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化粧シミュレータが化粧行動に及ぼす影響の検討

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Academic year: 2021

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化粧シミュレータが化粧行動に及ぼす影響の検討 The effect of the creative make-up simulator on make-up behavior

1W153138-5三ツ松鞠菜 指導教員 渡邊 克巳 教授

MITSUMATSU Marina Prof. WATANABE Katsumi

概要:本研究は化粧シミュレータの使用によって使用者の行動や第三者からの評価の変化の検討を目的とし実験を行った。また,シミュレータ 使用時には本人の顔でシミュレーションを行わなければ効果は出ないのかを検討した。実験の結果,化粧行動については,シミュレータで使用 した顔による変化はなかったが,他者からの評価はシミュレータで使用した顔によって違いがあった。また,化粧行動及び, 他者からの印象評価 の両方で,シミュレータの使用前後で変化が確認された。本研究から,自分の顔で化粧のシミュレーションを行うことは,新たな化粧品に挑戦 するという面で有効的であり,他者からもより肯定的な評価が得られる可能性があることが示唆された。

キーワード:化粧行動,シミュレータ,顔の魅力,化粧品

Keywords:Make-up Behavior,Simulator,Facial Attractiveness,Cosmetic Products

1. 序論

化粧は印象操作の手段である(Goffman,1959)。Cox & Glick(1986)

は化粧を行った状態と,素顔の状態の同一の女性の写真を比較する実 験を行い,化粧を施すことによって,他者に与える印象が変化すると 示唆している。

花 王 株 式 会 社 が 開 発 し た 化 粧 シ ミ ュ レ ー タ (TEXTURE

COLLECTION)は,自然の中にある果物や鉱石などをモチーフにし,

普段行っている化粧とは異なる視点を生み出し,美に関する感性を拡 張させることを目的として,開発された。自然にある素材をそのまま 顔に塗っている感覚を生み出す為,使用者が予想していない色が表示 され,新たな発見につながると期待されている。

そこで本実験の目的は,シミュレータを使用することで使用者の行 動変化や行った化粧の他者からの評価に変化があるか,シミュレーシ ョンはシミュレータ使用者本人の顔に行わなければ効果は出ないのか を検討する。

2. 実験方法

実験1の実験参加者は,全ての化粧を落とした状態で実験に参加し た。実験実施会場に置いてある化粧品と持参した化粧品を使用して鏡 台の前に置いてある椅子に座り,「お出かけの日にするメイク」を行っ た。記録が終わった後には,「お出かけの日にするメイク」を一度全て 落とした。化粧を落とした後,色を含まない化粧品のみ(ファンデー ション,マスカラ,アイブロウ,ハイライト,フェイスシャドウ)を 使用した化粧を行った状態でシミュレーションを行った。シミュレー ション終了後,再度「お出かけの日にするメイク」を行い,全ての化 粧行動について記録した。

実験2の実験参加者は,実験1で撮影されたシミュレータ使用前後 の顔写真に印象評価を行った。使用した顔写真は,全ての写真の縦横

比が縦: 横 = 2: 3(360×540)の楕円形になるように編集された。刺激

は,図1のように白い背景にシミュレータ前後の同一人物の写真2枚 を横に並べ,実験参加者は,印象に関する15項目について,7件法で どちらの写真がより当てはまるかの評価を行った。評価項目の15項目

は,「感じが良い」「好きな」「親しみやすい」「上品な」「あたたかい」

「美しい」「派手な」「外交的な」「可愛い」「セクシー」「女性的な」「若 い」「魅力的な」「クリエイティブな」「似合っている」とした。これは,

対人魅力度やパーソナリティ印象を問う11項目(大坊,1988; 村澤,

1988)に,シミュレーション使用時に使用した質問項目から抜粋した 4項目を加えた。

図1 実験2の刺激 3.実験1結果

結果では時間,アイテム数,色についてそれぞれアイシャドウ,チ ーク,リップの3箇所の部位毎に検討した。

最初に,化粧時間におけるシミュレータ使用時の顔(自分顔,他人 顔)とシミュレータ使用の効果(使用前,使用後)を調べるため,2要 因4水準の参加者混合分散分析を行った。チークの化粧時間にのみ,

シミュレータ使用の前後およびシミュレータで使用した顔の種類の交 互作用が有意であった(F(1, 21) = 4.80p < .05)。

アイテム数の変化では,時間変化と同様に,シミュレータ使用時の 顔とシミュレータ使用の効果について検討するため,2要因4水準の 参加者混合分散分析を行った(図2)。シミュレータ使用の効果につい て,全体,アイシャドウ,チークに有意な効果差が認められた(全体:

F(1, 21) = 11.46,p < .01,アイシャドウ: F(1, 21) = 5.96,p < .05,チー ク: F(1, 21) = 16.01,p < .05)。

(2)

