 第 2項 該当
学位論文題ロ
ツイスティ ド・ ネマティック型液晶素子を用いた空間光位 相変調の理論 と応用に関する研究
論 文 審 査 委 員
(委
員長)教 授 大 坪 順 次
教 授 篠 原 茂 信 教 授 皆 方
誠
教 授 中 島 伸 治 助教授
江
上
力
論 文 内 容 の 要 旨
光は高速かつ空間的に並列に
,大
容量の情報 を伝達することがで きる。通常 この伝達 は光の強度 を用いてなされるが,レ
ニザーは位相の揃つた光波を発生するので,位
相 を用いた情報の伝達が可 能 となる。ホログラフイー,光
干渉計等ではまさに,光
の位相情報 を干渉縞 とい う形で記録,あ
るいは検出し
,3次
元像の観察や,高
精度の計測 を可能 としている.し
か しなが らこれらの応用は現状 では,や
やフレキシビリテイに欠けていると言わざるを得 ない.光波の位相 を自在に操 ることが可能な素子
,す
なわち実時間動作の空間光位相変調素子がで きれ ば,応
用面 に格段の進歩 をもたらすことが期待 される.液
晶素子は,空
間的に高解像度でかつ実時 間の動作が可能である.特
にデイスプレイ用のツイスティ ド・ネマテイック(lN)型 液晶素子は,安
価で入手可能であると共に
,ビ
デオ信号 によって容易 にフレキシビリテイの高い駆動が可能である. したがって,W型
液晶素子 を空間光位相変調素子 として用いることがで きれば,広
範な利用が期待 される.し
か しなが ら,デ
ィスプレイ用の素子 は明暗のコン トラス トを最大 にするよう設計 されて お り,そ
の光学系 をそのまま位相変調用 に用いることはで きない.本
論文では,入
出力光の偏光状態を変更することで
,w型
液晶素子 を用いて位相変調 を可能 とする方法 を述べる.Ⅲ 型液晶素子内の光波は
,そ
の偏光状態 を変化 させなが ら伝搬する。そ して出射光は一般に,入
射光 とは偏光状態が異 なる
.そ
のため出射光の位相遅れは,入
射光 と出射光の偏光状態 を規定 して 初めて定義 される量 となる。見方を変えれば,入
射光 と出射光の偏光状態 を変化 させる と,w型
液 晶素子 自体の動作は同 じで も,光
学系全体 としての位相変調特性 は変化するということになる.デ
ィ スプレイ用の光学設計では,入
射面における液晶分子 ダイレクタ(液晶分子の長手方向)と平行 な直‑113‑
線偏光 を猟 型液晶素子に入射する。そ して出射光のうち
,出
射面での液晶分子 ダイレクタ(あるいは それ と垂直な方向)に平行な直線偏光成分のみを検出することにより,高
コン トラス トの動作 を可能 としている。我々は逆 に,W型
液晶素子 をビデオ信号で駆動 した時,透
過率の変化が少な く,か
つ位相遅れの変化が大 きくなるような入射光
,出
射光の偏光状態 を見つけ出す ことを考 える.Ⅲ 型液晶素子 を透過する光線の偏光状態 を調べるには
,ジ
ョーンズベク トルを用いた計算が便利 である。本論文では,こ
れまで用いられていた線型ジョーンズ行列モデルを発展 させ,多
層モデルを構築 した。これまでにも
,液
晶分子 と素子基板 との境界面 における相互作用 によって生 じるエ ッジ効 果 をとりこんだ3層モデルが提案 されているが,我
々はこれを,一
般的な多層モデルの特殊な場合 と位置付 け,両
者が一致することを示 した。多層モデルの層の厚 さをoに近づけると同時に,層
の数を無限大 にすると
,ジ
ョーンズ行列の各要素 と,液
晶分子配向の間に成 り立つ微分方程式が得 られ る.我
々はそれを微分モデルとして定式化すると共に,新
たにジョーンズ行列要素を極座標表示で表 す角パ ラメーターを導入 した.Ⅲ 型液晶素子の透過率測定か ら
,各
ジ ヨーンズ行列モデルでのパ ラメーターを計算す.る方法 につ いて検討 した。その結果,Ⅷ
型液晶素子の物理パ ラメーターである全 ツイス ト角,全
複屈折量,及
び入射面ダイレクタが
,透
過率の測定結果のみか らでは一意に得 られないことが分かつた。ただ し,物理パ ラメーターのおおよその値が推定 される場合については
,数
学的に得 られた多数の解か ら,物
