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日本内科学会雑誌第105巻第8号

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Academic year: 2021

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はじめに

 てんかんは大脳の神経細胞の過剰興奮によっ て生ずる,反復性発作(2 回以上)を特徴とす る慢性の脳疾患である.てんかんの臨床発作型 として両側大脳半球から発生し,意識減損を発 作時より伴う全般てんかんと,大脳の局所から 発生する部分発作に大きく分類される1).全般 てんかんには強直または間代を呈する発作,欠 神発作,ミオクロニー発作,てんかん性スパズ ム,脱力発作があり,部分発作には局在性,同 側への伝播を伴うもの,対側への伝播を伴うも のがある2).様々な臨床発作型の存在は脳の過 剰興奮の起源や程度の違いを反映し,そのた め,成人においては,非てんかん性疾患がてん かんの臨床発作型を疑似する場合が十分にある ことに注意する必要がある.痙攣は失神による 意識消失後(15 秒以内),てんかん以外の疾患 (電解質・代謝・内分泌異常,中枢性疾患,薬物 中毒・離断)による急性症候性発作であっても 生じることを念頭に置き,痙攣の存在からてん か ん を 診 断 す る 際 に は 鑑 別 診 断 が 肝 要 で あ る3).すでにてんかんと診断されている患者に おいても,てんかん以外の疾患の可能性も念頭 に置くことも大切である.「てんかん治療ガイド ライン 2010」(日本神経学会)では,成人にお けるてんかんと鑑別すべき疾患として,1.失 神,2.心因性発作,3.過呼吸やパニック障 害,4.脳卒中,一過性脳虚血発作,5.急性中 毒(薬物,アルコール),薬物離脱,アルコール 離脱,6.急性代謝性障害(低血糖,テタニー), 7.急性腎不全,8.頭部外傷直後を挙げている

てんかんと鑑別すべき疾患

要 旨 星山 栄成 鈴木 圭輔 平田 幸一  内科診療では,突然の意識消失で救急外来を訪れる患者において神経調 節性失神と心因性非てんかん発作が 40%と多く,てんかんは 29%,次い で心原性失神が7%とされる.他に非てんかん性不随意運動や異常行動も てんかんとして診断され,治療される場合がある.てんかんの鑑別診断と して,十分な病歴を聴取することが重要である.本稿では,内科医がてん かんを鑑別するうえで重要な鑑別疾患を提示しながらそのポイントにつ いて解説する. 〔日内会誌 105:1358~1365,2016〕 Key words てんかん,失神,心因性発作,一過性脳虚血発作,過換気症候群,急性中毒 獨協医科大学神経内科

Recent Advances in the Medical Care and Treatment of Epilepsy. Topics:II. Epilepsy mimics: diagnosis and management. Eisei Hoshiyama, Keisuke Suzuki and Koichi Hirata:Department of Neurology, Dokkyo Medical University, Japan.

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(グレードB)1).失神と心因性発作は特にてんか んと鑑別を要する4).本稿では,これらのてん かんの鑑別として重要な疾患のほか,ナルコレ プシーやレム(rapid eye movement:REM)睡眠 行動異常症などの睡眠疾患も加えて解説する.

