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博 士 ( 医 学 ) 惠

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 惠    淑 萍      学位 論文 題 名

中国 人 における Cholesteryl Ester TransferProtein 遺伝子 変 異 の 頻 度 と 血 漿 リ ポ 蛋 白 代 謝 に 及 ぼ す 影 響

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【諸言】

  Cholesteryl ester transfer protein  (CETP)は高比重リポ蛋白(HDL)に含まれるcholesteryl esterを超 低比 重リ ポ蛋白 ,中間比重リポ蛋白,及び低比重リポ蛋白(LDL)へ転送し,交 換にtriglycerideをHJDLへ転送する糖蛋白である,日本人において,CETP遺伝子の2種類の 変 異 , イ ン ト ロ ン14の 第 ー 残 基(Int14A)と エ ク ソ ン15内 の422番 目の アミ ノ酸 の置 換 (D442G)が 一般 的で あるこ とが 知ら れて いる .前 者は0.80/0の 遺伝 子頻 度を 有し,HDL‑

cholestcrolの著しい上昇を生じるのに対し、後者は4.6%の遺伝子頻度で,HDL・cholesterol の 軽 度 の 上 昇 を 生 じ る の が 特徴 であ る. 我々 は日 本人以 外で は初 めて とな る中 国人 の CETP欠 損 例 (D442Gヘ テ 口接 合体 )を 報告 した .今 回, 我々 は中 国人 にお けるD442G変 異の頻度とりポ蛋白代謝への影響を検討した.

【材料と方法】

  対象 は北 京地 区の 中国 人健康診断受診者379例(男性268,女性111,年齢18〜78歳,平 均32歳 )で ,空 腹時 に採 血し た。 総コ レス テ□ ールと 卜リ グリ セリ ドは 酵素 法,HDL. cholesterolは 直接 測定法 (協 和メ デッ クス )に よっ て測 定し た,LDL‐cholesterolは Fdedew甜 dの 式 で 求 め た , CETP活 性 の 測 定 は Kat0ら の 方 法 に よ っ た .   D442G変異の検出は,PolymeraseChainReaction(PCR)と制限酵素による切断を組み合わ せ て行 った .D442G変異が あれ ばMspIで 切断 され るよ うに ,一 方の プラ イマ ーに一 塩基 置 換 を 挿 入 し た . 切 断 パタ ー ン の 観 察 は2.5% ア ガ ロ ー ス ゲ ル 電 気 泳 動 で 行 っ た.

  対照 に用 いた 札幌 在住 の日本人健康診断受診者139例については,試料の採取と保存,

分析の条件はすべて中国人の場合と同様に行った.

  変 異 群 と 非 変 異 群 の 脂 質 レ ベ ル の 差 はMann‐Whi恤c:yリtestで 検 定 し た .

【結果】

  中国人の379検体中,16例をD442Gヘテ口接合体と認めた(遺伝子頻度2.1%).変異群 と非変異群の間で血清HDL.choIesterol濃度には有意な差はなかった,血清tot甜cholesterol濃 度は非変異群で146士36mg/d1(n二ニ363)であるのに対して,変異群で122土281Hg/dlと有

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意 に低下して いた。血 清LDLcholesterol濃度は 非変異群 の77土30m〆dlに 対し,変異群で 56土24mg/dlと有意な低下を示した.LDしcholesterol/HDL・cholester01比は変異群で比変異 群 より有意に 低下して いた.一 方,日本 人では139例 中9例にD442Gヘ テ口接合体を認めた

( 遺伝子頻度3.2%). 日本人の 非変異群 と変異群の間の血清リポ蛋白プロフイールの比 較 で は中 国 人 の場 合と全 く異なる結 果が得ら れた.す なわち, 血清totalcholesterol, 価glyce耐c,IDしcholcstcrolには有意な差を認めなかったが,血清HDL‐cholesterolは非変異 群 の62土15mg/duこ 対 し 変 異 群 で72土13nlg/dlと 有 意 な 増 加 を 認 め た , な お ,LDLI cholesterol凪DL一cholesterol比が,変異群で有意に低下していたのは中国人の場合と同様で あった.

