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博士(工学)品川晃徳 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(工学)品川晃徳 学位論文題名

刃状転位と層状介在物の相互作用に関する研究 学位論文内容の要旨

  金 属結晶 をす べり によ って 塑性 変形 させ るのに必要な応カを原子間に作用するカ から 理論的 に求 めた 理論 せん 断強 度は ,実 測したせん断強さよりも1000倍ほど大き くなる,そのため,結晶が塑性変形するとき,すべり面上下の原子が一度にすべる並 進すべりではなく,転位が順次受け渡されていくことによって比較的小さな応カです べりが生じる転位すべりを考えることにより,結晶内すべりの理論値と実測値との相 違が説明される.

  これより,金属が示す塑性変形挙動あるいは破壊挙動は転位の運動と関連して理解 することができる.また,転位の運動を妨げ,あるいは拘束することができれば,金 属は塑性変形しずらくなり,材料は強化される.このとき,結晶の強度は様々な運動 障害 により 決ま る. この よう な考 え方 から 金属を強化させる方法として,例えば,

17‑7‑PHス テ ン レ ス 鋼 で は , 析 出 硬 化 に よ り 通 常 の ス テ ン レ ス 鋼 の 約2倍 の lOOOMPa以 上の 引張 り強 さが 得ら れる, この よう に, 材料 の高 強度 化と いう巨視的 な結果を,微視的な転位の増殖機構,転位と介在物との相互作用などにより定量的に 説明することが,転位論の目的のーつである.

  このような観点から,転位そのもののカ学特性や,材料中の種々の介在物と転位と の相互作用に関する研究が行われており,異相界面,無限長の層状介在物,表面被膜,

円形介在物,楕円形介在物などと刃状転位の相互作用について,介在物内外での転位 に働 くカの 分布 や, 転位 に働 くカ が0と なる っり 合い 位置 の特 定, さら に,介在物 の寸法,弾性係数,ポアソン比によるそれらへの影響が検討されている.しかしなが ら,これらの解析は理論解析に基づいているため,解析対象や条件が変わるたびに弾 性論により解を求めなければならず,多大の労カを要する.また,条件が複雑になる にっれて,解析がより困難になる.

  以上のような背景から,複雑な形状の介在物や境界条件に対しても転位に働くカの 解析が可能な新たな数値的手法を開発することが本論文の第一の目的である.そこで まず,初期ひずみを用いた刃状転位の有限要素モデルを提案する,Voltellaによる数 学モデルにおいて,食い違いが生じている部分に対して同様の効果を生じる初期ひず みを当該要素に与えることによルモデル化した,次に,外カあるいは内部応カにより 生じている応力場中の転位に働くカを,転位の移動に伴う系のポテンシャルエネルギ の減少率により数値的に求める手法を提案し,従来の解法の結果との比較により,本

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解析法の有用性を示す,これにより,有限要素法により再現可能な条件下での転位の ま わ り の 応 力 場 お よ び 転 位 に 働 く カ を 求 め る こ と が 可 能 と な る .   さらに,従来解析が困難であった,界面上に存在する介在物と刃状転位との相互作 用に関する問題に対して本解析法を適用し,新たな知見を得ることが本論文の第二の 目的である.材料強化の一手法である析出強化の一例として,析出物が粒界上に析出 する場合を考える.ここでは,一般性をもたせるため,析出物を介在物,結晶粒界を 界面として取り扱う,介在物の形状は,無限長または有限長の層状介在物とする.そ して,刃状転位と異相および層状介在物との相互干渉問題として解析を行い,転位に 働くカの分布やっり合い位置の特定,介在物寸法の有限性や各領域の弾性係数の変化 によるそれらへの影響について検討を行った.

本論文は以下のように全6章により構成されている.

  第1章では,有限要素モデルによる転位に働くカの数値的導出法の開発と,界面上 の無限長または有限長の層状介在物と刃状転位の相互作用に関する研究の意義を述 べている.

