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代償性肝硬変患者における運動トレーニングの臨床的効果に関する研究

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Academic year: 2021

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Title

代償性肝硬変患者における運動トレーニングの臨床的効果

に関する研究( 内容の要旨(Summary) )

Author(s)

川瀬, 光八郎

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(医学)乙 第923号

Issue Date

1994-10-19

Type

博士論文

Version

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/15346

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 川 瀬 光八郎(岐阜県)

士(医学) 乙第 923 号 平成 6 年10

月19

日 学位規則第4条第2項該当 代侠性肝硬変患者における運動トレーニングの臨床的効果に関する研究 (主査)教授 武 藤

敏 (副査)教授 野 間 昭 夫 教授 藤 原 久 義 論 文 内 容 の 要 旨 肝硬変は主な死因である肝不全,食道静脈瘡,肝細胞癌に対する診断・治療の進歩により予後の改善が認めら れている。従来,肝硬変の治療は安静を基本としてきたが,過度の安静は骨格筋の廃用性萎縮をもたらし,さら に肝硬変に伴う高グルカゴン血症,アミノ酸インバランスなどによっても筋蛋白の異化が冗進し,筋肉量が減少 するといわれる。しかし,骨格筋はアンモニア処矧こ関与して硬変肝の機能の一部を代償するともいわれその維 持は重要であるoそのため骨格筋量の維持が日常生活の維持,すなわちqualityoflifeの向上のkey pointの1 つとみなされている。しかし,現在のところ適切な運動量の設定と,その肝機能に対する影響についての知見は 十分ではない。 そこで申請者はt代償性肝硬変患者に対する運動の影響および適正運動量を検討するために①肝硬変患者の運 動能力と有酸素運動による影響を健常者と比較し,さらに,②有酸素運動でトレーニングを実施した前後の身体 計測値,血液生化学データ,運動能九 自覚的疲労症状などの変化について検討した。 対 象 肝硬変患者群(LC群)は,臨床所見,血液生化学所見,画像診断等により診断したmodifiedChild分類Aに属 する代償性肝硬変男性患者5例で年齢は平均55歳。成因はC型4例,不明1例,全例に食道静脈瘡,3例に耐糖 能異常を認めた。肝癌合併例,心・肺疾患合併例は除外した。対照群(C群)は健常男性3例で年齢の平均は52 歳であった。また本研究への参加に先だって,対象者にその目的と方法を十分に説明し,インフォームド・コン セントを得た。 方 法 LC群に対してはまず負荷前計測,運動負荷量の設定と,その運動負荷時の影響を検討し,以後5か月間の運 動トレーニングを行い,再び同様の測定を行った。C群では負荷前計測,運動負荷量の設定と,その運動負荷時 の影響を測定してLC群のトレーニング前値と比較した。 (1)負荷前計測と運動負荷量の設定 a)運動負荷量の設定:自転車エルゴメーターを用いた漸増運動負荷試 験を行い無酸素作業閉値(anaerobicthreshold;AT)を求めた。b)身体計測:体重,筋周径,皮下脂肪厚を計 測した○皮下脂肪厚は皮脂厚計にて3回の平均を算出した。除脂肪体重は休組成測定装置を使用しインピーダン ス法により測定した。C)運動能力:運動負荷量設定と同時に最大酸素摂取量(maximaloxygenuptake; VO2maX)を呼気ガス分析装置により算出した。脚筋力はCYBEX-Ⅱにより測定した。 (2)運動負荷時の影響:ATで30分間の運動負荷を行った。負荷の直前と終了直後,15分,30分,60分後に採血 し・GOT・GPT,T-Bil・,ALP,アンモニア,乳酸,C-J<プチド,グルカゴンおよび血焚アミノ酸濃度を測定した。 (3)長期トレーニング:LC群に対し設定したATで自宅において自転車エルゴメーターによるトレーニングを 1回30分乱週3回,5か月間行った。5か月乱トレーニング前と同様の計測を行いその変動を検討した。 (4)自覚的疲労症状:自覚的疲労症状について日本産業衛生協会産業疲労委員会の自覚的症状調査表に従って アンケート調査を実施した。身体的症状15項臥精神的症状16項目,神経感覚的症状17項目に加え,一般的な肝 硬変の臨床症状12項目についてトレーニング前後の変化を検討した。 63