1.急性症候性発作

 てんかんが慢性的な脳疾患であるのに対し, 急性疾患と時間的に密接して生じる痙攣発作を 急性症候性発作と呼ぶ1).原因として,急性全 身性疾患,代謝性疾患,中毒性疾患,中枢神経 系感染症などが含まれる(表 1).図 1に意識消 図1 意識消失や意識障害,痙攣に対するフローチャート(文献1,3を参考に作成) ・痙攣,意識消失,意識障害 ・神経診察:意識,麻痺など ・局所徴候あり ・髄膜刺激症候陽性 ・Trousseau徴候,Chvostek徴候 心雑音,不整脈,チアノーゼ ・頻呼吸 ・血液検査(血糖,電解質,アンモニア,甲状腺機能,血算) ・心電図 ・頭部CT,MRI ・脳波 ・動脈血液ガス ・生命徴候(血圧,体温,脈拍,呼吸状態)の確認 ・必要に応じて痙攣の治療を行う 病歴 ・同様のエピソードの有無 ・てんかん ・糖尿病 ・インスリン注射や血糖 降下薬内服歴 ・アルコール飲酒 ・精神疾患 ・脳血管障害 ・脳腫瘍 ・頭部外傷 →脳血管障害,脳内占拠性病変 ・眼位 ・肢位 ・持続時間 痙攣の場合 →髄膜炎,くも膜下出血 →低Ca血症 →心不全,失神,脳塞栓 →過換気症候群 表1 急性症候性発作(文献1より) 脳血管障害 ―脳血管障害から7日以内に起こる発作 中枢神経系感染症 ―中枢神経系感染症の活動期に起こる発作 頭部外傷 ―頭部外傷から7日以内に起こる発作 代謝性 ―電解質異常,低血糖,非ケトン性高血糖,尿毒症,低酸素性脳症,子癇など,全身性疾患に関連して起こる発作 中毒 ―麻薬(コカインなど),処方薬(アミノフィリン,イミプラミンなど),薬剤過剰摂取,環境からの曝露(一酸化炭素,鉛,樟脳,有機リンなど), アルコール(急性アルコール中毒など)に曝露している間に起こる発作 離脱 ―アルコールや薬剤(バルビツレート,ベンゾジアゼピンなど)の離脱に関して起こる発作 頭蓋内手術後 ―頭蓋内脳外科手術の直後に起こる発作 脱髄性 ―急性散在性脳脊髄炎の急性期に起こる発作 多因性 ―同時に起きたいくつかの状況と関連した発作

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失や意識障害,痙攣患者の対応を示す.まずバ イタルサインを確認し,痙攣が持続するようで あれば,早急に抗痙攣薬(ジアゼパムなど)の 投与を行う.痙攣の持続時間,意識状態の変化, 眼位や肢位の確認を行う.神経診察では局所徴 候の有無を確認し,低Ca(カルシウム)血症を 示唆するChvostek徴候やTrousseau徴候,心原性 失神を疑う心雑音や不整脈にも注意する.頻呼 吸の場合には過換気症候群も鑑別に入れる.病 歴,内服中の薬剤も同時に本人や家族から聴取 し,アルコール中毒,低血糖など急性症候性発 作を来たす要因を鑑別する.血液検査では低血 糖・高血糖,高アンモニア血症,尿毒症,電解 質異常,貧血の有無を確認する.心電図では不 整脈の有無を,頭部画像(CT:computed tomog-raphy,MRI:magnetic resonance imaging)では 器質的病変の鑑別を行う.脳波ではてんかん波 のほかに三相波や徐波異常の有無を確認する.

2.てんかんと鑑別を要する疾患群

 表 2にてんかんと鑑別を要する疾患を示す. これらの一部は前述した急性症候性発作と一部 重複する. 1)失神  失神は「一過性の意識消失発作の結果,姿勢 が保持できなくなり,かつ自然に,また完全に 意識の回復がみられること」と定義される5) 失神を来たす病態は様々であるが,共通する病 態生理は「脳全体の一過性低灌流」である.一 般人口における失神の発生率について,Fram-ingham研究の1985年の報告では,男性の3.0%, 女性の3.5%が少なくとも1回の失神を経験して いた6).2002 年の報告では,失神の発生率は 6.2/1,000 人/年,積算発生率は 10 年間で 6%で あ っ た7). 日 本 に は 失 神 に 関 す るpopula-表2 てんかんと鑑別を要する疾患(文献4より改変) 失神 反射性 ―迷走神経反射,排尿,嚥下,頸動脈洞,オルガズム,笑いに伴う 心原性 ―不整脈源性 ―高齢者:瘢痕領域に関連する心室頻拍 ―若年者:QT延長症候群,QT短縮症候群,不整脈源性右室心筋症 ―構造的,大動脈石灰化,肥大型心筋症 起立性 ―自律神経障害 心因性非てんかん性障害 ―パニック障害(特にてんかん患者の中で)―解離性障害 ―人為的,仮病 睡眠障害 ―睡眠時随伴症―レストレスレッグス症候群,周期性四肢運動 ―ナルコレプシー 構造的脳疾患による発作性症状 ―多発性硬化症―脳腫瘍 血管性 ―片頭痛(片麻痺性,後頭葉,脳底型) ―Limb shaking TIA

