修士学位論文
題名 1孔してよるベグ。ユン
頁1〜/73頁
指導教員 †尺氏允主
平成瓜年 /月 ・/0目提出
人文科学研究科 バ逐与 専攻
学修番号 //比//0ユ
麦りが葦 オザザ主イ}
目次
1.序論
はじめに……….. . . . ……… ..……・……・・1
1.1.自己運動知覚…….. ・..…. ・・… ………・・……・3
1.2二聴覚領域における自己運動知覚…・ ….・……・……11
1.3.生理的背吏….…。。。一一。一一一一一・一…12 1.4.用語の定義一一…一一・………一・・一…15
1.5.本研究の目的一………・・………・・・…16
2.実験1
2.1.目白勺・・・・・・・・・・・・・・…
2.2.方法一一………
2.3.結果………・・
2.4.考察…・・…・・…・…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…@17
川・一・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… @17
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…@24
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…@28
3.実験2
3.1.目白勺 . ... ・ .. . . . ..・. … .… 一・・・・・・・・・・・・・・・… 30
3.2.方法・・…. .……一・・………… ……・・一…………31
3.3.結果.... .. .....…・・…………. .. ………・37
3.4.考察… ……一..…….. ・.... … . ………44
4.実験3
4.1.予備実験...…・…一・
4.2.目白勺・・。一。。・一一・。一一一
4.3.方法………・・
4.4.結果………・・
4.5.考察………・・
5.実験4
5.1.目白勺・・・・・・・・・・・・・・…
5.2.方法………・・
5.3.結果……一・∵…・
5.4.考察一・…………
・・・・・・…@一・・・・・・・・・・・… 一・・・・・・… 46
一一一一一一一一一一・一一一一一一一・・ S6
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…@47
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…@49
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…@52
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…@52
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…@53
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…@57
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…@63
6.総合考察
6.1.研究のまとめ…………・・一・・………・………65 6.2.顔の皮膚領域の問題………・・……一………・・…・68
6.3.今後の課題. .. ...……・.. …… ..………・・…………・70
6.4.おわりに……… ………72
謝辞… . ... . …. . ..……・………73
参考・引用文献
1.序論 はじめに
動物が環境の中で自由に動いたり,ガイドされたり,障害物を避けることが 出来る能力は本質的に重要である.こうした能力は日々の生活の中で動きとい
う変化から様々な情報を抽出することにある.Gibson(1979)によれば,変化 は観察者の移動により生じ,無変化は環境の面の不動の配置により生じる.そ れゆえ,無変化は環境の配置を特定し,その配置に関する情報となるが,一方,
変化は移動を特定し,移動それ自体に関する情報となる.脳は視覚,前庭感覚,
聴覚,運動,そして体性感覚から統合してその課題を果たす.その知覚システ ムは正確で頑健である.しかし,知覚と外界の情報が合致しないことが稀に有 る.例えば,電車に乗っていて,その電車が停車しているとき,反対ホ〕ムの 電車が動き出すところを見ると,自分の乗っている電車が動き出したと感じる昌 一般に,広域な視野に一様な運動刺激を呈示すると,運動刺激とは逆方向に自 己運動を知覚することが知られている.このような現象をベクション(視覚誘 導性自己運動)という,ここでは視覚に限定して述べられているが,こうした ことは視覚だけに限ったことではない.ベクションは視覚刺激だけでなく,前 庭運動や聴覚刺激(Lishman&Lee,1973;Sakamoto et a1.2004;新井ら,
2008;etc)を用いても生起することが報告されている.また,能動的な自己 運動には筋肉,腱,関節などに由来する自己受容器の情報や前庭器官の情報,
及び視覚情報や聴覚情報に基づいて知覚されている.従って,視覚情報,聴覚 情報と前庭感覚の統合が自己運動を増幅して知覚させるということである.近 年Seno et a1(2011)は,自己誘導運動を誘発させる視覚刺激を見ながら,参加 者の顔に風を当てると,前進運動感覚が増幅したと報告した.
では,感覚に障害を持つ人々ではどうだろうか.自己誘導運動は知覚してい ないのだろうか.視覚障害をもつ人達にとって視覚情報の代わりになるものは 聴覚情報や触覚情報である.例えば,信号機などでは,信号の色の代わりに視 覚障害者用の音楽が流れる.道路には視覚障害者誘導用ブロック(いわゆる点
字ブロック)が引かれ,ホームなどの危険な場所(視覚情報を持つものは白線 である)にも視覚障害者誘導用ブロックで示される.この情報を得るのは手に 持っている白状の先から骨や筋肉を通して伝わる触覚である.また,対象
(Object)の情報についても触覚によりそのものの情報を得る事が出来る.こ のように視覚情報が得られなくても大抵のものは聴覚情報や触覚情報で補う事 が可能である.しかし,盲も聾も障害を持つものは,視覚情報だけでなく聴覚 情報も得られなくなってしまう.残された感覚器官は触覚,嗅覚,味覚情報で ある.特に方向を感じるときの手がかりとなる情報は皮膚感覚からの情報に頼 るところが大半を占めるだろう.
これまでのベクション研究では,視覚誘導性自己運動が大半を占めていたが,
近年になり聴覚誘導性自己運動の研究も盛んに行われるようになって来た.そ こで本研究では,実験1で視覚や聴覚からの情報を遮断した状況下で,風圧によ る皮膚感覚と前庭運動感覚だけで自己運動知覚が生起するのか,また,人の前 方向(表面),横方向(側面),後方向(後頭部)で違いが有るか否かを検討し,
実験2では,指標として潜時と持続時間の反応を設け,更に風速に4段階の変化 を付けて刺激の強度による影響についても検討した.つぎに顔の部位による影 響を検討するに当たってアイマスクの影響を検討しなければならない.そのた め実験3では,アイマスクの有無による影響について検討した.実験4では自己 運動が知覚される皮膚の特定を行うため顔面に皮膚刺激を受ける部分を三叉神 経の第I枝領域と第■枝領域及び第皿枝領域とおおよその対応をつけて上下に 分けて検討を行い,複数の感覚器官の統合による役割と部位の作用について考 察して行く.
