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博 士 ( 工 学 ) 堀 内 寿 晃 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 工 学 ) 堀 内 寿 晃

学 位 論 文 題 名

フ ェ ラ イ ト 系 耐 熱 鋼 に お け る Fe ・ Pd 基 L10 型 規 則 相 の      相 安 定 性 に 及 ぼ す Ni の 効 果 の 現 象 論 的 計 算

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    近年, 資源の有 効利用 ,地球環境保護等の観点から,火力発電プラントの高効率化が求められてお り,高温で長時間使用可能なフェライ卜系耐熱鋼の開発が進められている。最近になって,フェライト系耐 熱 鋼 にPdを 添 加 す ると , 正 方 晶ひ ず み を 伴っ たFe―Pd基Llo型規 則相が 新規な 析出強 化相と して強 化に寄与し,フェライト系耐熱鋼の性能が飛躍的に向上することが見出された。しかしながら,Pdが極め て高価な元素であることが問題となっており,安価な代替元素の探索が急務となっている。本研究では,

理 論計算 によっ てPdに代 わる安価な代替元素を探索することを目指し,代替元素の候補として,周期律 表 上 でPdの 直 上 に 位置 す るNiに 着 目 し た。 本 研 究の 目的は ,クラ スター変 分法(CVM)に基づ く現象 論 的 計 算 によ っ て , 正方 晶ひ ずみの 影響を 考慮した ,Fe―Pd―Ni3元系 のLlo型規 則相に 関する 計算 を 行って ,相平 衡・相 安定性 の観点 から,NiによるFe←Pd基Llo型 規則相 におけ るPd代替 の可能 性を 検 討することである。しかしながら,Fe―Pd基Llo型規則相に関する多元系の状態図はほとんどなく,ま た ,Fe−Pd2元 系 に お い て も , 充 分 な 熱 力 学 デ ー タ ベ ー スが 存 在 し ない 。 そ こ で本 研 究 で は,

Fe→Pd―Ni3元 系 の計 算 に 先 立っ て ,Fe‑Pd2元 系 及 びFeーNi2元 系の 計 算 を行い ,計算 に必要 な熱 力 学パラメータを導出した。また,2元系の平衡状態図の計算結果を実験状態図と比較して,決定した熱 力 学パラ メー夕 及び計 算手法 の妥当 性を検証 した。 その後,Fe―PdーNi3元系に計算を拡張して,相平 衡 ・ 相 安 定性 の 観 点 から ,Fe―Pd基Llo型規 則 相 へのNiの 添加効 果を検 討した 。さら に,得 られた Fe― ・Pd―Ni3元 系のFe−Pd基Llo型規則 相に関す る計算 結果を 実験的 に検証 するた めに, モデル 合 金 を作製 し,Fe―Pd基Llo型 規則相 を分析・ 評価し て,本 手法の 有用性 を確認した。本論文は以下の7 章で構成されている。

  第1章 で は, 本 研 究 の社 会 的 背 景及 びPd添加 フ ェラ イト系 耐熱鋼 の優れ た特性と 問題点 ,本研 究 に用いた計算手法の特徴と本研究の目的について記述した。

  第2章 で は本 研 究 で 採用 し たCVMに基 づ く 現 象論 的 計 算 の計 算 理 論 につ い てまと めて記 述した。

    第3章で はFe−Pd2元 系にお けるLennard一Jones型ポ テンシ ャルの 決定方 法と, 得られ たポテ ン シ ャル曲 線につ いて記 述した 。次に1565Kにおけ る混合熱を計算したところ,計算結果は実験結果を比 較 的よく 再現し た。ま た,FePd Llo型規則 相の相安 定性に 与える 正方晶 ひずみの影響を検討し,基底 状態における正方晶ひずみの値は,本研究では実験結果よりも過大となることを明らかにした。さらに,

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Llo−disorder平 衡状 態 図の計算を行い,Llo型規則相の正方晶ひずみを考 慮することにより,変態温 度の計算結果は実 験状態図を比較的よく再現す るが,Llo−disorder変態温 度の最高点が1:1組成から 大きく高Pd側にシフトす るという実験結果は,本研究による計算では再現されないことを確認した。最後 に,FePd Llo型 規則 相の 原子 配列 に 関す る詳 細な 情 報の 調査 を行 い, 本 計算結果から原子配列に関 する詳細な情報を得られ ることを記述した。また,本 計算手法によりFePd Llo型規則相の相平衡,相安 定性の議論が十分可能で あることを明らかにした。

    第4章で はFe―Ni2元 系に おけ るLennard−Jones型ポ テン シヤ ルの 決 定方法と,得られたポテン シャル曲線について記述 した。次に,Ll2−disorder平衡状態図の計算を行い,実験状態図と比較した。