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結 果 (1)LC群トレーニング前値とC群との比較a)運動負荷量:ATはLC群が57.OwattでC群の92.Owattに比し有 意に低値であった(P<0・01)。b)身体計測:LC群は平均体重は少なく,除脂肪体重の割合も少なかった。各部 筋周径はC群が大きく,一方上腕三頭筋部と大腿四頭筋部の皮下脂肪厚はLC群が大きかった。C)運動能力:

豆02maXはLC群がやや低値であったが,VO2maX/体重に有意差はなかった。脚筋力は屈曲筋・伸展筋群とも劣っ

ているが有意ではなかった。 (2)ATでの運動負荷時の影響a)肝機能‥GOT,GPTは両群で運動直後に最高値を示し30分後には前値に回 復した。T-Bil・,ALPも同様の変動を示した。b)アンモニア:C群は運動直後に最高値を示し,運動後30分で前 値に回復した。LC群では運動後15分∼30分に最高値を示し,運動後60分でも前値に回復しなかった。C)乳酸: 両群とも運動直後に最高値を示し60分後には前値に回復した。d)c-ペプチド,グルカゴン:いずれもLC群は高 値で推移した。C-ペプチドはC群では運動直後に最低値を示し以後60分まで低値を持続した。LC群も運動直後に 最低値を示したがその程度はC群に比し有意に少なかった。グルカゴンはC群では運動中,運動後を通じて徐々 に低下したが,LC群は運動直後に上昇,運動後15分で逆に低下,その後再び上昇傾向を示した。e)血祭アミノ 酸濃度:総アミノ酸,分枝鎖アミノ酸(BCAA),芳香族アミノ酸(AAA)は両群とも運動直後の変動は少なく 15∼30分にかけて軽度上昇した。 (3)長期トレーニングの効果(LC群のトレーニング前後の比較)a)身休計測:体重,体脂肪量,脂肪百分率 は軽度減少し,除脂肪体重は不変であった。各部筋周径は不変で,各部の皮下脂肪厚は軽度の減少が見られた。 b)GOT,GPTはトレーニング前値に比しさらに高値を示したが,その変動は前値のl.5倍以内であり,100IU/1 を越えなかった。T-Bil.,ALPはトレ,ニング前後とも正常範囲内であった。アンモニアの運動負荷前値はトレー ニング前後では差がみられず,運動直後および15分後における上昇の程度がトレーニング後で高い傾向にあった が,30分以降に差はなかった。乳酸はトレーニング後に負荷量が増しているにもかかわらず上昇はみられなかっ たo C一ペプチド,グルカゴンは両者ともトレーニング後には減少傾向を示した。血祭アミノ酸濃度は総アミノ酸, BCAA・AAA,フィッシャー比の変動パターンにトレーニング前後で変動はなかった。しかし,血渠3-methyl-histidine(3MH)の運動負荷前値はトレーニング後有意に減少し(P<0.05)正常化した。C)運動能力:ATは トレーニング後で67.Owattと増加の傾向を示したが(P<0.1),C群にはおよばなかった。VO2maXはトレーニン グ後増加し,ほぼC群と同様の値を示した。脚筋力は屈曲筋・伸展筋群ともにトレーニングによる変動は認めら れなかった。 (4)自覚的疲労症状の変化:身体的症状は15項目中平均4項目から1.8項目,精神的症状は16項目中平均4項目 から1・8項目,神経感覚的症状は17項目中平均2・2項目から1.2項目とそれぞれ減少傾向を示し(P<0.1),その他 の臨床症状は12項目中2.8項目から1.2項目と有意に減少した(P<0.05)。 結 語 代償性肝硬変患者(ChildA)に無酸素作業閥値でのトレーニングを5か月間行ない以下の結果を得た。 ①無酸素作業閥値,最大酸素摂取量が増大し運動耐性の向上が認められた。②血祭3-methylhistidine濃度が有 意に減少,正常化し,骨格筋崩壊の抑制が強く示唆された。③自覚的疲労症状の改善が認められた。以上より代 償性肝硬変患者にとって有酸素運動による適切なトレーニングはqualityoflifeの向上にとって有用と考えられ た。

論文辛査の結果の要旨

申請者川瀬光八郎は・代償性肝硬変患者においての運動トレーニングが運動耐性の向上と骨格筋の崩壊抑制, さらに自覚症状の改善に寄与することを明らかにした。これらの新知見は肝臓病学の進歩に少なからず寄与する ものと認める。 [主論文公表誌] 代償性肝硬変患者における運動トレーニングの臨床的効果に関する研究 肝臓 34(12):950∼959,1993 64

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