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第2章

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(1)

第2章 1,ふジエンを』介在させるニッケノレ触媒による有機金属、カノレボニノレ類の多成分遮結反応の閉発

第2章

 工,3一ジエンを介在させるニッケル触媒による 有機金属、カルボニル類の多成分連結反応の開発

 既に、著者の研究室では、ニッケル触媒、Et3B(またはEt、zh)共存下、室温で 共役ジエンとカルボニル化合物を反応させると、カルボニル化合物のホモアリル化 反応が准行し、ビスホモアリルアルコールが収率良く得られることを報告している 11】。本研究では、有機金属試薬を、ジメチル亜鉛、トリメチルホウ素、ジフェニル

亜鉛、トリフェニルホウ素のような、B、ヱnのβ位に脱離可能な水素を有しない試 薬を用いると、1,3一ジエンのC−1位でカルボニル化合物が、C−4位で有機金属のア ルキルやフェニル基がそれぞれ反応し、3成分連結した生成物を収率よく与えるこ

とも見出した。

 一方、ジー孟8π一ブチル亜鉛[孟一Bu2Znlを用いると、反応挙動が異なりジエンのC−1位

で亜鉛のアルキル基が、G2位でカルボニル化合物が反応した生成物を与えること

も見出した。

      一37一

(2)

第2章1,3.ジエンを分在させるニッケル触媒による有機金属、カルボニル類の多域分連結反応の朋発

序論

 DielsとAlde,による熱的な[4+2]環化反応や、Wilkeによるニッケル触媒を用い たオリゴメリ化反応の発見以来、共役ジエン化合物は有機金属及び有機合成化学の 分野において、鍵化合物的な存在である[2]。最近、ニッケル以外の遷移金属触媒下

における環化反応正31や1,2.及び1,4一ジ官能基化反応(HとB【4】;HとSi圧51;一NとSn[61;

BとB[71;BとSi[81;BとSn[91;CとSi[101;SiとSi【11」;SnとSnl121;など)[131の開

発により、その重要性が再認識されづつある。多くの場合、その反応の生成物は、

単離可能なアリルメタロイド種であり、カルボニル化合物の位置及び・立体選択的 なアリル化反応に有効に利用されている。

 ↓       R −  M R\

R 

 ↓       R じ  M 〜敦 ︵副瞳

R

R=Me

  Ni    MRn.1

  i   R

   l

R=Et  Nlo

H2C=CH2

Me       Rl

   、

    Rll O        \

        MMen.1

     ↓

 M        RI

    、

      R聡 OH

     2

RII

Me

R。

O\

MMen.1

  RIl

     RI グ

  Me OH

   7

剛..脅H

RI

O\

MEtn.1

  B  一   Rl

  H  OH    1

Scheme1.Nickel−catalyzed ooupling of1,3−dienesw批h alkylmetal reacents and carbonyl oompounds、

       一38一

(3)

第2章 1,3・ジエンを分在させるニックノレ触藻による有機金属、カノレボニル類の多成分連結反応の開発

 既に著者の研究室では、2価のNi(acac)2を触媒として用い、Et3B(またはEt2Zn)

共存下で1,3一ジエンとカルボニル化合物を反応させると、ジェンがホモアリルアニ

,オン等価体として作用して、ビスホモアリルアルコール誘導体1を与えること報告 している113】。この反応の興味深い点は、種々のカルボニル化合物と高い位置及び、

立体選択性を示し、高収率で生成物を与えることである(Scheme1)。

 反応のメカニズムは、アルキルメタロイド(MR。=Et3B,Et2Zn)がルイス酸とし て作用し、カルボニルに化合物に配位し活性化する。それに、ジエンーニッケル(0)

錯体が求核付加する。次いで、金属(B,Zn)上のアルキル基がNi(II)上に転位して、

中間体皿(R=Et)を形成する。最終的に、β上ドリド脱離、還元的脱離によって 生成物1とエチレンを放出しながらNi(o)が再生されるというものである。仮に、

この反応をE4nの代りにMe2Znを用いて行うと、最終的なステップであるβ一ヒド リド脱離が不可能となり、中間体1から還元的脱離することでホモアリルアルコー ル2または、ビスホモアリルアルコール7を与えることが考えられる。

 ニヅケル触媒を用いた有機金属化合物、アルキン(あるいはアルケン)、カルボ

ニル化合物の三成分連結反応は、池田【14】、MontgomeryI15]らによっていくつか報告

例があるが、不飽和炭化水素として共役ジエンを用いた例は、報告例が少ない。一 例として、高井1161らのCrCl2を用いた沃化アルキル、1,3一ジエン、カルボニル化合 物の三成分連結反応があるが、この反応は1,3一ジエンのC−1でアルキル基と、C−2

位でカルボニル化合物と反応して、2−alkylmethyl−3−buten−1−olsを与えるという反応

である。

 本研究では、有機亜鉛(Me2Zn、Ph2Zn)もしくは有機ホウ素(Me3B、Ph3B)を 用いてニッケル触媒存在下で、1,3一ジエン、カルボニル化合物を反応させると、1,3 一ジエンのC−1位でカルボニル化合物と、C−4で有機金属のアルキル基と結合した ホモアリルアルコール誘導体2を与えることを見出した。いずれの反応においても、

位置異性体である生成物7は全く得られなかった。更に、この反応は、ホスフィン や窒素化合物などの配位子を必要としない点も興味深い。この反応は、有機金属、

      一39一

(4)

第2章 1,3一ジエンを1介在させるニック ル触媒による有機金属、カルボニル類の多庇分蓮結反応の閉発

カルボニル化合物との反応における介在オレフィンとして共役ジエンを用いた初め

ての例である。

 また、亜鉛反応剤としてあBu2Znを用いると、1,3一ジエンのC4位で有機金属の アルキル基と、℃一2でカルボニル化合物と結合したホモアリルアルコール誘導体を 与えることも見出した。更に、かBu2Znの反応は、必ずしも触媒を必要としないこ

とも明かとなった。

一40一

(5)

第2章 1,3・ジエンを分在させるニッケノレ触媒による有機金属、カルボニノレ類の多成分違結反応の閉発

結果と考察

      Me2Zn、1,3一ジエン、カルボニル化合物の三成分連結反応

 ジメチル亜鉛(4.8mmol)、1,3一ブタジエン(8mmo1)、ベンズアルデヒド(2mmo1)

をNi(acac)2((L2mmol)存在下、THF中、窒素雰囲気下で2時間反応させると、(E)一 1−pheny1−3−hexano1(2,R=Ph)が単一生成物として99%の単離収率で得られた(Eq.1

及びTable1、rm1)[171。

Me2乃+、へ捉10mol%Ni鰺)2

       RTHF㌧25〜30。C

グ2

 R H㌧  R H︑

(1)

3

 また・この反応は・カルボニル基の周辺の掌体的な嵩高さが生成物の選択性に著 しく影響を与える。嵩高さが大きくなるにっれて、ジメチル亜鉛のメチル基、ジエ ン、カルボニル化合物が1:2:1の比で反応した4成分連結生成物3の割合が増加す る。とりわけ、アセトンの場合には、3のみが選択的に高収率で得られた(Table1、

run5)。

 ・〉㌧・巳Rll謂1美讐

 R H︑

(2)

4

ン 〃

 3

 R H㌧

5

41一

(6)