  中国人の血清CIyrP活性は非変異群で9.5土2.3%であるのに対して|変異群で3.6土2.5% と 有意に低下 していた .同一の アッセイ における日本人非変異群のa三TP活性値は11.0土 2.2% で , こ れ と 比 べ る と 中 国 人 非 変 異 群 で は 軽 度 だ が 有 意 の 低 下 を 観 察 し た .

【考察】

  CETP欠損 症 の 報告は 最近まで 日本人例に 限られて きたが, 著者らは 中国人症 例の発見 に 続 き, 本 研 究に より中 国人に高頻 度にCETP欠損 症が存在 すること を見いだ し,遺伝 子 頻度を決定した・

  日 本人ではD442Gヘ テ口変異 が血中HDL一cholesterol濃度を上 げるのと 異なり,中国人 D442G変異群では高HDL一cholcsterol血症は観察されず,むしろ低LDL一cholesteroIが観察され た .中国人に おいてD442G変 異がこの ような特 異な表現 を示した ことには, 中国人の血清 totmcholesterol濃 度が日本人よりも低いことが関係すると考えられる.これには栄養条件 の違いが関与する可能性が大きい.

  低 栄養状態で はCE11Pの合成 と分泌が 低下する ことが知 られてい るが,実際に,本研究 で は 中国 人 非 変異 者は日 本人非変異 者よりもCETP活性が有 意に低か った.こ れは,低 栄 養状態に起因する低ch01estcrol血症に対して,IDLIcholesterolを代償にすることによりHDL・ cholesterolを 高く維持するヌカニズムが働いていると解釈できる.中国人変異群の非変異 群 に対するCIジrP活性の低 下は日本 人非変異 群の場合よりも著しいが,これも中国人変異 群 で 特 に 強 い 低cholesterol血 症 が 観 察 さ れ た こ と と 関 係 す る と 考 え ら れ る .   中 国人変異群 で同非変異群よりも強い低ch01esterol血症が出現する原因としてu)L代謝 回 転の亢進が ーつの可能性として考えられるが,.その詳細な機序とD442G変異が中国人の 動脈硬化に及ぼす影響については今後の検討が必要である,

【結語】

1. 中 国 人 の CETP遺 伝 子 の D442( } 変 異 の 遺 伝 子 頻 度 を2.1% と 決 定 し た , 2.Q冊 欠 損 は 中 国 人 の り ポ 蛋 白 代 謝 に お け る 重 要 な 遺 伝 的 因 子 で あ る . 3.中 国 人D442G変異群 の特異な 血清リポ蛋 白プ口フ イールの 背景には ,栄養条 件の違い と,これに関連するCETP活性の低下が関与すると推測される.

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学 位 論 文審 査 の 要 旨

     学位論文題名

中国人におけるCholesteryl Ester Transfer Protein 遺伝子 変 異 の 頻 度 と 血 漿 リ ポ 蛋 白 代 謝 に 及ぼ す 影 響

  Cholesterylestertransferprotein (CETP)は高 比 重リ ポ 蛋白(HDL)に含ま れる cholesteryl esterを超低比重リポ蛋白,中間比重リポ蛋白,及び低比重リポ蛋白(LDL)ヘ 転送し,交換にtriglyceri deをHDLへ転送する糖蛋白である。日本人において,CETP遺伝 子の2種類の変異,イントロン14の第一残基(Int14A)とエクソン15内の422番目のアス パラギン酸からグリシンヘの置換(D44 2G)が一般的であることが知られている。前者は 0.8%の遺伝子頻度を有し,HDL ‑cholesterolの著しい上昇を生じるのに対し、後者は4.6% の遺伝子頻度で,HDL‑cholesterolの軽度の上昇を生じるのが特徴である。本研究は中国 人のCETP変異(D442G)を検索し 、中国人に おけるD442G変異の遺伝子頻度とルポ蛋白 代謝への影響を検討したものである。

  対象は北京地区の中国人健康診断受診者379例(男性268,女性111,年齢18〜78歳,

平均32歳)で,空腹時に採血した。総コレステロールとトリグリセリドは酵素法,HDL ‑ cholesterolは直接測定法(協和メデックス)によって測定した.LDL‑ cholesterolは Friedewaldの 式 で 求 め た . CETP活 性 の 測 定 は Katoら の 方 法 に よ っ た 。   D442G変異の検出は,Polymerase Chain Reaction (PCR)と制限酵素による切断を組み合 わせて行 った。D442G変異があればMspIで切断されるように,一方のプライマーに一 塩基置換を挿入した。切断バターンの観察は2.5%アガロースゲ レ電気泳動で行った。