―鎖骨下動脈盗血症候群 ―もやもや病 ―椎骨脳底動脈系以外の血流不全 低血糖 糖尿病治療中,インスリノーマ 運動障害疾患 ―発作性運動誘発性ジストニア/ジスキネジア―低酸素脳症後のミオクローヌス その他 心因性や姿勢反射障害によるdrop attack

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tion-based studyが存在しないため,一般人口に おける失神の発生率は不明である.背景となる 人種,人口構成が異なるが,Framingham研究の 結果から,単純に計算すると年間約79万人(平 成 27 年 度 の 日 本 の 総 人 口 1 億 2,690 万 人 × 6.2/1,000 人/年)が失神しており,横断研究の 報告を考慮すると発生数はこれより多いと推測 される.失神の原因は多岐にわたり,その分類 方法は報告により幅があるが,予後の比較とい う観点からは,心原性,非心原性〔主に反射性 (神経調節性)失神,起立性低血圧〕,原因不明 の分類が用いられることが多い.頻度として は,反射性(神経調節性)が最も多く,心原性 がそれに次ぐ. (1)反射性  血管迷走神経性失神(vasovagal syncope),頸 動脈洞症候群,状況失神(situational syncope) を反射性失神(神経調節性失神)と総称する. 血管迷走神経性失神は,長時間の立位あるいは 座位姿勢,痛み刺激,不眠・疲労・恐怖などの 精神的・肉体的ストレス,さらには人混みの中 や閉鎖空間などの環境要因が誘因となって発症 し,自律神経調節の関与が発症に関わってい る.失神発作は,日中,特に午前中に発生する ことが多く,失神の持続時間は比較的短く(1 分以内),転倒による外傷以外には特に後遺症を 残さず, 生命予後は良好である6). 状況失神 (situational syncope)はある特定の状況または 日常動作で誘発される.排尿(micturition),排 便(defecation), 嚥 下(swallowing), 咳 嗽 (cough),息こらえ(Valsalva手技),嘔吐(vom-iting)などに起因する.予後は,合併する基礎 疾患によるが,生活指導により失神を予防でき ず,発作時に徐脈や心停止が確認されている場 合はペースメーカ治療の適応である.頸動脈洞 症候群は中高年齢層の原因不明の失神患者にお いてしばしば認められ,重要な疾患である.頸 動脈洞症候群の病態と加齢に伴う動脈硬化との 関係が指摘されており,また,加齢に基づく胸 鎖乳突筋の慢性除神経との関係が注目されてい る.原因不明の失神として,頸動脈洞マッサー ジ(carotid sinus massage:CSM)により診断さ れることも少なくない. (2)心原性  心原性失神は,初発の痙攣発作症状でしばし ば遭遇する.心原性失神の原因は主に心拍出量 の低下によるものである.①不整脈,②器質的 疾患(心肺疾患,血管疾患)に大別される.こ れらの診断には,失神発作の状況,年齢,既往 歴,家族歴,基礎疾患の検索が重要である.有 用な検査としては,心電図で急性心筋梗塞や不 整 脈 の 検 出 の み で は な く,Brugada症 候 群 や WPW(Wolff-Parkinson-White)症候群,肥大型 心筋症,QT延長を示唆する心電図変化に注意す る.また,高齢者では心筋瘢痕からの心室頻拍 を来たす場合があるため,過去の心筋梗塞の変 化として異常Q波にも目を向けなければならな い.また,肺血栓塞栓症や感染性心内膜炎,急 性大動脈解離でも失神を起こす.心原性失神 は,失神原因別における全死亡からみた長期予 後が最も悪い.失神が心停止の前駆症状を呈し ていることもあるため,原因疾患を見落とすと 致命的になる恐れがある.そのため,問診に加 え,的確な診断検査,治療を行う必要がある. 2)心因性非てんかん性障害  心因性非てんかん発作(psychogenic non-epi-leptic seizure:PNES)は治療抵抗性のてんかん として重要な原因の1つである.PNESは主にパ ニック障害と解離性障害があり,てんかんと診 断された人の 5%,難治性てんかんと考えられ た人の20%を占める.知能は正常であることが 多い.PNESを示唆する所見として,心因性疾患 の存在,特別な情動的負荷と関連して発作が起 こる,疾病利得などの背景因子を認める.発作 の特徴としては,首の規則的・反復的な左右へ の横振り運動,発作の最中に閉眼している,発 作中に泣き出す,発作出現に先行して 1 分以上