第2章1,3・ジエンを介在させるニックル触媒による有機金属、カルボニル類の多成分連結反応の嗣発

 次に、イソプレンを用いて反応を行うと興味深いことに、非対称ジエンであるイ ソプレンはMe2ZnとC4位で、カルボニル化合物とC−1位で位置選択的に反応し た。また、ブタジエンの場合と異なり、カルボニルの種類と無関係にMe2Znのメ チル基、イソプレン、カルボニルが1:1:1で反応した生成物4を選択的に与えた。

アルキルアルデヒド、ケトンの場合には1:2:1生成物5も若干量得られ、イソプレ ン同志tail to tailで結合している。しかし、残念なことに一連の反応では、立体選 択性は低く、生成物4については、E:Z=2−4:1の立体異性体の混合物が得られた。

Table1にジエンとして、1,3一ブタジエン、イソプレンを用いて、種々のカルボニル 化合物との反応について検討した結果を示す。

42一

(7)

第2章1,3・ジエンを分在させるニッケル触媒による有機金属、カルボニル類の多成分連結反応の閉発

Table1、Nickel(0)一ca懐lyzed coup睦ng reaction ofdimethylzinc,1,3−dienes,and carbonyl compoundsaナ

「un carbonyI    oompounds

1,3−diene temp(。C)/

       time(h)

 %is・latedゾeld・fp一・du詔ノ

1:1:1p roduct        1:2:1product

1 2 3 4 5 6 7

  PhCHO

PhいCHO O−CH・

 トBuCHO

 aoetone

O一・

PhCHO

8  PhφCHO 9〈}一CH・

10    fLBuCHO

11

12

 aoetone

〈}・

butadiene butadiene

butadiene

butadiene butadiene

butadiene

isoprene

lsoprene

lsoprene

isoprene

lsoprene

Isoprene

rt12 rt11

rt11

rt/3

3013

rt/1

rt15

3011 30/1

rt13

30/3

直13

2a=99 2b=83

2C=73

2d:75

2e=0

2f旨37

3a:0 3b:3

3c:17

3d=20 3e=89 3f:60

4a:92[1巨:■=2.2:11  5a=0

4b:40[E:Z・=3.8:1】  5b:10

4c:62[ε:Z=4.0:11 5C:11

4d:571ε:■=2.4:1】  5d=8

4e=69[El:Z=2.5:11

4龍68[ε2『=3.7:11

5e:10

5f=17

司A mixture of[Ni(acac)』(02mmol),1,3−butadiene or isoprene(8.O mmol),an aldehyde or a

kαone(20mmol),andMe2Zn(48mmol,1Minhexane)indryTHF(5ml)wass葡rredatthe

indicated temperature under N2【Eqs.(1),(2)1.

切Yield refer to the isolated materi甜s.A products were characterized by lH NMR(400MHz),

13C NMR(100MHz),and IR s僻droscopies,highresolutionmass spectrometry,andゆr elemental analySiS、

c)ln add而on to2−5,1−methyl−3−phenylpropan・1・ol(15%,run2),1−cyclohexylethan−1・ol(10%,

run3),1−methyl・3・phenylpropan−1−ol(48%,run7),or1−cyclohexylethan−1・ol(20%,run8)was obt創ned.

φTheε:Z ratios are determined on the basisσ「1H and13C NMR sp㏄troscopies.θゾCompound 3contains a sm創l amount ofan isomer(<10%).

      一43一

(8)

第2章1,3一ジエンを分在させるニッケル触藻1による有機金属、カルボニル類のi多成分連結反応の閉発

 まず、1,3一ブタジエンとの反応について検討を行った。ジヒドロ珪皮アルデヒド は、目的生成物2bを83%の収率で与えた。しかし、予想外なことにMe2Znのメ チル基、1,3一ジエン、アルデヒドが、1:2:1で反応した4成分連結反応生成物3bを 3%の収率で与えた。興味深いことに、Table1の結果から明らかなように、用いる カルボニル化合物のカルボニル周辺の嵩高さが増すにつれて、1:2:1付加物3の収 率が増加するという結果となった。実際、アセトンを用いて反応を行うと、3eを 単一生成物として定量的に与えた。しかし、シクロヘキサノンを用いた場合には、

少量の1:1:1付加物2fも得られた。

 化合物2の位置及び立体化学は良好で、すべての化合物は、¢)一3−hexene−1−01誘 導体を与える。(E,E>3,7−decadiene−1−01(3)の構造は、各種スペクトルデータより決 定した118】。まず、1H NMR(CDCl3,400MHz)において、Eu(fod)31fod=6,6,7,7,8,8,8−

heptafluoro−2,2−dimethy1−3,5−heptanedionato]を添加して測定することにより、オレフ ィンのプロトンが(dt,」=15.4,6.OHz,1耳)、(dt,」=15.4,62Hz,1H)、(m,2H)に分

かれた。また、13C NMR(CDCl3,100MHz)のchemical smsは、理論値11glとほぼ一 致した。IRスペクトルにおいてもγ=970cm4の吸収帯を含んでいることからも オレフィンの立体化学がE体であることは、明らかである。

 次に、 同様の条件下でジエンとしてイソプレンを用いて反応を検討した。イソプ レンの反応では、選択的に1:1:1付加物4を与える。1,3一ブタジエンの場合と比較 してイソプレンの場合には、4を主生成物として与えるためにアセトンとも1:1:1 付加物を与える。すべての生成物において、位置選択性は良将である。つまり、イ

ソプレセのC−1位でカルボニル化合物と、C−4位でMe2Znのメチル基と選択的に反 応している。しかし、残念なことに化合物4は、立体異性体の混合物(おおよそ、

E:Z=2−4.1の比)であることが分かった。

一44一

(9)

第2章 1,3・ジエンを介在させるニッケノレ触媒による肴機金属、カノレボニル類の多成分連結反応の醐発

M Mン

H     O3     NaBH4

R  CH2Cl2   EtOH

   −78℃

〈rOH+H・一・H

   A      B

+H︒

球HR(5)

     C

 また、化合物5については、1H、13C NMRのスペクトルから3つ以上の立体異 性体が存在する。化合物5のオゾン分解、NaBH4還元して得られる3種のアルコ

ール成分(2.butanol、1,4−butanediol、1,3.butanediol)を解析するこξで、化合物5

は位置化学的には均一で、メチル基は、C−3位とG8位に存在することが分かった。

Figure1.Stracture Determination of Dienyl Alcohol by Ozonolysis and Reduction       H         o

      9ぎ蓼〜舗R.

      5f

        A(}Cl(0、3ml)

reaCtiOnn      reaCtiOn

mixtUre l      mi)dure2         Et3N(1ml)

THF(1ml)

rea(オionn mixture A

      H

HO

5fC:t月:3t9min.

ea(オion mixture B

A(沿

OAc

5fB=tR:14、9min

NaBH4(1mmol)

Et2牌1)

 Not Detected       H

HO

5fCI=tR:16、8min.

       OH

HO

5fBI:t月:6.3min、

VPC Conditions Shimadzu GC−17A Detector:FD

Column:DB・1(0.32mm x30m)

Flow Rate:(He)1ml/min,

N2:75kPa,Air:50kPa,H2:60kPa

lni:250。C.Det:250りC.

Ini:80℃(10min.),Rate:10。C!min.

Fin:240℃(22min.)

