博 士 ( 生 命 科 学 ) 田 中 正 彦 学 位 論 文 題 名
ロ ジ ウ ム ( H ) 錯 体 を 用 い る シ 1 フ ル エ ノ ー ル エ ー テ ル の 不 斉 ア ミ ノ 化 反 応 の 開 発 と
生 物 活 性 含 窒 素 化 合 物 の 触 媒 的 不 斉 合 成 に 関 す る 研 究
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
1価の窒素 活性種ナ イトレン は、多重結 合への付 加反応やC一・H結合 への挿入 反応 等多 岐 に わた る 反応 性 を 示す。い ずれの反応 も含窒素 化合物を 構築する 上で、有 カ な方法論 を与える 。近年、遷移金属錯体触媒存在下、(N‑アリールスルホニルイミノ)
フェ ニ ル ヨー ジ ナン を ナ イトレン 前駆体に用 いる不斉 反応の開 発が精力 的に展開 さ れている 。当研究 室ではこ れまでに、(4‑ニトロフ ェニルス ルホニル イミノ) フェニ ルヨ ー ジ ナン[pNsN=IPh]を ナイトレ ン前駆体 とするベン ジル位不 斉アミノ 化反応に おい て 、Rh2(S‑TCPTTL)4を触媒 に用いる と分子間 不斉C−‐Hア ミノ化反 応として は 文 献 上知 ら れる 最 高 値に 匹 敵す る 不 斉収 率(88%ee)が 得ら れ る こと を 見出 し て い る。筆者 は当研究 室で開発 したロジウ ム(II)錯体触 媒を用いた不斉アミノ化反応開発 研究の一 環として 、シリル エノールエ ーテルの 不斉アミノ化反応について検討した。
L2型坐三Zニ坐三ニテルc丕査ZミZiヒ反応
Rh2(S‑TCPTTL)4存 在 下 、 フ ェ ニル ア セ トン か ら 調製 し たZ配置 の シ リル エ ノー ル エ ー テ ル とpNsN:IPhと の 反 応 を 行 った 。 反 応は0°Cで 速 やか に 進行 し 、 収率 94%、不斉収率57%でQ−アミノケトンが得られることがわかった。本反応では[(2‐ ニトロフェニル)スルホニルイミノ]フェニル′ヨージナン[NsN=IPh]をナイトレン前 駆体 と し て用 い ると 、 不 斉収率が86%まで向上 すること が判明し た。さら に、ロジ ウム(II) 錯体の検 討を行っ たところ、 架橋配位 子のフタルイミド基の水素原子をフ ツ 素 原 子 で 置 換 し た 錯 体Rh2僻TFPTTL)4を 用 い40℃ で 反 応 を 行 うこ と によ り 、 不 斉 収 率 は95% に 達 す る こ と を 見 出 し た。 ま た、 本 反 応で はE配 置の シ リ ルエ ノ ール エ ー テル は 反応 し な いことが わかった。 最適化し た条件下 、種々の 鎖状ケト ン 由来 の シ リル エ ノー ル エ ーテルの 不斉アミノ 化反応を 行った。 ベンゼン 環上に種 々 の置換基を組み込んだ4−フェニル−2―ブタノンプロピオフェノン由来のシリ、ルエノ ールエー テルを基 質とした 場合、90%以 上の不斉 収率で対 応するQ− アミノケ トンを 得 る こと が でき た が べン ゼ ン環 を 持 たな い シ リル エ ノー ル エ ーテ ル のア ミ ノ 化反 応では不斉収率が大きく低下することがわかった。
本反応で 得られる2‐ニトロ ベンゼンス ルホンア ミド誘導体は、Mアルキル化の後、
チオラー トを用い た福山法 により2一Ns基 を容易に 除去する ことがで きる。そ こで、
本法の応用研究として切迫早産治療薬(−)−リトドリン塩酸塩の触媒的不斉合成を行