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の閉眼・動作停止を伴う疑似睡眠状態が出現す る場合などが挙げられる(エビデンスレベル IV).また,発作の最中に尿失禁,咬舌を起こす ことがあるが,頻度は低い(エビデンスレベル II).検査としては,ビデオ脳波モニタリングが 有用である1) 3)睡眠障害 (1)睡眠時随伴症と夜間の異常行動との鑑別  睡眠中に起こるてんかんと,他の睡眠障害や 意識障害,精神疾患などの鑑別は重要である8) 図 2に睡眠中に異常行動を来たす疾患の鑑別を 示す.夜間の異常行動や異常運動がみられた場 合は,まず睡眠障害と意識障害の鑑別を行う. 睡眠障害であれば,レム睡眠中の睡眠時随伴症 として,主に中高年から高齢者にみられるレム 睡眠行動異常症(REM sleep behavior disorder: RBD)があり,ノンレム睡眠中の睡眠時随伴症 として小児にみられる夜驚症,夢中遊行があげ られる.意識障害としててんかん,夜間せん妄 があるが,低血糖など代謝性意識障害なども鑑 別に挙がる.RBDでは刺激による覚醒は速やか であり,その直後では夢の想起が可能である. しかし,意識障害,てんかんの場合には刺激に よる覚醒は困難である.RBDはレム睡眠中の夢 に関連した寝言,大声,複雑な手足の行動を特 徴とする睡眠時随伴症である.夢の行動化によ り患者本人やベッドパートナーに夜間の外傷を きたす場合がある.特発性RBDの追跡研究では, 神経変性疾患,特にαシヌクレイノパチー(Par-kinson病,Lewy小体型認知症や多系統萎縮症) 発症との関連性が報告されている.そのため夢 に関連した異常行動が頻回な場合や症状が重度 の場合には睡眠ポリグラフ検査の可能な施設へ の紹介が推奨される.また,RBD症状に加えて 認知機能障害やパーキンソニズムを疑う場合に は神経内科へのコンサルテーションを考慮する 必要がある. (2)睡眠関連運動障害  睡眠関連運動障害は睡眠中に生じる,単純で 常同的な運動により不眠(入眠困難,中途覚醒, 早朝覚醒)や日中の機能障害(日中の眠気や疲 労感)をきたす疾患群である9).夜間の運動は 睡眠時随伴症であるRBDや夜驚症でみられる複 図2 睡眠中の異常行動の鑑別(文献8より)

RWA:REM sleep without atonia

レム睡眠行動障害 覚醒障害 てんかん発作 夜間せん妄 糖尿病治療中や インスリノーマ(自験例) 好発年齢 時間帯 運動の内容 暴力的行動 外傷 歩行 尿失禁 悪夢・夢体験 夢の再生 刺激による覚醒 脳波の異常所見 関連する睡眠段階 高齢者 明け方 複雑な運動 ++ 多い ± ~+ - + + 速やか レム睡眠 RWA 小児 夜前半 複雑な運動 ± ~+ 少ない + - - - 困難 ノンレム睡眠 徐波睡眠 小児・高齢者 不定 常同性 -~ ± 少ない + ± ~+ - - 困難 てんかん波 ノンレム 高齢者 夜間(不定) 複雑な運動 ± ~+ 多い + ± ~+ - - 困難 徐波化 明け方(早朝) 毎日 決まった時間帯 常同性,進行性 - - + + - - 困難 徐波化 睡眠障害 意識障害