Ll2―disorder平 衡状 態 図の計算結果は,変態 温度の最高点が1:3組成より もわずかに高Fe側にシフト するという傾向も含めて ,実験結果を極めて高い精度 で再現した。また,Llo−disorder平衡状態図の計 算を 行い ,従 来 の実 験状 態図には報告例のな いFeNi Llo型規則相が安定相 として計算されることを明 らか にし た。 さ らに ,FeNi Llo型 規 則相 の相 安定 性 に与 える 正方 晶ひ ず みの影響の検討を行った。

FeーNi2元系 にお いて は ,Fe‑Pd2元系 と比 較 して 各原 子対 の平 衡 原子 間距 離が 極 めて 近い ため に,

Llo型 規 貝lJ相 の 相 安 定 性 に 及 ぼ す 正 方 晶 ひ ず み の 影 響 は 非 常 に 小 さ い こ と を 確 認 し た 。     第5章で はFe‑Pd←Ni3元 系に おけ るLennard―Jones型 ポテ ン シャ ルの 決定 方 法と ,得 られ たポ テン シャ ル曲 線 につ いて 記述した。次に,Fe‑Pd基Llo―disorder平衡状態 図の計算と,その相安定性 に与える正方晶ひ ずみの影響の検討を行った。Llo型規則相の正方晶ひずみ を考慮することにより,Ni を 固 溶 し たFe‑Pd基Llo型 規則 相 は,Pd添 加フ ェラ イ ト系 耐熱 鋼の 使用 目 標温 度で ある923Kに おい ても安定相として存在す るという計算結果が得られた 。また,得られたFe→Pd基Llo−disorder相境界線 の形状は,Fe−Ni及びNi―Pd2元系における平 衡状態図の傾向を正しく反映 していることを確認した。

さ ら に ,Fe−Pd基Llo型 規 則 相 へ のNiの 置 換 挙 動 の 調査 を行 い,Fe‑Pd基Llo型規 則相 に 固溶 した Niは ,FeーPd基Llo型 規 則 相 の 全 組 成 範 囲 に お い て ,FePd Llo型 規則 相 のPdサイ トに 優 先的 に置 換することを示した。ま た,これを原子間相互作用カ の関係から説明した。従って,NiはFe―Pcl基Llo 型規則相におけるPd代替 元素として有望であると結諭 した。

  第6章 で はFe‑Pd2元 系 及 びFe‑Pd― ・Ni3元 系 の モ デ ル 合 金 の 作 製 方 法 及 び 熱 処 理 方 法 , 実 験 条件 等に つい て 記述 した 。次 に, 実 験的 に得 られ たFe−Pd基Llo型規 則相 の組 織 形態 や組 成等 を詳 細に分析・評価し た。Fe−Pd基Llo型規則相の 各元素濃度は,析出位置や大 きさ・形状によらず,それ ぞれ のモ デル 合 金に おい てほぼ同一の値を示 すことを確認した。本研究の 計算結果を実験結果と比較 したところ,計算 で予測した通りにNiはLlo型 規則相に濃縮しており,Ni濃 度の分析値も計算結果と非 常によく一致して いることを確認した。さらに ,FeーPd基Llo型規則相に固 溶したNiは,FePd Llo型規 則相 のPdサイ ト に優 先的 に置換するという, 本研究の計算の結果得られた 傾向が実験的にも確認され た。従って,本研究の計 算手法によって,高い精度で実験事実を予見することが可能であると結論した。

    第7章 で は 本 論 文 を 総括 し, 本計 算手 法 がFe−Pd基Llo型 規則 相に お けるPd代 替元 素 の探 索を 効率よく進めるための有 効な手段であると結論した。 また,本研究において確立した計算手法をNi以外 の元素に対して適用して いくことによって,Pd添加フェライト系耐熱鋼の実用化に向けた開発が加速され ることが期待できること を述べた。さらに,本研究の計算手法の課題及び今後の展望について記述した。

    ‑ 996−

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学位論文審査の要旨 主査    教授    毛利哲夫 副査    教授    石井邦宜 副査    教授    大貫惣明 副査   助教授   三浦誠司

