学 位 論 文 審 査 要 旨 公開審査日 2017 年 9 月 27 日(水)
報告番号:
○
甲 ・乙 第 1730 号 氏名: 上森 健至論文審査
担当者 主査 教授 相澤 仁志 印
副査 教授 羽生 春夫 印
副査 教授 林 由起子 印 審査論文の題目:
Seizure severity-dependent selective vulnerability of the granule cell layer and aberrant neurogenesis in the rat hippocampus
(ラット海馬顆粒細胞層におけるてんかん発作重症度依存性の選択的脆弱性とニューロン新生異常)
著 者:Takeshi Uemori, Keiko Toda, and Tatsunori Seki 掲載誌:Hippocampus(in press 2017)
論文要旨:
本研究では、ピロカルピン誘発重積てんかんラットモデルを作成し、重度けいれん発作の頻度と海馬歯 状回顆粒細胞層のニューロン新生及び細胞構造変化との関連性について検討した。その結果、高頻度に 重度のけいれんが観察されたラットでは海馬歯状回顆粒細胞層の一部で、prox1 や NeuN 発現が消失して いることを明らかにした。消失部位は顆粒細胞層の上部に限定され、前後軸では前部から中央部に顕著 だった。低頻度に重度のけいれんが観察されたラットでは顆粒細胞層での Prox1 や NeuN 発現は保たれて おり、未成熟ニューロンの増加を認めた。未成熟ニューロンは通常存在する顆粒細胞層最下層ではなく 顆粒細胞層上側の分子層~海馬溝にかけて異所性に認めた。また異所性未熟ニューロンの一部は RECA-1 陽性の血管に絡みつくようにし存在し、鎖状の細胞塊として観察された。
審査過程:
1. 本研究の背景及び意義について適切な解説がなされた。
2. 重症度、てんかんの回数と新生ニューロンの関係に関する質問に適切な説明がなされた。
3. 異所性未成熟ニューロンが血管に関連する機序についての質問に、的確な回答がなされた。
4. 海馬錐体細胞の変化に関する質問に適切に回答がなされた。
5. ピロカルピン誘発てんかんの発生機序に関する質問について、適切な説明がなされた。
6. 新生ニューロンの発現機序・オリジンに関する質問に適切な回答がなされた。
7. ピロカルピン濃度を含めた実験系の質問に対して適切な説明がなされた。
価値判定:
本研究は、重度のけいれん発作を起こしたラットでは、その発作の頻度によって、顆粒細胞層に異なっ た細胞障害が起こり、ニューロンの新生率や新生ニューロンの移動に影響することを明らかにした。ま たこれらの構造変化は、海馬の前後位置や顆粒細胞層の上下位置などの部位に依存して選択的に起こる ことが明らかとなった。本研究は、側頭葉てんかんの発現機序を解明する上で、重要な情報をあたえる ものであり学位論文としての価値を認める。