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雑な運動とは異なるが,これらは全て夜間のて んかん発作とは鑑別を要する疾患群である.睡 眠関連運動障害にはレストレスレッグス症候群 (restless legs sydnrome:RLS)や周期性四肢運 動異常症(periodic limb movement disorders: PLMD),睡眠関連こむら返りがあり,他に睡眠 関連歯ぎしり,睡眠関連律動性障害なども含ま れる(表 3). 睡眠障害国際分類第 3 版(ICSD (International Classification of Sleep Disorders)-

3)では,良性新生児睡眠ミオクローヌスと睡 眠開始時の脊髄固有路性ミオクローヌスが加 わった.RLSは夜,下肢を動かしたいという強 い欲求がまずあり,安静時や夜間に出現する異 常感覚,運動による感覚症状の改善を特徴とす る.これらの特徴をおさえればてんかんとの鑑 別は困難ではない.RLSの鑑別としては下肢の 筋痙攣,姿勢による不快感,末梢神経障害,貧 乏ゆすり,不安感,薬剤誘発性アカシジアなど がある.RLSでは下肢の周期的な常同運動であ る睡眠時の周期性四肢運動(periodic limb move-ment of sleep:PLMS)を高率に合併する.睡眠 ポリグラフ検査では前脛骨筋の表面筋電図上, 約0.5~10秒持続し,約20~40秒間隔で出現す る 4 回以上の筋収縮であり,出現間隔が 5 秒未 満や 90 秒より長い場合は含めない.小児では PLMS index>5/時,成人ではPLMS index>15/ 時があり,PLMSが有意な睡眠障害や精神・身体 的,社会的,職業的,教育的,行動的障害や他 の重要な領域の機能障害を来たし,PLMSが他の 睡眠障害,精神・神経疾患では説明できない場 合にPLMDと診断する. (3)ナルコレプシー  ナルコレプシーは 10~20 代前半に多く,日 本人の有病率は600人に1人くらい(0.16%)で ある.症状は 3 カ月以上続く,反復する日中の 耐え難い眠気や睡眠発作を主徴とし,笑ったり 怒ったりするときに身体の脱力を生じる情動脱 力発作,睡眠麻痺(金縛り),入眠時幻覚を認め る.情動脱力発作や眠気の際には突発的な意識 消失は通常ないため,詳細な病歴聴取で,意識 消失との鑑別は可能である. 表3 睡眠関連運動障害(文献9より) レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群) 下肢の不快感を伴う,動かしたいという強い欲求,運動により軽減,日内変動,不眠 周期性四肢運動異常症 反復する不随意的な膝関節の屈曲,足関節の背屈 睡眠ポリグラフ検査:PLMS 指数>15/h(成人),PLMS 指数>5/h(小児) 睡眠関連こむら返り ふくらはぎ,足の小筋群の強い収縮による痛み.ストレッチで改善 睡眠関連歯ぎしり 睡眠中の歯ぎしりにより歯の摩耗,歯痛,下顎の筋肉痛や頭痛を生じる 睡眠関連律動性運動障害 主に乳幼児にみられる睡眠中のリズミカルな反復運動.頭打ち,頭横揺すり,体幹振 りが含まれる 良性新生児睡眠ミオクローヌス 睡眠開始時の脊髄固有路性ミオクローヌス 身体疾患による睡眠関連運動障害 薬物または物質による睡眠関連運動障害 特定不能の睡眠関連運動障害

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4)血管性 (1)migralepsy  てんかんと頭痛は典型的な発作性疾患であ り,臨床においてオーバーラップしていること がある.特に前兆のある片頭痛において,頭痛 発作中か発作後 1 時間以内に起こる痙攣発作を migralepsyという.後頭葉てんかんでは,発作 中に視覚症状を呈することが多く,陽性症状と して光の玉がみえたり,幻視を伴ったりするこ ともある.一方,前兆のある片頭痛では,閃輝 暗点として現れることが多く,固視点付近にジ グザグ形が現れ,右または左に徐々に拡大し, 角張った閃光で縁取られた側部凸型を呈し,そ の結果,絶対暗点あるいは種々の程度の相対暗 点を残す.抗てんかん薬はてんかん治療として も片頭痛予防としても使用される.

