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博 士 ( 生 命 科 学 ) 櫻 庭 康 仁

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Academic year: 2021

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博 士 ( 生 命 科 学 ) 櫻 庭 康 仁

学 位 論 文 題 名

高 等 植 物 に お け る ク ロ ロ フ イ ル ろ 蓄 積調 節 の      役 割 と 分 子 機 構

学 位 論 文 内 容 の要 旨

クロロフイル餅よ全ての高等植物が保持している、主要な光合成色素の1っです。クロロフ イル6は光集光機能の他に、光合成の光集光アンテナのサイズの調節と密接に関わっている事 が分かっています。そのため、クロロフイル6の蓄積量の調節は高等植物が様カな光環境に適 応する のに重要 です。 葉緑体に おいて、 クロロフイル6はクロロフィリドaオキシゲナーゼ (CAO)に よってク ロロフ イルaから合成 されま す。CAOの蓄積量は主に、クロロフイル6の量 に依存したタンパク質レベルでの制御によって決定されています。そのためCAOタンパク質の 蓄積制御機構を解明する事は、高等植物の光環境適応を考える上で重要です。高等植物のCAO のアミノ酸配列をアライメントした研究によって、CAOは3っのドメインからなることが明ら かになっています(N末端からそれぞれA,B,Cドメインと呼ぶ)。そのうちCドメインは触媒 活性をもち、AドメインはCAOの蓄積制御機構に関わっていることが明らかにされています。

さらに 、このCAOの蓄 積制御機構には、葉緑体プロテアーゼの1っであるClpプロテアーゼが 関わっている事が、遺伝学的研究から示されました。

  この学 位論文に おいて私は、CAOタンパク質の蓄積制御機構の全容を解明するために、ま ず形質転換体の解析によってBドメインの機能を明らかにする事を試みました。その結果、B ドメイ ンはCAOタンパ ク質を安 定化する 機能を もってお り、Aドメイ ンとCドメインが独立 して構造を保っためのりンカーの役割を担っている事が予想されました。またこの結果によ り、CAOの3つのドメ インの うち、CAOの蓄 積制御機構に関わっているのはAドメインだけで ある事 がわかり 、Aド メイン内にCAOの蓄積制御に関わる、っまりClpプロテアーゼのdegron 配列が ある事が 示唆されました(Sakuraba et al. 2007)。そこで次にAドメイン内のdegron 配列を 形質転換 体を用 いた解析 により同 定しました。私はまず、AドメインのN末端から10     ‑ 1341ー

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アミノ 酸残基ず つ削っ ていったCAO遺 伝子のC末端にGFPを 融合し、 それらをシロイナズナ に導入しました。完成した形質転換体について、共焦点顕微鏡やウエスタンブロットによる GFP融合タン パク質 の蓄積を 解析し たところ 、Aド メイン のN末 端から50アミノ酸残基削っ た形質転換体から、融合タンパク質の過剰な蓄積が見られ、さらにその過剰な蓄積によって ク ロロフィ ル6の 合成量 も劇的に 増加し ていました。これらの結果から、Aドメインの40〜 50残基目の配列がシグナル配列である可能性が高いことが明らかになりました。このことを 検証 するため に、次 に、この40〜 50残基目の配列をAドメインを除去したCAO遺伝子に融合 したところ、過剰に蓄積するはずのタンパク質の蓄積が抑制されていることが明らかになり ました。これらのことからこの10アミノ酸残基の配列が単独でCAOの蓄積制御に関わり、Clp プロテ アーゼ認 識配列 である可 能性が 高いこと がわかりました。さらにこの10アミノ酸を GFPに 融合したところ、GFPタンパク質の蓄積も抑制されていることが明らかになり、葉緑体 内で一般的にタンパク質を制御する配列として働くことが明らかになりました。このような タンパク質蓄積制御に関わる配列は葉緑体では見っかっておらず、本研究が初めての報告と なります)。

さら に私は、CAOの 蓄積制御 機構に異 常をき たしたEMS変異体を66株単離し、それらの変異 体の表現形解析を行い,7つのグループに分類しました。それらの変異体の表現形が多岐にわ たることから、CAOの蓄積制御機構には、さらに複数の因子が関わっている事が示唆されまし た。

私はまた、高等植物の成長過程におけるクロロフイル6の蓄積の影響を、シロイヌナズナの クロロフィル6過剰蓄積株(BC株)を用いて解析しました。私はこのBC株を様カな条件で生育 した結 果、2つの興 味深い 表現形を 発見しました。まず1つ目は、BC株は強光条件下で深刻 な 光障害 を起こす 事を発見しました。スベクトル解析の結果、光化学系2のエネルギー移動 効率が野生株に比べ著しく低下している事がわかり、これによってBC株では強光条件下にお いて大量の活性酸素が発生している事がわかりました。またマイクロアレイによる遺伝子発 現解析の結果、BC株の強光条件下に韜いて、核の遺伝子発現に大きな変化が観察されました。

活性酸素のーっである過酸化水素で誘導される遺伝子が、BC株においても誘導されている事 が分か りました 。2つ 目として、BC株は老化過程において顕著な老化遅延を起こす事を発見