1.1.自己運動知覚
1.1.1.視覚誘導性自己運動知覚(ベクション)
雲間に現れた月は,雲の動きと逆の方向にゆっくりと流れているように動い て見える.また,駅のホームに止まっている電車に乗っている時,隣で停車し ていた電車がゆっくり動き出す,すると自分の乗っている電車が反対の方向に 動き出したと知覚される事が有ろ.このように,周囲の動きに誘導されて静止
しているものが動いて感じる現象を誘導運動(induced motion induced mOVement)とよぶ.
1.1.2.誘導運動の研究史
誘導運動は視野の広い領域をカバーする運動する視覚刺激によって引きおこ される.このことは橋の上から川を観察したとき,その流れによって自己の身 体運動が誘導された経験から,回転する円筒(図1−1)を用いて,視覚刺激のみに よって自己回転運動を誘導することに成功したMach(1875)によって100年以上 前に記述されていた.
図1・1.回転ドラム装置
この現象はFisher&Kormuller(1930)によってサーキュラー・ベクション
(circuler vection, 以下CV)と名づけられた.さらにMachは,2本のローラ ーの間に紋様を描いた織物を張り,等速直線移動させて観察した際,織物の紋 様を目で追うと織物自体の動去が知覚されるが,結び目で作った凝視点を凝視 すると,観察者は白身が動いたと感じることを報告した.この現象はCVに対し,
リニヤー・ベクション(1inearvection,以下LV)とよばれ(Fisher&Kor㎜uller,
1930),これらはいずれも視覚的に誘導された自己運動の錯覚(iuusion)であ る(Howard,1982).この研究を組織的に研究した先駆者がDmcker(1929)である.
その実験は暗室内に2個の対象物を呈示してさまざまな条件のもと,両者の間 に相対運動を起こさせて観察したとき,どちらの対象がより運動して知覚され るかというものであった.その結果,より運動して知覚されやすい対象の性質
として, 囲まれた 凝視された より暗い より小さい 垂直以外の方向
に向けられた といった要因が挙げられた.逆に言えば,これら以外の刺激要 因が,induCerとしての働きをもつことが,この研究以降明らかにされてきた
(Duncker, 1929; 0ppenheimer, 1935).
誘導運動は,対象間に限定されるものではなく,自己と対象の間にも生じ ることがよく知られている.日常生活の場面の申で人が移動する場面を取り上 げてみる.われわれが道を移動しているとき,歩行の場合でも,乗り物に乗っ ている場合でも,移動をする事により周囲の建物や樹木などの網膜上の像は,
その人の進行方向に伴って放射線状に拡大して行き,後方に流れて行く.外界 の各点は網膜上を一定の法則に従って移動し,光の流れが生じる.これをオプ
テイカルフロー(光学的流動)1とよぶ(Gibson,1950)(図1−2).同時に接近し
てくる車や他の歩行者の動きが複雑な網膜像の移動を生み出す.それにも関わ らず,建物や樹木は静止しており,車や他者は環境内で動く.そしてそのオプ ティカルフローから,自己身体の移動を感じることが,自己運動知覚というこ
とになる(図1−3).こうした移動には自らの足を使って移動する能動的な移動 と車や飛行機などの乗り物によって運ばれて行く受動的な移動とに区別され,
両者は質的に大きく異なる.前者の場合の自己運動には筋肉,腱,関節などに 由来する自己受容器的情報,前庭器官の情報,視覚情報といった複数のモダリ ティにもとづいて知覚される.一方,受動的移動では筋運動などによる自己受 容器的情報が提供されず,前庭感覚は加速のみを感知する器官なので,定常的 な運動には前庭系の情報も有効に働かない.従って,観察者の身体が等速度で 受動的に運動する場合には,身体運動とは反対方向へ運動する視覚刺激のみが 自己運動知覚の重要な手がかりとなるため,視覚はある意味で運動感覚的機能 をもっといえるのである(Gibson,1979).視覚刺激が自己受容器系の刺激より も自己運動知覚に強く影響することをLee&Aronson(1974)は幼児を対象とし た実験で,姿勢の調整に及ぼす視覚刺激の影響の研究から明らかにした(図1−4).
これまで多くの研究が自己運動知覚における視覚情報と前庭感覚情報の相互 作用(visuaユーvestibular interaction)を取り上げ,視覚と前庭感覚情報シス テムが自己運動の知覚に特に重要な役割をすることを示して来た(Dichgans&
Brandt 1978; Howard, 1982; Lee & Aronson, 1974; Li shman& Lee, 1973;
Mel cher & Henn, 1981; Rock, 1968.).
1オプティカルフローは環境の申に自己の位置づけを決定する良い手がかりで ある.それはわれわれ自身の行為によって決定されるので,他の手がかりとは
異なる.
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図1−2.オプティカルフロー(光学的流動)
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図1・3.オプティカルフローと身体運動の循環
ll≡≡111… 6 I ■一 一一 .■ .
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図1−4.視覚刺激が自己受容器系の刺激よりも自己運動知覚に与える実験
1.1.3.刺激の種類
視覚刺激としては,CVでの縦縞模様,ランダムドットやライン(図1−5)を はじめ,多色の不規則模様,白地に黒点1個ずつを水平に並べたものなどさま ざまなものがベクションを誘導可能であることが明らかにされており,さらに は仮に無地であっても材質の肌理さえ見えればベクションが生起することが報 告されている(林・狩野,1990).
運動刺激としては,前額平行面上での視覚刺激の拡大・縮小運動は身体の前進・
後退運動を,上下左右への平行運動は垂直・平行方向の直線運動を,回転運動 は視線方向を軸とする自己の回転運動をそれぞれ誘導することが知られている
(Andersen, 1986).
図1−5.ランダムドットパターン
運動刺激とベクションとの関係は,身体運動と環境における静止対象のオプ ティカルフローとの関係に対応している.また,実際の運動刺激がない仮現運 動(β運動)でも,ベクションは誘導される(Schoreta1,198争).したがって,
自己運動知覚の情報はそれらの運動視現象の処理よりも高次な過程で処理され ていると考えられている.