一45一

(10)

第2章1,3・ジエンを介在させるニッケル触媒による有機金属、カルボニル類の多成分連結反応の開発

 一例を示す。まず5fをオゾン分解し、NaBH4で還元したものをreactionmixture1 とした。これを、Figure1に示す条件下でガスクロマトグラフィー分析を行った。

結果として、5fCが検出され、5」℃ は検出されなかった。

更に、reaction mixture1をアセチル化したものをreaction mixture2として同様に分 析したところ、5fBが検出され5fB・は検出されなかった。以上の事から、位置化学 的には均一で、イソプレンは、tailtotailで結合しており、メチル基は、C−3位とC−8 位に存在することが示唆される。

一46一

(11)

第2章 1,3一ジエンを介在させ るニッケル1触媒による袴機金属、カルボニル類の多成分連結反応の閉発

尺_Ni・r/ZnMe2     1

↑寸

Me

  闘

2(R=H)

4(R=Me)

1

    lV      V       Vl

      /       3(R=H)

      5(R=Me)

Scheme2。P口ausibie mechanismfortheformation of2/3and415.

 最も可能性の高い反応機構をScheme.2に示す。まず、ジエンが1,3一ブタジエン

の時には、1,3一ブタジエンーニッケル(0)錯体が、ジメチル亜鉛が配位して活性化さ

れたカルボニル化合物と反応して、遷移状態1を経由し、中間体皿を形成し1:1:1 付加物である化合物2を与える(patha)。これは、型n一π一アリルニッケル(II)構 造である中間体皿から、還元的脱離によりメチル基がπ一アリルニッケルの末端部 位に付加するという経路である。しかし、求核剤に対する反応性の低いカルボニル 化合物では、1の遷移状態から酸化的環化を経て、中間体皿へ至る過程は遅く、

より求核性の高いビスーブタジエンニッケル(0)錯体1vIを経てVへ進む方が優

先されると考えられる。この場合分極率のより大きい遷移状態Wは、1よりも高

い反応性を示すものと理解される。零た、イソプレンは、カルボニル化合物の反応

性に関係なくpath aによって選択的に反応する。Path bの経路では、VIの遷移状

態でのメチル基の立体障害のためにVへ至る経路は不利である。更にイソプレン

      ー47一

(12)

第2章1,3・ジエンを分在させるニッケル触藻による有機金属、カルボニル類の多成分連結反応の開発

は、C−2位メチル基により、C−4位よりもC−1位のほうが電子密度が高いために、

カルボニル化合物への求核的付加は1,3一ブタジエンよりも進みやすい。

       Ni(acac)2(0・1mmOゆ       add託ive

、人・PhCH・Me謂幕ol)ノHP、匁h

       r.t.

(4mmol)    (1mmoり      2a        6 Tab口e2.Examination of ca悟lyst series for coupling of Me2Zn,isoprene,and berにaldehyde

run additive

lmmoゆ

time(h) 9βyield of2a

  [ε:Z】

%yield of6

       司切  none

PPh3(0、2)

PPh3(0,4)

dppe(0、1)

dppe(0、2)

dPPP(0.1)

dppf(0.1)

 none  none

2 24 24 侶 18 6 24 3 24  92[2.2:1】

 no reaction  no reaction  63[t3:11  noreaction

 78【1.6:11

00mplex mixture  72[22:11  no reaction

0

15

aナNi(cod)2(0』mmol)was used instead of Ni(acac)2.

ρ♪Ni(PPh3)2CI2(α1mmol)wasused insteadσ『Ni(acac)2.

 次に、イソプレンとの反応は立体選択性が低かったことから、その選択性の向上 を目的として触媒系の検討を試みた。その結果をTable2に示す。

 ニッケル触媒に対して、PPh3をそれぞれ0.2mmol、0.4mmol加えて反応を行っ たがいずれも反応は進行しなかった(mns1,2)。次に、2座配位子である■,2−

bis(diphenylph・sphin・)ethane[dpPel、1,3−bis(diphenylph・sphin・)pr・paneldpPP】・1,1 一

       48一

(13)

第』2章 1,3一ジエンを1介在させるニッケル触傑による存機金属、カルボニル類の多成分連結反応の爾発

bis(diphenylphoshino)ferrocene[dppqをそれぞれ用いたが、目的物2aの収率の低下 や副生成物6が得られる結果となった(runs4−7)。立体選択性に関しても、向上

は見られなかった。また、ニッケル触媒をNi(cod)2[cod=1,5−cyclooctadienel、

Ni(PPh3)2Cl2に代えて反応を行ったが、好結果は得られなかった。

一49一

(14)

第2章 1,3・ジエンを分在させ』るニッケノレ触媒による有機金属、カノレボニノレ類の多成分連結反応の開:発

      Ni(acac)2(Oj mmol)

       Me2Zh(2.4mmol)

   diene    +   PhCHO      Products        THF(5ml)

       r,t.

  (4mmol)      (1mmol)

7ab冒e3.Nickel(0)一ca捻lyZed coupling reaction ofdimelhylzinc,various1,3−dienes,and PhCHO

run dienes time(h) products yield(%)[E:Z ratiol

1 3

OH

 Ph

6:21

8:63【3.8:1】

2

3

4

5

6

7

﹀︑

TMS

課ps

   Cl

2

4

5

3

14

     0

      2

、 、

       OMe

、   ノ

 9:74[1:1」

H

Ph

oomplex mb(ture

TIPSO  OH

 /

       Ph

10:43【3,5:1】

       H

 /

       Ph 2a:63[2.5:11

      H  ク    Ph

12:4916.3:11aノ

グ 〃

11=9

6:32

6=、32

H

Ph

a少Stereochemis甘yis unknown

一50一

(15)

第2章 1,3・ジエンを分在させるニッケノレ触蝶 こよる有機金属、カノレボニノレ類のi多成分連結反応の閉発

 次に種々の置換共役ジエン化合物を用いて三成分連結反応の検討を行った。その 結果をTable3に示す。それぞれ、2,3一ジメチル4,3一ブタジエン、ミルセンを用い て反応を行うと、良好な収率で8、9を与えるが、立体選択性は低く、2,3一ジメチ

ル4,3一ブタジエンの場合は、1−phenylethanolが副生成物として得られた(nms1,2)。

2一トリメチルシリルメチルー1,3一ブタジエンを用いると反応は進行しなかった。しか し、興味深いことに、2一トリイソプロピルシリロキシー1,3一ブタジエンを用いて反応

を行うと、立体異性体の混合物ではあるものの良好な収率で目的生成物10を与え た。また、2一クロロプレンの場合には、予想外なことにイソプレンの場合と同様の 生成物2aが得られた。また、1:2:1付加物である11もまた若干量ではあるが得ら れた。1,3一シクロヘキサジエンもまた三成分連結生成物12を与えることが分かっ

た(nms3−6)。

 しかし、Et3Bを用いる還元的ホモアリル化反応【1a】の際に良い基質であったソル ビン酸メチルは、この反応には関与せず、1−phenyl ethanol6を与えたのみであった

(mn7)。

一51一

(16)

第2章1,3一ジエンを分在させるニッケル触媒による有機金属、カルボニル類の多成分連結反応の朋発

      Me3B、1,3一ジエン、カルボニル化合物の三成分連結反応

 前述のように、Me2Zn、1,3一ブタジエン、カルボニル化合物の三成分連結反応は・

良好な収率で目的生成物を与える。しかし、イソプレンを用いると立体選択性が低

いといった問題点がある。

 そこで、反応剤としてMe、Znの代りにト』リメチルホウ素[Me,B]用い、同様の条 件下反応を行ったところ、1,3一ブタジエンとの反応では、良好な収率で2aが得ら

