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橋脚における熱可塑性樹脂シートを用いた長期間の水分逸散防止養生

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Academic year: 2022

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橋脚における熱可塑性樹脂シートを用いた長期間の水分逸散防止養生

鹿島建設(株) 正会員 ○柿本啓太郎 渡邉賢三 温品達也 村田和也 戸張正利 岡本裕昭 東京大学大学院工学系研究科 フェロー 石田哲也 国土交通省東北地方整備局南三陸国道事務所 正会員 佐藤和徳

1.背景および目的

コンクリートの耐久性,美観をはじめとする表層品質を向上させるために,

熱可塑性樹脂シートを用いた養生工法(以下,シート養生と称する)を考案した1). シート養生は,予め型枠にシートを貼付しておき,コンクリートを打ち込んで 型枠を取り外した後もシートを残置させて,水分逸散防止養生を行う工法であ る 2).本報告では,実際の橋脚を対象にシート養生を適用し,透気係数,表面 吸水速度,表面気泡に与える影響を検証した結果について述べる.

2.施工概要

適用した橋脚の概要を図-1に示す.今回の検討では,橋脚の2~7リフトに シート養生を適用した.コンクリートは表-1に示す配合のものを使用した.

表-2 に養生条件を示す.各リフトの打設後に型枠を取り外して,シート養 生を開始し,全リフト一斉にシートを撤去した.そのため,各リフトによって 養生期間(打設からシート撤去までの期間)と計測時材

齢が異なる.写真-1にシート残置による養生状況を 示す.

3.計測概要

表―2に示す測定時材齢において,透気係数,表面 吸水速度,表面含水率,電気抵抗率の各種計測を実施 した.測定リフトは,2および5リフトを対象とし,

測定場所は日照条件等を統一するために橋脚の南側 一面を対象とし,各リフトの中心高さと,その下部

(400mm下)の2測点とした.透気係数はTorrent法に

基づく表層透気試験により,各測点につき3箇所ずつ を測定し,表面吸水速度はSWAT法3)により,各測点 につき2箇所ずつ測定した.表面含水率は高周波容量 式試験により,各測点につき9箇所ずつを測定し,電 気抵抗率は四電極法により各測点につき12箇所ずつ 測定した.また,5リフト側面に透明な樹脂フィルム (A4 サイズ)を設置し,1mm以上の表面気泡をトレー スした後,画像分析ソフトを用いて表面気泡面積率を 算出した.

4.実験結果

写真-2にシートを撤去した部分のコンクリート表 面状況を示す.シート養生を行った箇所は,鏡のよう

キーワード:熱可塑性樹脂シート,水分逸散防止養生,橋脚,表面吸水速度,透気係数,表面気泡 連絡先 〒182-0036 東京都調布市飛田給 2-19-1 鹿島建設(株)技術研究所 TEL 042-489-6736

図-1 構造物概要(長部高架橋)

表-1 コンクリートの配合

W/C (%)

スランプ (cm)

(%)

細骨 材率

(%)

単位量(kg/m3)

W C S G AD

42.5 8.0 4.5 37.3 165 388 650 1120 3.88

30-8-25Nのレディーミクストコンクリート

表-2 養生条件 リフト

No.

養生期間 (日間)

測定時材齢 (日)

1 ― ―

2 186 194

3 167 175

4 153 161

5 123 131

6 110 118

7 99 107

写真-1 シート養生の実施状況

6LF 5LF 4LF

3LF 7LF

2LF 1LF シート養生

適用範囲 橋脚

高さ=22.0m

土木学会第71回年次学術講演会(平成28年9月)

‑345‑

Ⅵ‑173

(2)

に光を反射し,外観の良いコンクリート表面となっていること を確認した.これは,シートを型枠に貼付することで,シート を貼付しない新品の合板よりもコンクリートの表面粗さが低 減しているためと考えられる1)

図-2に表面吸水速度を示す.各リフトの中心高さの測定点 を「上」,下部の測定点を「下」と標記している.各リフトの 表面吸水速度は0.1ml/m2/s程度となり,評価ランクは「優」と なった.また,表面含水率が高い結果となったのは,シート養 生の期間が長く,乾燥期間が短いことによって,水分逸散防止 養生の効果が表れたためと推察される.

図-3に透気係数と電気抵抗率の関係を示す.最近の研究で

はTorrent法に基づく表層透気試験の測定値に及ぼすコンクリ

ート中水分の影響が指摘されており,既往の研究4)では含水依 存性を考慮した表層透気性評価手法が提案されている.そこで,

その手法の一つである,四電極法による電気抵抗値を考慮した 評価を行ったところ,各リフトの透気係数は0.04×10-16/m2程度 となり,評価ランクは「良」となった.このことから,表面含 水率が高いことを考慮しても,シート養生の効果によって透気 係数が低減されたと考えられる.

写真―3に表面気泡面積率を測定した箇所の外観を示す.コ ンクリートの表面気泡は少なく,画像分析の結果 0.12%であっ た.一方,設計基準強度 30N/mm2配合を用いた同現場のフーチ ングにおいて,シートを用いていない場合の表面気泡面積率は 0.3~0.4%であった5)ことから,単純な比較はできないものの,

シート養生による表面気泡の低減効果があったと考えられる.

5.まとめ

橋脚において,熱可塑性樹脂シートを用いた養生工法を適用 し,長期の水分逸散防止養生を行うことができた.その結果,

高い物質透過抵抗性を有し,表面気泡の少ない密実なコンクリ ートを構築できたと考える.今後は,シート養生の有無におけ る物質透過抵抗性を比較するなどして,シート養生の効果を示 すとともに,様々な構造物に適用してく予定である.

謝辞

本研究の実施にあたり,積水成型工業(株)の矢野英伸氏,渋 谷能成氏をはじめとする,多くの皆様に多大なご協力を頂いた.

ここに感謝の意を表す.

参考文献

1) 石田ら:熱可塑性樹脂シート養生によるコンクリートの表面改質,土木学会第 69 回年次学術講演会講演概要集, pp.117-118,2014.

2) 温品ら:長期間の水分逸散抑制養生による表層品質向上効果,土木学会第 69 回年次学術講演会講演概要集, pp.121-122,2014.

3) 林ら:コンクリートの表面吸水試験における計測方法およびデータ処理方法の提案,コンクリート工学年次論文集,Vol.34,No.1,2012

4) 蔵重ら:透気係数の含水依存性を考慮したコンクリート品質の非破壊評価法の一提案,セメント・コンクリート論文集, Vol.65(2011) No.1 pp.225-232

5) 村田ら:熱可塑性樹脂シートを用いた養生による橋梁フーチングの品質向上,土木学会第 70 回年次学術講演会概要集,pp.575-576,2015 写真-2 コンクリート表面の状況

図-2 表面吸水速度の測定結果

図-3 透気係数と電気抵抗率の関係

写真-3 表面気泡面積率の測定箇所 0.00

0.25 0.50

2リフト 5リフト

表面吸水速度ml/m2/s

数値は表面含水率(%)

6.7

6.6 6.3 7.0

1 10 100 1000

0.001 0.1 10

電気抵抗率ρ(kΩ・cm)

透気係数KT(10-16m2)

2リフト 上 2リフト 下 5リフト 上 5リフト 下 極劣

一般

土木学会第71回年次学術講演会(平成28年9月)

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参照

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