刺激の運動速度については,ある一定の速度までは速度上昇に伴いベクショ
ンの強度評定値および自己運動速度評定値が増加するが,それ以上は影響を受 けない(Brandt et a1.1973).ただし,運動速度が同じであっても,われわれ は運動速度の恒常性により,より遠くに呈示された刺激運動のほうが高速に感
じる(Dichgans et a1.,1976)ので,観察者から呈示面までの知覚された奥行き
距離の増加に比例してベクションはより強度なものになるという報告もある
(Brandt et a1., 1975).
1.1.4.時間特性の要因
ベクションの知覚は,誘導された自己運動は視覚刺激の観察によって即座に 経験されるものではなく,ある程度の潜時が必要である(狩野,1991).
刺激呈示直後は,視覚刺激の運動のみを感じ,自己運動は知覚されない.あ る一定の潜時の後,視覚刺激の運動感覚が弱まると徐々に自己運動知覚は刺激 とは反対方向へ移動して感じられるようになる.これを部分ベクション
(partial vection)とよぶ.さらに観察を続けると自己運動のみが知覚され,視 覚刺激は完全に静止しているように知覚される.これを完全ベクション
(complete vection)とよぶ.また自己運動はしばらく持続して知覚され消失が 起きる.そして再びある潜時をおき,再び生起することがある.ベクション知 覚にとって,この自己運動知覚までの潜時は,どのような観察条件でもゼロと なることはなく,不可避なものである(狩野1991).ベクションにおいて潜時が 必要である原因として視覚入力と前庭入力とのコンフリクトが挙げられる
(Wo㎎&Frost,1981).これは,回転する視覚刺激を観察開始したとき,視覚 入力は自己運動を表すが,前庭入力は身体運動の欠如を表すために,この間の
葛藤が潜時を生み出すというものであった(狩野,1991).Brandt et a1(1973)
によると,視覚刺激と同期して参加者自身を運動させ,自己運動情報と同期す る平衡感覚情報を作り出した場合では,潜時は大きく短縮し,逆に,視覚刺激 と矛盾する平衡感覚情報を与えた場合には潜時が増大するという結果が報告さ
れている.
1.1.5、刺激の提示範囲
古典的なベクション研究では,強度においては呈示面積が広いほど強く(Mach,
1875Lestieme et aL1977),周辺視が重要な役割をもつ((Brandt et a1.
1973;Johansson,1977etc.)など呈示面積および領域が大きな影響をもつこと が多くの研究で示されてきた.しかしPost(1988),Nakamura&Shimojo(1999)
の研究によると面積を同一にして呈示すると領域の効果は見られず,
Nakamura(2001)の研究では,中心部・周辺部に逆方向の運動パターンを等しい 面積で呈示した場合,両者に誘導されるベクションが完全に相殺され自己運動 知覚は生起しなかった.更に,放射状に拡大する運動パターンでは,潜時は平 均31秒と比較的長く,高速度,広い領域で起きにくく,中速度で狭いほうが生 起しやすい(Andersen&Braunstein,1985,etc.)との報告もある.
奥行き構造も呈示面積・領域に並び,非常に重要な要因である,
運動刺激の背後に静止刺激を呈示するとベクションは強く抑制され,静止対象 を手前に呈示すると影響は見られなかった(Brandt et a1.1973)など背景刺 激が支配的な効果もつことを報告している.この現象は運動事態の 図と地の 分化 (Johansson,1950)との関連が考えられる.図と地の分化は,Rubin(1915)
によって詳細に研究された.視野全体が一様に等質な場合のような全体野では ものの形は知覚出来ない.しかし,そこに1点でもものが加わるとたちまち図 と地に分かれる.ものの形の知覚が成立するためには,この分節が成立する必 要がある.一般に静止している対象が 地 の性質をもちやすい.地は図を認 識する上での背景であり,そのような領域が外部環境において運動する可能性 が少ないからである.
1.1.6.方向の要因
観察者側の要因としては,たとえば注意の配分が挙げられる.反対方向へ運 動する2つのパターンのうち,注意を向けていないほうのパターンの運動と反 対方向のベクションが生起することから,注意が向けられていない視覚刺激が
より強くベクションを誘導するといえる(Kitazaki&Sato,2003).
実際の自己運動とは異なり,視覚刺激の運動方向の変化に直ちに呼応するこ とは無く,いったん自己運動の感じが停止して,ある潜時を経た後新たな方向 への自己運動が生じる(狩野,1991)
1.1.7.ベクションの指標
ベクション研究の指標としては、潜時、持続時間、評定値などが一般的であ る.ベクションの研究おいて潜時が利用される根拠となったのが、視覚入力と 前庭入力とのコンフリクトによる説が打ち立てられているからである(Wong&
Frost,1981).これは、回転する視覚刺激を観察し始めたとき、視覚入力は自 己運動を表示するが、前庭入力は身体運動の欠如を表示するために、この間の
葛藤が潜時を生み出すというものであった.また、視覚刺激運動開始時に同期 して自己の身体を運動させ,視覚刺激による自己運動情報と整合する平衡感覚 情報を作り出した場合では,潜時は大きく短縮し,逆に,視覚刺激と矛盾する 平衡感覚情報を与えた場合には潜時が増大するという結果が報告されている
(Brandteta1.1973).
運動速度はベクションの強度評定には影響を与えるが,潜時には影響しない ことが示されており(Brandt et a1.,1973),おそらく自己運動の強度評定値と
潜時とでは,ベクション強度の異なる側面を反映していると考えられている.