れた(式3)【20]。この反応は、π一アリルニッケル中間体のNi(II)ヘホウ素上のメチ

ル基がトランスメタル化することが可能であることを示す。

      cat.Ni(acac)2      H

MenM+づ《!+PりCHO    ・ノ械  β)

       THF,r.t.       ㌧      兇 Ph

       MenMニMe2Zn;2a(99%)

       MenM=Me3B;2a(70%)

 次いで、イソプレンを用いて反応を試みたところ、喜ばしいことに4aがE選択

的に得られた[E:Z=2q:11(式4)。

       H

M鑑M+〉㌧+PhCH・翻もhグ・〜Ph(4)

       、ン〜

       ε」4        Z」4

       MenM=Me2Zn;4a:92%【(ξ)4a:(∂4a=2、2:1】

       MenM=Me3B;4a:56%1(匂4a:(∂4a=20:1」

 1,3一ブタジエンに関しては、Me2Znの方が収率良く生成物を与えるのでMe3Bを 用いる利点はない。そこで、ジエンとしてイソプレンを用いて立体選択性について 種々のカルボニル化合物について検討を試みた。Me3Bは、0。Cアルゴン雰囲気下、

三塩化ホウ素[BCl31(4mmol;1M in酔heptane solution)にMeLi(12mmol;1・04M in        −52一

(17)

第2章1,3・ジエンを1介在させ るニック ノレ触藻による育機金属、カノレボニル類の多成分遮結反応の爾:発

ether solution)、あるいはMeMgBr(12mmol;3Min ether solution)を加えて、その

後、室温で2時間撹搾し調製した。いずれの方法で調製したMe3Bを用いても、結

果に優位の差はなかった。

 (E)体と、(勾体の比率は、1H NMRスペクトルにおいて、生成物4aのC−6位のメ チルプロトンとC−2位のメチレンプロトンが分離して観察されるので、正確に求め

ることが出来た。(E)4a:δ0.97(t,∫=7.2Hz,3H)[C−6,Me]、δ2.41(dd,1=3.8,13.8 H2)IC−2,methylenel;(β)一4a:δ0.90(t,」=7.3Hz,3H)[C−6身Mel、δ2.63(dd,■=9.0,13.4

Hz)[C−2,methylene】。(の体、(笏体の構造は、13CNMRスペクトルにより確立した。

 更に、Me3B(BC13とMeLiから調製)を用いて、電子吸引基や電子供与基をベ ンゼン環上に有するアルデヒドを用いて反応を行った結果をTable4,nms3−7に 示す。いずれの場合も収率良く目的生成物4g−4kを与え、高いE選択性を示して いる。とりわけ、ピペロナールの場合、97%の収率で生成物4iを与え、E:Z=15:1 であった。nm7のp−bromobezaldehydeの場合、収率が低下する原因については環

在不明である。生成物4fのBr基がMe基に置換された生成物3−methyl−1rρ一tolyl−3−

hexeno1は、反応混合物中には全く検出されなかった(Kumada−TamaoCoupling)。

 合成化学的に意義深いことに脂肪族アルデヒドであるルオクタナール:シクロ ヘキサンカルボキシアルデヒドとの反応では、極めて高いE選択性を素した己

一53一

(18)

第」2章1,3・ジエンを分在させるニッケノレ触藻による有機金属、カルボニル類の多成分連結反応の閉発

『abb4Nio・catεJyzed(ξ)一selective three・componer嘘connection reactbn of Me3B,isoprene,and 創dehydes司

run aldehydes reaction

time(h) produαs4(isolatedyield)切[閣φ

1

2

OHC−Ph

2

4

H

Ph

4a(56)[20:11

4a(63)[20:11φ

3・HC《〉・Me

4

5

  MeQ

・・C之》

︑O

  Hc  O

5

22

24

H

 、        4g(85)[13:11

1

   OMe

H

H  Me

︑〃

/ー\

︑〃

!1\

4h(87)[13:1】

   4置(97)[15:11

0 〉

6 ・HCゆCI 20 OH

〆1\

︑〃

Cl

4葺(93)[17:11

OH 7 ・HC凸Br 3

/ー\

︑∠

Br

4k(50)[16:11

8   0HC一η・()7H5 17

H

η一C7H5 41(54)[oηケε1

9 ・・Cく〉

12

H

4c(80)[oηケ Ei「」

aナGeneral reactioncond而ons:M艶B【4mmol,preparedfrom BCl3(4mmol;1M inη一heptane)

and MeLi(12mmol;104M in ether)was added into a homogeneous solution of isoprene(8 mmol),analdehyde(2mrhol),and Ni(acac)2(02mmol)indryTHF(10ml),andthe mixturewas stirred at ambient temperaturefor lhe period of time indicated under N2.とりYleld refersto the corhbinedisola泊dyield of(ξ)。and(Z)4,whlch conねin an unidentified by−products(<8%)

common to all runs,周l productswere properly characte而zed by lR,1H,13C NMR spedra(see experimentε嵯sec髄on).のMe3B[4mmol,preparedセom BCl3(4mmol;1M inη一heptane)and MeMgBr(12mmol;3M in ether)was used.

       一54一

(19)

第2章 1,3一ジエンを分在させるニッケル触媒による有機金属、カルボニル類の多成分連結反応の閉発

 この立体選択性の向上の要因は不明である。そもそもこれまでの前例によると、

B[21】、Sil22】、Sn[23】のようなアート錯体からメチル基のようなアルキル基が転位する ことは困難だとされている。事実、小林[241らは、aryl(Me)B(OR)、やvinyl(Me)B(OR)2 のようなアート錯体のary1及び、vinyl基だけがπ一アリルニッケル(II)中間体に選択

的に転位するということを示している。より反応性の低いMe3BからのMe基の移 動に関する前例はない。敢えて説明するとすれば、Me、Znの場合に比べて、Me,B の場合は、oxa一π一allylnickel中間体1XにおいてOBMe2の立体サイズが大きいため に型n一皿と傭∫一1Xの平衡において酬n−IXが有利になったものと言えよう。

   7

   V

㍉〆o\Bボマ

  Me

     εγπ・IX

   ll N・・

   Nl

   Me

     aπ四X

εL4

R

O、

 BMe2

R

O、

 BMe2

Z・4

Scheme3.Piausible Reaction Mechanisms ofthe Me3B,1,3−Diene,AromaticAldehydes.

