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博 士 ( 農 学 ) 吉 田 惠 介

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 吉 田 惠 介

学 位 論 文 題 名

ア ー バ ン フ リ ン ジ に お け る景 観 評 価 に関 す る 研 究      一 札 幌 市 を 事 例 と し て ー

    I

. 学 位 論文内 容の要旨

  近年の市街地のスプロール化に伴 い,市街化区域から市街化調整区域にかかる区域で あるアーバンフリンジ(市街化縁辺 部)に広がる景観は,市街地と農林地が隣接し,土 地利用の混在化がみられ,かつ,都 市化による過渡的な景観を有する区域と考えられて おり,多くの景観上の課題を含んで いるものと推測される。地域景観づくりについて、

これまでの「美しさへの配慮を欠いた雑然とした景観,無個性・画一的な景観」から「美 しい国づくり」へと,住民を始めと する各主体の役割と連携のもとで進めることが提唱 され て韜 り, ア ーバ ンフ リン ジで も様 々な 評価主体や視対象を考慮した 景観形成が重 要であると考えられる。

  本研究は,アーバンフリンジにおける今後の景観形成計画に資することを目的として,

札幌市を事例に,沿道,地区,農地,河川などの景観の評価に関する要因を調査解析した もので,各章の要旨は以下の通りで ある。

  第 1章 で は ア ー バ ン フ リ ン ジ に 関 す る 概 念 や 既 往 研 究 を 整 理 し た 。   第2章で は, 調査 対象地域全体の地形や土地利用・人口構成の概要に関 して札幌市都 市計画データ等を基に,アーバンフ リンジにおける環境要因や農地等緑地の分布傾向を 検討した。

  第3章で は, アー バンフリンジの景観を構成する要素と景観評価構造に ついて,日常 的に市民の目に触れやすい沿道景観 と郊外住宅地周辺の地区景観を取り上げ,沿道の土 地利用の現状を踏まえ,景観評価の 要因と構造を明らかにした。その結果,市街地開発 が ま と ま っ て 行わ れた 沿道 と ,農 地が 市街 地に 混在 化し たま まで ある 沿道 では ,市 街 化 境 界 前 後 で 土 地 利 用 比 率 に 有 意 な 差 が み ら れ , 市 街 地 の 開 発 手 法の 影響 が推 測 さ れ た 。 ま た, 沿道 景観 構 成要 素の 評価 につ いて は, 嗜好 性や 田園 性に 対し て,

農 地 の 存 在 が 大 き な 影 響 を 与 え て ` い る こ と が 明 ら か に な っ た 。   さ らに ,低 地 と山 地・ 丘陵 地地 区の 景観 評価実験の結果からは,快適 性,開放性,

特 徴 性 の 順 に 景 観 評 価 に 有 意 な 影 響 カ を 持 っ て い る こ と が 明 ら か に なっ た。 加え て , 緑 の 多 さ が景 観評 価に プ ラス の影 響を 与え てい たが ,低 地と 山地 ・丘 陵地 では 評価内容に異なる特徴がみられた。

  第4 ‑6章で は ,札 幌市 の農 地と 河川 を対 象にして取り上げ,周辺環境 の違いや被験

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者属 性の違い が景観 評価に与 える影 響につい て,札 幌市の景 観基本計画の地形区分(低 地,扇状地,台地,山地・丘陵地)に従い論考を加えた。

  具体的には第4章において,札幌市南部の山地・丘陵地を対象に,農地の地覆状態,隣接土 地利用,背景(森林の有無)等の環境構成が景観評価に与える影響について考察した。この 結果 ,@小規模農地が散在する地域における景観計画では,農地の地覆状態,住宅などの 隣接 土地利用,背景となる樹林といった景観構成要素に配慮すること,◎地区の将来像を 考え る際には,農業の育成が地域の活性化にっながる上で重要であることなどが明らかに なった。

