Histochemical localization of nitric oxide
synthase in mouse biliary ducts.
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トル
マウス胆管系における一酸化窒素合成酵素の組織化
学的分布について
マウス タンカンケイ ニ オケル イッサンカ チッ
ソ ゴウセイ コウソ ノ ソシキ カガクテキ ブンプ
ニ ツイテ
著者
木下 隆
発行年
1994-03-24
URL
http://hdl.handle.net/10422/2022
際
録
氏名・(本籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与の要件 学位授与年月日 学位論文題目 木 下 隆(鳥取県) 博士(医学) 博士第158号 学位規則第4条第1項該当 平成6年3月24日HlSTOCHEMlCAL LOCAuZATl0N OF NITRIC OXIDE SYNTHASEJN MOUSE BluARY DUCTs
(マウス胆管系における一酸化窒素合成酵素の組織化学的分布について) 審 査 委 員 主査 教授 戸 田 昇 副査 教授 木 村 宏 副査 教授 森 渥 視 論 文 内 容 要 旨 [目 的】 最近、一酸化窒素(NO)が神経伝達物質あるいは細胞内セカンドメッセンジャーとして働き生体内 情報伝達機構にに関与していることが報告され注目を集 ̄めている。また腸管では、壁内神経叢にNO 合成酵素含有神経(NO神経)が存在し、非アドレナリン、非コリン性神経として平滑筋の弛緩に関わ っているこ とが報告されている。今回われわれは、NO合成酵素と同一_とされている NADPH(Nicotinamide adenine dinucleotide phosphate)ジアホラーゼの酵素組織化学を用いて、解剖学
的に腸管とよく似た神経構築を持つとされる胆管系におけるNO神経の存在の有無、さらにはその分 布様式を、マウスを用いて検討した。 [方 法】 NADPHジアホラーゼ組織化学 動物をベントバルビタール麻酔下に開胸し、左心室より潜流脱血した後、ただちに4%パラホルム アルデヒド、0.1%グルタールアルデヒド混合液(4℃)で湾流固一定した。その後動物を30分間氷冷し、 15%庶糖を含む0.1M燐酸緩衝液にて再濯流を行った。胆嚢を含む肝外胆管を採取し、全層榎本を作製 した。また十二指腸、膵臓を採取し、クリオスタットにて厚さ12〃,皿の切片を作製した。全層標本、 組織切片とも、浮遊法にて以下の染色を行った。基質として0.01mM NADPH、発色物質として 0.02mM NBT(T.itro blue tetrazorium)を含む0.1M燐酸緩衝液中にこれらの全層標本または組織切片を浸 潰し、37℃で2−4時間反応させ発色させた。 NADPllジアホラーゼとアセチルコリンエステラーゼとの二重染色 アセチルコリンエステラーゼの酵素組織化学は、KaTnOVSky法の変法であるTago法に準じ、標本ま たは切片をKarnovskyとRootsの100倍溶液に浸漬した後、0.04%3.3ジアミノベンチジン、0.005%過酸化 水素水を含む0.05Mトリス緩衝液で褐色に発色させた。この同一標本または切片にNADPHジアホラ ーゼ組織化学を行い二重染色とした。 [結果】 −129 −
胆嚢において、NADPHジアホラーゼ陽性神経細胞体はおもに胆嚢頚部にみられ、細胞体の数は少 ないながらも神経節を形成していた。これらの陽性神経細胞体は比較的大きく、またなかには多数の 短い突起と一本の長い突起を持つDogielの1型に属する形態学的特徴を有するものが観察された。陽 性神経線経は一条の神経東となり胆嚢頚部を走行した後に分枝し、胆嚢底部では、バリコシティーを もつ細い線経が網目状に分布していた。また細かい神経線経は胆嚢の血管周囲にも認められた。胆嚢 管、肝管、総胆管においても陽性神経細胞体、神経線経が観察された。総胆管の十二指腸堂内走行部、 すなわちOddiの括約筋部でも陽性神経細胞体がみられ、神経節を形成していた。 膵臓において、陽性神経細胞体はおもにラ氏島近傍に認められ、問質では、血管および膵管に沿っ て走行する螺旋状の神経線経が観察された。 NADPHジアホラーゼとアセチルコリンエステラーゼとの二重染色の結果では、胆嚢においては、 両者がともに陽性になる細胞は検索し得なかった。一方、膵臓においては、NADPHジアホラーゼ陽 性細胞の一部に、アセチルコリンエステラーゼとの共存がみられた。 [考 察] NO神経は広く胆管系全体に分布していたが、特に胆嚢においては特徴的な陽性神経細胞体、陽性 神経線経が観察された。胆嚢の神経叢は胆嚢壁の解剖学的特徴から、腸管の粘膜下神経嚢に似ている と考えられている。腸管においてNO神経はおもに筋層間神経叢に存在し、粘膜下神経叢にはほとん どみられないことから、胆嚢と腸管のNO神経は同一のものではないかもしれない。しかしながら胆 嚢の陽性神経細胞の中には腸管と同様、運動神経と考えられるDogie】sl型に属するものがみられ、形 態学的にもこの神経が胆嚢の運動などに関与しているのではないかと推測された。 胆嚢を含む上部胆管系のNO神経はアセチルコリンエステラーゼと共存しておらず、この部の陽性 神経は腸管と同様、非アドレナリン、非コリン性神経であり、その一部は抑制性の神経として胆嚢の 弛緩運動に関わっているのではないかと考えられた。しかし膵臓を含む下部胆管の陽性神経の一部は コリン性神経と考えられ、上部と下部の胆管ではNO神経は異なった役割を果たしているのではない かと推測された。 胆嚢の神経叢は、おもにアドレナリン性神経と考えられる血管周囲神経叢と、非アドレナリン性神 経と考えられる勇血管神経東とから形成されている。また芽血管神経束の中には内臓知覚神経と考え られるものも存在する。今回の検討でNO神経は血管周囲神経叢、勇血管神経束のどちらの部位にも 分布が認められたことから、この神経が広く胆嚢の機能に関わっているのではないかと考えられた。 [結 語] NADPllジアホラーゼ組織化学を用いた検討により、NO神経は広く胆管系全体に存在することが明 らかとな’った。胆管系におけるNO神経の生理的意義は不明であるが、その形態、分布様式などから 胆管系の機能に深く関わっているものと推測された。