  第2章は,初期ひずみを用いた刃状転位の有限要素モデルの提案と,刃状転位のま わりの応力場の数学モデルによる結果との比較,転位に働くカを数値的に求める解法 の説明である,

  第3章は,外カおよび内部応カにより転位に働くカや異相界面近傍の転位に働くカ の解析結果である.本結果を従来の解法による結果と比較することにより,本解析法 の妥当性・有用性を示した.

  第4章は,界面上の無限長の層状介在物と刃状転位との相互作用に対しての解析結 果である.介在物内外での転位に働くカの分布やつり合い位置の特定,および介在物 の 厚 さ, 各 領域 の弾性係数 の変化によ るそれらへ の影響につ いて検討し た.

  第5章は,界面上の有限長の層状介在物と刃状転位との相互作用に対しての解析結 果である.介在物近傍での転位に働くカの等高線分布,および介在物の長さ,転位の バーガーズベクトルの方向,各領域の弾性係数の変化によるそれらへの影響について 検討した.さらに,転位に働くカを2次元的にべクトル表示することにより,その分 布傾向の分類を行った・

  第 6章 は 結 言 で あ り , 本 研 究 で 得 ら れ た 結 果 を 要 約 し て い る .

(3)

学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

佐々木 鍵和田 野口 加藤

学 位 論 文 題 名

一彰 忠男      博之

刃 状転位と 層状介在 物の相 互作用に 関する研究

  金 属 結 晶 の 塑 性 変 形 は 原 子 間 の す べ り が そ の 主 要 因 で あ る .こ の 場 合, す べ り面 上 下 の 原 子 が 一 度 に す べ る 並 進 す べ り を 想 定 し て 原 子 間 に 作 用 す る カ か ら 求 め た 理 論 せ ん 断 強 度 は , 実 測 さ れ る せ ん 断 強 度 よ り ,1000倍 の オ ー ダー で 大 きな 値 と なる . そ の た め , 結 晶 中 に 存 在 す る 線 欠 陥 で あ る 転 位 の 概 念 が 提案 さ れ ,転 位 が 順次 受 け 渡さ れ る こと に よ って す べ る転 位 す ぺり を 考 える こ と によ り , . 結晶 内 す べり の 理 論値 と 実 測 値 との 相 違 が説 明 で きる よ う にな っ た .

  金 属 が 示 す 組 成 変 形 挙 動 や 破 壊 挙 動 は 転 位 の 運 動 と 関 連 し て考 え る こと が で きる , ま た , 転 位 の 動 き を 妨 げ る こ と に よ り , 金 属 の 塑 性 変 形が 阻 害 され , 材 料は 強 化 され る , 例 え ば ,17‑7‑PHス テ ン レ ス 鋼 で は , 析 出 物 に よ り 転 位 の 動 き を 阻 害 す る , い わ ゆ る 析 出 硬 化 に よ り 強 度 を 高 め て い る . 結 晶 粒 を 極 細 粒化 し , 粒界 に よ り転 位 の 運動 を 拘 束す る こ とで 強 度 を高 め て いる 材 料 も開 発 さ れて い る ,