理的に正 しい唯一の解 を決定できる場合があることを示 した
.ま
た,多
波長で透過率測定を行 うこと が,解
をただ一つに絞るために有効であることを示 した.Ⅲ
型液晶素子のパ ラメーター測定の結果 に基づいて,位
相変調 を行 うための光学系 を吟味 した。まず,入
出力光 として直線偏光のみを考えて シミュレーシ ョンを行い,偏
光方向の最適化 を行 った.そ
して光干渉計 を用いて位相遅れを測定 し た.そ
の結果,微
分モデルが最 も良 く位相遅れをシミュレーションできることが明 らかとなった.次
に往復光路での位相遅れの計算及び実験 を行い
,そ
れ らが一致することを確認 した◆最後 にⅧ 型液 晶素子の固有偏光の概念 を取 り入れ,負
の固有偏光 を用いれば,良
好な位相変調特性が得 られること を計算及び実験で示 した.W型
液晶素子 を空間光位相変調素子 として用いて,動
画ホログラフイーを達成する方法,及
び移動テーブルの直線性 を測定する方法を提案 し
,そ
れぞれ空間光変調素子 を用いるメリット,問
題点等を整理 して示 した。
以上のように本論文では
,W型
液晶素子 を空間光位相変調素子 として用いるため,ジ
ョーンズ行 列モデルの構築,モ
デルで使用 されるパ ラメーター測定方法,最
適光学系の設計 と実験的な検証,応
用分野への取 り組み という一連の研究結果 を示 した。本研究の成果 に基づ き
,W型
液晶素子が様々 な分野で,空
間光位相変調素子 として用い られるようになることが期待 される。‑114‑
論 文 審 査 結 果 の 要 旨
光は、高速かつ空間的に並列に、大容量の情報を伝達、処理することができる。ホログラフイー、
光干渉計等では光の位相情報を有効 に使い、三次元像の観察や高精度の計測 を可能 としている。 しか しなが ら、 これらの応用 において、従来のホログラム記録素子 はフレキシビリテイに欠ける点があ る。そのため、光波の位相 を自在 に操ることができる実時間動作する空間光位相変調素子 を使 うこと がで きれば、応用面 において格段の進歩 をもたらす ことが期待 される。
本研究においては、デイスプレイ用 に使われている空間的に高解像度でかつ実時間の動作が可能で あるツイスティ ド・ネマテイック(nヾ)型液晶素子 に注 目し、これを位相ホログラム記録素子 として 用いるための特性解析法 と、効率的な位相素子 としての使い方を可能にする方法について理論 と実験
により論 じた。
本論文、第2章においては、液晶素子の偏光、位相変化特性 を解析するためのジ ョーンズベク ト ル解析の方法 について述べ、申請者が提案 した液晶素子の多層モデル、微分モデルに基づ く液晶素子 解析法 について論 じている。その結果、微分モデルを用いることにより、実際の液晶素子特性 をより
うまく表現することがで きることを示 した。
第3章においては、使 われている液晶素子の複屈折量やジ ョーンズ行列要素などを精密 に計算す る方法 について述べ、実際の液晶デイスプレイパネルに適用 し、これらのパ ラメータ決定 を行 う方法 を確立することがで きた。
第
4章
においては、与えられた液晶空間光変調素子 に対 し、入出力ullに置 く偏光板の組合せ を適 当に選ぶことにより、強度変調変化 を最小 として、位相変化が最大 となる偏光子の組合せ を最適化す る方法 について述べた。 このことにより、位相変化 を最大 にして効率的に使用する方法が確立で き た。第5章において、前章 までの結果をもとに、液晶空間光変調素子 を位相ホログラフイックアニメー ションヘ応用する方法 と、位相グレーティングとして直線形 に応用 した例 を示 し、前章 までの検討の 有効性 を示 した。
以上、本論文 においては、液晶空間位相光変調素子の厳密な理論解析 と特性測定の方法を提案 し、
それらの有効性 を示 した。これらの結果は、デイスプレイ用液晶空間位相光変調素子 を、新 しく光情 報処理、光計測に応用する道 を拓 くものである。 よって、本論文は、博士(工学)の学位 を授与するに 値するものであると認める。
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