学 位 論 文 題 名

フェライト系耐熱鋼における Fe‑Pd 基 Llo 型規則相の 相安定性に及ぼす Ni の効果の現象論的計算

    近年,資源の有効 利用,地球環境保護等の観 点から,火カ発電プラントの 高効率化が求め られており, 高温で長時間使用可能なフェ ライト系耐熱鋼の開発が進められている。最近になっ て ,フ ェラ イト 系 耐熱 鋼にPdを添加すると,正方 晶ひずみを伴ったFe−Pd基Llo型規則相が新 規な析出強化 相として強化に寄与し,フェ ライト系耐熱鋼の性能が飛躍的に向上することが見出 された。しかしながら,Pdが極めて高価な元素であることが問題となっており,安価な代替元素の 探索が急務と なっている。本研究では,理 論計算によってPdに代わる代替元素を探索することを 目 指し ,周 期律 表 上でPdの 直上 に位 置 するNiに 着目 して , クラ スタ ー変 分 法(CVM)に基づく 現 象論 的計 算に よ って ,相 平衡 ・相 安 定性 の観 点か ら,Fe―Pd基Llo型 規則 相へのNiの添加 効 果 を 検 討 し て い る 。 本 論 文 は 以 下の7章 で構 成さ れて お り, 概要 は以 下の 通 りで ある 。     第1章 では ,本 研究 の社 会的背景及びPd添加 フェライト系耐熱鋼の優れた 特性と問題点,

本研究に用いた計算手法の特徴と本研究の目的について述べている。

    第2章 では ,本 研究 で採 用 した クラ スタ ー 変分 法(CVM)に基づく現象論的 計算の計算理論 について紹介している。

    第3章で はFe―Pd2元系 にお けるLennard−Jones型ポ テ ンシ ャル の決 定方 法 と 得ら れ た ポテ ンシ ャル 曲 線に つい て詳述している。1565Kにおける混合熱の計算結果 が実験結果を比 較的よく再現 することを示し,次に,相安 定性に与える正方晶ひずみの影響を検討している。基 底状態におけるil:ガ品ひずみの値は 実験結果よルモJ過人となるヰJのの,Llo‑disorder`rWlf1人 態図の計算では,lEガ晶ひずみを考慮するニとにより,変態温度の計算結果が尖験i丿こ態I矧をよく 再現することを明らかにしている。但し,変態温度の最高点が1:1糾成から高Pd側にシフトすると

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いう実 験結果は,本計算では再現されなぃことを指摘した。最後に,ホ現象論的計算から,FePd Llo型 規 則 相 の 原 子 配 列 に 関 す る 詳 細 な 情 報 が 得 ら れ る こ と を 明 ら か に し て い る 。     第4章 ではFe―Ni2元系に おけるLennard−Jones型 ポテン シャル の決定 ガ法と ,得ら れた ポテン シャル曲 線につ いて記 述して いる。Ll9―disorder平 衡状態 図の計 算を行 い,実験結果 を高い 精度で再 現する ことに 成功し た。また,Llo−disorder平衡状態図の計算を行い,従来の 実験状 態図には 報告例 のないFeNi Llo型規 則相が 安定相 として存在し得ることを明らかにして いる。

    第5章 ではFe−Pd−Ni3元系 におけ るLennard−Jones型ポテ ンシャ ルの決 定方法 と,得 ら れたポ テンシャ ル曲線 につい て詳述 している。FeーPd基Llo―disorder平衡状態図の計算と,そ の相安 定性に与 える正 方晶ひ ずみの 影響の 検討を 行い, 正方晶ひずみを考慮するニとにより,

Niを 固 溶 したFe−Pd基Llo型規 則 相 は ,Pd添 加 フェ ラ イ 卜 系耐 熱 鋼 の 使用 目 標 温 度で あ る 923Kにおい ても安 定相と して存 在する という結 果を示 した。 さらに ,Llo型規 則相へのNiの置 換挙 動 の 計 算を 行 い ,Llo型 規 則 相 に固 溶 し たNiは 規 則相 の 全 組 成範 囲 に お いて ,Pdサ イトに優先的に置換することを示し,これを原子間相互作用カの観点から説明している。これより,

NiがFe−Pd基Llo型 規 則 相 に お け るPd代 替 元 素 と し て 有 望 で あ る と 結 論 し て い る 。     第6章で は,得 られた 計算結 果を確認する為の実験手法と実験結果について詳述している。

計算で 予測した 通り,NiはLlo型 規則相 に濃縮 しており ,Ni濃 度の分析 値も計 算結果と非常に よく一 致してい ること を確認 した。 さらに,Fe―Pd基Llo型規則相に固溶したNiは,規則相のPd サ イ ト に 優 先 的 に 置 換 す る と い う , 本 研 究 の 計 算 結 果 を 実 験 的 に 確 認 し て い る 。     第 7章 は 本 論 文 の ま と め で あ り , 本 研 究 で 得 ら れ た 結 果 を 総 括 し た 。

    これ を要す るに,著者はクラスター変分法に基づく現象論的計算により,FeーPd基Ll0型規 則相の 相安定 性・相 平衡に 及ぼすNiの効果 を明らかにし,代替元素の探索手法に対して新たな 知見を得たものであり,材料科学と材料物性工学に対して貢献するところ大なるものがある。よっ て 著 者 は , 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。

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