(2)limb shaking TIA

 limb shaking TIA(transient ischemic attack, 一過性脳虚血発作)は,片側上下肢に一過性に 生じる震え様の不随意運動であり,原因として は内頸動脈系の虚血によると考えられている が,低血圧やもやもや病の症例も報告されてお り,必ずしも内頸動脈系の狭窄や閉塞に特異的 な症候ではない.不随意運動の性状について は,limb shaking発作時の表面筋電図にて拮抗筋 間の同期性のある群化放電が認められ,片側バ リスム―片側舞踏運動(hemiballism-hemichorea) であったとの報告がある.脳波所見では,てん かんを示唆する波形は認められず,抗てんかん

図3 インスリノーマ患者のCGM(continuous glucose monitoring)(文献10より)

血糖値 (mg/dl) 血糖値 (mg/dl) 低血糖 12:00 午前 2:00午前 4:00午前 6:00午前 8:00午前 10:00午前 12:00午後 12:00午前 140 70 2:00 午後 4:00午後 6:00午後 8:00午後 10:00午後 400 300 200 100 40 0 12:00 午前 2:00午前 4:00午前 6:00午前 8:00午前 10:00午前 12:00午後 12:00午前 140 70 2:00 午後 4:00午後 6:00午後 8:00午後 10:00午後 400 300 200 100 40 0 治療前 インスリノーマ摘出後

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薬の効果はみられない.このことから,単純部 分発作,すなわち,てんかんと鑑別可能である. 不随意運動のほかに,神経脱落徴候や血管危険 因子を多く認める場合,本疾患を念頭に置く必 要がある. 5)低血糖  代謝性障害として夜間の低血糖は注意が必要 である.インスリノーマは稀な疾患ではある が,慢性的な低血糖により,昏睡ではなく興奮 や徘徊,夜間の怪我を含めた異常行動を主訴に 来院する場合がある.我々は睡眠中の異常行動 を認め,RBDと鑑別を要した 3 例を報告した. いずれも夜間から早朝にかけての異常行動があ り,その間の記憶はなかった.そのうち,1 例 においては,早朝空腹時血糖のみでは低血糖の 検出が困難であり,血糖測定の反復および持続 血糖測定の重要性を認識させられた10).その症 例ではインスリノーマ摘出術後に血糖値は改善 し,異常行動も消失した(図 3).

おわりに

 以上,てんかんと鑑別を要する疾患について 解説した.意識障害や意識消失はてんかん以外 にも心疾患や代謝性疾患でも認める場合があ り,特に急性症候性発作の鑑別として心電図, 血液検査を含めた幅広いスクリーニングが必要 である.てんかん以外で痙攣様の不随意運動を 認める場合も同様に,脳病変のほかに代謝性疾 患の鑑別は必須である.また,夜間に異常行動 がみられた場合には,睡眠疾患との鑑別も考慮 する必要がある. 著者のCOI(conflicts of interest)開示:平田幸一;講演 料(大塚製薬) 文 献 1) 日本神経学会:てんかん治療ガイドライン 2010.医学書院,東京,2010.

2) Berg AT, et al : Revised terminology and concepts for organization of seizures and epilepsies : report of the ILAE Commission on Classification and Terminology, 2005―2009. Epilepsia 51 : 676―685, 2010.

3) 大石 実:鑑別診断.日本臨牀 72 : 839―844, 2014.

4) Smith PE : Epilepsy : mimics, borderland and chameleons. Pract Neurol 12 : 299―307, 2012.

5) 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告),失神の診断・治療ガイドライン(2012 年改訂版).

6) Savage DD, et al : Epidemiologic features of isolated syncope : the Framingham Study. Stroke 16 : 626―629, 1985.

7) Soteriades ES, et al : Incidence and prognosis of syncope. N Engl J Med 347 : 878―885, 2002. 8) 鈴木圭輔,他:睡眠障害.Clinical Neuroscience 31 : 611―614, 2013.

9) 鈴木圭輔,他:睡眠関連運動障害.日本臨牀 73 : 954―964, 2015.

10) Suzuki K, et al : Insulinoma masquerading as rapid eye movement sleep behavior disorder : case series and liter-ature review. Medicine(Baltimore)94 : e1065, 2015.

参照

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