  第5章 では, 札幌市北 部の低地 を対象 に調査を 行い, 農地に対 する住 民意識の 類型化 や農地景観評価におけるグループ間の相違性等を明らかにした。

  第6章 では, 住民の利 用性が高 い公有 地である 河川, 特に近年 アーバ ンフリン ジを中 心に 整備され てきた 多自然型 河川を 事例とし て調査 し,河川 形状のみならず評価主体で あ る 住 民 の 属 性 や 河 川 利 用 特 性 が 景 観 評 価 に 影 響 を 及 ぼ すこ と を 明ら か に した 。   第7章 では, 周辺に市 街地のス プロー ルが迫り 、農地 が散在す る市街 化調整区 域の山 地・ 丘陵地に ある山 村地区を 対象と した調査 を行い ,居住・ 非居住,農業経験の有無,

性別等、評価主体による地域景観認識の相違を明らかにした。

  第8章 で は, 第3〜7章 で 得ら れ た 事 例調 査 の 成果 を 踏 まえて, 景観評 価の概念 を構 成す る景観対 象と景 観主体の 両面か ら,札幌 市のア ーバンフ リンジにおける今後の景観 形成を進める上での具体的な課題を整理した。

  まず ,視対 象の多様 性を活か した景 観形成の 課題と 方向性については,◎地形や景観 構成 要素に関 する景 観形成の 課題と 方向性, ◎農地 や河川に おける景観形成の課題と方 向 性につ いて検 討した。 前者では 景観の 嗜好には 快適性 、開放性 、特徴 性の3要因が関 与す ることから、これらに配慮した計画・設計の重要性を指摘し、.後者では私有地であ る農 地につい ては, 作物など 農地の 状況と農 業生産 機能及び 周辺環境との関わりが,ま た, 公共空間 である 河川につ いては ,住民利 用特性 や管理へ の参加が評価に影響する事 等が明らかにされた。

  次に ,景観 評価の多 様性を活 かした 景観形成 の課題 と方向性については,様々な評価 主体 や視対象 により 景観評価 に多様 性がみら れると 共に,評 価意識の共通性に基づき評 価主 体の類型 化が可 能である ことが 明らかに された 。従って 具体的な景観基本計画から 設計 に至る過 程では ,地域の コンテ クストを 読み取 ることの みならず,地域に関与する 様 々 な 人 々 の コ ン テ ク ス ト の 読 み 取 り が 重 要 で あ る と 考 え ら れ た 。   これ らは,アー くンフリンジにおける,様々なスケールと地域の状況に対応した景観 形成 に向けて の具体 的な景観 ガイド ライン等 の作成 に役立ち ,また,景観の保全や整備 に 際 す る 住 民 の 合 意 形 成 手 法 に も 多 く の 示 唆 を 与 え る も の と 考 え ら れ る 。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

アーバンフリンジにおける景観評価に関する研究      ー札幌市を事例として―

  本 研 究 は 、 図32、 衷49を 含 み、8章 から なる 総頁 数137の和 文論 文で あり 、別 に6 編 の 参 考 論 文 が 添 え ら れ て い る 。

  近年の市街地のスプロール化 に伴い、市街化区域から市街化調整区域にかかる区域で あるアーバンフリンジ(市街化 縁辺部)に広がる地域は、市街地と農林地が隣接し、土 地利用の混在化がみられ、かつ 、都市化による過渡的な景観を有している。このため都 心部や農村部とは異なる、アー バンフリンジ独自の景観上の課題を多く含んでいるもの と考えられる。また、今後の望 ましい地域景観整備については、住民を始めとする多く の 市 民 の 参 加 と 連 携 の も と で 進 め ら れ る こ と が 重 要 と さ れ て い る 。   本 研究は、8章にわたり、今後の景観形成に資することを目 的として、札幌市を事例 に、アーバンフリンジにおける 農地景観を主体に、河川景観を補足的に加えて、景観評 価に関して調査解析を行ったも のである。

第1、2章 では 、ア ーバ ンフ リン ジに 関す る概 念や 既往 研究を整理した上で 、札幌市 の アーバンフリンジ において、環境要因である地形や土地利用、人口構成な ど諸デー タを 基にした調査解析を行い、地形別にみた人口構成と土地利用の特徴ナょらびに農地 の 分 布 や 耕 作 放 棄 地 を 含 む 農 地 の 現 状 と 今 後 の 課 題 を 明 ら か に し た 。