1.2.聴覚領域における自己運動知覚
これまで視覚領域による自己運動知覚の研究が主流であったが近年では聴 覚領域の研究も多く行われている.周囲の空間情報を入手するという点におい ては,聴覚は視覚同様,非常に有効な感覚器官である.たとえば対比の効果や よい連続のまとまりなど,視覚情報と対応がある現象も知られている.Lac㎞er
(1977)により行われた聴覚情報を用いたベクション研究は,CVの縞刺激を被 験者の周りに円を描くよう置かれたスピーカーから流す音像の回転運動に変え たものであった.その結果,自己運動が知覚されたことが報告されている.LV としては研究としては,長田ら(2001)による等速直線運動する音像を呈示した 実験がある.その結果,音像運動条件では,自己運動感覚の生起頻度,評定値 がともに有意に多く,且つその方向は音像運動方向と逆方向成分をもつものが 多かったことから,聴覚による自己運動知覚の生起が確認された.しかし,重 心動揺計によるデータからは条件間での差異がみられなかったことから,視覚
のベクションに比較すると弱いものであるといえる.また,潜時,持続時間で の差はみられなかったが,強度評定値において,音像運動が後方向の条件より
も前方向の条件のほうが自己運動知覚は強く生起した.更に,新井ら(2008)
は,速度が増すほど潜時,評定値は速いという結果を示した視覚の場合には、
刺激の提示位置はそのほとんどが前額並行面上、まれに顔の両側面(狩野,1995)
など、視野の範囲内に限定されるのに対し、聴覚の場合、提示可能な領域は被 験者をとりまく360。となるように、視覚の場合よりもむしろ検討の余地がある
と考えられる。
1.3.生理的背景
カ』ルソン(2008),山内・鮎川(2001),Longstaff(2003)等を参考に以下に
まとめる.
1.3.1.前庭感覚
前庭感覚vestibular sensationは,重力に対する自分の体の位置や,体の 一部との位置関係,加速の状態や位置の変化を知る感覚である,自己受容感覚 や身体の一部が動くことで刺激される運動感覚の一種である.また,身体の方 向,バランス,加速度なども提供する.体の平衡には前庭感覚の他に深部感覚 や皮膚感覚,また殊に視覚が重要に作用する.前庭器系,視器系,深部感覚系 の3系統が有機的に働き,前庭眼反射回路,眼運動反射回路,深部感覚運動系,
自律神経系反射系が,脳幹,小脳,大脳,視床下部その他の感覚器官と連携す ることで平衡感覚の機能が維持される.前庭器には角加速度2を受容する三半規
2角速度とは,物体が一様でない回転運動をするときの単位当たりの角速度の変
管(図1−6)と直線加速度を受容する球形嚢,卵形嚢がある.いずれも二重の嚢 構造をもち,外リンパ液,内リンパ液で満たされている.内リンパ嚢には,受 容細胞は蝸牛と同様に有毛細胞である.一次求心神経は内耳神経(第VIII脳神 経)のうちの前庭神経で,これが橋・延髄の前庭神経核に入り,ここからの出 力は複雑に分枝するが,ほとんどが反射的調節に寄与する.乗り物酔いなどの 動揺病(加速度病)は前庭から視床下部への過度の信号により自律神経系に異 常を来すため起こるものとされる.
1(ス・ぐ 1
灘蜜饗携\、ピ I}
…
図1−6.平衡感覚に関する部位 1.3.2.オプティカルフローに対する脳画像研究
オプティカルフローは空間的に変化する運動パターンが自己運動,場面構造 そして対象の形について情報の豊富なソースを提供する.近年,Kemeth(2002)
によるマカクザルを使った実験で,複雑なオプティカルフロー情報の分析のた めに特殊化されている脳の部位がmedia1superior tempora1area(MST)である
化(スーパー大辞林)
ことを特定したと報告された.
1.3.3.皮膚感覚(顔面とその他の皮膚の神経経路の違い)
皮膚とは身体の表面のほとんどを覆い,身体に最大の感覚器官として機能す る丈夫で柔軟な外面の膜である.哺乳類の皮膚の構造は外側から表皮,真皮,
皮下組織から構成され,全体にさまざまな受容器が分布する.低周波数の振動 や皮膚への短い接触に対して反応するマイスナー小体,圧力に反応するメルケ ル触盤,圧迫に反応するルフィニ小体,速い振動に反応するパチニ小体,また,
痛みや温度変化に反応する自由神経終末がある.
しかし,顔面の皮膚だけは他の部分とは異なり,三叉神経という3つ(第I 枝領域・第■枝領域・第皿枝領域)に分かれた領域から成る.また,顔面皮膚 の感覚支配領域には,三叉,舌咽,迷走神経が分布する領域がある.痛覚,冷 温覚,粗触覚,圧覚は第2次ニューロンの脊髄視床路を経由して視床核の背外 側腹側核に達し,中心後回皮質に達する.一方,三叉神経(三叉神経節)は,
三叉神経脊髄略核を経由し,左視床の背内側腹側核に達し,中心後回皮質に達 する(山内・鮎川,2001).顔面神経の神経線維は4種類有り,特殊内臓遠心性 線維,一般な内臓遠心性線維,特殊内臓求心性線維,一般内臓求心性線維と呼 ばれるものに分かれている.
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㌧一二こ1、巾榊㌣1ご叫 一_、、MSTMT
1−7.皮膚の構造 図1−8.MST野とMT野の位置
顔面神経
夢。。。 1一一壷 メ
チ 練…一 ・!毒) ダ
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支〃〆
図1−9.三叉神経などの支配領域
舌咽神経
迷走神経
1.4.用語の定義
これまでの歴史の中でベクションとう表現はFisher&Kommuller(1930)によ ってサーキュラー・ベクション(circu1er vection, 以下CV)及びリニヤー・
ベクション(1inear vection,以下LV)と名づけられた.Howard(1982)の考え 方では,これらはいずれも視覚的に誘導された自己運動の錯覚(illusion)で あると解釈された.これまで多くの研究者達の中で,でこうした現象をVeCtiOn,
。。1f。。ti・・p・…pti・・,i・d…d・・1f・・ti・・,i11・・i…f・・1f・・ti…
などと呼ばれてきた.また日本では,VeCtiOnを視覚誘導性自己運動と訳すこと が多かったようであるが,聴覚による自己運動知覚の研究が行われるようにな ると,この現象を総じて視覚に限らず,vectionあるいはse1fmotionperception と記すことがことが多いようである.本論文では,現象そのものを示すときは ベクションと示し,状態を示すときには自己運動知覚と示す、
1.5.本研究の目的
以上のように,これまでのベクションの研究は視覚領域が大きく貢献して来 たが,近年では聴覚領域も盛んに研究が進んでいる.環境の中でわれわれは視 覚情報,聴覚情報と同時に皮膚感覚からも多くの情報を得ている.例えば,平 衡感覚を保つためには,前庭感覚,深部感覚,そして皮膚感覚も必要となる.