 更に、フェニル化剤としてPh3B、メチル化剤としてMe4B−Li+を用いて反応を試 みたが好結果は得られなかった。Ph,Bは全く反応せず、Me、B−Li・は室温、一21時間 の反応で、生成物4aを18%の収率で与えた。Me4B−Mg2+Bゴを用いても、ほぼ同様

の結果を得た。

今回達成された、ニッケル触媒によるMe2Zn(あるいはMe3B)、ジエン、カル

      ー55一

(20)

第2章 1,3・ジエンを分在させるニッケル触媒による肴機金属、カルボニノレ類の多成分連結反応の爾発

ボニル化合物の三成分連結反応は、1,3一ジエンのC4、C−4ジ官能基化に非常に有 効である。特に、イソプレンのC−5ユニットは、天然物などの構造にも比較的良く 見られ、異なる種類の反応剤でイソプレンを1,4一ジ官能基化し、三置換されたオレ

フィンの立体化学とともに位置選択性を適切に制御すれぱ、有機合成化学上非常に

有用であると考えられる。

一56一

(21)

第」2章 1,3一ジエンを分在させるニッケル触媒 こよる有機金属、カルボニル類のi多成分連結反応の開発

   Ph2Zn(or Ph3B)、1,3一ジエン、カルボニル化合物の三成分連結反応  次いで、Ph2Zn、Ph3Bを用いて、反応を行うことにした。

 まず、Ph2ZnはMe2Znに比べて求核性が高いので、ジエンを取り込むことなくベ ンズアルデヒドと直接反応【26】し、Ph2Znのフェニル基、ジエン、カルボニル化合物 の三成分連結反応を阻害することが考えられるため、以下の検討を行った(Table

5)【27】。Ph2Znはアルゴン雰囲気下、塩化亜鉛[ZnCl21(1.2−2.4mmol,1M in ether solution)にPhMgBr(2・4−4・8mmol,2M in THF solution)を0。Cで滴下し、THFで希

釈して室温で2時間撹搾したものを用いた。

     Ph2Zh

      ・r+足Ph署 P図Ph

      Ph3B

       15a

Table5。Reaction of Ph2Zn and Ph3B wilh benzaldehyde in the presence and in the absence of nickelcat訓ys例

run   Phenylating agent Nトcatalyst time(h) benzhydrol(%yield)bノ

Ph2Zn Ph2Zn Ph2Zn Ph3B Ph3B Ph3B

 none  none

Ni(acac)2

 none

Ni(acac)2

Ni(ood)2

 00311 引6596醒酬酬

司A mixture ofbenz創dehyde(1mmol),Ph2Zn(1.2mmol),and nickel catalyst(0.1mmol,if iondicated)indryTHF(5ml)wasstirred atroomtemperature underN2.切Yield relbrtothe

isolated yield of benzhydrol by means of coIumn chromatography over silica gel.(りNd formation of benzhydrolwas c6nfilmed by mean ofT LC and GPLC.

 まず、ニッケル触媒が存在しない系でベンズアルデヒドとPhゑZnを反応させたと

ころ、反応はゆっくり進行し、室温15分でベンズヒドロール15aを65%、室温5

      −57一

(22)

第2章1,3・ジエンを分在させるニッケル触藻による存機金属、カルボニル類の多成分連結反応の開発

時間で81%の収率で与えた(mns1,2)。しかしながら、Ni(acac)2(0.1mmol)存在 下で反応を行うと」20分以内で定量的に15aを与えた。

 以上の結果をふまえた上で、Ph2Zn(1.2−2.4mmol)、Ni(acac)2(0.1mmol)、ジエン と して1,3一ブタジエンあるいは、イソプレン(4mmol)、ベンズアルデヒド(1mmol)

を用いて、THF中、窒素雰囲気下で反応条件の検討を行った。

P帳幽・ ・巳P、響i欝P、〃R㌧、・P激、

Table6。Examination of a reaction conditionσf product(13a》and product(14a)via the three comp㎝ent reac萄on of Ph2Zn,1β一dienes,amlεオdehydes in the presenceσ『Ni(acac)2a,

run

R

reaction condition (%ゾeld)1ε:乙わノ

 product

product

(%yield)

1

2ql

5φ  6

H︐H

ee ee

rt.,0.3h

rt.,0.3h

O。q o.3h

40。C,0.3h

rt.,0.3h

rt.,0.3h

O。C,0.3h

40。C,0.3h

13a(61)[oη,γξ1

13a(35〉[oη1yξi

13a(28)[oη1yξi

13a(63)[oη1γ日

14a(27)loη,yξ1

14a(22)[oη1γξ1

14a(22)loη1γξ1

14a(35)塾oη1γξi

15a(23)

15a(39)

15a(65)

15a(25)

15a(59)

15a(69)

15a(71)

15a(64)

aナA mixture ofan aldehyde(1mmoI),1,3−butadiene(4mmol)or isoprene(4mmd),P碗Zn[12 mmd,prepared from PhMgBr(2,4mmol;2M in THF)and ZnCl2(1.2mmol;1M in ether)1,and Nl(acac)2(Oj mmol)in dryTHF was stirred at ambiemねmperature under N2. 切TheεZ ratios

weredeterminedbymeans(オ1HNMR(400MHz)and13CNMR(100MHz).(りPh2Zn(24

mmol)were used.

 まず、1,3一ブタジエンを用いて、Ph2Znの量を検討したところ、1.2当量用いた場 合に三成分連結反.応生成物13aを61%の収率で与えた。また、副生成物としてベ ンズヒドロール15aも21%の収率で得られた(rm1)。2.4当量の%Ph2Znを用いる と13aの収率が低下した(run2)。また、副反応を抑えるために低温で反応を行

一58一

(23)

1第2章 1,3・ジエンを1介在させ』るニッケル触媒による有機金属、カルボニル類の多成分連結反応の開:発

うと・選択性の逆転が起こってしまい、13a(28%),15a(65%)という結果であった

 (run3)。400C加熱下で瞬時に反応させることで13aの収率の向上を試みたが室

温の場合と有意の差はなかった(run4)。しかし、いずれの場合も立体選択性は 高くE選択的であった。

 次に、イソプレンを用いて同様の条件で反応を行ったところいずれの場合も予想 通り・べ財ズヒドF一ル15aが主生成物として得られた。しかし・目的生成物の立 体選択性に関しては、高いE選択性を示した(nms5−7)。15aの生成を出来るだ け抑えるために、Ni(a6ac)2、イソプレン、ベンズアルデヒドのTHF溶液に、THF で高希釈したPh2Znを1時間かけて滴下して反応を行ったが、効果はなく14a、15a をそれぞれ38%、39%の収率で与えた。また、立体選択性も低下する結果となっ

た。、

 以上の結果より、亜鉛は、1.2当量用い、室温で反応を行うことにした。種々の カルボニル化合物と1,3一ブタジエンあるいは、イソプレンとの反応の結果をTable7

に示す。

一59一

(24)

第2章1,3一ジエンを分在させるニッケル触媒による育機金属、カルボニル頚の多成分連結反応の閉発

Table7.Symhesisof5−phenyl−3−per嘘en−1−101s(13)and3−methyl−5−phenyl−3−pen泊n・1ds(14)via the由reec・mロnentreac行・n・fPh2Zn,1,3−dienes,andaldehydesinthepr銘encedNi(acac)2aゾ

run aldehydes dienes time(h) (%yield)わノ[E:司の  products

PR)ducts

(%yidd)bノ

1 足

 Ph

2些〉〈Ph〉\

   0

3

4

5

O

 f−Bu

O k

 Ph

6a〉〈Ph〉㌧

7

8 O

足.B、汰

0.3

0.3

0.3

1

0.3

0,3

0.3

3

      H     /P        Ph   13a(61)loηケεl          H Ph     〃

Ph

  13b(34)【oη1γε]

    ノ

Ph

H

13c(68)[oηケε】

        OH     /

Ph        f」Bu  13d(70)[o 7 γε1

P

        OH     〃

P        Ph  14a(27)[0ηケε1

      OH Ph   〃

14b(16)[oηケξ1

    〃

Ph

H

 14C(46)[ε:Z=7:11

         H     /

Ph       卜Bu

14d(46)[ε:2r・=20:11

PメHPh

15a(23)

P薄Ph

15b(38)

・・ヌb

 15C(7)

15d(0)の

15a(59)

15b(57》

15C(21)