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っ た。 ―60°Cにて芳香 環上パラ 位にベン ジルオキ シ基が置 換したプ ロピオフェ ノン か ら調 製 した シ リ ルエ ノ ー ルエ ー テル の不斉ア ミノ化反 応を行い 、収率94%、 不斉 収 率91% でQ― ア ミ ノケ ト ン を得 た 。このQ−アミノ ケトンはZn(BH4)2還元によ り完 璧 な立 体 選択 性 で アン チ の アミ ノ アル コールと した後、 水酸基を アセチル基 で保護 し 再 結 晶 で 光 学 純 品と し た。 光 延 反応 に よるN‑アル キ ル 化、 福 山法 に よ るNs基船 よぴア セチル基 の除去、 ベンジル基 の除去を 経て、卜 )―リト ドリン塩酸塩の触媒的 不斉合成を達成した。
一 方 、 シク ロ ヘキ サ ノ ン由 来 のシ リル エノール エーテル を基質と した場合、 アジ リ ジン 化 反応 で は なく 、 ア リル 位C・.H結合への 挿入反応 が位置お よびエナン チオ 選 択 的 に 進 行 す る こ と が わ か っ た 。 さ ら に 、 シク ロ ヘ キシ ル メチ ル ケ トン やa位 に メチ ル 基を持っケ トン由来 のシリル エノール エーテル 、p‐ケト エステル由 来のシ リ ルエ ノ ール エ ー テル の 場 合に も 、p−ア ミ ノ ケト ン が得 ら れ るこ とが判明 した。
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筆者は以前、ロジウム(iD錯体がQ,p―不飽和ケトンおよびアルデヒドの1,4‐ヒドロ シ リル 化 反応 の 触 媒と し て 機能 す るこ とを見出 した。さ らにこRh2(S‑TFPTTL)4を 用 いたQ,p‐エノンのワンポット1,4‐ヒドロシリル化/不斉アミノ化反応を行ったとこ ろ 、対 応 するシリル エノール エーテル を出発原 料とした 場合と同 等の不斉収 率でa‐ ア ミノ ケ トン が 得 られ る こ とが わ かっ た。筆者 はこの結 果を踏ま え、本反応 の応用 研究として鎮痛活性物質(−)−メタゾシンの触媒的不斉合成を行った。4 ‐メトキシベ ンザル アセトン のワンポ ット1,4_ヒ ドロシリ ル化/不 斉アミノ化反応を行い、目的 と するa‐ アミノケト ンを不斉 収率90%で 得た後、 一回の再 結晶によ り光学純品 とし た。〃・・アルキル化、Wittig反応によるケトンのメチレン化により得たジェンに対し、
第 二世 代Grubbs触 媒 を用 い た 閉環 メ タセシス を行い、 四置換ア ルケンを 合成した。
Ns基 の 除 去 を 行 い、Meyersの メ タ ゾシ ン 合成 中 間 体ヘ 導 き 、還 元 的メ チ ル 化お よ ぴGreweの環化条件に付すことにより(一)−メタゾシンの不斉合成を達成した。また、
ベ ンタ ゾ シン な ど 他の ベ ン ゾモ ル ファ ン系化合 物に変換 可能な中 間体の合成 も行う ことができた。
3.シリ坐2乏ZZ窒ターノヒQ丕査ZミZiヒ厘広
不 斉 ロジ ウム(iD錯体を 用いた不 斉アミノ 化反応の さらなる 適用系拡 張を目指し 、 こ れま で に報 告 例 のな い シ リル ケ テン アセター ルの触媒 的不斉ア ミノ化反応 を検討 し た。 本 反応 で はRh2(S‑TCPTTL)4を 触媒に用 いると高 い不斉収 率が得ら れること が わ かっ た 。ベ ン ゼ ンを 溶 媒 に用 い ると 、反応は 室温にて 円滑に進 行し、高収 率かつ 99% の 不 斉収 率 でフ ェ ニ ルグ リ シン 誘導 体が得ら れること がわかっ た。本法は ベン ゼ ン環 上 のパ ラ 位 およ び メ タ位 に 電子 求引基や メチル基 を組み込 んだ基質に も適用 可 能で あ り、 対 応 する フ ェ ニル グ リシ ン誘導体 が95%以上 の不斉収 率で得られ た。