しかし,これまで皮膚感覚でのベクション研究はSeno et a1.(2011)によって 行われた視覚刺激との統合による研究以外にはほぼ行われてこなかった.
視覚器官や聴覚器官は空気を媒介して情報を得る器官であるのに対して皮膚 感覚器官は直接刺激情報に接触する器官である.われわれが移動をするための 手がかりとしては,前者のような視覚,聴覚に頼るところが多い.というのは,
移動を確認するために直接刺激に接触する機械が非常に少ないからである.し かし,皮膚感覚には空気の抵抗という刺激を受けることで自己運動を知覚する ことが可能である.そこで本研究では,これまでほぼ扱われてこなかった皮膚 感覚による自己運動知覚に着目をし,風という刺激を扱い皮膚感覚及び前庭感 覚を統合することでの影響を検討することを目的とする.
2.実験1
2.1.目的
本研究の目的として,視覚や聴覚からの情報を遮断した状況においても,風 による皮膚感覚への刺激によって自己運動が知覚されるのか,または風による 皮膚刺激に振動による前庭運動を加えた条件によって自己運動知覚が生じるの かを検討した.更に,風の当たる方向を前方,横方向,後方とし,風の方向に よって,自己運動知覚の起こり方に違いが生じるのかも検討した.
2.2.方法
2.2.1.実験参加者
正常な視力保有者を対象とするため視力の確認を行った.その結果,正常な 視力(裸眼,矯正を含む)の男女13名(男性9名,女性5名,平均年齢24.6 歳)が実験に参加した.また,実験参加者が乗る実験装置の動きが8の字に揺 れるため,事前に乗り物酔い経験の有無を確認した.その結果,自己報告によ
ると全員が乗り物酔い経験を持たなかった.実験開始前に実験の目的は伏せて 教示を読み上げ,実験参加者の同意を得てから実験を行った.
2.2.2.実験計画
独立変数は,風の方向と振動の2変数で有り,風の方向は,前方向,横方向,
後方向の3水準であった.
従属変数は,自己運動知覚が生起したか否かを口頭( はい と返事をさせた)
で反応させた.そのとき,感じた自己運動知覚の強度を5段階(1:非常に弱い
〜5:非常に強い)で評定させた.
2.2.3.実験装置 □
視覚と前庭感覚以外の感覚情報を遮断する目的で,聴覚情報を遮断するため
に白色雑音(64dB SPL)を流した.白色雑音はipod nano(apple杜)(図2−1)
からイヤフォン(図2−2)を通し流した.なお,イヤフォンは直接耳の中に入れる ためカバーを付け,実験参加者毎にカバーを取り替えた.また,視覚情報を遮 断するためのアイマスク(図2−3)を塞がれる皮膚の面積を極力狭くするため幅 を半分に折り込み使用した.皮膚に刺激を呈示するための風はメタルリビング 扇風機(FIR401,PIERIA杜)(図2−4)を使用した.実験中の姿勢や様子を撮影 するためのデジタルビデオカメラ(xacti,sanyo杜)(図2−5)を使用した.前庭 運動を引き起こすための振動は,フィットネス機器JOBA(EU6442,Nationa1 社,高さ66〜75X幅42X奥行87㎝,以下ジョーバマシンと記す)により呈示し た(図2−6).ジョーバマシンは速さが2段階に変化し,水平に8の字を描く動 きをする.装置の配置は図2−7に記した.
2.2.4.刺激条件
皮膚感覚の刺激と前庭運動の刺激が同時に呈示される条件と皮膚感覚刺激で ある扇風機からの風だけ,または前庭運動の刺激だけが呈示される条件がいず れかであった.
図2−1.白色雑音を 流すためのipod nano
業○
図2−2.カバー付き イヤフオン
図2−5.撮影用 ビデオカメラXacti
勘
図2−3.視覚情報を遮断す るためのアイマスク
図2−4.風を送るための扇風機
メタルリビング扇風機,FIR401PIERIA壮
図2−6.ナショナル フィットネス機器 JOBA左上スイッチパネル・右上全体 像・左右下鐙(フットペダル)
後序からの風
宿横方肉からの鳳
紬銚
願風機
実験参棚者か
N魯域。難訓獲菱64峰2
図2−7.実験1の実験装置図.両手でレバーを握り,両足はフットペダルに乗 せた.3方向(前からの力)ぜ・横方向からの風・後方向からの風)に置かれた扇 風機から風による刺激が呈示された.振動刺激はジョーバマシンの椅子の部分 全体が8の字を描くような運動により呈示された画像を表す.
2.2.5.手続き
実験参加者は実験室に入室後,ジョーバマシンの説明を受けた.次にジョー バマシンに股がらせ,ジョーバマシンから扇風機の距離と高さを各実験参加者 の座高に合わせて扇風機の高さと距離を調節した.高さは顔面の中心に扇風機 の中心がくるようにした.距離は条件ごとに前方向の場合,眉間から60㎝,横 方向は耳介の一番高いところから60㎝,後方向は後頭部のくぼみから60cm離し
た.
位置の調整を終了した後にジョーバマシンの乗り方についての教示(表2−1)
を行った.
表2イ.教示文
本目は実験にご参加頂きましてありがとうございます.
この実験は,個人の能力を見るものではありませんので,
気楽に判断を行ってください.
実験結果は学会等で発表することがありますが,データは 統計的に処理を行い個人が特定できるかたちで発表するこ
とはございません.
!.本実験では視覚と聴覚を遮断した状態で,一定の動き のあるジョーバに乗って頂きます.その後,簡単な質 問に答えて頂きます.
2.最初にジョーバにまたがって頂き,ジョーバの動きに 慣れて頂きます.その際,両足を鐙に乗せ,両手で手 綱を握ってください.
3. ジョーバの動きに』廣れましたら,アイマスクとイヤフ
オンを装着していただきます.アイマスクと耳栓を装 善後に再びジョーバの動きに』贋れて頂きます.十分ジ ョーバの動きに慣れたところで実験を開始いたします.