15d(0)φ

a/A mixture ofan aidehyde(1mmol),1β一butadiene(4mmoI)or isoprene(4mmol),Ph2Zn[1.2 mmo1,prepared汁om PhMgBr(2.4mmol;2M in THF)and ZnCl2(t2mmol;1M,in ether)1,and Ni(a ac)2(o.1mmol)in dryTHF was stirred at ambier就temperature under N2・lbゾYield referb the isolated spectroscopic創Iyhomogeneous materiaIs.φThe丘Z ratbs were determined by mea、sσf lH NMR(400MHz)and13C NMR(100MHz).(ウThe創cohol could not be detec給d、

       一60一

(25)

第2章 1,3一ジエンを分在させるニッケル触媒による有機:金属、カルボニル類の多成分遮結反応の開発

  1,3一ブタジエンを用いた場合は、ジヒドロ珪皮アルデヒドの場合を除いて、目的 生成物である13を好収率で与えた。立体選択性もE体のみでZ体は全く得られな かった。更に、Me2Znを用いた3成分連結反応で得られたPh2Znのフェニル基、1,3一

ブタジエン、アルデヒドが1:2:1で反応したような1−substituted−9−phenylnona−3,7−

dien−1−01sは得られなかった。

 一方、イソプレンゑ用いた反応では、アルデヒドのフェニル化が深刻な問題であ った。特に、ベンズアルデヒドと 位に置換基を有しないアルキルアルデヒドの時 に顕著であった。ジヒドロ珪皮アルデヒドを用いた場合には、目的生成物14bは、

16%の収率でしか得られず、フェニル化体15bが主生成物であった。より反応性 の低い2級、3級アルデヒドの場合には、目的生成物14c、14αは、適度な収率で 得られた(nms,7,8)。しかしながら、立体選択性は、非常に良好でE選択的であ

った。

 事前の求核性の検討において、トリフェニルホウ素[Ph3Bl(0.25MinTHFsolution)

がニッケル触媒の存在下においても、ベンズアルデヒドに対して、求核性を示さな いという結果を得ていた(Table5)。そこで、次にPh3Bを用いて反応を検討する ことにした。ところが、Ni(acac)、は、Me,Bの場合には、三成分連結反応において 良好な触媒であったが、Ph3Bの場合には反応が進行せず、全く効果のないことが 分かった。これは、Ph3BがNi(acac)2をNi(0)へと還元することが出来ないためでは

一ないかと考え、Ni(acac)2の代りに0価のNi(cod)2を用いて反応を行うことにした。

結果をTable8に示す。

一61一

(26)

,第2章 1,3一ジエンを介在させるニックル触媒による有機金属、カルボニノレ類の多成分連結反応の開発

P㌔B・蝋・足,響讐,、∠H,・P謂,

『able8.Synthesisσf3−methyl−5−phenyト3−per詫en−1−oIs(14)via thethree componem reactionσf Ph3B,is・騨e,㎝daldehydesinthepresence・fNi(c・の2ag

mn

aldehydes time(h) (%yield)切[E:司の  products

products

(%ゾeld)bノ

1

2

3

4

O 些

 Ph

0 艮〉〈Ph

隻B、.

10

27

24

28

       H

   〃

Ph       Ph

 14a(62)[10:11

   〃 Ph

P

H Ph

14b(38)[oηケξ]

H

14C(63)[7、3:11

       H

   〃

Ph        fLBu  14d(71)[10:11

 OH 人

Ph  Ph

15a(8)

Ph即Ph

15b(22)

 15C(20)

15d(0)φ

aゾA mixture ofan aldehyde(1mmol),isoprene(4mmol),Ph3B(2・4mmoI;o・25M in THF)and Ni(cod)2(0.1mmol)in d甲THF wasstirred at ambient temperalure under N2.切Yield refer tothe isoIaねd spectroscopically homogeneous mate而aIs,のTheε:■ra罰os were determined by means

of1H NMR(400MHz)and13C NMR(100MHz).(かThe alcohol could not be det㏄ted.

 10mol%のNi(cod)、存在下で、いずれの場合でも室温で反応が進行し・生成物14a

_14dを適度な収率(40−70%)で与えた。しかしながら、立体選択性は低下して

しまい、ほとんどの場合(E)一14、(β)一14は、10:1の比で得られた・また、副生成物

であるフェニル化体15も相当量得られることが分かった。

 Table5、runs6に示すようにPh3B、PhCHO、Ni(cod)2は、未反応である。しかし、

こめ反応系にイソプレンを加えるとこれを介在してフェニル基、イソプレン、アル

一62一

(27)

第2章 1,3・ジエンを』介在させるニッケノレ触媒による有機金属、カノレボニノレ類の多成分遮結反応の爾発

デヒドの三成分連結反応が進行するという事実は極めて興味深い[28−30]。

 これらの結果より、Ph3Bは、この三成分連結反応において有効な試薬であると 考えられた。次に、求核性及び還元力を高める目的でPh3Bのアート錯体について 検討を行うことにした。アート錯体は、アルゴン雰囲気下Ph,Bに対して、種々の 有機金属試薬を当量加えることによって調製した。それぞれの反応の結果をTable9

に示す。

一63一

(28)

第2章 1,3一ジエンを1介在させるニッケル1触媒による有機金属、カノレボニノレ類の多成分連結反応の開発

Ph・B・RM・、人・足R鵯)2Ph〃累・,謂R

Tab塘9.Synthesisσf3−methyト5−phenyl−3−per忙erト1・ols(14)viathe three component reaction of P垢B,is・prene,and創dehydesinthepresenceαNi(acac)2㎝d・rg㎝・mαa icreagents(RM)aナ

run  aldehydes

RM

/temp.(。C)time(h〉  P汽)ducts14

(%ゾeld)bノ匿:21の

products15

(%yield)

1 2 3 4 5 6 7

  肺

O些

MeLi MeMgBr PhMgBr

Ph4BNaの Et3AI

Me2Zn

Et2Zn

8匙〉〈

   0       Et2Zh        Ph

9

10

︒も

O ㌦、

Et2Zn

Et2Zn

24125 20/25then12150

24125then10150

23135 10/25 15125

1.5/25

2125

2125

10/25

P

P

    ∠

Ph

P

H

Ph

14a(86)[oηケε1

14a(91)[10:1】

14a(49)[10:11 no reaction oompIex mlxture 14a(80)10ηケ日 14a(80)10ηケξ1

H Ph

14b(60)loηり!E1

H

14C(60)1φηヶξ1

OH

 f−Bu

14d(63)[20:11

  OH 人

Ph  Ph

15a(8)

15a(0)

15a(0)

15a(17)

15a(0)

Ph即Ph

15b(20)

・め   OH

 15C(10)

15d(0)θフ

a/A mixture ofan aldehyde(1mmol),isoprene(4mmol),Ph3B(2.4mmol;α25M in THF),RM

(24mmol),and Ni(acac)2(0.1mmol)in dry THF was stirred atthe temperature indicated.切 Yield refer to the isolated sp㏄troscopica y homogeneous ma槍rials・のTheε:Zratios were dete㎜ined by means of lH NMR(400MHz)and13C NMR(100MHz)・φPh4BNa(2。4mmoI)

was used as r㏄eivrd(AIdrich).司The aIcohol could not be d6ねctφ.