図2 部位別アイテム数(エラーバーは標準誤差を示す)

使用した化粧品の色の解析では,会場に置いてある化粧品と実験参 加者が持参した化粧品の色を色ごとに分類し,シミュレータ使用前後 で色の変化があった人数を調べた。また,アイシャドウ12色をマンセ ル色相環について分類し,分析を行った。人間の肌の色であるYR(黄 赤)が半円周の中心に来るように円を半分にしたとき,YR側とB側 に分類した。上記の分類でシミュレータ使用時の顔におけるシミュレ ータの使用前後での化粧の色変化についてカイ二乗検定を行ったとこ ろ,シミュレータ使用時の顔に分けたとき,自分顔では有意傾向が認 められ,(𝑥2 (1) = 3.43,p < .10),他人顔では有意であった(𝑥2 (1) = 4.89,

p < .05)。全体で見ると有意であり(𝑥2 (1) = 8.20,p < .01),シミュレ ータを使用した前よりも使用した後は,B側の色の使用が有意に増え ることが示唆された。

4. 実験2結果

実験参加者が画面上で評価した中心を 0,シミュレータ使用前の顔 写真側を-3とし,順に-3,-2, -1,0,1,2,3の7段階評価を15項 目に分けてt検定を行った(表1,2)。実験参加者毎に23人の顔をシ ミュレータ使用時の顔で2グループに分けたとき,他人顔で「感じが 良い」「好きな」「上品な」「美しい」「派手な」「外交的な」「可愛い」

「セクシー」「女性的な」「若い」「魅力的な」「似合っている」の12項 目で有意な差が認められ,シミュレータ使用前の化粧がよりそれぞれ の形容詞に当てはまるということが示唆された。自分顔でシミュレー タを使用したグループについては,「上品な」「あたたかい」「美しい」

「派手な」「女性的な」で有意な印象の偏りが認められ,「上品な」「美 しい」「女性的な」はシミュレータ使用後の化粧が,「あたたかい」は シミュレータ使用前の化粧が当てはまると示唆された。

表1 顔別評価のt

5.考察

本研究の目的は,シミュレーションの使用による使用者の化粧行動,

および,他者からの印象評価に変化があるかについて検討することで あった。実験1ではシミュレータ使用前後及びシミュレータ使用時の 顔の種類における化粧行動への影響を検討したところ,シミュレータ 使用前後で全体としては化粧にかかった時間は差がなかったものの,

用した色の変化も確認された。シミュレータ使用時の顔の種類につい ては,チークにおける化粧時間のみ変化が確認された。ここで使用さ れた顔写真を用いて,シミュレータ使用前後の化粧への印象評価につ いて調べた実験2では,全体としてはシミュレータ使用前で対人魅力 度やパーソナリティ印象が高いと評価されたものの,他人の顔でシミ ュレータを使用したときには,シミュレータ使用前の顔写真に対人魅 力度やパーソナリティ印象に当てはまる項目についての評価が高く,

自分の顔でシミュレータを使用したときには,シミュレータ使用後の 顔写真にこれらの評価が高くなっていたことがわかった。したがって,

化粧行動及び, 他者からの印象評価の両方で,シミュレータの使用前 後で変化が見られたことから,シミュレータの使用により行動や他者 からの評価が変化することが示唆された。化粧行動については,シミ ュレータで使用した顔による変化はなかったが,他者からの評価はシ ミュレータで使用した顔によって違いがあったため,シミュレータで 使用する顔によってシミュレータ使用者の化粧行動は変化しないが,

他者からの評価が変わると言える。また,全体の評価がシミュレータ 前の顔写真に対して肯定的な傾向が表れたのは,実験1で新たなアイ テムを使っていたことより,慣れていないものを使用したことによる 可能性が考えられる。本研究から,自分の顔で化粧のシミュレーショ ンを行うことは,新たな化粧品に挑戦するという面で有効的であり,

他者からもより肯定的な評価が得られる可能性があることが示唆され る。

6.引用文献

[1]Goffman, E. (1974). 行為と演技. (石黒毅, 訳). 日本: 誠信書房. (原 書刊行年 1959).

[2]Cox, C. L., & Glick, W. H. (1986). Resume evaluations and cosmetics use: When more is not better. Sex Roles, 14, 51-58.

図 2 部位別アイテム数(エラーバーは標準誤差を示す)  使用した化粧品の色の解析では,会場に置いてある化粧品と実験参 加者が持参した化粧品の色を色ごとに分類し,シミュレータ使用前後 で色の変化があった人数を調べた。また,アイシャドウ 12 色をマンセ ル色相環について分類し,分析を行った。人間の肌の色である YR (黄 赤)が半円周の中心に来るように円を半分にしたとき, YR 側と B 側 に分類した。上記の分類でシミュレータ使用時の顔におけるシミュレ ータの使用前後での化粧の色変化についてカイ二乗検定を

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