4.実験が開始してから,自分の体が前進しているか横に 進んでいる,または後ろに進んでいるなどの感覚が現 れましたら,直ぐに返事をしてください.その後に,
1が少し感じたから5が非常に感じた の順で番号 を答えてください.また,途中で自己運動の感覚が変 化したら何度でもその時感じた評定値に変更して報告 してください.
5.実験は1回約3分程度で休憩が入ります.休憩時間は 十分に設けます.
6. ここまでで,質問や問題がなければ練習試行に移りま
す.
7. これから練習試行を1回行います.質問や問題がなれ けば実験に移ります.
8. 実験を開始します.
実験は,教示及び休憩を含めて約60分を予定しています.
実験中,気分が悪くなる等,不都合が生じた場合には直ち に実験を中止いたしますので,遠慮なくおっしゃってくだ
さい.
実験終了後
質問紙のご記入をお願いします.
教示終了後,前後左右(8の字)の揺れを再現したジョーバマシンに股がらせ,
その揺れに十分慣れさせた.その後,視覚情報を遮断するためのアイマスクを 装着させた.そのアイマスクは顔の面積をなるべく覆わないようにするため横 半分に折って使用した.次にイヤフォンを装着させた.この目的は,扇風機か
らの音とジョーバマシンの振動による音を遮断するためである.ipodから白色 雑音(64dB SPL)を発生させてイヤフォンから流した.イヤフィンを使用した のは,予備観察でヘッドフォンを使用したところ自己運動の感覚が半減したた めである.全てを装着した状態でジョーバマシンの動き(振動)を体験させた.
一連の動きを十分に体験させた後,目眩や吐き気などの問題が無ければ同意書 に同意を求めた.同意が得られた場合実験を開始した.はじめに練習試行を1 回行った.本実験では1試行60秒間で行った.実験1に先立ち予備実験として,
視覚と聴覚を遮断した状態でどのくらいの時間,前庭運動を加える事が可能で あるかという検討を行った.その結果,各条件60秒間の前庭運動を加えても全 く問題は無かったため,1試行60秒間とし,試行毎にジョーバから降ろし,十 分な休憩を取らせた.実験申の姿勢と様子を確認するためにビデオで録画した.
統制条件として,ジョーバマシンの運動からの振動だけを呈示した振動のみ条 件を設けた.比較条件は,風のみの刺激が3(前方向,横方向,後方向)方向か
ら呈示された風のみ条件,振動条件十風(前方向,横方向,後方向)条件を組 み合わせた6条件で行った.このとき,風あり条件では,試行開始後,ジョー バマシンの前方向,横方向,後方向に置かれた扇風機から風を受けた.風の強 さは変えず,一定の強度(風速2.7m/s)で呈示した.実験室の室温は常に28℃
に保った.各条件はカウンターバランスを取るために参加者毎にランダムに行 った.方向条件ごとに3分程度で一回の休憩を設けた.それにより振動の順応 を避けた.順応の強さに個人差があるが休憩は5分から15分程度であった.ま た,実験が進むに連れて振動による順応が解けるまでの時間が延長された.最 大で15分程度の休憩で身体動揺は解消された.休憩中はアイマスクとイヤフォ ンを外し,ジョーバマシンからおりて椅子に座らせた.この時,吐き気や目眩 が無いか確認をして休憩させた.5分後に参加者を立たせて身体動揺の有無を確 認させた.この時点で動揺の有るものは無くなるまで休憩を設けた.
実験参加者の課題は,各試行中,自己運動知覚(例えば,前後左右など自分 が今いるこの場所から少しでも移動しているという感覚)が生起したら,口答 で はい と答え,その後にその感覚がどの程度の強さで感じたのかを5段階
(1:非常に弱い〜5:非常に強い)で評定することであった.また,試行の途中 で自己運動の感覚の程度が変化した場合には,何度でも変化後に感じた評定値 を答えるように要求した.各条件は繰り返しなしで行われた.全ての試行終了 後に質問紙(表2−2)にて,自己運動の知覚した方向を回答させ,最後に自由記 述を求めた.全ての実験終了後にティブリーフィングを行った.
実験の教示からティブリーフィングまで全てを含めて所要時間は,約1時間で
あった,
2.3.結果
15名の実験参加者のうち身体的に問題のあった1名とビデオ解析で実験中,
頭を全く動かさなかった1名を除外して分析を行った.
各条件の自己運動知覚を5段階評定させて得られた値の平均評定値を算出し た.その結果について図2−8に示した.このとき,自己運動知覚なしをOとし て計算した.その結果を一元配置の分散分析にかけたところ有意差が得られた
[F(6,72)=18,298,p<.05](表2−2).多重比較の結果,振動十風条件では,
全ての方向(前方向,横方向,後方向)で振動のみ条件及び風のみの条件との 間に有意差が得られた.また,前方向の振動十風条件だけが,他の方向の振動 十風条件条件との間に有意差が得られる結果となった.しかし,風のみの全て の条件では有意差はなかった.値の詳細は表2−3に示した.統制条件である振 動のみ条件と前方向,横方向,後方向のいずれの方向の風のみ条件でも自己運 動に違いは得られないという結果であった.
風の刺激と振動の刺激が呈示されたときに感じられた動きの効果を質問紙に て回答を求めた.質問紙(表2−4)による報告を図2−9に示した.質問に対する 回答は複数回答が可能であった.その結果,前方向から風が当たると前進する と回答した人数が13人中11人であった.この11人の内5名が坂道を上る,ま たは下ると複数回答した.横方向から風が当たると横に進む回答した人数が8 人であり,その内2人は坂道を上ると複数回答した.後ろ方向から風が当たる
と後ろに進むと7人が回答した.また,その内2人は坂道を上るという質問と 複数回答をしたという結果であった.またその確信度については,いずれの条 件も3.5程度の確信度であった.最後に自由記述の回答を表2−5にまとめた.
携率
遷…
欝 憲要 纏
蟹
菱
臨霞
誰詠
業筆
禁 砥
〆 〆 療 噺 傘 率 療〆 〆 〆 ψ 〆
評 炉 ダ
振動の有無及び風の方向
図2−8.振動のみ条件,風のみの条件(前方向・横方向・後方向),振動と風条 件(前方向・横方向・後方向)ごとの平均評定値(1−5段階評定)を示している.