  対照に用いた札幌在住の日本人健康診断受診者139例については,試料の採取と保存,

分析の条件はすべて中国人の場合と同様に行った。

  変 異 群 と 非 変 異 群 の 脂 質 レ ベ ル の 差 はMann‑Whitneyリtestで 検 定 し た 。   中国人の379検体中,16例にD442Gヘテロ接合体を認めた(遺伝子頻度2.1%)。変異 群と非変 異群の間で 血清HDL‑ch olesterol濃度には有意な差はなかった。血清total cholesterol濃度は非変異群で146土36mg/dl(n‑363)であるのに対して,変異群で122

彦 顯

邦  

  輝

林 畠

小 北

授 授

教 教

査 査

主 副

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土28 mg/dlと 有意 に低 下し ていた。血清LDL‑cholesterol濃度は非変異群の77土30 mg/dl に対 し, 変異 群で56土24mg/dlと 有意 な低 下を 示し た。 一方,対照とした日本人では139 例中9例 にD442Gヘ テロ 接合 体を認めた(遺伝子頻度3.2 90)。日本人の非変異群と変異群 の間の血清リポ蛋白プロフイールの比較では中国人の場合と全く異なる結果が得られた。

すなわち,血清total cholesterol,triglyceride.LDL‑cholesterolには有意な差を認めなかっ たが,血清HDL‑cholesteroLlま非変異群の62土15mg/dlに対し変異群で72土13 mg/dlと有意 な増加を認めた。

  中国人の血清CETP活性は変異群で3.6土2.5%、非変異群で9.5土2.3%であった。同一ア ッセ イに おけ る日 本人 非変 異群 のCETP活 性値は11.0土2.2%で.軽度だが日本人のCETP 活性は中国人のそれより有意に高かった。

  CETP欠 損症 の報 告は 最近 まで 日本 人例 に限ら れて きた が,本研究により中国人にも高 頻 度 にCETP変 異(D442G)が 存 在 す る こ と を 見 い だ し , そ の 遺 伝 子 頻 度 を 決 定し た 。   日本人ではD442G変異ヘテロが血中HDL‑cholesterol濃度を上げるのと異なり,中国人で は高HDL‑ch olesterol血症は観察されず,むしろ低LDL‑ch olesterolが観察された。中国人に お い てD442G変 異 が こ の よ う な 特 異 な 表 現 を 示 し た こ と に は , 中 国 人 の 血 清total cholesterol濃度が 日本 人よ りも低いことが関係すると考えられる。低栄養状態ではCETP の合 成が 低下 する こと が知 られ おり ,中 国人非 変異 者が 日本人非変異者よりもCETP活性 が有意に低かったことは、これを裏づける。これは、低栄養状態に起因する低cholesterol 血症 では ,CETPを 抑え るこ とでHDLか らLDへの 転送 を減 少させ、HDL‑cholesterolを高く 維持 する メカ ニズ ムが 働い てい ると 解釈 できる 。中 国人 変異群のCETP活性の著しい低下 は,強い低cholesterol血症があることと関係すると考えられる。

  公開発表に際して、副査の北畠教授から、ハワイ日系人で見られた変異群における虚血 性心疾患が中国人変異群に見られたか、中国人変異群の栄養学的バラメータについて、副 査 の 石 橋 教 授 か ら 、CETP変 異 の りス クフ ァクタ ーと して の意 義、 中国 人で のLDLとHDL の変 化の メカ ニズ ム、 循環 器内 科の 藤井 医師か らCETP活 性低下のメカニズム、主査の小 林教 授か ら日 本人 と中 国人 の同 一変 異で のCETP活性 低下 の程度について、などの質問が あったが、申請者は概ね妥当な回答をした。

  本 研究 は、CETPのD442G変 異の遺伝子頻度を日本人以外ではじめて明らかにしたこと、

同一の変異でも日本人と中国人ではりポ蛋白プロラィルに差が生じるのは栄養状態が大き く関係すること、即ち、同一遺伝子変異でもそのフウノタイプは環境要因で変化する現象 があることを見出した。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに 十分な資格を有すると判定した。

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