一64一

(29)

第2章 1,3・ジエンを分在させるニックノレ触媒 こよる有機:金属、カノレボニル類の多成分遺結反応の開発

 結果から明らかなように、反応性はホウ素錯体のカウンターイオンと置換基の種 類に大きく依存している。金属カウンターイオンの反応性の依存度がはっきわ現れ ているのは、Ph4BMgBr(run3)とPh4BNa(run4)の例である。Ph4BNaでは、35。C、

23時間の加熱条件下でも、14a、15aともに、全く得られなかった。ところが一方、

Ph4BMgBrを用いると、室温では反応が終結しなかったが、50。Cに加熱すること により、低収率ではあるが、14aを49%の収率で与えた。また、トリエチルアル

ミニウムIEt3Allも効果がなかった。

 良好な収率で、生成物を与えたホウ素錯体[P毎3BMR]は、MR.=MeLi、MeMgBr、

Me2Zn、Et2Znを用いた時であり、全ての場合においてフェニル基が選択的に導入 された。また、これらの中でPh3BZnEt2を用いた場合は、室温で反応が終結し80%

の収率で、生成物14aのみを与えた。立体選択性においてもE体のみを選択的に 与えた。ゆえに、この条件下で、脂肪族アルデヒドについても検討することにした。

いずれの場合も、室温で速やかに反応が進行し、生成物14を適度な収率で与え、

立体選択性も良好であった。しかし、残念なことにアルデヒドが直接フェニル化さ れた生成物も少量得られる結果となった。

 以上、ニッケル触媒下によるフェニル基、1,3一ブタジエセ、アルデヒドの三成分 連反応の開発に成功した。1,3一ブタジエンについては、Ph2Znを用いることで13を 良好な収率で得ることができる、イソプレンの反応においては、Ph、BZnEt2を用い ることにより、14を良好な収率で得ることができる。また、どちらの反応におい てもE選択的に生成物13、14を得ることに成功した。

一65一

(30)

第2章 1,3一ジエンを分在させるニッケノレ触媒による有機金属、カルボニル類の多成分連結反応の開発

        R2Zn、1,3一ジエン、カルボニル化合物の反応

 更なる検討として、Table10に示す種々の有機亜鉛による検討を行った。有機亜

鉛は、これまでと同様にアルゴン雰囲気下、ZnCl2(2,4mmol;1Minethersolution)に、

それぞれのGrignard試薬[c−C6Hl1MgCl(4.8mmo1;2M in ether solution),c−C5HgMgBr

(4.8mmol;1MinTHF),孟8渉BuMgC1(4.8mmOl;2MinTHF)1を0。Cで滴下後・室温で 2時間撹搾しTHFで希釈したものを用いた。

 ジエンとして1,3一ブタジエン(4mmo1)もしくは、イソプレン(4mmol)とベン ズアルデヒド(1mmol)、を用いて、種々の有機亜鉛との反応を行った結果をTable

10に示す。

一66一

(31)

         第2章 1,3一ジエンを介在させるニッケノレ触藻による有機:金属、カルボニノレ類の多戎分遮結反応の開:発

      Rl       Ni(a(沿c)2(0・1mmol)

   R2Zn+蟻+PhCHO THF(5mI) Pr・ducts

      r.t.

 (2.4mmol)  (4mmol)  (1mmoゆ

Tabh10.Ni−CataIyzed Three Componer耽Com㏄tion Reaction of1,3−bu愴diene,PhCHO,and VariousOrganozincs.

run R2Zh/RI time(b) P戸oducts%,ゾeldlε:Zorsγη:a瑚

1 (CH2=CH)2Zn/H   1

2 (CH2=CH)2Zn/Me  3

3(伊C6H11)2Zn!H−2

4 (ひC6H11)2Zh/Me  o.5

5面5H9)2Zn/H2

6 (ひC5Hg)2Zn/Me  O.5

8  f」Bu2Zn l Me  r.t,6h

7  fLBu2Zh1H   3.5

        OH       Ph

\  ノ

    16=34         0H

、   〃

      Ph   17=14[3.7:1】

      H      〃

      Ph

   19:56          H     〃

      Ph

 20=231φηヶε1

賀、Bu

HO  Ph

23:59【1:2.11

髄〜B・

HO  Ph

24:39[1:6.81

       HP、

       18=2        HP,

       18:35

      H

       Ph

   21:43

・l o㌦♂鬼

  22=35       15C=34層

  21=64   22:88

       21=9

器、4融2、121、2

一67一

(32)

1第2章 1,3・ジエンを1介在させるニッケル触傑による有機金属、カルボニル頚の多成分連結反応の鰐発

 ジビニル亜鉛[(H、C=CH)、Znlを用いると、1,3一ブタジエンの場合には低収率ではあ

るが、45%の収率で三成分連結生成物16を与えた。しかし、イソプレンの場合に は、ベンズアルデヒドが求核攻撃された18が主生成物となった。

 とりわけ、興味深いのは、ジシクロヘキシル亜鉛[(c−C6H、、)2Znl、ジシクロペンチ ル亜鉛[(o−C,H,)、Znlを用いた時である(runs3−6)。(c−C6H、、)2Znの場合には、いず

れのジエンの場合にも、三成分連結反応生成物19、20とホモアリル化生成物21、

22がそれぞれ得られた。しかし、(c−C5Hg)、Znの場合には、ホモアリル化生成物の みしか得られなかった。これは、Cyclopentylの場合、特にβ一ヒドリド脱離が進み

やすいためと考えられる。

 更に、ジィeゆブチル亜鉛【かBu、Znlを用いて反応行うとこれまでの反応挙動と全く 異なり、1,3一ブタジエンのC−1位で君εルブチル基とC−2基でベンズアルデヒドと反 応した新形式の三成分連結反応生成物23、24(1,2一付加体)が得られた。また、イ

ソプレンの場合には、位置異性体24,(3,4一付加体)も得られた。

 この反応で得られた生成物は、序論で述べた高井[161らのCrCl2を用いた沃化アル キル、1,3一ジエン、カルボニル化合物の三成分連結反応生成物2−alkylmethyl−3−

buten−1−olsと同様の化合物である。著者は、このご一Bu2Znを用いた反応に着目し、

その反応の許容性及び選択性について検討を行った。まず、イソプレンを用いて触 媒系の検討を行った結果をTable11に示す。

一68一

(33)

第2章1,3・ジエンを介在させるニッケル触媒 こよる有機金属、カルボニル類の多成分連結反応の開発

トBu2乃+、人+

(2.4mmol) (4mmol)

PhCHO

 Ni(ood)2(0、1mmol)

add忙ive(Oj−02mmol)

(1mmol)

THF(5mI)

r.t.,2〜24h

      磐襲蝋

       24       24曇       22

『able .Examination ofcatalyst series for coupli㎎off−Bu2Zn,isoprene,and benz創dehyde

prod ucts%yield【5♪の:aη司

一run

add詮ive

(mmo口)

time(h)

24

241

22

1aノ

2 3 4

 切

none

 PPh3(0、2)

(ひC6H11)3P(0.2)

 dppe(0.1)

 dPPP(0、1)

 dppb(0.1)

 dppf(0.1)

none

3.5

2 2 4 2 2 2 6

39【1:6.8】

46[1:6、4】

33[1:2.7]

32[1:3.71

56[1:8】

3011:4.61

50[1:3.7

57[1:6.1】

14[1:1.61

23[1:2.1」

20[1:2]

16【1:1.21

25[1:2.1]

14[1:1.2]

2611:11 22【1:11

2

︑6

8

司Ni(acac)2一(0.1mmol)was used、切No(泡talyst

 触媒としてNi(acac)2およびNi(cod)2−phosphine系を用いて反応を行った。いずれ

も室温で速やかに反応が進行した。とりわけ、2座配位子であるdPPPを用いた時 がホモアリル化体も得られず、立体選択性も良好であった(mn5)。また、この∫、

Bu2Znを用いた反応の興味深い点は、ニッケルを用いずとも良好な収率で生成物を

与えることである(mn8)。触媒系としてNi(cod)2−dpPPを用いて、1,3一ブタジェン、

       一69一

(34)

第2章1,3一ジエンを介在させるニックル触媒による育機金属、カルボニル類の多成分連結反応の閉発

イソプレン、2,3一ジメチルー1,3一ブタジエンと種々のカルボニル化合物について検討

を行った結果をTable12に示す。

        R1

ト恥Zn+々・RCH・10器,鮮

      R2

      r.t.