誤差棒は標準誤差.
表2−2.分散分析の結果
万洲畠◎テ細裂1yS1S◎デ》鉗i酬㈱
魯◎鮒。e SS 縦 鰯S 9 舞
s側㈱t §5.◎柵㈱O 12 4,5馳2棚
《1風・振動 9◎、榊§82ぺ 6 惰、㈱醐1偲.298◎、◎O◎◎****
鮒。舳Sコ §9,29§7033 7皇 ◎.823δ㈱
T◎桐1 2◎遂,7狛2フ4? 9◎
リ<.約,*Pぐ碗,**舞く綱、淋*薄く,◎◎§、**淋P〈.◎c1
表2−3.多重比較の結果
ら1細11
鰯のみ 霧,・勲方 騒鷹方簿 騒1畿方葺淘 鰯嘱1蘭方寓 鰯嘱・機方淘 鰯1,齢後方簿
鰍み ◎,lll §,1§3 室.2葦2 書,繊 §.◎31 能,鮒
嚇 1,㈱ §。溜毒 奪,書碗 ⑬。郷 ⑪.§鰯
愚繍 §,η§ ⑬、㈱ 書,o鎌 1.㈱
蟻1繍 書、c鰯 書、鰍 ⑪,§聰
鰯1醐棚 c.9磯 1.㈱
鯛鷹方陶 ⑪、5弼
鯛1繍
表2−4.風と振動が与えられたときに感じられた 自己運動の方向に対する質問
属が繍方から幾たっていた跨、実 にどのように 菱られま1したか?
11,身{傘施く輸方に追婁んだぷうに感じた
1牟身体が横方殉きに進ん怒ように感じた 匁身体が後方に進んだように感じた 4、蝦連を鐙るように感じた
妻タ灘下るように馳仁.
1ぎそあ鳶そあ姦勤約批、一連ん窓ふ派ば慈じ
1土嚢の回書だ錆号蕎慈獲憲之盛ず籔剥三6妻待一 P
1けて下さ城)
,少し嬢じた 錐欝に感じた ・
叉5…
泌一 13 1 五2 工◎1
蟻 者 数 6 、 §≡
2 i l ◎
前方陶 様方殉
●前方からの風 機からの鳳 饗綬方からの風
.鰯
綬:盾肉 堀遼1を査る 蝦滋を下る 書己運畿総
連領様
図2−9.風の方向と自己運動知覚の方向の関係 縦軸が回答数を横軸が選択肢を示している.
表2−5.自己運動を知覚したときの感覚についての自由記述
アンケートの回答一
宿に動く感じ 風に陶かっていく
動きが軍くなると横にスライド
浮いている感じだが,風のみ条件、または風を止めると横に倒れる感じがした ふわふわしていた
逆方向の動きを感じた
飛 sミみたい
運動風敵ずっと前のめりに走っていく少し下のほうに突っ込んでいく
横途中安定
後ろ風だけで起こる
套々ξもいいづらい鳥に乗っている感じ 輝勲の蛾e肥拝ectが強い
前進しながら上がったり下がったりしているように感じた 自軍云革やバイクに乗っている人のほうが強く起こるのでは?
2.4.考察
本研究の結果から,自己運動知覚は視覚情報が無くても生起することが明ら かとなった.振動刺激による前庭運動と風による皮膚刺激が同時に呈示される
と振動刺激だけを呈示されたときに比べて評定値が有意に増大した.本実験の 目的の1つは風の刺激よる皮膚感覚が視覚や聴覚と同様に自己運動の知覚を引 き起こすかという事であった.その結果は,風だけの刺激では自己運動はほぼ 知覚されないというものであった.また,ジョーバマシンの振動による刺激だ けでも自己運動はほぼ知覚されないとう結果であった.しかし,両者の組合わ さる振動十風条件では,全ての方向(前方向,横方向,後方向)で振動のみ条 件及び風のみの条件との間に自己運動知覚の生起が増大する効果が得られた.
これまでの多くの研究で視覚と前庭のシステムが自己運動には重要な感覚で
あることが示されて来た(DichgansandBrandt1978;Howard1982;Palmisano,
2003,).また,風の方向に関しては,質問紙による回答から刺激の方向とは逆 の方向に自己運動が知覚されたことが報告された.この結果はこれまで視覚刺 激による自己運動知覚や聴覚刺激による自己運動知覚の方向と一致していた.
つまり,前方向からの風に対する刺激には自己運動知覚は前の方向に進んでい ると報告され,横方向の風には横に,後ろ方向からの風には後ろに進んでいる との報告がなされた.自由記述による回答では,浮遊感,乗り物に乗って移動 している,風とは反対方向に移動して感じたなどの報告が得られたため,風の 刺激とジョーバマシンによる前庭運動でも自己運動知覚は視覚や聴覚ベクショ
ン(自己運動知覚)と同様の感覚が生起したと考えられる.実験1の目的は,
風の刺激及び風と前庭運動による刺激だけで自己運動知覚が生起するか否かで あった.いずれの方向からの条件によっても風に振動が加わると単一条件とは 有意差が見られた.以上のことから自己運動知覚の手がかりには皮膚情報も重 要な役割を果たしていることが示唆された.また,本実験の結果,前方向から の風だけが他の方向との間に有意差が見られたが,その原因の一つの可能性と して,風の当たる皮膚の露出面積の違いが考えられる..というのは,春先の実 験であったため,実験参加者がコートを着用していた.そのため,顔以外の皮 膚の露出が極端に抑え得られていた.そこで実験2では,上半身の風の当たる 皮膚の露出を最大限にして検討する.