パ ラ位 に メト キ シ 基が 置 換 した シ リル ケテンア セタール を用いる と高収率で フェニ ル グリ シ ン誘 導 体 が得 ら れ るも の の、 不斉収率 は80%に低 下した。 また、メタ 位に メ トキ シ 基が 置 換 した シ リ ルケ テ ンア セタール の場合に は高い不 斉収率が得 られた が 、芳 香 族C―Hアミ ノ 化 反応 が 競争 する ため収率 は大幅に 低下した 。一方、芳 香環 上 オル ト 位に 置 換 基を 持 つ シリ ル ケテ ンアセタ ールを基 質とした 場合には、 ベンゼ
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ン環上パラ位への芳香族C・・Hアミノ化反応のみが進行することがわかった。また、
アルキル基で置換したシリルケテンアセタールを基質とした場合、不斉収率は大き く低下することがわかった。
以上、筆者はシリルエノールエーテルの不斉アミノ化反応において、フタルイミ ド基をハロゲン化したロジウム(n)錯体を用いると高い不斉収率でa‐アミノカルポ ニル化合物が得られることを見出した。また、不斉アミノ化反応を機軸とする含窒 素生物活性化合物の触媒的不斉合成を行い、本法が合成化学的有用性を示すことが できた。
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学 位論文 審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 准教授 准教授
橋 本 俊 一 佐 藤 美 洋 齋 藤 望 中 村 精 一
学位論 文題名
ロ ジウム( H )錯体を用いるシ 1J ルエノールエーテルの 不斉ア ミノ化 反応の開 発と
生 物活性含 窒素化 合物の触 媒的不 斉合成に 関する研究
本 論 文 は 不 斉 ロ ジ ウ ム (H) 錯 体 を 用 い る シ リ ル エ ノ ー ル エ ー テ ル の 不 斉 アミ ノ 化 反 応 に 関 す る も の で あ る 。1価 の 窒 素 活 性 種 ナ イ ト レ ン の 反 応 は 、 多 重 結 合 へ の 付 加 反 応 やC‑H結 合 へ の 挿 入 反 応 等 多 岐 に 渡 り 、 ア ジ リ ジ ン や ア ミ ド 等 の 含 窒 素 化 合 物 を 与 え る 。 著 者の 所属 する 研究 室で はこ れま でに 、(4−ニ トロ フェ ニル ス ル ホニ ルイ ミノ )フ ェ ニル ヨー ジナ ン[pNsN〓IPh]をナイトレン前駆体とするベン ジル 位不 斉C・ ―Hアミ ノ 化反 応に おい て、Rh2(爵PTTL)4の フタ ルイ ミド 基ベ ンゼン 環 の 水 素 原 子 を 塩 素 原 子 で 置 換 し たRh2( 母TCPTTL)4を 触 媒 に 用 い る と 分 子 間 不 斉C・ ・Hア ミ ノ 化 反 応 と し て は 文 献 上 知 ら れ る 最 高 値 に 匹 敵 す る 不 斉 収 率 (88% ee) が得 られ るこ とを 見 出し てい る。 今回 著者 は、 ロジ ウム (II)錯 体を 用い るアミ ノ 化 反 応 の 適 用 系 拡 張 を 目 指 し 、 シ リ ル エ ノ ー ル エ ー テ ル の 不 斉 ア ミ ノ 化 反 応 を 検 討 し た 。 シ リ ル エ ノ ー ル エ ー テ ル の 不 斉 ア ミ ノ 化 反 応 は ア ジ リ ジ ン 化 反 応 を 経 由 し 、 生 物 活 性 含 窒 素 化 合 物 の 重 要 な 合 成 中 間 体 で あ るQ− ア ミ ノ ケ ト ン を 与え る こ と が 知 ら れ て い る 。 し か し 、 キ ラ ル な 金 属 錯 体 を 用 い た 触 媒 的 不 斉 ア ミ ノ 化 反 応の 成功 例は 未だ 報告 さ れて いな い。