  第3章では、日常的に市民の目に 触れやすい沿道景観と郊外住宅地周辺の地区景観を 取り あげ、アーパンフツンジの景観評価構造及ぴ景観構成要 素が景観評価に与える影響 に つい て 調査 解析 した 。そ の結 果、 市街 化区 域境 界前 後で の土 地 利用 状況 に市 街地 の 開 発 手 法 の 影 響 が 推 測 さ れ 、 ま た 、 沿 道 景 観 評 価 の 解 析か ら 、嗜 好性 や田 園性 に 対 し て 、 農 地 の 存 在 が 大 き な 影 響 を 与 え て い る こ と を 明 ら か に し た 。   さ ら に 、 低 地 と 山 地 ・ 丘 陵 地 地 区 の 景 観 評 価 に 関 す る 心理 実 験の 結果 から 、快

彦 士

昭 克

川 村

浅 出

授 授

教 教

査 査

主 副

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適 性 、 開 放 性 、 特 徴 性 因 子 が 景 観 評 価 に 有 意 な 影 響 カを 持っ てお り、 緑 の多 さが 景 観 評 価 に プ ラ ス の 影 響 を 与 え て い る こ と を 示 し た 。ま た、 地形 要因 や その 他の 景 観 構 成 要 素 に よ る 景 観 評 価 へ の 影 響 も 明 ら か に し た 。

  第4〜6章で は、 札幌 市の 農地 と河 川の景観につ いて、札幌市の景観基本計画の地形 区 分(低地,扇状地,台地,山地・丘陵地)に従い、被験者属性の違いが景観評価に与え る 影響について調査解析した。

  ま ず、 第4章においては、山地・丘陵地を対象に 、景観構成要素が景観評価に与える 影 響について解析した結果、@小規模農地が散在する地域 では,農地の地覆状態,住宅 な どの隣接土地利用、背景となる樹林といった景観構成要 素が重要であること、また、

◎ 健 全な 農業 の存 在が 景観 上も 重要 であり地域の 活性化にっながることなどを指摘し た 。

  第5章 では 、札幌市北部の低地を対象に調査を行 い、農地に対する住民意識の類型化 や 農地景観評価における被験者グループ間の相違性等を明 らかにし、農地に対する市民 意 識が多様であることから、それらを踏まえた今後の農地 保全や整備の方向性を提案し て いる。

  第6章 では 、農地とは異なり、公共的性格の強い 河川、特に近年アーバンフリンジを 中 心に整備されてきた多自然型河川を事例とした調査解析 を行った。その結果、河川景 観 評価には、自然性に加えて、河川への訪問頻度や管理へ の参加頻度が影響を与えてい る こ と を 明 ら か に し 、 今 後 の 河 川 整 備 の 方 向 性 に 示 唆 を 与 え て い る 。   第7章 では 、農地が散在する市街化区域に接する 市街化調整区域における山地・丘陵 地 地区を対象とした調査解析を行い、居住・非居住、農業 経験の有無、性別など評価主 体 の違いによる景観評価の相違を明らかにし、今後の地域 景観計画を行う上での住民意 向 の把握の重要性と景観計画作成への反映の必要性を示し た。

  第8章 では ,第3〜7章で 得ら れ た結 果を 踏ま えて 、景 観計 画を 具体的に進める際に は 、視対象と評価主体の多様性という視点の導入の重要性 を示し、その方向性について 提 案している。また、景観評価の多様性の検討を行う際に 、評価意識の共通性に基いた 評 価主体の類型化が可能であることを示し、これまで扱わ れることが少なかったアーバ ン フ リ ン ジ の 景 観 計 画 作 成 へ の 新 た な 視 点 か ら の 提 案 を 行 っ て い る 。

  以上のように、本研究は、 札幌市での事例調査から、アーバンフリンジにおける景観 評価に関わる景観構成要素と 評価主体の特性について明らかにしたものであり、今後の 景観整備の方向性に多くの示 唆を与え、その成果は学術的・応用的に高く評価される。

  よって審査員一同は、吉田 惠介が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有する ものと認めた。

参照