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し ました。この老化遅延は、老化過程における核での遺伝子発現の変化によって引き起こさ れ ると考えられ、クロロフイルbの量の変化が老化過程における葉緑体と核の間のレトログレ ー ドシグナルに関係している事が示唆されました。このBC株における2つの現象は自然界で 植 物が繁栄して行くためには都合の悪い現象です。

以 上 の 研 究 か ら 、 ク ロ ロ フ イ ル6の 蓄 積 制 御 機 構 と そ の生 理的 役割 を明 らか にし た 。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

高等植物におけるクロロフイルろ蓄積調節の      役割と分子機構

クロロフイル6は全ての高等植物が保持している主要な光合成色素の1っです。クロロフイル 6は集光機能の他に、光合成の集光アンテナのサイズの調節と密接に関わっており、クロロフ イル6の蓄積量の調節は高等植物が様々な光環境に適応するのに重要です。葉緑体において、

クロ ロフイル6はク ロロフ ィリドaオキシ ゲナー ゼ(CAO)によってクロロフイルaから合成さ れます。CAOの蓄積量は主に、クロロフイル6の量に依存したタンパク質レベルでの制御によ って決定されています。そのためCAOタンパク質の蓄積制御機構を解明する事は、高等植物の 光環境適応を考える上で重要です。高等植物のCAOのアミノ酸配列をアライメントした研究に よって、CAOは3つのドメインからなることが明らかになっています(N末端からそれぞれA,B, Cドメインと呼ぶ)。そのうちCドメインは触媒活性をもち、AドメインはCAOの蓄積制御機構に 関わっていることが明らかにされています。さらに、このCAOの蓄積制御機構には、葉緑体プ ロテアーゼの1っであるClpプロテアーゼが関わっている事が、遺伝学的研究から示されまし た。

  この学位論文において著者は、CAOタンパク質の蓄積制御機構の全容を解明するために、ま ず形質転換体の解析によってBドメインの機能を明らかにする事を試みました。その結果、B ドメ インはCAOタンパ ク質を 安定化する機能をもっており、AドメインとCドメインが独立し て構造を保っためのりンカーの役割を担っている事が予想されました。またこの結果により、

CAOの3つ のドメイ ンのう ち、CAOの蓄積 制御機構 に関わっているのはAドメインだけである 事が わかり、Aドメ イン内 にCAOの 蓄積制 御に関わ る、っま りClpプロテア ーゼのdegron配     ー1344一

歩 朗

   

   

   

   

中 本

田 山

授 授

教 教

査 査

主 副

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列 があ る事 が示 唆さ れま した(Sakuraba et al. 2007)。そこ で次にAドメイン内のdegron 配列を次のような形 質転換体を用いた解析により同定しました。著者はまず、AドメインのN 末 端か ら10アミ ノ酸 残基 ずつ削っていったCAO遺伝子のC末端 にGFPを融合し、それらをシ ロイナズナに導入し ました。完成した形質転換体について、共焦点顕微鏡やウエスタンブロ ッ トに よるGFP融 合タ ンパク質の 蓄積を解析したところ、Aド メインのN末端から50アミノ 酸残基削った形質転 換体で、融合タンパク質の過剰な蓄積が見られ、さらにその過剰な蓄積 によってクロロフイ ル6の合成量も劇的に増加していました。これらの結果から、Aドメイン の40 ‑‑50残基目の配列がシグナル配列である可能性が高いことが明らかになりました。この ことを検証するため に、この40 ¥‑50残基目の配 列をAドメインを除去したCAO遺伝子に融合 したところ、過剰に 蓄積するはずのタンパク質の蓄積が抑制されていることが明らかになり ました。これらのこ とからこの10アミノ酸残基の配列が単独でCAOの蓄積制御に関わり、Clp プロテアーゼ認識配列である可能性が高いことがわかりました。さらにこの10アミノ酸をGFP に融合したところ、GFPタンパク質の蓄積も抑制されていることが明らかになり、葉緑体内で 一般的にタンパク質 を制御する配列として働くことが明らかになりました。このようなタン パク質蓄積制御に関 わる配列は葉緑体では見っかっておらず、本研究が初めての報告となり ます。

  著者はまた、高等植物の成長過程におけるクロロフイル6の蓄積の影響を、シロイヌナズナ のクロロフィル6過剰蓄積株(BC株)を用いて解析しました。私はこのBC株を様々な条件で生 育した結果、2つの興味深い表現形を発見しまし た。まず1つ目は、BC株は強 光条件下で深 刻な光障害を起こす 事を発見しました。スペクトル解析の結果、BC株では光化学系2のエネ ルギー移動効率が野 生株に比べ著しく低下していおり、これによって強光条件下において大 量の活性酸素が発生 している事がわかりました。2つ目として、BC株は老化過程において顕 著な老化遅延を起こ す事を発見しました。このBC株における2つの現象は自然界で植物が繁 栄して行くためには 都合の悪い現象です。

  以上の研究から、 クロロフィル6の蓄積制御機 構とその生理的役割を明らかにしました。

よって著者は,北海 道大学博士(生命科学)の学位を授与される資格がある ものと認めま す。

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