3一実験2
3.1.目的
まず,実験1の問題点として以下のことが挙げられた,(1)コートを着用さ せたため,皮膚の露出面積が顔だけになってしまった,(2)風速の変化ができ ない扇風機を用いたため,風速影響を検討することが出来なかった,(3)自己運 動知覚が生起した時の反応は口答で答えさせていたため,潜時と持続時間を指 標とすることが出来なかった,(4)複数のスイッチ(ジョーバマシン,扇風機,
ストップウォッチ,ホワイトノイズ,ビデオ)を1試行毎に入れなければなら ず,ジョーバマシンと扇風機の起動にタイムラグが発生してしまった,(5)自由 記述の回答で残効があるという報告があった.そのため本実験は装置などいく つかの点で大きく変更した.
これらの改善点として, (1)はタンクトップに着替えさせ上半身の皮膚の露 出を多くすることとした.(2)は扇風機の機種を変更し,4段階の風速に変更で きるものとした.各風速は風速計で測定を行った.(3)と(4)は反応潜時と持続 時間を測定するためのプログラムをMATLABで作成し,制御した.またジョーバ マシンと扇風機のハード部分を改造し電源を外部に露出させた.露出した電源 はデータ収集制御装置Lab Juck (U3−LV(Low Voltage))を通してパーソナルコ ンピューターに繋ぐことで,複数スイッチの同期の問題も同時に解決となった.
最後に個人差に合わせて休憩時間を十分延長することで残効の問題に対処した.
以上のことを改善した上で,実験1で見られた前方向からの振動十風条件の みに出現した有意差が風の当たる面積による影響であったのか,それとも顔面 に移動方向を特定する機能が存在するためなのかを検討した.その理由の一つ として,顔面には三叉神経があり,他の皮膚感覚とは異なり,そこからの神経 経路は脊髄を経由せず三叉神経脊髄略核を経由し,左視床の背内側腹側核に達
し,中心後回皮質に達する(山内・鮎川,2001)という特徴を持つことが挙げ られる.更に風の強度(風速の違い)によって自己運動の知覚の違いに影響す るのかを検討することを目的とした.
3.2.方法
3.2.1.実験参加者
実際に17名が参加したがその内1名が身体的問題により,2名が反応ボタン の押し忘れなどの単純な失敗によりデータの分析から除外された.最終的に男 性5名,女性9名で平均年齢25.9歳の14名を対象とした.視覚および聴覚,
胃腸,前庭感覚に異常はなかった.
3.2.2.実験計画
独立条件は,風の方向の条件として前方向,横方向,後方向の3条件×風の
強度として4(強度1:O.6m/s,強度2:1.5m/s,強度3:3.Om/s,強度4:5.5m/s)
条件×振動条件として振動有り,振動無しの2条件であった.
従属条件は,自己運動知覚が生起したか否かを反応ボタンを押すことで反応さ せた潜時と持続時間であった.そしてそのとき,自己運動知覚の強度を5段階
(1:非常に弱い〜5:非常に強い)で評定した値であった.
3.2.3.装置
反応潜時と持続時間を測定するためのプログラムをMATLAB(Mathworks杜)
で作成し,プログラムを走らせるためのパ』ソテルコンピューター(VAIO Z,
SONY杜)で制御した.
実験1で風を送るために使用した扇風機は風速が変えられなかった事と風が トルネードをしてしまう従来型の扇風機であったため,われわれが実際に経験 している自然な風を再現することが出来なかった.そのため二重構造の羽根に より風が拡散して,自然界の風と同じように面で移動する風を送る事が出来る 扇風機(クリーンファン2,900−8509−71,バルミューダ社)(図3−1,2
)を使用した,高さは867㎜×幅330㎜×奥行き320㎜であった.実験1で使用 した扇風機よりも高さが低いためキャスター付きの台に乗せて高さを調節した.
実験1での問題点であった複数の機械のスタートボタンは次のように改善し た.まず,扇風機の外部のカバーとモーターを取り外し,基盤のON/OFF(プラ
スとマイナス)の電源を外部に露出させるため,盤陀でリード線と接続した(図 3−3〜6).ジョーバマシン(図3−7)のON/0FF(プラスとマイナス)の電源も扇 風機と同様に盤陀でリード線と接続し本体の外部に露出させた.次に露出した 電源をLab Juck (U3−LV(Low Vo1tage))(図3−8)を介してパーソナルコンピュ ーター(VAIO Z,SONY杜)と接続した.MATLABにより作成されたプログラムに てジョーバマシンと扇風機の0N/0FFを制御した.このプログラムによって反応 潜時及ぴ持続時間を記録した.
次に,皮膚の露出度を統制するために男女とも同じデザインのタンクトップ
(ファーストリテイリング製)(図3−9)を着用させた.その他は実験1と同様 であった.その他は実験1と同様であった.
練 U
図3−1.自然な風を作る羽の特徴 図3−2.扇風機全体像
図3−3.デジタルモーター
図3−5. モーターを取り出した本体
図3−4.取り出した基盤
図3−6.電源を外部に露出
11.11民z
図3−7.改造後のジョーバマシン 図3−8.収集制御装置Lab Juck
図3−9.着用させたタンクトップ
3.2.4.手続き
実験2では実験1と同様の部分も有ろが,装置変更などもあり手続きが大きく
変更された.
実験1では1試行60秒で行ったが,反応が40秒以降に強くなる傾向が見ら れたため1.5倍の90秒に変更した.
実験参加者は実験室に入室後,ジョーバマシンの説明を受けた.その他の手 続きは実験1と同様であった.教示は以下の通りであった(表3−1参照).
表3−1教示
1. タンクトップに着替えていただきます.
2.最初にジョーバにまたがって頂き,ジョーバの動きに 慣れて頂きます.その際,両足を鐙に乗せ,片手でハ ンドルを握って,反対の手でボタンを握ってください.
3.ジョーバの動きに慣れ,ボタンの押し方の要領が掴め ましたら,アイマスクとイヤフォンを装着していただ きます.
4.アイマスクとイヤフォンを装着後に練習試行を行いま
す.
5. ボタンを押すと開始します.こちらでスタートと言っ たらボタンを押してください.
6.実験が開始してから,自分の体が前進しているか横に 進んでいる,または後ろに進んでいるなどの感覚が現 れましたら,直ちにボタンを押し続けてください.ボ タンを押したままその強度を口頭で,1が非常に弱く 感じたから5が非常に強くに感じたの順で番号を答え てください.
7.問題が無ければ実験を開始いたします.