  こ の よ う な 観 点 か ら , 転 位 そ の も の の カ 学 特 性 の み な ら ず ,材 料 中 のさ ま ざ まの 介 在 物 と 転 位 と の 相 互 作 用 に 関 す る 研 究 が 重 要 で あ り , 多く の 研 究が 以 前 より 行 な われ て い る . 例 え ば , 異 相 界 面 , 層 状 介 在 物 , 表 面 被 膜 , 円形 ・ だ 円形 介 在 物な ど と 刃状 転 位 の 相 互 作 用 に つ い て 解 析 が 行 な わ れ , 介 在 物 内 外 に存 在 す る転 位 に 働く カ , 転位 に 働 く カ が 零 と な る 転 位 の っ り 合 い 位 置 の 特 定 , さ ら には , 介 在物 寸 法 や弾 性 係 数の 変 化 に 伴 う そ れ ら へ の 影 響 が 検 討 さ れ て い る . し か し ,こ れ ら の解 析 は 転位 近 傍 の理 論 的 な 応 力 解 析 結 果 とPeach‑Koehlerの 解 に よ り 求 め ら れ る た め , 解 析 対 象 が 変 わ る た び に 理 論 応 力 解 を 求 め な け れ ば な ら ず , ま た , 解 析 対象 や 条 件が 単 純 なも の に 限ら れ る . 例 え ば , 自 由 表 面 近 傍 の 転 位 に つ い て は , 鏡 像 転位 を 用 いる た め ,無 限 半 平面 の み 扱 わ れ て お り , 条 件 が 複 雑 に な る に っ れ て , そ の 解 析 は よ り 困 難 に な る .   以 上 の よ う な 背 景 か ら , 本 論 文 で は , 先 ず , 複 雑 な 形 状 の 介在 物 や 境界 条 件 に対 し て も 転位 と の 相互 作 用 を解 析 す るこ と が 可能 な 数 値解 析 手 法 を提 案 し てし ゝ る ,こ こ で は ,Voltellaに よ っ て 提 案 さ れ た 転 位 の 数 学 モ デ ル に 基づ き , 初期 ひ ず みを 用 い た転 位 の 有 限 要 素 モ デ ル を 示 し て い る . 次 に , 外 カ や 転 位 同士 の 相 互作 用 に よる 応 力 場中

(4)

の刃状転位に働くカを,転位の移動に伴う系のポテンシャルエネルギの減少率により 数値的に求める手法を提案し,従来の理論解との比較により,本解析法の妥当性と有 用性を示している.

  さらに,従来の手法では解析が困難である,界面上に存在する介在物と刃状転位と の相互作用問題に対して本手法を初めて適用した.ここでは,析出物が粒界上に析出 する場合を考え,刃状転位と異相及び有限層状介在物との相互干渉問題として解析し,

転 位 に 働 く カ や つ り 合 い 位 置 の 特 定 な ど に つ い て 検 討 を 行 な っ た .   本論文の構成は以下のようである.

  第1章は緒言であり,転位と介在物との相互作用解析の重要性,それに関する従来 の手法の問題点について触れ,本論文の意義を述べている.

  第2章は,初期ひずみを用いた刃状転位の有限要素モデルの提案と,刃状転位近傍 の応力場の数学モデルとの比較による本解析法の妥当性の検証,および転位に働くカ を数値的に求める手法の提案を行なっている.

  第3章は,外カおよび転位の相互作用に起因する内部応カにより転位に働くカ,異 相界面近傍の転位に働くカを解析し,従来.の理論解析結果との比較により本解析法の 妥当性を検討している.

  第4章は,界面上の無限長の層状介在物と刃状転位との相互作用を取り上げ,介在 物内部や近傍に存在する転位に働くカを求め,つり合い位置の特定,介在物厚さおよ び弾性係数の影響を示している.

  第5章は,界面上の有限長の層状介在物と刃状転位との相互作用を取り上げ,転位 に働くカの等高線を求め,介在物長さ,転位の方向および弾性係数の影響を示してい る,また,転位に働くカを2次元的に表示することにより,いくっかのバターンに区 別できることを示している.

  第6章は結言であり,本研究で得られた結果を要約し,将来の展望について述べて いる,

  これを要するに,著者は,刃状転位と層状介在物との相互作用解析に対する新たな 数値解析手法を提案し,従来解析の困難であった界面上の有限な介在物との相互作用 問題に適用し,転位に働くカやつり合い位置に関して新たな知見を示すなど,機械工 学ならびに材料工学,特に金属の塑性変形に関わる転位の運動解析に貢献するところ 大なるものがある.よって著者は北海道大学博士、(工学)の学位を授与される資格あ るものと認める.

参照

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