(2、4mmol)  (4mmol)  (1mmol)

       RI       R2

      幾㌔・掛・

      HO  R    HO  R        1,2−addition     3,4−addition

『able12.Thre合Component Comection Reac廿on of卜Bu2Zn,1,3−Diene,and Aldehydes

%yield l砂η:aηf1】

run RI  R2  Ni(沿t∫り time(h)

R

1,2−add而on 3,4−addition

         0     e e e e e e   eeeeeeee

Ni(ood)2

none

Ni(ood)2

none

Ni(ood)2

none

Ni(ood)2

none

Ni(ood)2

none

3 6 2 6 3 6 3 20 2 24

  Ph

  Ph   Ph   Ph   Ph   Ph

PhC穐CH2 PhC穐CH2

0−C6Hll

o・C6H11

23=59[1:2】

23=80[1:21

24=56[1:81

24:57[1:61

25a=81[1:12]

25a=88[1:12】

25b=75[1:2】

25b:43[1:1】

25C=72【1:11

250:62[1:2],

241=25【1:21

241=22[1:21

al Ni(ood)2(0.1mmol),dpPP(Oj mmol)were.used as−catalyst・

      一70一

(35)

第』2章 1,3一ジエンを分在させるニッケノレ触媒による有機金属、カノレボニル類の多成分連結反応の朋:発

 ニッケル触媒を用いずとも同様の三成分連結反応が高収率で進行する(runs2,4,6,

8,10)。また、ベンズアルデヒドに関しては、無触媒の方が高収率である(mn2)。

非対称のジエンであるイソプレンを用いると、僻かブチル基とアルデヒドがC−1位、

C−2位で反応した1,2付加体と、C−4位、C−3位で反応した位置異性体が得られた(rm

3,4)。

 2,3一ジメチルー1,3一ブタジエンは、ニッケルの有無に拘わらず、 εゆブチル基、カ

ルボニル化合物と高位置及び、高立体選択的に反応する(nm5,6)。アルキルア ルデヒドとの反応では、ニッケル触媒を用いると反応時間が短縮される結果を得た

(mns7,8and9,10)。

f」Bu2Zn

+晒+一・

 (4mmol)  (1mmol)

Ni(ood)2(0、1mmol)

dPPP(0.1mmol)

f」Bu

   〃

OH

(24mmol)

THF(5ml)

 一r.t.

卜Bu(6)

Ni・cat.24h;26=72%1>10:11 no−cat・22h;26=75%[>10:1】

 また、興味深いことにピバルアルデヒドを用いて反応を行うと、触媒の有無に拘 わらずMe2Zn、Ph2Znの時に得られた1.4一付加体26が高収率で得られた(式5)。

一71一

(36)

第』2章 1,3・ジエンを1介在させるニッケル触藻による有機金属、カルボニル類の多成分連結反応の開発

 次に、1,3一ブタジエンの場合の立体選択性の向上を目的として、有機亜鉛として Rike試薬[ご一BuZnBrlを用いた反応も行ってみた。結果をTable13に示す。

かBuZnBr+〉》PhCH。Nト㈱(α1mmol)台ぐトBu

      THF(5ml)     HO  Ph

      r.t.

 (2.4mmol)  (4mmol)  (1mmol)      23

7able la Three−Comp㎝entConnecti㎝Reaction(オf.BuZnBr,1β一Butadiene,and Benzaldehyde run Ni−catalyst time(h) %isolated yield of23陣η:aη司

3

 Ni(acac)2 Ni(cod)21dpPP   (1/1)

  none

27

6 6

7411:8】

86[1:101

98[1:10】

 いずれも浜Bu2Znを用いた場合と同様に{1,2一付加体23が高収率で得られた。ま た、喜ばしいことに触媒系の有無に拘わらず、立体選択性の飛躍的な向上が見られ、

収率はむしろ無触媒の方が定量的である。

 反応機構は現在不明であるが、高井らのCrCl2を用いたラジカル機構に見られる ように、系中でアリル亜鉛が形成され反応が進行するのではないかと予測している。

まだ、選択性について若干の問題が残るが、用いる亜鉛反応剤を選択することで1,2一

もしくは、1,4一ジ官能基化を行うことが可能である。

 以上、これらの反応は、ほとんどが室温で進行し、ニッケルの新しい触媒機能を 示すものであると同時に、低毒性の有機ホウ素や亜鉛の新しい反応性を示したもの であり、また、官能基許容範囲も広く、現在多くの反応例が検討されており、その 成果が期待される。今後、医薬品や天然物をはじめとする生理活性物質の新規合成 法として、新しい展望を開くものであると考えられる。

一72一

(37)

第2章 1,3一ジエンを1介在させるニッケル触藻による有機金属、カルボニル類の多成分連結反応の爾発

構造決定

Figure2.NOE Data(%lncrement)and the Couplihg Pattems for the Boldfaoe Proton of27

     f」Bu

 HO  Ph

23(1mmol,10:1)

碗C、舞,ml)

一78。C,15min

N諜鍔1)H¶念念卜Bu

O。C,r.t.,6h

HOう台卜Bu

 HO  Ph

ρ一TsOH(02mmol)

aoetone dimethゾacetal(15ml)

     r.t.,12h

 27(86%)

1舵ヨηs:o危=10:11

 2stepyie口d        Hl

  O         fLBu

7.5

d.」=10.3Hz

 生成物23の構造決定は、3段階の誘導反応を行い化合物27へと変換して構造決 定を行った。即ち、生成物23をオゾン分解し、次いで、EtOH中、NaBH、で塩基 的処理を行うことでジオールとした。その後、P−TsOH触媒存在下、アセトンジメ チルアセタールで処理することによって化合物27へと変換した。得られた化合物 の太字のメチンプロトンに磁場を照射することでNOEを観察した。Figure1に示 すようなNOEが観測されたことと、太字で示すメチンプロトンとH・とのカップリ

ング定数から、生成物23の∫一BuCH2基と水酸基の立体は、傭∫であると決定した。

一73一

(38)

第2章 1,3一ジエンを』介在させるニッケル触媒による有機金属、カノレボニノレ類の多成分連結反応の開発

日gure3.NOE Data(%lncrement)and the Coupling Pattemsfor the Boldface Proton of26

       OH

    〃

f・Bu        トBu

     H H

   )》卜

  7、4     (沿.9

ε6∩,

  H    OH     〃

fLBu        トBu

化合物26の示すそれぞれの太字のメチレンプロトンの片方に、磁場を照射する とFigure3に示すNOEが観測された。よって、化合物26のオレフィンの立体化学,

は、E体であると判断した。

一74一

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