ま ず 著 者 は 、Rh2( ぶTCPTTL)4存 在 下 、 フ ェ ニ ルア セト ンか ら調 製し たシ リル エ ノ ー ル エ ー テ ル とpNgN三IPhと の 反 応 を 行 っ た 。 反 応 は0°Cで 速 や か に 進 行 し 、 収 率94% 、 不 斉 収 率57% でQ‐ ア ミ ノ ケ ト ン が 得 ら れ る こ と が わ か っ た 。 反 応条 件 を 精 査 し た と こ ろ 、 (2‐ ニ ト ロ フ ェ ニ ル ス ル ホ ニ ル イ ミ ノ ) フ ェ ニ ル ヨ ー ジナ ン 附sN=IPh] を ナ イ ト レン 前駆 体、 、架 橋配 位 子の フタ ルイ ミド 基の 水素 原子 をフ ッ 素 原 子 で 置 換 し た 錯 体Rh2けTFPTTL)4を 触 媒 に 用 い140℃ で 反 応 を 行 う こ と に
より、 不斉 収率は95%に達することを見出した。最適化した条件下、種々の鎖状 ケトン 由来 のシリルエノールエーテルの不斉アミノ化反応を行った。ベンゼン環 上に種 カの 置換基を組み込んだ4‐フェニル‑2‑ブタノンやプロピオフェノン由来 のシリルエノールエーテルを基質とした場合、90%以上の不斉収率で対応するa― アミノ ケト ンを得ることができた。この結果はシリルエノールエーテルのアジリ ジ ン 化 反 応 を 経 る 不 斉 ア ミ ノ 化 反 応 と し て は 初 の 成 功 例 で あ る 。 著者は本法の応用研究として切迫早産治療薬←)‐リトドリン塩酸塩の触媒的不 斉合成を行った。4  ̄ベンジルオキシプロピオフェノンから調製したシリルエノー ルエー テル の不斉アミノ化反応を―60°Cで行い、収率94%、不斉収率91%でa_ アミノ ケト ンを得た。このa‐アミノケトンをZnくBH4)2還元により完璧な立体選 択性で アン チのアミノアルコールとした後、水酸基をアセチル基で保護し再結晶 により光学純品とした。側鎖の導入、保護基の除去を経て、←)‐リトドリン塩酸 塩の触媒的不斉合成を達成した。
また、著者はロジウム(u)錯体がa,13‑不飽和ケトンおよぴアルデヒドの1,4―ヒド ロシ リ ル 化 反 応 の 触 媒 と し て 機 能 す る こ と を 見 出 して いる 。さ らに、 著者 は Rh2(S‑TFPTTL)4がQ;p‐エノンのワンポット1,4‑ヒドロシリル化/不斉アミノ化反 応にも 適用 可能であり、対応するシリルエノールエーテルを出発原料とした場合 と同等の不斉収率でa.アミノケトンが得られることを見出した。著者はこの結果 を踏まえ、本反応を鍵工程とする鎮痛活性物質←)‐メタゾシンの触媒的不斉合成 を行った。4 ‐メトキシベンザルアセトンのワンポット1,4‐ヒドロシリル化/不斉 アミノ化反応を行い、目的とするa−アミノケトンを不斉収率90%で得た後、再結 晶により光学純品とした。〃・.アルキル化、ケトンのメチレン化により得たジェン の閉環 メタ セシ ス、Ns基 の除 去を 経てMeyersの メタ ゾシ ン合成 中間 体ヘ導き、
(う‐メタゾシンの形式不斉合成を達成した。また、本法がペンタゾシンなど他の ベンゾ モル ファ ン系 化合 物の 有用 合成 中間 体の 合成 にも 利用可 能で あることを 明らかにした。
さら に著 者は 不斉 ロジ ウム(iD錯 体を 用いた不斉アミノ化反応のさらなる適用 系拡張 を目 指し、これまでに報告例のないシリルケテンアセタールの不斉アミノ 化反応 を検 討した。ベンゼン溶媒中、Rh2(S‑TCPTTL)4を触媒に用いると、反応は 室温に て円 滑に進行し、高収率かつ非常に高い不斉収率でフェニルグリシン誘導 体が得られることがわかった。
以上 、著 者はシリルエノールエーテルの不斉アミノ化反応において、フタルイ ミド基 をハ ロゲン化したロジウム(n)錯体を用いると高い不斉収率でQ‐アミノカ ルボニ ル化 合物が得られることを見出した。また、本反応を機軸とする含窒素生 物活性 化合 物の触媒的不斉合成を行った。本研究により得られた結果は、生物活 性 含 窒 素 化 合 物 の 不 斉 合 成 の 新 た な 方 法 論 を 提 供 す る も の と 考 え ら れ る 。 従って、審査委員会は田中正彦氏の論文が博士(生命科学)の学位を受けるのに 十分値するものと認めた。